鍼灸医学の懐

黄帝内経の意訳と解説 最後に原文と読み下しを記しています。

調經論篇第六十二.

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  本篇の表題は、経絡の気血を調えることを目的として、虚実・補瀉の概念とその方法が説かれているということでつけられたのであろう。

 ところが筆者は経絡よりもむしろ人体を空間として意識した虚実・補瀉概念のように理解される。

 なぜなら本文中に、<陰陽が交流し、身体が充実していると九候もまるで一つのようである>とあり、さらに最後の括りに<謹んで九候を察しなさい>と記載されているからである。

 この九候とは、天人地の三才思想で書かれた、<三部九候論20>の空間的脈診法のことである。

 おそらく本篇は、当時複数存在していたであろう治療学派の内、空間学派が書き著したものだろうと考えている。

 これらのことを踏まえるなら、本篇内の巨刺と繆刺は名称こそ違うものの、同じ空間的歪み・気の偏在という視点で捉えると、かなり整理され臨床に用いることができる。

 

 

  意  訳

 黄帝が申された。

 余は刺法に有余はこれを瀉し、不足はこれを補うと言っているが、有余・不足とはいったい何を指して言っているのじゃ。

 

 岐伯がそれに対して申された。

 有余には五ありまして、不足にもまた五ありますが、帝はどういったことをお聞きになりたいのでしょうか。

 

 帝が申された。

 有余・不足に関するすべてじゃ。

 岐伯が申された。

 神の有余・不足。

 気の有余・不足。

 血の有余・不足。

 形の有余・不足。

 志の有余・不足。

 これら十の有余・不足の気はそれぞれ異なっております。

 

 黄帝が申された。

 人には精気、津液、四支九竅、五藏、十六部、三百六十五節があり、それぞれに百病が生じる。さらに百病には虚実がある。

 今そちは、有余に五あり、不足にもまた五ありと言うが、どうして虚実ということが生じるのであろうか。

 

 岐伯が申された。

 それらのすべては、五臓に生じます。

 それは、心は神を蔵し、肺は気を蔵し、肝は血を蔵し、脾は肉を蔵し、腎は志を蔵しておりまして、これらでひとりの人間の形が出来上がっているのであります。

 そして志意がとどこおりなく通じ、身体内部の骨髄にまで連なっておりますれば、形体と五臓は身体として成り立つのであります。

 さらに五臓の気の道は、すべて経絡に通じておりますからこそ、血気は全身を循ることができるのであります。

 その経絡の血気が調和しておりませんと、その不調和を始まりとして百病が生じるのであります。このような理由で、経絡は正常に流れるように守る必要があるのです。

 

 帝が申された。

 神の有余と不足の症候はどのようであるのか。

 岐伯が申された。

 神が有余しますと、休みなく笑い続け、不足しますと悲しむようになります。

 ところが血気が調和していなくても、五臓が安定しておりますと邪は身体の表面に留まりますので、ゾクゾクとして体毛が立つだけで、経絡に入ることはできないのであります。

 従いましてこれは神が少し動じただけでありますので、神の微と申すのであります。

 

 帝が申された。

 補瀉はどのようにいたすのか。

 岐伯が申された

 神が有余しておりましたなら、小絡の血を瀉して出血させます。

 しかし、肉を深く刺したり、本経に鍼を中ててはなりません。このようにいたしますと、神気は平らかとなります。

 神が不足しておりましたなら、虚絡を探しましてこれを按じて気血を至らせます。さらに刺鍼して経絡を通利させるのであります。

 その際、出血させたり気をもたらすようなことがあってはなりません。このように経絡を通利させますと、神気は平らかとなります。

 

 帝が申された。

 神の微に対する刺し方はどうなのじゃ。

 岐伯が申された。

 虚絡を按摩して手を離すことなく、鍼をぴったりと当てまして肌肉を破らないように致します。

 このようにして不足しているところに気を移してまいりますと、神気は自ずと回復して参ります。

 

 帝が申された。

 よし、よく理解した。それで気の有余と不足の状態はどのようであるのか。

 岐伯が申された。

 気が有余しておりますれば、気が上に突上げますので喘いで咳が出るようになります。

 不足しておりますれば、息はできますが呼吸は浅く力がありません。

 血気が不調和でありましても、五臓が安定しておりますと、皮膚が微かに病みます。ですが肺気が微かに泄(も)れる程度です。これを白気微泄と申します。

 

 帝が申された。

 補瀉はどうなのか。

 岐伯が申された。

 気が有余しておりましたら、五臓に通じております經隧、つまり大絡を瀉します。その際には、経脉を傷ったり出血させたり五臓の気を泄すようなことがあってはなりません。

 気が不足している場合は、その経隧を補いますが、五臓の気を泄すことの無いように留意いたします。

 

 帝が申された。

 では微を刺すにはどのようにすれば良いのか。

 岐伯が申された。按摩をして気を散らしてはなりません。

 鍼を出して患者に視せ、これから深く刺すと申し伝えれば、患者はその脅しに従って気の流れが変化いたします。

 さすれば精気は自ずと内に伏するとともに体表に休息していた邪気は腠理から泄れて散乱してしまいます。そうしますと真気はめぐるようになって参ります。

 

 帝が申された。

 よく理解することが出来た。血の有余と不足の状態はどのようであるのか。

 岐伯が申された。

 血が有余しておりますと怒り、不足していると恐れます。血気が不調和であり、五臓が安定しておりましても孫絡に水が溢れますと、経絡は孫絡に通じなくなり留血を生じるようになります。

 

 帝が申された。

 では補瀉はどのようにするのであるか。

 岐伯が申された。

 血が有余しておりましたら、その盛んなる経を瀉して出血させます。

 血が不足していましたら、その虚している経を視て、その脉中に鍼を入れて久しく留めます。そして脉が大きくなるのを視て疾く抜鍼して血を泄さないようにしなくてはなりません。

 

 帝が申された。

 よし、よく理解できた。では形の有余と不足の状態はどのようであるのか。

 岐伯が申された。

 形が有余しておりますと、腹が脹り小便が不利となります。

 不足しておりますと、四肢が思うように動かせなくなります。

 血気の調和が乱れていても五臓が安定しておりますれば、肌肉が蠕動する程度であります。これを微風と申します。

 

 帝が申された。 

 留血の刺法はどのようであるのか。

 岐伯が申された。

 その血絡をしっかりと確認し、刺して出血させます。つまり悪血が經に入り疾病とならないように致すのであります。

 

 帝が申された。

 補瀉はどのようにいたすのか。

 岐伯が申された。

 形が有余しておりますとその陽経を瀉します。

 不足しておりますと、その陽絡を補います。

 

 帝が申された。

 微の刺法はどのようであるのか。

 岐伯が申された。

 分肉の間を取り、経に中ったり絡を傷ることが無ければ、衛気は回復することが出来ますので、邪気もまた散じるのであります。

 

 帝が申された。

 よく理解できた。志の有余不足とはどうであるのか。

 岐伯が申された。

 志が有余いたしますと、腹が脹れ未消化便を下します。

 不足いたしますと、手足が冷えあがる厥となります。

 血気の調和が乱れていても、五臓が安定しておりますと骨節が多少ずれ動く程度であります。

 

 帝が申された。

 補瀉はどのようにいたすのか。

 志が有余しておりますと、然谷から瀉血いたします。

 不足いたしますと、その復溜を補います。

 

 帝が申された。

 神・気・血・形・志の有余・不足に対して、血気が不調和であっても五臓が安定している場合の刺法はいかなるか。

 岐伯が申された。

 取穴するにあたりましてはその経に中てる必要は無く、邪が居るところを直接取れば、邪は立ちどころに虚すのであります。

 

 帝が申された。

 よく理解できた。余はすでに虚実の状態を聞いたが、それらがどうして生じるのかが分からないのであるが。

 岐伯が申された。

 気血は調和しておりましても、時に陰陽は傾くものであります。

 気が衛に乱れ血もまた経を逆流いたしますと血気は離れ離れとなりまして、一方では実、一方では虚という状態になります。

 血が陰に集まり、気は陽に集まりますと、精神状態も乱れ驚きやすくなったり狂症状となったりいたします。

 反対に、血が陽に集まり、気が陰に集まりますと、内熱を生じたり熱中症状となります。

 血が上に、気が下に集まりますと、心中がイライラと煩悶してよく怒るようになります。

 逆に血が下に、気が上に集まりますと、心が乱れてよく忘れるようになります。

 

 帝が申された。

 血が陰に集まり、反対に気が陽に集まり、気血が分離しているような場合、いずれを実とし、虚とするのであろう。

 岐伯が申された。

 気血は温を喜び、寒を悪むものであります。なぜなら寒は流れを渋らせますが、温は留滞を消し去り通利するからであります。

 従いまして、気が走り集まる所は相対的に血虚となり、血の集まる所は相対的に気虚となるのであります。

 

 帝が申された。

 人にあるのは、血と気のみである。

 今夫子は、血が集まるを虚とし、気が集まるもまた虚であると申したが、これでは実が無いではないか。

 岐伯が申された。

 有るものを実とし、無きものを虚と致します。

 従いまして、気が集まりますと相対的に血は無くなり、血が集まりますと相対的に気は無くなります。

 本来、気血は調和してこそ正常な働きを致します。ところがいま気と血がバラバラとなって相失い、正常な働きができない状態を、虚と申しておるのであります。

 絡と孫絡は、ともに経に気血を輸送いたします。気と血が一緒になって集まり、停滞すると実となります。

 この気血が一緒になって上に走り集中しますと実となります。このような場合、大厥と申しまして、手足が冷えあがり場合によっては即死致します。

 ところが気が再び方向を転じて下りますと生き返ります。そうでなければそのまま死亡いたします。

 

 帝が申された。

 虚実は、どのような道理から生じるのであるか。願わくば、さらにその虚実の要とそのゆえんを聞かせてもらいたいのであるが。

 岐伯が申された。

 陰と陽には、それぞれ注いだり会する所がございます。陽は陰に注ぎまして、陰が充実いたしますと今度は陽である外に向かいます。

 このように陰陽が交流し、陰陽が平衡いたしますと、身体は充実し、九候の脉もまるでひとつであるかのように均衡がとれているものです。これを正常な平人と申します。

 一方、邪が生じますのは、身体内の陰、或いは身体外の陽に生じる場合とがあります。

 陽である身体外に邪が生じます原因は、風雨寒暑などの外因によります。

 また陰である身体内部から邪が生じますのは、飲食や起居、よく怒るなど感情の不調和などの内因に依るのであります。

 

 帝が申された。

 風雨はどのように人を傷るのであろうか。

 岐伯が申された。

 風雨が人を傷る際は、まずその邪は皮膚に舍ります。そこから孫絡に伝入致しまして、孫絡がそれを防いで一杯になりますとさらに絡脉に伝入致します。

 さらに絡脉でも防ぎきれなければ、そこから大きな経脉に入ってしまうことになります。

 また血気と邪が一緒になって、身体の比較的浅い分肉腠理に舍り停滞しますと、内外は通じなくなりますのでその脉もまた、堅く大きくなります。このような状態を実と申します。

 これを体表にみますと、実の部分は抑えると堅く充満しているかのようであり、強く押すと痛みます。

 

 帝が申された。

 寒湿はどのように人を傷るのであろうか。

 岐伯が申された。

 寒湿が人に中りますと、表面の皮膚の腠理が弛んで収まりません。

 さらに少し深い肌肉は堅く緊張しますので、栄血の流れは渋り、栄衛の調和が失われて衛気は散ってしまいます。このような状態になりましたものを虚と申します。

 虚しますと、皮膚は弛んで気も不足いたします。

 そこでこれを按じますと肌肉の栄血が流れ、衛気も張り出してきますので温かくなって参りまして、気持ちよく感じ痛みもなくなるのであります。

 

 帝が申された。

 よく理解できた。では陰はどのようにして実を生じるのであろうか。

 岐伯が申された。

 喜怒に節度というものがありませんと、陰気は逆流して上行いたします。

 そうしますと下に陰気が不足いたします。そうしますと陰気の支えを無くした陽気もまた上に走ります。このような状態を実と申します。

 

 帝が申された。

 では陰はどのようにして虚を生じるのであろうか。

 岐伯が申された。

 人が喜びますと気は下り、悲しみますと気は消え、消散いたしますと脈は空虚になります。

 このような時に、冷たいものを飲み食いいたしますと、体内の寒気は留まり充満いたします。そうなりますと血の循りも渋り、気は血を離れて去ってしまいます。このようにして虚となるのであります。

 

 帝がもうされた。

 古経では、陽が虚すると外が寒し、陰が虚すると内が熱する。また陽が盛んであれば外が熱し、陰が盛んであれば内が寒すると記載されている。

 余はすでにこれらのことを聞いているが、その道理が理解できていないのであるが。

 岐伯が申された。

 体表である陽は、その気を上焦に受けて皮膚や分肉の間を温めます。今寒気が外にありますと、上焦は陽を受けることができず不通となってしまいます。

 上焦が通じませんと、寒気は外に留まることになりますので、寒慄するようになるのであります。

 

 帝が申された。

 陰が虚すると内が熱するのは、どのようなわけであろうか。

 岐伯が申された。

 労働してだらりとなるほど疲れてしまいますと、肉体も気も衰少いたしますので、飲食も進まず穀気も充実させることができません。

 そうしますと上焦の気は行らず、下脘も通じなくなり、胃の気は動くことができずに熱に変じます。

 その胃の熱は胸中を薫ずるようになります。このようなわけで内の熱が生じるのであります。

 

 帝が申された。

 陽が盛んであると外に熱を生じるというのは、どのようなわけであろうか。

 岐伯が申された。

 上焦が通利いたしませんと、皮膚が緻密となりまして腠理が閉塞してしまいます。

 そうしますと玄府であります汗孔が通じませんので、易は外に発泄することができませんので、外が熱するのであります。

 

 帝が申された。

 陰が盛んであれば内に寒を生じるわけはどうなのであろうか。

 岐伯が申された。

 精神的な動揺などにより、手足が冷えてくる厥逆となりますと、寒気が下から胸中に侵入して居座りますと、陽気は退いて拮抗いたします。

 そうしますと血も流れ渋り、脈も盛大でありながら渋ります。これを中寒と申しまして、内に寒を生じる理由であります。

 

 帝が申された。

 邪気が人体を侵すと、陰と陽が併合し血気も併合して、病が形成される。この場合、刺法はどういたすのであろうか。

 岐伯が申された。

 このような場合は、五臓六腑の大絡を取って治療いたします。

 営は血に属し、衛は気に属しますので、それぞれ陰陽・気血・営衛を判別して治療いたします。

 さらに人体に刺鍼いたします時は、四時陰陽の気の消長を考慮するのであります。

 

 帝が申された。

 血気が併合して形成された病は、陰陽どちらかに傾いていると思うが、補瀉はどのようにいたすのであろうか。

 岐伯が申された。

 実を瀉しますには、吸気によって気が盛んになった時に鍼を刺入し、鍼孔は邪気が出ていきやすいように、門を開くようにいたします。

 そうしまして、呼気に合わせて抜鍼しますと、精気は傷れずしかも邪気は排出されます。そして鍼孔は閉じないようにいたします。

 邪気を疾く排出させるために、鍼孔を大きく揺らして邪気の出口の通りを良くいたします。これを大瀉と申しまして、必ずぴったりと呼吸に合わせ鍼孔を開いてやりますと、大邪といえども屈するのであります。

 

 帝が申された。

 では、虚を補うにはどのようにするのであろうか。

 岐伯が申された。

 鍼を手にしてすぐに刺鍼するのではなく、まずは気持ちを落ち着けて補する意図を明確にいたします。そして呼吸のタイミングを候い、呼気時に刺入し、呼気に従って鍼を進めます。

 そうしますと、鍼と肌肉に隙間がなくなりますので、精が漏れ出ることがありません。そしてまさに実してきましたら、吸気に合わせて素早く抜鍼し、鍼孔に集まった熱が元に帰らないようにいたします。そしてその鍼孔をしっかりと指で押さえて閉じますと、邪気は散って精気は存じます。

 さらに時間をかけて気が動くのを候いますと、手元の気は失われず、遠くの気が手元に集まって参ります。これを追うと申しまして、補の方法であります。

 

 帝が申された。

 そちは虚実に十種類があり、五臓に生じると話されたが、五臓には五脉しかない。

 ところが十二経脈は、すべて病を生じるはずであるのに、今そちは五臓の虚実のみを話された。

 十二経脈は、皆三百六十五節を絡い、節に病があれば必ず経脈に影響するはずである。

 経脈の病にも皆虚実があるはずだが、何をどのように解釈すれば五臓の虚実と合致するのであろうか。

 岐伯が申された。

 五臓には、もとより六腑がありまして相表裏しております。経絡・支節にもそれぞれ虚実を生じまして、その病むところに従ってこれを調えるのでございます。

 病が脈にありますと、血を調えます。

 病が血にありますと、絡を調えます。

 病が気にありますと、衛を調えます。

 病が肉にありますと、分肉を調えます。

 病が筋にありますと、筋を調えます。

 病が骨にありますと、骨を調えます。

 燔針(ばんしん)を用いる場合は、筋が引き攣れている時でありまして、劫刺(ごうし)のことであります。

 病が骨にあります場合は、焼鍼を用いたり膏薬を用いて温めます。

 痛む部位がよくわからない病には、陰陽の蹻脉を取穴いたします。

 身体に痛みがあり、九候に病がないものには、繆刺を行います。

 痛む部位が左にあり、右の脉に病があると判断したものには、巨刺を行います。

 このように、必ず細心の注意をもって九候を察して治療いたしますれば、鍼道は自ずと備わって参るのであります。

 

 原文と読み下し

 

 黄帝問曰.余聞刺法言.有餘寫之.不足補之.何謂有餘.何謂不足.

岐伯對曰.有餘有五.不足亦有五.帝欲何問.

黄帝問うて曰く。余は聞くに刺法の言に、有餘はこれを寫し、不足はこれを補うと。何を有餘と謂い、何を不足と謂うか。

岐伯對して曰く。有餘に五有り、不足も亦た五有り。帝、何を問わんと欲するや。

 

帝曰.願盡聞之.

岐伯曰.

神有餘有不足.

氣有餘有不足.

血有餘有不足.

形有餘有不足.

志有餘有不足.凡此十者.其氣不等也.

帝曰く。願わくば盡くこれを聞かん。

岐伯曰く。

神に餘り有り不足有り。

氣に餘り有り不足有り。

血に餘り有り不足有り。

形に餘り有り不足有り。

志に餘り有り不足有り。凡そ此の十なるは、其の氣等しからざるなり。

 

帝曰.

人有精氣津液.四支九竅.五藏十六部.三百六十五節.乃生百病.百病之生.皆有虚實.

今夫子乃言.有餘有五.不足亦有五.何以生之乎.

帝曰く。

人に精氣津液、四支九竅、五藏十六部、三百六十五節有りて、乃ち百病生ず。百病の生ずるに、皆虚實有り。

今夫子乃ち、有餘に五有り、不足も亦た五有りと言う。何を以てこれを生じるや。

 

岐伯曰.皆生於五藏也.

心藏神.肺藏氣.肝藏血.脾藏肉.腎藏志.而此成形.

志意通.内連骨髓.而成身形五藏.

五藏之道.皆出於經隧.以行血氣.血氣不和.百病乃變化而生.是故守經隧焉.

岐伯曰く。皆五藏に生じるなり。

夫れ

心は神を藏し、肺は氣を藏し、肝は血を藏し、脾は肉を藏し、腎は志を藏し、而して此れ形を成す。

志意通じ、内は骨髓に連なりて、身の形、五藏成るなり。

五藏の道は、皆經隧に出で、以て血氣を行らす。血氣和せざれば、百病は乃ち變化して生ず。是れ故に經隧を守るなり。

 

帝曰.神有餘不足何如.

岐伯曰.

神有餘則笑不休.

神不足則悲.

血氣未并.五藏安定.邪客於形.洒淅起於毫毛.未入於經絡也.故命曰神之微.

帝曰く。神の有餘不足とは何んの如きか。

岐伯曰く。

神有餘なれば則ち笑いて休まず。

神不足なれば則ち悲す。

血氣未だ并せず、五藏は安定し、邪形に客せば、洒淅として毫毛起きるも、未だ經絡に入らざるなり。故に命じて曰く神の微と。

 

帝曰.補寫奈何.

岐伯曰.

神有餘.則寫其小絡之血出血.勿之深斥.無中其大經.神氣乃平.

神不足者.視其虚絡.按而致之.刺而利之.無出其血.無泄其氣.以通其經.神氣乃平.

帝曰く。補寫はいかん。

岐伯曰く。

神有餘なれば、則ち其の小絡の血を寫し血を出だす。これを深く斥(せき)すること勿れ。其の大經に中ること無くば、神氣は乃ち平かなり。

神不足なるは、其の虚絡を視、按じてこれを致し、刺してこれを利し、其の血を出すこと無く、其の氣を泄すこと無く、以て其の經を通ずれば、神氣は乃ち平かなり。

 

帝曰.刺微奈何.

岐伯曰.按摩勿釋.著鍼勿斥.移氣於不足.神氣乃得復.

帝曰く。微を刺すこといかん。

岐伯曰く。按摩して釋(す)てること勿れ。鍼を著けて斥すること勿れ。不足に氣を移さば、神氣は乃ち復するを得ん。

 

帝曰善.有餘不足奈何.

岐伯曰.

氣有餘則喘咳上氣.

不足則息利少氣.

血氣未并.五藏安定.皮膚微病.命曰白氣微泄.

帝曰く。善し。有餘不足とはいかん。

岐伯曰く。

氣有餘なれば則ち喘咳して上氣す。

不足なれば則ち息利して少氣たり。

血氣未だ并せず、五藏安定なれば、皮膚微(かす)かに病む。命じて白氣微泄と曰く。

 

帝曰.補寫奈何.

岐伯曰.

氣有餘則寫其經隧.無傷其經.無出其血.無泄其氣.

不足則補其經隧.無出其氣.

帝曰く。補寫はいかん。

岐伯曰く。

氣有餘なれば則ち其の經隧を寫す。其の經を傷ること無く、其の血を出すこと無く、其の気を泄すこと無し。

不足なれば則ち其の經隧を補う。其の氣を出すこと無し。

※經隧・・・経絡に随って深いところに流れている通路

 

帝曰.刺微奈何.

岐伯曰.按摩勿釋.出鍼視之.曰我將深之.適人必革.精氣自伏.邪氣散亂.無所休息.氣泄腠理.眞氣乃相得.

帝曰く。微を刺すこといかん。

岐伯曰く。按摩して釋てること勿れ。鍼を出してこれを視せ、我將にこれを深くせんと曰く。人適(かな)いて必ず革(あらたま)りて、精氣自ずと伏し、邪氣散亂し、休息する所無く、氣腠理に泄れ、真気乃ち相得る。

 

帝曰善.血有餘不足奈何.

岐伯曰.

血有餘則怒.

不足則恐.

血氣未并.五藏安定.孫絡水溢.則經有留血.

帝曰く。善し。血の有餘不足はいかん。

岐伯曰く。

血有餘なれば則ち怒す。

不足なれば則ち恐る。

血氣未だ并せず、五藏安定し、孫絡水溢すれば、則ち經に留血有り。

 

帝曰.補寫奈何.

岐伯曰.

血有餘則寫其盛經.出其血.

不足則視其虚經.内鍼其脉中.久留而視.

脉大.疾出其鍼.無令血泄.

帝曰く。補寫はいかん。

岐伯曰く。

血有餘なれば則ち其の盛んなる經を寫す。その血を出す。

不足なれば則ちその虚する經を視て、鍼を其の脉中に内れ、久しく留めて視、脉大なれば、疾く其の鍼を出し、血をして泄せしむること無し。

 

帝曰.刺留血奈何.

岐伯曰.視其血絡.刺出其血.無令惡血得入於經.以成其疾.

帝曰く。留血を刺すこといかん。

岐伯曰く。其の血絡を視、刺して其の血を出し、悪血をして經に入る得て、以て其の疾を成さしむることなかれ。。

 

帝曰善.形有餘不足奈何.

岐伯曰.

形有餘則腹脹涇溲不利.

不足則四支不用.

血氣未并.五藏安定.肌肉蠕動.命曰微風.

帝曰く、善し。形の有餘不足いかん。

岐伯曰く。

形有餘なれば則ち腹脹し涇溲して利せず。

不足なれば則ち四支用いず。

血氣未だ并せず、五藏安定なり。肌肉蠕動す。命じて微風と曰く。

 

帝曰.補寫奈何.

岐伯曰.

形有餘則寫其陽經.

不足則補其陽絡.

帝曰く。補寫はいかん。

岐伯曰く。

形有餘なれば則ち其の陽經を寫す。

不足なれば則ち其の陽絡を補す。

 

帝曰.刺微奈何.

岐伯曰.取分肉間.無中其經.無傷其絡.衞氣得復.邪氣乃索.

帝曰く。微を刺すこといかん。

岐伯曰く。分肉の間を取り、其の經に中ること無く、其の絡を傷ること無く、衛氣復するを得れば、邪氣は乃ち索(ち)る。

 

帝曰善.志有餘不足奈何.

岐伯曰.

志有餘則腹脹飧泄.

不足則厥.

血氣未并.五藏安定.骨節有動.

帝曰く、善し。志の有餘不足はいかん。

岐伯曰く。

志有餘なれば則ち腹脹飧泄す。

不足なれば則ち厥す。

血氣未だ并せず、五藏安定なれば、骨節は動有り。

 

 

帝曰.補寫奈何.

岐伯曰.

志有餘則寫然筋血者.

不足則補其復溜.

帝曰く。補寫はいかん。

岐伯曰く。

志有餘なれば則ち然筋の血を寫す。

不足なれば則ち其の復溜を補す。

然筋…新校正にならい、然谷に改める。

 

帝曰.刺未并奈何.

岐伯曰.即取之.無中其經.邪所乃能立虚.

帝曰く。未だ并せずを刺すこといかん。

岐伯曰く。即ちこれを取り、其の經に中たること無ければ、邪の所乃ち能く立ちどころに虚す。

 

帝曰善.余已聞虚實之形.不知其何以生.

岐伯曰.

氣血以并.陰陽相傾.氣亂於衞.血逆於經.血氣離居.一實一虚.

血并於陰.氣并於陽.故爲驚狂.

血并於陽.氣并於陰.乃爲炅中.

血并於上.氣并於下.心煩惋善怒.

血并於下.氣并於上.亂而喜忘.

帝曰く、善し。余は已に虚實の形を聞けり。其の何を以て生ずるかを知らず。

岐伯曰く。

氣血以て并し、陰陽相い傾き、氣は衞に亂れ、血は經に逆すれば、血氣離居して、一實一虚す。

血陰に并し、氣陽に并す。故に驚狂を爲す。

血陽に并し、氣陰に并すれば、乃ち炅中(けいちゅう)を爲す。

血上に并し、氣下に并すれば、心煩惋(えん)して善く怒す。

血下に并し、氣上に并すれば、亂れて喜(よ)く忘す。

 

帝曰.血并於陰.氣并於陽.如是血氣離居.何者爲實.何者爲虚.

岐伯曰.

血氣者喜温而惡寒.

寒則泣不能流.

温則消而去之.

是故氣之所并爲血虚.血之所并爲氣虚.

帝曰く、血陰に并し、氣陽に并す。是の如く血氣離居するは、何をば實と爲し、何をば虚と爲や。

岐伯曰く。

血氣なるは、温を喜びて寒を惡む。

寒なれば則ち泣して流れること能わず。

温なれば則ち消して之を去る。

是れ故に氣の并する所は血虚を爲し、血の并する所は氣虚を爲す。

 

帝曰.

人之所有者.血與氣耳.今夫子乃言.血并爲虚.氣并爲虚.是無實乎.

岐伯曰.

有者爲實.無者爲虚.故氣并則無血.血并則無氣.今血與氣相失.故爲虚焉.

絡之與孫脉.倶輸於經.血與氣并.則爲實焉.

血之與氣.并走於上.則爲大厥.厥則暴死.氣復反則生.不反則死.

帝曰く。

人の有するところ、血と氣のみ。今夫子乃ち言う。血并して虚を爲し、氣并して虚を爲すと。是て實無きや。

岐伯曰く。

有る者は実と爲し、無き者は虚と爲す。故に氣并すれば、則ち血無く、血并すれば則ち氣無し。今血と氣相い失す。故に虚を爲すなり。

これ絡と孫脉は、倶に經に輸す。血と氣と并すれば則ち實を爲すなり。

これ血と氣、并して上に走れば、則ち大厥を爲す。厥すれば則ち暴死す。氣復(ま)た反(かえ)れば、則ち生き、反らざれば、則ち死す。

 

帝曰.實者何道從來.虚者何道從去.虚實之要.願聞其故.

岐伯曰.

夫陰與陽.皆有兪會.陽注於陰.陰滿之外.陰陽勻平.以充其形.九候若一.命曰平人.

夫邪之生也.或生於陰.或生於陽.其生於陽者.得之風雨寒暑.

其生於陰者.得之飮食居處.陰陽喜怒.

帝曰く。實なるは何れの道より来たり、虚なるは何れの道より去るや。虚實の要、願わくば其の故を聞かん。

岐伯曰く。

夫て陰と陽、皆兪會有り。陽は陰に注ぎ、陰滿ちて外に之(ゆ)けば、陰陽勻平にして、以て其の形を充し、九候は一の若し。命じて平人と曰く。

夫れ邪の生じるや、或いは陰に生じ、或いは陽に生ず。其の陽に生ずるは、これを風雨寒暑に得る。

其の陰に生じるは、これを飲食居處、陰陽喜怒に得る。

 

帝曰.風雨之傷人奈何.

岐伯曰.

風雨之傷人也.先客於皮膚.傳入於孫脉.孫脉滿.則傳入於絡脉.絡脉滿.則輸於大經脉.血氣與邪并.客於分腠之間.其脉堅大.故曰實.

實者外堅充滿.不可按之.按之則痛.

帝曰く。風雨の人を傷ることいかん。

岐伯曰く。

風雨の人を傷るや、先ず皮膚に客し、傳えて孫絡に入る。孫脉滿つれば、則ち傳えて絡脉に入る。絡脉滿つれば、則ち大經脉に輸し血氣と邪并して分腠の間に客すれば、其の脉堅大なり。故に實と曰く。實なるは外堅く充滿して、これを按之ずべからず。これを按ずれば則ち痛む。

帝曰.寒濕之傷人奈何.

岐伯曰.

寒濕之中人也.皮膚不收.肌肉堅緊.榮血泣.衞氣去.故曰虚.

虚者聶辟氣不足.按之則氣足以温之.故快然而不痛.

帝曰く。寒濕の人を傷ることいかん。

岐伯曰く。

寒濕の人に中るや、皮膚收せず、肌肉堅緊し、榮血泣(しぶ)りて、衞氣去る。故に虚と曰く。

虚なる者は聶辟(じょうへき)し氣足らず、これを按ずれば則ち氣足りて以てこれを温にす。故に快然として痛まず。

 

帝曰善.陰之生實奈何.

岐伯曰.喜怒不節.則陰氣上逆.上逆則下虚.下虚則陽氣走之.故曰實矣.

帝曰く、善し。陰の實を生ずることいかん。

岐伯曰く。喜怒節ならざれば則ち陰氣上に逆す。上に逆すれれば則ち下は虚す。下虚すれば則ち陽氣これに走る。故に實と曰く。

 

帝曰.陰之生虚奈何.

岐伯曰.喜則氣下.悲則氣消.消則脉虚空.因寒飮食.寒氣熏滿.則血泣氣去.故曰虚矣.

帝曰く。陰の虚を生ずるはいかん。

岐伯曰く。喜べば則ち氣下り、悲しめば則ち氣消す。消すれば則ち脉虚して空し。寒の飮食に因りて、寒氣熏滿すれば則ち血泣りて氣去る。故に虚と曰く。

帝曰.

經言.陽虚則外寒.陰虚則内熱.陽盛則外熱.陰盛則内寒.

余已聞之矣.不知其所由然也.

岐伯曰.陽受氣於上焦.以温皮膚分肉之間.今寒氣在外.則上焦不通.上焦不通.則寒氣獨留於外.故寒慄.

帝曰く。

經に言う。陽虚すれば則ち外寒し、陰虚すれば則ち内熱す。陽盛んなれば則ち外熱し、陰盛んなれば則ち内寒す。

余は已にこれを聞けり。其の由りて然る所を知らざるなり。

岐伯曰く。陽は氣を上焦に受け、以て皮膚分肉の間を温むる。今寒氣外に在れば則ち上焦通ぜず。上焦通ぜざれば則ち寒氣獨り外に留る。故に寒慄するなり。

 

帝曰.陰虚生内熱奈何.

岐伯曰.有所勞倦.形氣衰少.穀氣不盛.上焦不行.下脘不通.胃氣熱.熱氣熏胸中.故内熱.

帝曰く。陰虚すれば内熱生ずとはいかん。

岐伯曰く。勞倦する所有り、形氣衰少し、穀氣盛んならず、上焦行らず、下脘通ぜず、胃氣熱し、熱氣胸中を熏ず。故に内熱す。

 

帝曰.陽盛生外熱奈何.

岐伯曰.上焦不通利.則皮膚緻密.腠理閉塞.玄府不通.衞氣不得泄越.故外熱.

帝曰く。陽盛んなれば外熱すとはいかん。

岐伯曰く。上焦通利せざれば則ち皮膚緻密し、腠理閉塞して、玄府通ぜず。衞氣泄越するを得ず。故に外熱す。

 

帝曰.陰盛生内寒奈何.

岐伯曰.厥氣上逆.寒氣積於胸中而不寫.不寫則温氣去.寒獨留.則血凝泣.凝則脉不通.其脉盛大以濇.故中寒.

帝曰く。陰盛んなれば内寒を生ずとはいかん。

岐伯曰く。厥氣上逆し、寒氣胸中に積みて寫さず。寫さざれば則ち温氣去り、寒獨り留まれば則ち血凝泣す。凝すれば則ち脉通ぜず。其の脉盛大にして以て濇(しぶ)る。故に中寒するなり。

 

帝曰.陰與陽并.血氣以并.病形以成.刺之奈何.

岐伯曰.刺此者.取之經隧.取血於營.取氣於衞.用形哉.因四時多少高下.

帝曰く。陰と陽并し、血氣以て并し、病形以て成る。これを刺すこといかん。

岐伯曰く。此れを刺すは、これを經隧に取る。血を營にとり、氣を衞に取る。形を用うるや、四時に因りて多少高下す。

※經隧 五臓六腑の大絡 <霊枢・玉版篇>

 

帝曰.血氣以并.病形以成.陰陽相傾.補寫奈何.

岐伯曰.

寫實者.氣盛乃内鍼.鍼與氣倶内.以開其門.如利其戸.

鍼與氣倶出.精氣不傷.邪氣乃下.外門不閉.以出其疾.搖大其道.如利其路.是謂大寫.必切而出.大氣乃屈.

帝曰く。血氣以て并し、病形以て成る。陰陽相い傾く。補寫はいかん。

岐伯曰く。

實を寫するは、氣盛んなれば乃ち鍼を内れ、鍼と氣倶に内れ、以て其の門を開くこと、其の戸を利するが如くす。

鍼と氣倶に出で、精氣傷れず、邪氣は乃ち下る。外門は閉じず、以て其の疾を出(いだ)す。搖大其の道大いに揺らすこと、其の路を利するが如くす。是れを大寫と謂う。必ず切して出せば、大氣は乃ち屈す。

 

 

帝曰.補虚奈何.

岐伯曰.

持鍼勿置.以定其意.候呼内鍼.氣出鍼入.

鍼空四塞.精無從去.方實而疾出鍼.氣入鍼出.

熱不得還.閉塞其門.邪氣布散.精氣乃得存.

動氣候時.近氣不失.遠氣乃來.是謂追之.

帝曰く。虚を補するはいかん。

岐伯曰く。

鍼を持ちて置くこと勿れ。以て其の意を定む。呼を候いて鍼を内れ、氣出でて鍼入れば、

鍼空は四塞し、精は從いて去ること無し。方(まさ)に實して疾く鍼を出し、氣入りて鍼出だし、

熱還るを得ず、其の門は閉塞し、邪氣は布散し、精氣は乃ち存するを得る。

氣を動するに時を候い、近氣は失せず、遠氣は乃ち來たる。是れこれを追うと謂う。

 

帝曰.

夫子言虚實者有十.生於五藏.五藏五脉耳.夫十二經脉.皆生其病.今夫子獨言五藏.

夫十二經脉者.皆絡三百六十五節.節有病.必被經脉.經脉之病.皆有虚實.何以合之.

帝曰く。

夫子の虚實に十有りて、五藏に生ずと言えり。五藏は五脉のみ。夫れ十二經脉は、皆其の病を生す。今夫子獨り五藏を言えり。

夫れ十二經脉は、皆三百六十五節を絡う。節に病有れば、必ず經脉に被る。經脉の病、皆虚實有り。何を以てこれを合するや。

 

岐伯曰.

五藏者.故得六府.與爲表裏.經絡支節.各生虚實.其病所居.隨而調之.

病在脉.調之血.

病在血.調之絡.

病在氣.調之衞.

病在肉.調之分肉.

病在筋.調之筋.

病在骨.調之骨.

燔鍼劫刺其下.及與急者.

病在骨.焠鍼藥熨.

病不知所痛.兩蹻爲上.

身形有痛.九候莫病.則繆刺之.

痛在於左.而右脉病者.巨刺之.

必謹察其九候.鍼道備矣.

岐伯曰く。

五藏は、故(もと)より六府を得て、ともに表裏を爲す。經絡支節は、各おの虚實を生ず。其の病の居る所に、隨いてこれを調う。

病脉に在れば、これを血に調う。

病血に在れば、これを絡に調う。

病氣に在れば、これを衞に調う。

病肉に在れば、これを分肉に調う。

病筋に在れば、これを筋に調う。

病骨に在れば、これを骨に調う。

燔鍼は其の下、及び急なるにともに劫刺す。

病に骨に在れば、焠鍼(さいしん)藥熨(やくうつ)す。

病痛所を知らざれば、兩蹻を上と爲す。

身形に痛み有りて、九候に病莫ければ、則ちこれを繆刺(びゅうし)す。

痛左に在りて、右脉病むは、これを巨刺す。

必ず謹しみて其の九候を察し、鍼道備わるなり。

 

 

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水熱穴論篇第六十一.

  本篇は、骨空論で記載されている水兪五十七穴の詳細が表題となっているが、腎と肺、腎と胃の生理関係のほか刺法にまで論及されている。


 「腎は胃の関」と「四季の刺法」に関しては、気の動きを筆者なりに臨床に合致するように意訳を試みた。

 諸氏、ご意見を賜れば幸いです。

 

         原 文 意 訳

 

 黄帝が問うて申された。

 少陰が腎を主り水を主るというのは、どのような根拠から申しておるのか。

 

 岐伯がそれに対して申された。

 腎は至陰でありまして、最も低位にございます。低いところでは、水が盛んになるものであります。

 肺は太陰でありまして、少陰は冬の脈であります。冬から次第に陽気が益し、地気が天に昇りますように、少陰の気も脈を通じて肺に昇り注いでおります。

 従いまして肺腎の関係では、腎が本であり肺が末となります。この肺腎は、水が聚るところであります。

 

 帝が申された。

 腎には、なぜよく水が集まって病を生じるのか。

 

 岐伯が申された。

 腎と申しますは、胃の関のような働きをいたします。

 もし関門の調節が効かなくなり、閉じたままとなりますとと水が上に溢れ、開いたままとなりますと水が低位の腎に集まりますので、色々な水の病を生じるのであります。

 ですから上下の皮膚に水が溢れ停滞して動かなくなりますと、浮腫を生じるのであります。

 

 帝が申された。

 諸々の水に起因する病は、すべて腎にその責があるのか。

 

 岐伯が申された。

 腎と申しますは、牝蔵(ひんぞう)と称しまして陰の臓であります。天地に例えますと、大地は腎に相当し、大地から立ち上る蒸気を地気と致しますと、腎の陽気はこの蒸気に相当します。

 この立ち上る蒸気は、大地にあっては水でありますので、腎は大地であり最も低いところでありますので至陰と申し上げているのであります。

 もし人が気合を入れて激しい労働を行いますと、腎は旺じて蒸気もまた激しく立ち昇り、肺が主る皮毛から汗となって出ていきます。この様を腎から汗が出ると申します。

 そして毛穴が開いて汗が出ている時、たまたま寒冷の風などに出会いますと、毛穴が閉じてしまいます。

 汗は腎の熱気で出ようとしているので内裏に入ることができません。かといって毛穴は閉じてしまっているので皮膚の外に出ることもできません。

 そうなりますと、汗は皮毛付近に水となって停滞するようになり、腎の熱気にあおられて出口を求めて皮膚の下を循るようになり、ついには浮腫となってしまうのであります。

 ですから、この類の病の根には、腎が関係しているのであります。このような機序で生じます浮腫を、風水と称しております。

 

 帝が申された。

 水兪五十七処なるは、何を主るのか。

 

 岐伯が申された。

 腎兪五十七穴は、陰気の聚り積もるところであります。ですから水の出入りする所とも言えます。

 尻の上に督脈と足太陽の左右で五行ありまして、各行の五穴が腎兪に相当いたします。

 従いまして、水病の下に現れるものは、下半身の浮腫と共にお腹が大きく膨らんでまいります。また、上に現れるものは、喘ぎを生じて仰向けに寝ることが出来なくなります。これは標本共に病んでいる状態であります。

 故に肺は水のために喘ぎを生じ、腎は水腫を生じ、肺気は水のために塞がって降りることが出来ませんので、臥することも出来なくなるのであります。

 肺と腎は上下に分かれ、水はその間を行き交いますので、何かありますと水が溜まりやすくなるところなのであります。

 また伏菟の上に各二行ありまして、その行ごとに五穴ありますのは、腎気の大通りで足の三陰の脚で交わり結ぶところであります。

 踝の上に各一行ありまして、その行ごとに六穴ありますのは、これは腎気の下行する所でありまして、名づけて太衝と申します。

 これら五十七穴は、すべて臓の陰絡で、水が溜まりやすいところであります。

 

 帝が申された。

 春には絡脉の分肉を取るとはどういうことなのか。

 

 岐伯が申された。

 春という時節は、木気が生じ始めこれが主気となります。人体においても、木性の肝気が旺じ始めます。肝気は、その動きは急でして風のように疾(はや)いものです。

 春季においては、経脉はまだ深部を流注しておりまして、体表の気もまたまだ少ないのですが、邪気もまた侵入したとしましても深部の気が充実しているので、深く入ることができないのであります。従いまして、取穴は邪気が留まる絡脉の分肉の間を取るのであります。

 

 帝が申された。

 夏には盛経の分腠を取るとはどういうことなのか。

 

 岐伯が申された。

 夏という時節は、火気が生じ始めこれが主気となります。身体においても火性の心気が旺じ始めます。脈は盛んとなり体表に向かい散じますので、脈は痩せ気もまた衰えがちになります。

 ところが夏季は自然の陽気を受け、人体もまた陽気が満ち溢れます。そして自然界からの陽気は熱となって分腠を蒸すかのようであり、その熱は内部の経にまで影響が及びます。従いまして邪気もまた皮膚の浅いところに停滞しているものです。

 このような訳で夏は盛んになっている陽経の分腠に浅く取穴を致します。

 

 帝が申された。

 秋には、経・兪を取るとはどういうことか。

 

 岐伯が申された。

 秋という時節は、金気が生じ始めこれが主気となります。身体においても金性の肺気が旺じ始めます。肺はまさに収殺し五行の相尅関係では金は火に勝ちますので、陽気は体幹部に近い合穴に結集いたします。

 すると相対的に陰気が盛んになり始めますので、湿気が身体に影響し始めます。しかしながらまだ陽気は衰え切らず、陰気もまた盛んになりきらないので、邪気もまた深く侵入することができません。

 従いまして体幹から遠位の兪穴で邪気を寫し、近位の合穴で陽邪を寫すのであります。さらに秋が深まり陽気が衰えてきますと、合穴を取って陽気を補うのであります。

 

 帝が申された。

 冬に井・滎を取るとはどういうことか。

 

 岐伯が申された。

 冬の時節は、水気が生じ始めこれが主気となります。身体においても水性の腎気が旺じ始めます。腎は陽気を保持するために深く閉蔵いたします。

 そうしますと体表や四肢末端の陽気は衰少いたしますので、相対的に陰気が堅く盛んになってまいります。さらに足太陽の脈気も隠れるかのように沈んでまいります。

 陽気が下りますと陰気が上がりますので、井穴で陰気の上逆を防ぎ、滎穴でさらに陽気を補って陰陽の平衡を図るのであります。

 あらかじめ冬にこのような処置をしておきますと、盛んになった陰気に閉じ込められた陽気が、春に一気に噴き出すかのような鼻血を防ぐことができるのであります。

 

 帝が申された。 

 そちは熱病を治す五十九兪について申した。

 しかし余はその意味するところを論じるには、まだ兪穴の部位がはっきりと区別できない。願わくばその部位と穴性を聞きたいのであるが。

 

 岐伯が申された。

 頭の上に五行、行ごとの五穴は、諸々の陽経の熱逆を泄すことができます。

 左右の大杼、膺兪、缺盆、背兪の八穴は、胸中の熱を寫すことができます。

 左右の氣街、三里、巨虚上・下廉の八穴は、胃中の熱を寫すことができます。

 左右の雲門、髃骨(肩髃)、委中、髓空(懸鐘or陽兪?)の八穴は、四肢の熱を寫すことができます。

 左右の五臓兪の傍らの五穴。この十穴は五臓の熱を寫すことができます。

 これら五十九穴は、熱が左右に行き交うところであります。

 

 帝が申された。

 人が寒に傷れ伝変すると熱となるのは、どういうことか。

 

 岐伯が申された。

 寒盛んとなり極まりますと鬱して転じ、熱を生じるという陰陽の道理でからであります。

 

        原文と読み下し

 

黄帝問曰.少陰何以主腎.腎何以主水.

岐伯對曰.

腎者至陰也.至陰者盛水也.

肺者太陰也.少陰者冬脉也.

故其本在腎.其末在肺.皆積水也.

黄帝問うて曰く。少陰は何を以て腎を主り、腎は何を以て水を主るや。

岐伯對して曰く。

腎なるは至陰なり。至陰なる者は水盛んなり。

肺なる者は太陰なり。少陰なる者は冬脉なり。

故に其の本は腎に在り。其の末は肺に在り。皆積水なり。

 

帝曰.腎何以能聚水而生病.

岐伯曰.

腎者胃之關也.關門不利.故聚水而從其類也.

上下溢於皮膚.故爲胕腫.胕腫者.聚水而生病也.

帝曰く。腎は何を以て能く水を聚めて病を生じるや。

岐伯曰く。

腎なる者は、胃の關なり。關門利せず。故に水を聚め其の類に從うなり。

上下の皮膚に溢る。故に胕腫を爲す。胕腫なる者は、水を聚めて病を生じるなり。

帝曰.諸水皆生於腎乎.

岐伯曰.

腎者牝藏也.地氣上者屬於腎.而生水液也.故曰至陰.

勇而勞甚.則腎汗出.腎汗出逢於風.内不得入於藏府.外不得越於皮膚.客於玄府.行於皮裏.傳爲胕腫.本之於腎.名曰風水.

所謂玄府者.汗空也.

帝曰く。諸水は皆腎に生ずるや。

岐伯曰く。

腎なる者は牝藏(ひんぞう)なり。地氣の上る者は腎に屬し、水液を生じるなり。故に至陰と曰く。

勇みて勞甚だしければ、則ち腎汗出ず。腎汗出でて風に逢えば、内は藏府に入るを得ず、外は皮膚を越するをえず。玄府に客し、皮裏を行り、傳えて胕腫を爲す。これ腎に本づく。名づけて風水と曰く。

所謂玄府なる者は、汗空なり。

 

帝曰.水兪五十七處者.是何主也.

岐伯曰.

腎兪五十七穴.積陰之所聚也.水所從出入也.

尻上五行.行五者.此腎兪.故水病下爲胕腫大腹.上爲喘呼.不得臥者.標本倶病.故肺爲喘呼.腎爲水腫.肺爲逆不得臥.分爲相輸.倶受者.水氣之所留也.

伏菟上各二行.行五者.此腎之街也.三陰之所交結於脚也.

踝上各一行.行六者.此腎脉之下行也.名曰太衝.

凡五十七穴者.皆藏之陰絡.水之所客也.

帝曰く。水兪五十七處なる者は、是れ何を主るや。

岐伯曰く。

腎兪五十七穴、積陰の聚る所なり。水の從りて出入する所なり。

尻上五行、行に五なる者は、此れ腎兪なり。故に水病の下は胕腫大腹を爲し、上は喘呼を爲す。臥するを得ざる者は、標本倶に病む。故に肺は喘呼を爲し、腎は水腫を爲す。肺は逆を爲して臥するを得ざるなり。分かれて相輸を爲し、倶に受ける者は、水氣の留まる所なり。

伏菟の上に各二行。行に五なる者は、此れ腎の街なり。三陰の脚に交結するところなり。

踝の上に各一行。行に六なる者は、此れ腎脉の下行なり。名づけて太衝と曰く。

凡そ五十七穴なる者は、皆藏の陰絡、水の客する所なり。

 

帝曰.春取絡脉分肉.何也.

岐伯曰.春者木始治.肝氣始生.肝氣急.其風疾.經脉常深.其氣少.不能深入.故取絡脉分肉間.

帝曰く。春は絡脉分肉に取るとは、何なるや。

岐伯曰く。春なるは、木の治め始め、肝氣は生じ始める。肝氣急にして、其の風疾し。經脉は常に深く、其の氣は少なく、深く入ること能わず。故に絡脉分肉の間に取る。

 

帝曰.夏取盛經分腠.何也.

岐伯曰.夏者火始治.心氣始長.脉痩氣弱.陽氣留溢.熱熏分腠.内至於經.故取盛經分腠.絶膚而病去者.邪居淺也.所謂盛經者.陽脉也.

帝曰く。夏は盛經分腠に取るとは、何なるや。

岐伯曰く。夏は火の治め始め、心氣長じ始める。脉は痩せ氣は弱く、陽氣留溢し、熱は分腠を熏じ、内は經に至る。故に盛經分腠に取り、膚を絶して病去る者は、邪淺きに居ればなり。所謂盛經なるは、陽脉なり。

 

帝曰.秋取經兪.何也.

岐伯曰.秋者金始治.肺將收殺.金將勝火.陽氣在合.陰氣初勝.濕氣及體.陰氣未盛.未能深入.故取兪以寫陰邪.取合以虚陽邪.陽氣始衰.故取於合.

帝曰く。秋に經兪を取るとは、何なるや。

岐伯曰く。秋は金の治め始め、肺將に收殺せんとす。金將に火に勝たんとし、陽氣は合に在り、陰氣初めて勝ち、濕氣體に及ぶも、陰氣未だ盛んならず、未だ深く入ること能わず。故に兪をとり以て陰邪を寫し、合を取りて以て陽邪を虚す。陽氣初めて衰う。故に合を取るなり。

 

帝曰.冬取井榮.何也.

岐伯曰.冬者水始治.腎方閉.陽氣衰少.陰氣堅盛.巨陽伏沈.陽脉乃去.故取井以下陰逆.取榮以實陽氣.

故曰.冬取井榮.春不鼽衄.此之謂也.

帝曰く。冬に井榮を取るとは、何なるや。

岐伯曰く。冬は水治め始め、腎方(まさ)に閉じ、陽氣は衰少し、陰氣は堅盛し、巨陽は伏沈し、陽脉は乃ち去る。故に井を取り以て陰逆を下し、榮を取り以て陽気を實す。

故に曰く。冬に井榮を取れば、春に鼽衄せずとは、此れこれを謂うなり。

 

帝曰.夫子言治熱病五十九兪.余論其意.未能領別其處.願聞其處.因聞其意.

岐伯曰.

頭上五行.行五者.以越諸陽之熱逆也.

大杼膺兪缺盆背兪.此八者.以寫胸中之熱也.

氣街三里巨虚上下廉.此八者.以寫胃中之熱也.

雲門髃骨委中髓空.此八者.以寫四支之熱也.

五藏兪傍五.此十者.以寫五藏之熱也.

凡此五十九穴者.皆熱之左右也.

帝曰.人傷於寒.而傳爲熱.何也.

岐伯曰.夫寒盛則生熱也.

帝曰く。夫子熱病をちする五十九兪を言えり。余は其の意を論ずるも、未だ其の處を領別すること能わず。願わくば其の處を聞かん。因りて其の意を聞かん。

岐伯曰く。

頭上の五行。行に五なるは、以て諸陽の熱逆を越するなり。

大杼、膺兪、缺盆、背兪、此の八なるは、以て胸中の熱を寫すなり。

氣街、三里、巨虚上下廉、此の八なるは、以て胃中の熱を寫すなり。

雲門、髃骨、委中、髓空、此の八なるは、以て四支の熱を寫すなり。

五藏の兪の傍らに五。此の十なるは、以て五藏の熱を寫すなり。

凡そ此の五十九穴なるは、皆熱の左右なり。

帝曰く。人寒に傷れ、傳えて熱と爲すは、何なるや。

岐伯曰く。夫れ寒盛んなれば則ち熱を生ずるなり。

 

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辨厥陰病脉證并治 326~381条

 志ある学徒の、簡便な道具にならんことを願って読み下文を記しています。

 また初学者のため、重複の労をいとわずルビをふっています。

 誤りを見つけられましたら、どうかコメント欄に投稿をお願いいたします。

 

 底本 趙開美刊 「仲景全書」所収 『傷寒論』十巻

                    日本漢方協会学術部 編 東洋学術出版社

 

   辨厥陰病脉證并治 326~381条

                   第十二(厥利嘔噦附合一十九法方一十六首)

厥陰病の脉證、并(なら)びに治を辨ず。第十二。(厥利(けつり)嘔噦(おうえつ)を附す。合わせて一十九法、方一十六首)

 

【三二六条】

厥陰之為病、消渴、氣上撞心、心中疼熱、飢而不欲食、食則吐蚘、下之利不止。

厥陰之病為(た)るや、消渴(しょうかつ)し、氣上りて心を撞(つ)き、心中疼(いた)み熱し、飢えて食を欲せず、食すれば則ち蚘(かい)を吐し、之を下せば利止まず。

 

【三二七条】

厥陰中風、脉微浮為欲愈。不浮為未愈。

厥陰の中風、脉微浮なるとは愈えんと欲すと為す。浮ならざれば未だ愈えずと為す。

 

【三二八条】

厥陰病欲解時、從丑至卯上。

厥陰病解せんと欲する時は、丑(うし)從(よ)り卯(う)の上に至る。

 

【三二九条】

厥陰病、渴欲飲水者、少少與之愈。

厥陰病、渴して飲水せんと欲する者は、少少之を與えれば愈ゆ。

 

【三三〇条】

諸四逆厥者、不可下之。虛家亦然。

諸々の四逆して厥する者は、之を下すべからず。虛家も亦(ま)た然(しか)り。

 

【三三一条】

傷寒先厥後發熱而利者、必自止、見厥復利。

傷寒、先に厥し後(のち)發熱して利する者は、必ず自(おのずか)ら止む。厥を見(あら)わせば復た利す。

 

【三三二条】

傷寒、始發熱六日、厥反九日而利。凡厥利者、當不能食。今反能食者、恐為除中(一云消中)、食以索餅。不發熱者、知胃氣尚在、必愈。恐暴熱来出而復去也。後日脉之、其熱續在者、期之旦日夜半愈。

所以然者、本發熱六日、厥反九日、復發熱三日、并前六日、亦為九日、與厥相應、故期之旦日夜半愈。後三日脉之、而脉數、其熱不罷者、此為熱氣有餘、必發癰膿也。

傷寒、始め發熱すること六日、厥すること反って九日にして利す。凡(およ)そ厥利する者は當に食すること能わざるべし。今反って能く食する者は、恐らくは除中(じょちゅう)と為す。

食するに索餅(さくへい)を以て發熱せざる者は、胃氣尚(な)お在るを知る。必ず愈ゆ。恐らくは暴(にわ)かに熱来(きた)り出ずるも復た去らん。後日之を脉して、其の熱續(つづ)いて在る者は、之を期するに旦日(たんじつ)夜半に愈えん。然る所以(ゆえん)の者は、本(もと)發熱すること六日、厥とすること反って九日、復た發熱すること三日、前の六日を并(あわ)せて、亦(ま)た九日と為し、厥と相い應(おう)ず。故に之を期するに旦日夜半に愈ゆ。後三日之を脉して脉數(さく)、其の熱罷(や)まざる者は、此れ熱氣有餘(ゆうよ)と為す。必ず癰膿(ようのう)を發するなり。

 

【三三三条】

傷寒脉遲六七日、而反與黄芩湯徹其熱。脉遲為寒、今與黄芩湯復除其熱、腹中應冷、當不能食。今反能食、此名除中、必死。

傷寒脉遲なること六、七日、而(しか)るに反って黄芩湯を與えて其の熱を徹(てっ)す。脉遲は寒と為す。今、黄芩湯を與え復た其の熱を除く。腹中應(まさ)に冷ゆべし。當に食すること能わざるべし。

今反って能(よ)く食するは、此れを除中(じょちゅう)と名づく。必ず死す。

 

【三三四条】

傷寒、先厥後發熱、下利必自止。而反汗出、咽中痛者、其喉為痺。發熱無汗、而利必自止。若不止、必便膿血。便膿血者、其喉不痺。

傷寒、先に厥して後に發熱するは、下利必ず自(おのずか)ら止む。而(しか)るに反って汗出で、咽中痛む者は、其の喉痺(こうひ)を為す。發熱し汗無くして、利必ず自ら止む。若し止まざれば、必ず膿血を便す。膿血を便する者は、其の喉痺せず。

 

【三三五条】

傷寒一二日至四五日厥者、必發熱。前熱者、後必厥。厥深者熱亦深、厥微者熱亦微。厥應下之、而反發汗者、必口傷爛赤。

傷寒一、二日より、四、五日に至り、厥する者は、必ず發熱す。前に熱する者は、後必ず厥す。厥深き者は熱も亦(ま)た深く、厥微(び)の者は熱も亦た微なり。厥は應(まさ)に之を下すべし。而(しか)るに反って汗を發する者は、必ず口傷(やぶ)れ爛(ただ)れて赤し。

 

【三三六条】

傷寒病、厥五日、熱亦五日、設六日當復厥。不厥者自愈。厥終不過五日、以熱五日、故知自愈。

傷寒の病、厥すること五日、熱することも亦(ま)た五日、設(も)し六日には當(まさ)に復(ま)た厥すべし。厥せざる者は自(おのずか)ら愈ゆ。厥すること終(つい)に五日を過ぎずして、熱すること五日を以ての故に自ら愈ゆるを知る。

 

【三三七条】

凡厥者、陰陽氣不相順接、便為厥、厥者、手足逆冷者是也。

凡(およ)そ厥する者は、陰陽の氣相(あ)い順接せず、便(すなわ)ち厥を為(な)す、厥する者は、手足の逆冷する者是(こ)れなり 。

 

【三三八条】

傷寒脉微而厥、至七八日膚冷、其人躁、無暫安時者、此為藏厥、非蚘厥也。蚘厥者、其人當吐蚘、令病者靜、而復時煩者、此為藏寒。蚘上入其膈、故煩、須臾復止。得食而嘔、又煩者、蚘聞食臭出、其人常自吐蚘、蚘厥者、烏梅丸主之。又主久利。方一。

傷寒脉微にして厥し、七、八日に至りて膚(はだ)冷え、其の人躁(そう)にして、暫くも安き時無き者は、此れを藏厥(ぞうけつ)と為す。蚘厥(かいけつ)に非ざるなり。蚘厥なる者は、其の人當(まさ)に蚘(かい)を吐すべし。病者をして靜かにして復た時に煩せしむる者は、此れを藏寒(ぞうかん)と為(な)す。蚘上りて其の膈に入るが故に煩し、須臾(しゅゆ)にして復た止(や)む。食を得てして嘔し、又煩する者は、蚘食臭(しょくしゅう)を聞きて出ず。其の人常に自ら蚘を吐す。蚘厥なる者は、烏梅丸(うばいがん)之を主る。又、久利(きゅうり)を主る。方一。

 

 

〔烏梅丸方〕

烏梅(三百枚) 細辛(六兩) 乾薑(十兩) 黄連(十六兩) 當歸(四兩) 附子(六兩炮去皮) 蜀椒(四兩出汗) 桂枝(去皮六兩) 人參(六兩) 

黄檗(六兩)

右十味、異擣篩、合治之。以苦酒漬烏梅一宿、去核、蒸之五斗米下、飯熟擣成泥、和藥令相得。内臼中、與蜜杵二千下、丸如梧桐子大。先食飲服十丸、日三服、稍加至二十丸。禁生冷、滑物、臭食等。

 

烏梅(うばい)(三百枚) 細辛(六兩) 乾薑(十兩) 黄連(十六兩) 當歸(四兩) 附子(六兩、炮じて皮を去る) 蜀椒(しょくしょう)(四兩、汗を出す) 桂枝(皮を去る、六兩) 人參(六兩) 

黄檗(おうばく)(六兩)

右十味、異(こと)にして擣(つ)きて篩(ふる)い、合して之を治む。苦酒(くしゅ)を以て烏梅を漬けること一宿(いっしゅく)、核を去り、之を五斗米の下(もと)に蒸し、飯熟(いじゅく)せば擣きて泥(でい)と成し、

藥に和して相(あ)い得せしむ。臼中(きゅうちゅう)に内(い)れ、蜜とともに杵(つ)くこと二千下(げ)、丸ずること梧桐子大(ごどうしだい)の如くす。食に先だちて十丸を飲服し、日に三服す。

稍(やや)加えて二十丸に至る。生冷(せいれい)、滑物(かつぶつ)、臭食(しゅうしょく)等を禁ず。

 

【三三九条】

傷寒熱少微厥、指(一作稍)頭寒、嘿嘿不欲食、煩躁、數日、小便利、色白者、此熱除也、欲得食、其病為愈。若厥而嘔、胸脇煩滿者、其後必便血。

傷寒熱少なく微厥(びけつ)し、指頭(しとう)寒(ひ)え、嘿嘿(もくもく)として食を欲せず、煩躁す。數日にして小便利し、色白き者は、此れ熱除くなり。食を得んと欲するは、其の病愈ゆること為す。若し厥して嘔し、胸脇煩滿する者は、其の後必ず便血す。

 

【三四〇条】

病者手足厥冷、言我不結胸、小腹滿、按之痛者、此冷結在膀胱關元也。

病者手足厥冷し、我結胸せずと言う。小腹滿し、之を按じて痛む者は、此れ冷(れい)結んで膀胱關元に在(あ)るなり。

 

【三四一条】

傷寒發熱四日、厥反三日、復熱四日。厥少熱多者、其病當愈。四日至七日熱不除者、必便膿血。

傷寒發熱すること四日、厥すること反って三日、復た熱すること四日、厥少なく熱多き者は、其の病當に愈ゆべし。四日より七日に至りて熱除かざる者は、必ず膿血を便す。

 

【三四二条】

傷寒厥四日、熱反三日、復厥五日、其病為進。寒多熱少、陽氣退、故為進也。

傷寒厥すること四日、熱すること反って三日、復た厥すること五日、其の病進むと為(な)す。寒多く熱少なく、陽氣退(しりぞ)くが故に進むと為すなり。

 

【三四三条】

傷寒六七日、脉微、手足厥冷、煩躁、灸厥陰。厥不還者、死。

傷寒六、七日、脉微、手足厥冷し、煩躁するは、厥陰に灸す。厥還(かえ)らざる者は、死す。

 

【三四四条】

傷寒發熱、下利、厥逆、躁不得臥者、死。

傷寒、發熱し、下利し、厥逆し、躁して臥(ふ)すことを得ざる者は死す。

 

【三四五条】

傷寒發熱、下利至甚、厥不止者、死。

傷寒、發熱し、下利甚しきに至り、厥止まざる者は死す。

 

【三四六条】

傷寒六七日不利、便發熱而利、其人汗出不止者、死、有陰無陽故也。

傷寒六、七日利せず、便(すなわ)ち發熱して利し、其の人汗出でて止まざる者は死す。陰有りて陽無きが故なり。

 

【三四七条】

傷寒五六日、不結胸、腹濡、脉虛、復厥者、不可下、此亡血、下之死。

傷寒五六日、結胸せず、腹濡(なん)、脉虛し、復た厥する者は、下すべからず。此れ亡血なり。之を下せば死す。

 

【三四八条】

發熱而厥、七日下利者、為難治。

發熱して厥し、七日にして下利する者は、治し難しと為す。

 

【三四九条】

傷寒脉促(促一作縱)、手足厥逆、可灸之。

傷寒、脉促(そく)、手足厥逆するは、之を灸すべし。

 

【三五〇条】

傷寒脉滑而厥者、裏有熱、白虎湯主之。方二。

傷寒、脉滑にして厥する者は、裏に熱有り、白虎湯之を主る。方二。

 

〔白虎湯方〕

知母(六兩) 石膏(一斤碎綿裹) 甘草(二兩炙) 粳米(六合)

右四味、以水一斗、煮米熟、湯成、去滓、温服一升、日三服。

 

知母(六兩) 石膏(一斤、碎き、綿もて裹(つつ)む) 甘草(二兩、炙る) 粳米(六合)

右四味、水一斗を以て、煮て米熟し、湯成なりて滓を去り、一升を温服し、日に三服す。

 

【三五一条】

手足厥寒、脉細欲絶者、當歸四逆湯主之。方三。

手足厥寒し、脉細にして絶せんと欲する者は、當歸四逆湯(とうきしぎゃくとう)之を主る。方三。

 

〔當歸四逆湯方〕

當歸(三兩) 桂枝(三兩去皮) 芍藥(三兩) 細辛(三兩) 甘草(二兩炙) 通草(二兩) 大棗(二十五枚擘一法十二枚)

右七味、以水八升、煮取三升、去滓、温服一升、日三服。

 

當歸(とうき)(三兩) 桂枝(三兩、皮を去る) 芍藥(三兩) 細辛(三兩) 甘草(二兩、炙る) 通草(二兩) 大棗(二十五枚、擘く、一法に十二枚とす)

右七味、水八升を以て、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服し、日に三服す。

 

【三五二条】

若其人内有久寒者、宜當歸四逆加呉茱萸生薑湯。方四。

若し其の人内(うち)に久寒有る者は、當歸四逆加呉茱萸生薑湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)に宜し。方四。

 

〔當歸四逆加呉茱萸生薑湯方〕

當歸(三兩) 芍藥(三兩) 甘草(二兩炙) 通草(二兩) 桂枝(三兩去皮) 細辛(三兩) 生薑(半斤切) 呉茱萸(二升) 大棗(二十五枚擘)

右九味、以水六升、清酒六升和、煮取五升、去滓、温分五服(一方水酒各四升)。

 

當歸(三兩) 芍藥(三兩) 甘草(二兩、炙る) 通草(二兩) 桂枝(三兩、皮を去る) 細辛(三兩) 生薑(半斤、切る) 呉茱萸(二升) 大棗(二十五枚、擘く)

右九味、水六升を以て、清酒六升を以て和し、煮て五升を取り、滓を去り、温め分かち五服す(一方に、水酒各々四升とす)。

 

【三五三条】

大汗出、熱不去、内拘急、四肢疼、又下利厥逆而惡寒者、四逆湯主之。方五。

大いに汗出で、熱去さらず、内拘急(こうきゅう)し、四肢疼(いた)み、又下利厥逆し惡寒する者は、四逆湯之を主る。方五。

 

〔四逆湯方〕

甘草(二兩炙) 乾薑(一兩半) 附子(一枚生用去皮破八片)

右三味、以水三升、煮取一升二合、去滓、分温再服。若強人可用大附子一枚、乾薑三兩。

 

甘草(二兩、炙る) 乾薑(一兩半) 附子(一枚、生を用い、皮を去り、八片に破る)

右三味、水三升を以て、煮て一升二合を取り、滓を去り、分かち温め再服す。若し強人なれば大附子一枚、乾薑三兩を用うべし。

 

【三五四条】

大汗、若大下利而厥冷者、四逆湯主之。六(用前第五方)。

大いに汗し、若しくは大いに下利して厥冷する者は、四逆湯之を主る。六(前の第五方を用う)。

 

【三五五条】

病人手足厥冷、脉乍緊者、邪結在胸中、心下滿而煩、飢不能食者、病在胸中、當須吐之、宜瓜蔕散。方七。

病人手足厥冷し、脉乍(たちま)ち緊の者は、邪結んで胸中に在り、心下滿して煩し、飢(う)ゆれども食すること能わざる者は、病胸中に在り。當に須(すべから)く之を吐すべし。瓜蔕散(かていさん)宜。方七。

 

〔瓜蔕散方〕

瓜帶 赤小豆

右二味、各等分、異擣篩、合内臼中、更治之、別以香豉一合、用熱湯七合、煮作稀糜、去滓、取汁和散一錢匕、温頓服之。不吐者、少少加、得快吐乃止。諸亡血虛家、不可與瓜蔕散。

 

瓜帶(かてい) 赤小豆

右二味、各々等分し、異(こと)にして擣(つ)きて篩(ふる)い、合わせて臼中に内れ、更に之を治(おさ)む。別に香豉(こうし)一合を以て、熱湯七合を用い、煮て稀糜(きび)を作り、滓を去り、汁を取り散一錢匕(ひ)を和し、温めて之を頓服す。吐かざる者は、少少加え、快吐(かいと)を得れば乃(すなわ)ち止む。諸亡(しょぼう)血虛家は、瓜蔕散(かていさん)を與うべからず。

 

 

【三五六条】

傷寒厥而心下悸、宜先治水、當服茯苓甘草湯、却治其厥、不爾、水漬入胃、必作利也。茯苓甘草湯。方八。

傷寒厥して心下悸するは、宜しく先ず水を治すべし。當に茯苓甘草湯(ぶくりょうかんぞうとう)を服すべし。却って其の厥を治せ。爾(しか)らざれば、水漬(すいし)胃に入り、必ず利を作(な)すなり。茯苓甘草湯。方八。

 

〔茯苓甘草湯方〕

茯苓(二兩) 甘草(一兩炙) 生薑(三兩切) 桂枝(二兩去皮)

右四味、以水四升、煮取二升、去滓、分温三服。

 

茯苓(二兩) 甘草(一兩、炙る) 生薑(三兩、切る) 桂枝(二兩、皮を去る)

右四味、水四升を以て、煮て二升を取り、滓を去り、分かち温め三服す。

 

【三五七条】

傷寒六七日、大下後、寸脉沈而遲、手足厥逆、下部脉不至、喉咽不利、唾膿血、泄利不止者、為難治。麻黄升麻湯主之。方九。

傷寒六、七日、大いに下したる後、寸脉沈にして遲、手足厥逆し、下部の脉至らず、喉咽(こういん)利せず、膿血を唾(だ)し、泄利(せつり)止まざる者は、治ち難しと為(な)す。麻黄升麻湯(まおうしょうまとう)之を主る。方九。

 

〔麻黄升麻湯方〕

麻黄(二兩半去節) 升麻(一兩一分) 當歸(一兩一分) 知母(十八銖) 黄芩(十八銖) 萎蕤(十八銖一作菖蒲) 芍藥(六銖) 天門冬(六銖去心) 桂枝(六銖去皮) 茯苓(六銖) 甘草(六銖炙) 石膏(六銖碎綿裹) 白朮(六銖) 乾薑(六銖)

右十四味、以水一斗、先煮麻黄一兩沸、去上沫、内諸藥、煮取三升、去滓、分温三服。相去如炊三斗米頃、令盡、汗出愈。

 

麻黄(二兩半、節を去る) 升麻(しょうま)(一兩一分) 當歸(一兩一分) 知母(ちも)(十八銖) 黄芩(十八銖) 萎蕤(いずい)(十八銖、一に菖蒲(しょうぶ)と作(な)す) 芍藥(六銖) 天門冬(てんもんどう)(六銖、心を去る) 桂枝(六銖、皮を去る)

茯苓(六銖) 甘草(六銖、炙る) 石膏(六銖、碎き、綿もて裹(つつ)む) 白朮(六銖) 乾薑(六銖)

右十四味、水一斗を以て、先ず麻黄を煮て一兩沸し、上沫を去り、諸藥を内れ、煮て三升を取り、滓を去り、分かち温め三服す。相い去ること三斗米を炊く頃の如くにして、盡(つく)せしむ。汗出でて愈ゆ。

 

【三五八条】

傷寒四五日、腹中痛、若轉氣下趣少腹者、此欲自利也。

傷寒四、五日、腹中痛み、若し轉氣(てんき)下り少腹に趣(おもむ)く者は、此れ自利せんと欲するなり。

 

【三五九条】

傷寒本自寒下、醫復吐下之、寒格、更逆吐下。若食入口即吐、乾薑黄芩黄連人參湯主之。方十。

傷寒本(もと)自と寒下(かんげ)するに、醫復た之を吐下して、寒格(かんかく)し、更に逆して吐下す。若し食口に入らば即吐するは、乾薑黄芩黄連人參湯(かんきょうおうごんおうれんにんじんとう)之を主る。方十。

 

〔乾薑黄芩黄連人參湯方〕

乾薑 黄芩 黄連 人參(各三兩)

右四味、以水六升、煮取二升、去滓、分温再服。

 

乾薑 黄芩 黄連 人參(各三兩)

右四味、水六升を以て、煮て二升を取り、滓を去り、分かち温め再服す。

 

【三六〇条】

下利有微熱而渴、脉弱者、今自愈。

下利し微熱(びねつ)有りて渴し、脉弱の者は、今自(おのずか)ら愈ゆ。

 

【三六一条】

下利脉數、有微熱汗出、今自愈。設復緊(一云設脉浮復緊)、為未解。

下利し、脉數(さく)、微熱有りて汗出ずるは、今自ら愈ゆ。設(も)し復た緊なれば、未だ解せずと為(な)す。

 

【三六二条】

下利、手足厥冷、無脉者、灸之不温、若脉不還、反微喘者、死。少陰負趺陽者、為順也。

下利、手足厥冷し、脉無き者は、之に灸す。温まらず、若し脉還(かえ)らず、反って微喘(びぜん)する者は、死す。少陰、趺陽(ふよう)より負の者は、順と為(な)すなり。

 

【三六三条】

下利、寸脉反浮數、尺中自濇者、必清膿血。

下利し、寸脉反って浮數(さく)。尺中自ら濇(しょく)の者は、必ず膿血(のうけつ)を清す。

 

【三六四条】

下利清穀、不可攻表。汗出必脹滿。

下利清穀(せいこく)するは、表を攻むべからず。汗出ずれば、必ず脹滿す。

 

【三六五条】

下利、脉沈弦者、下重也。脉大者、為未止。脉微弱數者、為欲自止、雖發熱不死。

下利し、脉沈弦の者は、下重(げじゅう)するなり。脉大の者は、未(いま)だ止まずと為す。脉微弱數の者は、自ら止まんと欲すと為す。發熱すると雖も死せず。

 

【三六六条】

下利脉沈而遲、其人面少赤、身有微熱、下利清穀者、必鬱冒汗出而解、病人必微厥、所以然者、其面戴陽、下虛故也。

下利し、脉沈にして遲、其の人面少しく赤く、身に微熱有り。下利清穀する者は、必ず鬱冒(うつぼう)し汗出でて解す。病人必ず微厥(びけつ)す。然る所以(ゆえん)の者は、其の面戴陽(たいよう)して、下虛するが故なり。

 

【三六七条】

下利脉數而渴者、今自愈。設不差、必清膿血、以有熱故也。

下利し、脉數にして渴する者は、今自ら愈ゆ。設(も)し差(い)えざれば、必ず膿血を清す。熱有るを以ての故なり。

 

【三六八条】

下利後、脉絶、手足厥冷、晬時脉還、手足温者生。脉不還者死。

下利の後、脉絶(ぜつ)し、手足厥冷するも、晬時(さいじ)にして脉還(かえ)り、手足温なる者は生く。脉還らざる者は死す。

 

【三六九条】

傷寒下利日十餘行、脉反實者、死。

傷寒、下利すること日に十餘行(こう)、脉反って實する者は死す。

 

【三七〇条】

下利清穀、裏寒外熱、汗出而厥者、通脉四逆湯主之。方十一。

下利清穀、裏寒外熱し、汗出で厥する者は、通脉四逆湯(つうみゃくしぎゃくとう)之を主る。方十一。

 

〔通脉四逆湯方〕

甘草(二兩炙) 附子(大者一枚生去皮破八片) 乾薑(三兩強人可四兩)

右三味、以水三升、煮取一升二合、去滓、分温再服、其脉即出者愈。

 

甘草(二兩、炙る) 附子(大なる者一枚、生、皮を去り、八片に破る) 乾薑(三兩、強人は四兩とすべし)

右三味、水三升を以て、煮て一升二合を取り、滓を去り、分かち温め再服す。其の脉即ち出ずる者は、愈ゆ。

 

【三七一条】

熱利下重者、白頭翁湯主之。方十二。

熱利(ねつり)して下重(げじゅう)する者は、白頭翁湯(はくとうおうとう)之を主る。方十二。

 

〔白頭翁湯方〕

白頭翁(二兩) 黄檗(三兩) 黄連(三兩) 秦皮(三兩)

右四味、以水七升、煮取二升、去滓、温服一升。不愈、更服一升。

 

白頭翁(はくとうおう)(二兩) 黄檗(三兩) 黄連(三兩) 秦皮(しんぴ)(三兩)

右四味、水七升を以て、煮て二升を取り、滓を去り、一升を温服す。愈えざれば、更に一升を服す。

 

【三七二条】

下利腹脹滿、身體疼痛者、先温其裏、乃攻其表。温裏宜四逆湯、攻表宜桂枝湯。十三(四逆湯用前第五方)。

下利し、腹脹滿し、身體(しんたい)疼痛する者は、先ず其の裏を温め、乃ち其の表を攻む。裏を温むるは四逆湯に宜しく、表を攻むるは桂枝湯に宜し。十三(四逆湯は前の第五方を用う)。

 

〔桂枝湯方〕

桂枝(三兩去皮) 芍藥(三兩) 甘草(二兩炙) 生薑(三兩切) 大棗(十二枚擘)

右五味、以水七升、煮取三升、去滓、温服一升、須臾啜熱稀粥一升、以助藥力。

 

桂枝(三兩、皮を去る) 芍藥(三兩) 甘草(二兩、炙る) 生薑(三兩、切る) 大棗(十二枚、擘く)

右五味、水七升を以て、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す、須臾(しゅゆ)にして熱稀粥(ねつきしゅく)一升を啜(すす)り、以て藥力を助く。

 

【三七三条】

下利欲飲水者、以有熱故也、白頭翁湯主之。十四(用前第十二方)。

下利し水を飲まんと欲する者は、熱有るを以ての故なり。白頭翁湯を之を主る。十四(前の第十二方を用う)。

 

【三七四条】

下利讝語者、有燥屎也、宜小承氣湯。方十五。

下利して讝語する者は、燥屎(そうし)有るなり、小承氣湯に宜し。方十五。

 

〔小承氣湯方〕

大黄(四兩酒洗) 枳實(三枚炙) 厚朴(二兩去皮炙) 

右三味、以水四升、取煮一升二合、去滓、分二服。初一服讝語止、若更衣者、停後服、不爾盡服之。

 

大黄(四兩、酒で洗う) 枳實(三枚、炙る) 厚朴(二兩、皮を去り、炙る) 

右三味、水四升を以て、煮て一升二合を取り、滓を去り、二服に分かつ。初め一服して讝語止み、若し更衣する者は、後服を停む。爾(しか)らざれば、盡(ことごと)く之を服す。

 

【三七五条】

下利後更煩、按之心下濡者、為虛煩也、宜梔子豉湯。方十六。

下利したる後更に煩し、之を按じて心下濡(なん)の者は、虛煩(きょはん)と為すなり、梔子豉湯に宜し。方十六。

 

〔梔子豉湯方〕

肥梔子(十四箇擘) 香豉(四合綿裹)

右二味、以水四升、先煮梔子、取二升半、内豉、更煮取一升半、去滓、分再服。一服得吐、止後服。

 

肥梔子(十四箇、擘く) 香豉(四合、綿もて裹む)

右二味、水四升を以て、先ず梔子を煮て、二升半を取り、豉(し)を内れ、更に煮て一升半を取り、滓を去り、分かちて再服す。一服にて吐を得れば、後服を止む。

 

【三七六条】

嘔家有癰膿者、不可治嘔、膿盡自愈。

嘔家(おうか)、癰膿(ようのう)有る者は、嘔(おう)治すべからず。膿(のう)盡(つ)きれば自ら愈ゆ。

 

【三七七条】

嘔而脉弱、小便復利、身有微熱、見厥者、難治、四逆湯主之。十七(用前第五方)。

嘔(おう)して脉弱、小便復た利し、身に微熱有りて、厥(けつ)を見(あら)わす者は、治し難(がた)し。四逆湯之を主る。十七(前の第五方を用う)。

 

【三七八条】

乾嘔吐涎沫、頭痛者、呉茱萸湯主之。方十八。

乾嘔(かんおう)し、涎沫(えんまつ)を吐し、頭痛する者は、呉茱萸湯之を主る。方十八。

 

〔呉茱萸湯方〕

呉茱萸(一升湯洗七遍) 人參(三兩) 大棗(十二枚擘) 生薑(六兩切)

右四味、以水七升、煮取二升、去滓、温服七合、日三服。

 

呉茱萸(一升、湯もて洗うこと七遍(へん)) 人參(三兩) 大棗(十二枚、擘く) 生薑(六兩、切る)

右四味、水七升を以て、煮て二升を取り、滓を去り、七合を温服し、日に三服す。

 

【三七九条】

嘔而發熱者、小柴胡湯主之。方十九。

嘔して發熱する者は、小柴胡湯之を主る。方十九。

 

〔小柴胡湯方〕

柴胡(八兩) 黄芩(三兩) 人參(三兩) 甘草(三兩炙) 生薑(三兩切)  半夏(半升洗) 大棗(十二枚擘)

右七味、以水一斗二升、煮取六升、去滓、更煎取三升、温服一升、日三服。

 

柴胡(八兩) 黄芩(三兩) 人參(三兩) 甘草(三兩、炙る) 生薑(三兩、切る)  半夏(半升、洗う) 大棗(十二枚、擘く)

右七味、水一斗二升を以て、煮て六升を取り、滓を去り、更に煎じて三升を取り、一升を温服し、日に三服す。

 

【三八〇条】

傷寒、大吐、大下之、極虛、復極汗者、其人外氣怫鬱、復與之水以發其汗、因得噦。所以然者、胃中寒冷故也。

傷寒、大いに吐し、大いに之を下し、極めて虛し、復た極めて汗する者は、其の人外氣(がいき)怫鬱(ふつうつ)す。復た之に水を與(あた)え、以て其の汗を發し、因(よ)りて噦(えつ)を得る。。然(しか)る所以(ゆえん)の者は、胃中寒冷するが故なり。

 

【三八一条】

傷寒噦而腹滿、視其前後、知何部不利、利之即愈。

傷寒噦(えつ)して腹滿するは、其の前後を視て、何れの部の利せざるかを知り、之を利すれば即ち愈ゆ。

 

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辨少陰病脉證并治 281~325条

 志ある学徒の、簡便な道具にならんことを願って読み下文を記しています。

 また初学者のため、重複の労をいとわずルビをふっています。

 誤りを見つけられましたら、どうかコメント欄に投稿をお願いいたします。

 

 底本 趙開美刊 「仲景全書」所収 『傷寒論』十巻

                    日本漢方協会学術部 編 東洋学術出版社

 

   辨少陰病脉證并治 281~325条

                        第十一(合二十三法方一十九首)

                少陰病の脉證并びに治を辨ず・第十一(合わせて二十三法、方一十九首)

 

【二八一条】

少陰之為病、脉微細、但欲寐也。

少陰の病為(た)るや、脉微細、但(た)だ寐(いね)んと欲するなり。

 

【二八二条】

少陰病、欲吐不吐、心煩但欲寐、五六日自利而渴者、屬少陰也。虛故引水自救。若小便色白者、少陰病形悉具。小便白者、以下焦虛有寒、不能制水、故令色白也。

少陰病、吐せんと欲して吐せず、心煩し但だ寐(いね)んと欲し、五、六日自利して渴する者は、少陰に屬するなり。虛するが故に、水を引きて自ら救う。若し小便の色白き者は、少陰の病形悉(ことごと)く具わる。小便白き者は、下焦虛して寒有り、水を制すること能わざるを以ての故に色をして白からしむるなり。

 

【二八三条】

病人脉陰陽倶緊、反汗出者、亡陽也。此屬少陰、法當咽痛而復吐利。

病人脉陰陽倶(とも)に緊、反って汗出ずる者は、亡陽なり。此れ少陰に屬ず。法は當に咽痛(いんつう)して復た吐利すべし。

 

【二八四条】

少陰病、欬而下利、讝語者、被火氣劫故也。小便必難、以強責少陰汗也。

少陰病、欬(がい)して下利(げり)し、讝語する者は、火氣に劫(おびや)かさるるが故なり。小便必ず難し。強いて少陰を責め汗しむるを以てなり。

 

【二八五条】

少陰病、脉細沈數、病為在裏、不可發汗。

少陰病、脉細沈數なるは、病裏に在りと為す、汗を發すべからず。

 

【二八六条】

少陰病、脉微、不可發汗、亡陽故也。陽已虛、尺脉弱濇者、復不可下之。

少陰病、脉微、汗を發すべからず、亡陽するが故なり。陽已(すで)に虛し、尺脉弱濇(じゃくしょく)の者は、復た之を下すべからず。

 

【二八七条】

少陰病、脉緊、至七八日自下利、脉暴微、手足反温、脉緊反去者、為欲解也、雖煩下利、必自愈。

少陰病、脉緊、七、八日に至りて自下利し、脉暴(にわ)かに微(び)、手足反って温かく、脉緊反って去る者は、解せんと欲すと為(な)すなり。煩して下利すと雖も、必ず自ら愈ゆ。

 

【二八八条】

少陰病、下利、若利自止、惡寒而踡臥、手足温者、可治。

少陰病、下利(げり)し、若しくは利自(おのずか)ら止み、惡寒して踡臥(けんが)し、手足温の者は、治すべし。

 

【二八九条】

少陰病、惡寒而踡、時自煩、欲去衣被者、可治。

少陰病、惡寒して踡(かがま)り、時に自(おのずか)ら煩し、衣被(いひ)を去らんと欲する者は、治すべし。

 

【二九〇条】

少陰中風、脉陽微陰浮者、為欲愈。

少陰の中風、脉陽微陰浮の者は、愈えんと欲すと為(な)す。

 

【二九一条】

少陰病欲解時、從子至寅上。

少陰病解せんと欲する時は、子(ね)從(よ)り寅(とら)の上に至る。

 

【二九二条】

少陰病、吐、利、手足不逆冷、反發熱者、不死。脉不至(至一作足)者、灸少陰七壮。

少陰病、吐利し、手足逆冷(ぎゃくれい)せず、反って發熱する者は、死せず。脉至らざる者は、少陰に灸すること七壮。

 

【二九三条】

少陰病、八九日、一身手足盡熱者、以熱在膀胱、必便血也。

少陰病、八、九日、一身手足盡(ことごと)く熱する者は、熱膀胱に在るを以て、必ず便血するなり。

 

【二九四条】

少陰病、但厥、無汗、而強發之、必動其血。未知從何道出、或從口鼻、或從目出者、是名下厥上竭、為難治。

少陰病、但だ厥して、汗無し、而(しか)るに強いて之を發すれば、必ず其の血を動ず。未(いま)だ何(いず)れの道從(よ)り出づるかを知らず。或いは口鼻從(よ)りし、或いは目從(よ)り出づる者は、是れを下厥上竭(げけつじょうけつ)と名づく。治し難しと為す。

 

【二九五条】

少陰病、惡寒、身踡而利、手足逆冷者、不治。

少陰病、惡寒し、身踡(かがま)りて利し、手足逆冷する者は、治せず。

 

【二九六条】

少陰病、吐、利、躁煩四逆者、死。

少陰病、吐利し、躁煩、四逆する者は、死す。

 

【二九七条】

少陰病、下利止而頭眩、時時自冒者、死。

少陰病、下利止みて頭眩(づげん)し、時時自ら冒(ぼう)する者は、死す。

 

【二九八条】

少陰病、四逆、惡寒而身踡、脉不至、不煩而躁者、死(一作吐利而躁逆者死)。

少陰病、四逆し、惡寒して身踡(かがま)り、脉至らず、煩せずして躁する者は、死す(一作吐利而躁逆者死)。

 

【二九九条】

少陰病六七日、息高者、死。

少陰病六、七日、息高き者は、死す。

 

【三〇〇条】

少陰病、脉微細沈、但欲臥、汗出不煩、自欲吐、至五六日自利、復煩躁不得臥寐者、死。

少陰病、脉微細沈、但だ臥(ふ)せんと欲し、汗出でて煩せず、自ら吐せんと欲し、五、六日に至って自利し、復た煩躁して臥寐(がしん)することを得ざる者は、死す。

 

【三〇一条】

少陰病始得之、反發熱、脉沈者、麻黄細辛附子湯主之。方一。

少陰病始めて之を得て、反って發熱し、脉沈の者は、麻黄細辛附子湯(まおうさいしんぶしとう)之を主る。方一。

 

〔麻黄細辛附子湯方〕

麻黄(二兩去節) 細辛(二兩) 附子(一枚炮去皮破八片)

右三味、以水一斗、先煮麻黄、減二升、去上沫、内諸藥、煮取三升、去滓、温服一升、日三服。

麻黄(二兩、節を去る) 細辛(二兩) 附子(一枚、炮(ほう)じて皮を去り、八片に破る)

右三味、水一斗を以て、先ず麻黄を煮て、二升を減じ、上沫を去り、諸藥を内れ、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服し、日に三服す。

 

【三〇二条】

少陰病、得之二三日、麻黄附子甘草湯微發汗。以二三日無證、故微發汗也。方二。

少陰病、之を得ること二、三日、麻黄附子甘草湯(まおうぶしかんぞうとう)にて微(すこ)しく汗を發す。二、三日證無きを以ての故に微しく汗を發するなり。方二。

 

〔麻黄附子甘草湯方〕

麻黄(二兩去節) 甘草(二兩炙) 附子(一枚炮去皮破八片)

右三味、以水七升、先煮麻黄一兩沸、去上沫、内諸藥、煮取三升、去滓、温服一升、日三服。

麻黄(二兩、節を去る) 甘草(二兩、炙る) 附子(一枚、炮じて皮を去り、八片に破る)

右三味、水七升を以て、先ず麻黄を煮て、一、兩沸し、上沫を去り、諸藥を内れ、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服し、日に三服す。

 

【三〇三条】

少陰病、得之二三日以上、心中煩、不得臥、黄連阿膠湯主之。方三。

少陰病、之を得ること二、三日以上、心中煩して、臥(ふ)すことを得ざるは、黄連阿膠湯(おうれんあきょうとう)之を主る。方三。

 

〔黄連阿膠湯方〕

黄連(四兩) 黄芩(二兩) 芍藥(二兩) 雞子黄(二枚) 阿膠(三兩一云三挺)

右五味、以水六升、先煮三物、取二升、去滓。内膠烊盡、小冷。内雞子黄、攪令相得。温服七合、日三服。

黄連(四兩) 黄芩(二兩) 芍藥(二兩) 雞子黄(けいしおう)(二枚) 阿膠(三兩、一に三挺(さんてい)と云(い)う)

右五味、水六升を以て、先ず三物を煮て、二升を取り、滓を去る。膠を内れて烊盡(ようじん)し、小(すこ)しく冷やす。雞子黄(けいしおう)を内れ、攪(ま)ぜて相(あ)い得(え)せしむ。七合を温服し、日に三服す。

 

【三〇四条】

少陰病、得之一二日、口中和、其背惡寒者、當灸之、附子湯主之。方四。

少陰病、之を得て一、二日、口中和し、其の背惡寒する者は、當に之を灸すべし。附子湯之を主る。方四。

 

〔附子湯方〕

附子(二枚炮去皮破八片) 茯苓(三兩) 人參(二兩) 白朮(四兩) 芍藥(三兩)

右五味、以水八升、煮取三升、去滓、温服一升、日三服。

附子(二枚、炮じて皮を去り、八片に破る) 茯苓(三兩) 人參(二兩) 白朮(四兩) 芍藥(三兩)

右五味、水八升を以て、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す、日に三服す。

 

【三〇五条】

少陰病、身體痛、手足寒、骨節痛、脉沈者、附子湯主之。五(用前第四方)。

少陰病、身體(しんたい)痛み、手足寒(ひ)え、骨節(こっせつ)痛み、脉沈の者は、附子湯之を主る。五(前の第四方を用う)。

 

【三〇六条】

少陰病、下利便膿血者、桃花湯主之。方六。

少陰病、下利して膿血(のうけつ)を便する者は、桃花湯(とうかとう)之を主る。方六。

 

〔桃花湯方〕

赤石脂(一斤一半全用一半篩末) 乾薑(一兩) 粳米(一升)

右三味、以水七升、煮米令熟、去滓。温服七合、内赤石脂末方寸匕、日三服。若一服愈、餘勿服。

赤石脂(しゃくせきし)(一斤、一半は全用、一半は篩(ふる)って末とす) 乾薑(一兩) 粳米(一升)

右三味、水七升を以て、米を煮て熟せしめ、滓を去る。七合を温服し、赤石脂末方寸匕(ひ)を内れ、日に三服す。

若し一服にして愈ゆれば、餘は服すること勿(な)かれ。

 

【三〇七条】

少陰病、二三日至四五日、腹痛、小便不利、下利不止、便膿血者、桃花湯主之。七(用前第六方)。

少陰病、二、三日より四、五日に至り、腹痛し、小便利せず、下利止まず、膿血を便する者は、桃花湯之を主る。七(前の第六方を用う)。

 

【三〇八条】

少陰病、下利便膿血者、可刺。

少陰病、下利膿血を便する者は、刺すべし。

 

【三〇九条】

少陰病、吐利、手足逆冷、煩躁欲死者、呉茱萸湯主之。方八。

少陰病、吐利(とり)、手足逆冷(ぎゃくれい)、煩躁して死せんと欲する者は、呉茱萸湯(ごしゅゆとう)之を主る。方八。

 

〔呉茱萸湯方〕

呉茱萸(一升) 人參(二兩) 生薑(六兩切) 大棗(十二枚擘)

右四味、以水七升、煮取二升、去滓、温服七合、日三服。

呉茱萸(一升) 人參(二兩) 生薑(六兩、切る) 大棗(十二枚、擘く)

右四味、水七升を以て、煮て二升を取り、滓を去り、七合を温服し、日に三服す。

 

【三一〇条】

少陰病、下利、咽痛、胸滿、心煩、猪膚湯主之。方九。

少陰病、下利し、咽(のど)痛み、胸滿し、心煩するは、猪膚湯(ちょふとう)之を主る。方九。

 

〔猪膚湯方〕

猪膚(一斤)

右一味、以水一斗、煮取五升、去滓、加白蜜一升、白粉五合、熬香、和令相得、温分六服。

猪膚(ちょふ)(一斤)

右一味、水一斗を以て、煮て五升を取り、滓を去り、白蜜(はくみつ)一升、白粉(はくふん)五合を加え、

熬(い)りて香ならしめ、和して相(あ)い得せしめ、温め分かち六服す。

 

【三一一条】

少陰病二三日、咽痛者、可與甘草湯。不差、與桔梗湯。十。

少陰病二、三日、咽痛む者は、甘草湯を與うべし。差(い)えざれば、桔梗湯(ききょうとう)を與う。十。

 

〔甘草湯方〕

甘草(二兩)

右一味、以水三升、煮取一升半、去滓、温服七合、日二服。

甘草(二兩)

右一味、水三升を以て、煮て一升半を取り、滓を去り、七合を温服し、日に二服す。

 

〔桔梗湯方〕

桔梗(一兩) 甘草(二兩)

右二味、以水三升、煮取一升、去滓、温分再服。

桔梗(一兩) 甘草(二兩)

右二味、水三升を以て、煮て一升を取り、滓を去り、分かち温め再服す。

 

【三一二条】

少陰病、咽中傷、生瘡、不能語言、聲不出者、苦酒湯主之。方十一。

少陰病、咽中(いんちゅう)傷れて瘡(そう)を生じ、語言すること能わず、聲(こえ)出でざる者は、苦酒湯(くしゅとう)之を主る。方十一。

 

〔苦酒湯方〕

半夏(洗破如棗核十四枚) 雞子(一枚去黄内上苦酒着雞子殻中)

右二味、内半夏、著苦酒中、以雞子殻置刀環中、安火上、令三沸、去滓。少少含嚥之。不差、更作三劑。

半夏(洗い、破りて棗核(そうかく)の如くす、十四枚) 雞子(けいし)(一枚、黄を去り、上苦酒を内れ、雞子殻(けいしかく)の中に着(つ)ける)

右二味、半夏を内れ、苦酒(くしゅ)中に著(つ)け、雞子殻(けいしかく)を以て刀環(とうかん)の中に置き、火上に安じて、三沸せしめ、滓を去る。少少之を含嚥(がんえん)す。差(い)えざれば、更に三劑を作る。

 

【三一三条】

少陰病、咽中痛、半夏散及湯主之。方十二。

少陰病、咽中(いんちゅう)痛むは、半夏散(はんげさん)及び湯之を主る。方十二。

 

〔半夏散及湯方〕

半夏(洗) 桂枝(去皮) 甘草(炙)

右三味、等分、各別擣篩已、合治之、白飲和服方寸匕、日三服。若不能散服者、以水一升、煎七沸、内散兩方寸匕、更煮三沸、下火令小冷、少少嚥之。半夏有毒、不當散服。

半夏(洗う) 桂枝(皮を去る) 甘草(炙る)

右三味、等分し、各々別に擣(つ)き篩(ふるい)い已(おわ)り、合して之を治め、白飲(はくいん)もて和して方寸匕(ひ)を服し、日に三服す。若そ散服すること能わざる者は、水一升を以て、煎ずること七沸、散兩方寸匕を内れ、更に煮ること三沸、火より下(おろ)し小(すこ)しく冷やさしめ、少少之を嚥(の)む。半夏毒有り、散服するに當(あた)らず。

 

【三一四条】

少陰病、下利、白通湯主之。方十三。

少陰病、下利(げり)するは、白通湯(はくつうとう)之を主る。方十三。

 

〔白通湯方〕

葱白(四莖) 乾薑(一兩) 附子(一枚生去皮破八片)

右三味、以水三升、煮取一升、去滓、分温再服。

葱白(そうはく)(四莖) 乾薑(一兩) 附子(一枚、生、皮を去り、八片に破る)

右三味、水三升を以て、煮て一升を取り、滓を去り、分かち温め再服す。

 

【三一五条】

少陰病、下利、脉微者、與白通湯。利不止、厥逆無脉、乾嘔、煩者、白通加猪膽汁湯主之。服湯、脉暴出者死、微續者生。白通加猪膽湯。方十四(白通湯用上方)。

少陰病、下利し、脉微の者は、白通湯を與う。利止まず、厥逆して脉無く、乾嘔(かんおう)、煩する者は、白通加猪膽汁湯(はくつうかちょたんじゅうとう)之を主る。

湯を服して、脉暴(にわ)かに出づる者は、死す。微しく續(つづ)く者は、生く。白通加猪膽湯。方十四(白通湯は、上方を用う)。

 

〔白通加猪膽汁湯方〕

葱白(四莖) 乾薑(一兩) 附子(一枚生去皮破八片) 人尿(五合) 猪膽汁(一合)

右五味、以水三升、煮取一升、去滓、内膽汁、人尿、和令相得、分温再服。若無膽亦可用。

葱白(四莖) 乾薑(一兩) 附子(一枚、生、皮を去り、八片に破る) 人尿(じんにょう)(五合) 猪膽汁(ちょたんじゅう)(一合)

右五味、水三升を以て、煮て一升を取り、滓を去り、膽汁、人尿を内れ、和して相い得せしめ、分かち温め再服す。若し膽(たん)無くも亦(ま)た、用うべし。

 

【三一六条】

少陰病、二三日不已、至四五日、腹痛、小便不利、四肢沈重疼痛、自下利者、此為有水氣。其人或欬、或小便利、或下利、或嘔者、真武湯主之。方十五。

少陰病、二、三日して已(や)まず、四、五日に至り、腹痛、小便不利、四肢沈重(ちんじゅう)疼痛(とうつう)、自下利する者は、此れ水氣(すいき)有りと為(な)す。其の人或は欬(がい)し、或は小便利し、或は下利し、或は嘔する者は、真武湯之を主る。方十五。

 

〔真武湯方〕

茯苓(三兩) 芍藥(三兩) 白朮(二兩) 生薑(三兩切) 附子(一枚炮去皮破八片)

右五味、以水八升、煮取三升、去滓、温服七合、日三服。若欬者、加五味子半升、細辛一兩、乾薑一兩。若小便利者、去茯苓。若下利者、去芍藥、加乾薑二兩。若嘔者、去附子、加生薑、足前為半斤。

茯苓(三兩) 芍藥(三兩) 白朮(二兩) 生薑(三兩、切る) 附子(一枚、炮じて、皮を去り、八片に破る)

右五味、水八升を以て、煮て三升を取り、滓を去り、七合を温服し、日に三服す。若し欬(がい)する者は、五味子半升、細辛一兩、乾薑一兩を加う。

若し小便利する者は、茯苓を去る。若し下利する者は、芍藥を去り、乾薑二兩を加う。若し嘔する者は、附子を去り、生薑を加え、前に足して半斤と為す。

 

【三一七条】

少陰病、下利清穀、裏寒外熱、手足厥逆、脉微欲絶、身反不惡寒、其人面色赤。或腹痛、或乾嘔、或咽痛、或利止脉不出者、通脉四逆湯主之。方十六。

少陰病、下利(げり)清穀(せいこく)、裏寒外熱し、手足厥逆、脉微にして絶せんと欲し、身反って惡寒せず、其の人面色赤し。或は腹痛し、或は乾嘔し、或は咽痛し、或は利止みて脉出でざる者は、通脉四逆湯之を主る。方十六。

 

〔通脉四逆湯方〕

甘草(二兩炙) 附子(大者一枚生用去皮破八片) 乾薑(三兩強人可四兩)

右三味、以水三升、煮取一升二合、去滓、分温再服、其脉即出者愈。面色赤者、加葱九莖。腹中痛者、去葱、加芍藥二兩。嘔者、加生薑二兩。咽痛者、去芍藥、加桔梗一兩。利止脉不出者、去桔梗、加人參二兩。病皆與方相應者、乃服之。

甘草(二兩、炙る) 附子(大なる者一枚、生を用い皮を去り、八片に破る) 乾薑(三兩、強人は四兩とすべし)

右三味、水三升を以て、煮て一升二合を取り、滓を去り、分かち温め再服す。其の脉即ち出づる者は愈ゆ。

面色赤き者は、葱九莖を加う。腹中痛む者は、葱を去り、芍藥二兩を加う。嘔する者は、生薑二兩を加う。咽痛する者は、芍藥を去り、桔梗一兩を加う。

利止みて脉出でざる者は、桔梗を去り、人參二兩を加う。病皆方(ほう)と相應(そうおう)する者は、乃(すなわ)ち之を服す。

 

【三一八条】

少陰病、四逆、其人或欬、或悸、或小便不利、或腹中痛、或泄利下重者、四逆散主之。方十七。

少陰病、四逆し、其の人或は欬(がい)し、或は悸(き)し、或は小便不利し、或は腹中痛み、或は泄利(せつり)下重(げじゅう)する者は、四逆散之を主る。方十七。

 

〔四逆散方〕

甘草(炙) 枳實(破水漬炙乾) 柴胡 芍藥

右四味、各十分、擣篩、白飲和服方寸匕、日三服。欬者、加五味子、乾薑各五分、并主下利。悸者、加桂枝五分。小便不利者、加茯苓五分。腹中痛者、加附子一枚、炮令坼。泄利下重者、先以水五升、煮薤白三升、煮取三升、去滓、以散三方寸匕、内湯中、煮取一升半、分温再服。

甘草(炙る) 枳實(破りて水に漬(ひ)たし、炙り乾かす) 柴胡 芍藥

右四味、各々十分を擣(つ)き篩(ふる)い、白飲もて和し、方寸匕(ひ)を服し、日に三服す。欬する者は、五味子、乾薑各々五分を加え、并(なら)びに下利を主る。悸する者は、桂枝五分を加う。

小便不利の者は、茯苓五分を加う。腹中痛む者は、附子一枚を加え、炮じて坼(き)かしむ。泄利下重の者は、先ず水五升を以て、薤白(がいはく)三升を煮、煮て三升を取り、滓を去り、

散三方寸匕を以て、湯中に内れ、煮て一升半を取り、分かち温め再服す。

 

【三一九条】

少陰病、下利六七日、欬而嘔、渴、心煩、不得眠者、猪苓湯主之。方十八。

少陰病、下利すること六、七日、欬して嘔し、渴し、心煩して眠ることを得ざる者は、猪苓湯之を主る。方十八。

 

〔猪苓湯方〕

猪苓(去皮) 茯苓 阿膠 澤瀉 滑石(各一兩)

右五味、以水四升、先煮四物、取二升、去滓、内阿膠烊盡、温服七合、日三服。

猪苓(皮を去る) 茯苓 阿膠 澤瀉 滑石(各々一兩)

右五味、水四升を以て、先ず四物を煮て、二升を取り、滓を去り、阿膠を内れ烊盡(ようじん)し、七合を温服し、日に三服す。

 

【三二〇条】

少陰病、得之二三日、口燥咽乾者、急下之、宜大承氣湯。方十九。

少陰病、之を得て二、三日、口燥(かわ)き咽(のど)乾く者は、急に之を下す。大承氣湯に宜し。方十九。

 

〔大承氣湯方〕

枳實(五枚炙) 厚朴(半斤去皮炙) 大黄(四兩酒洗) 芒消(三合)

右四味、以水一斗、先煮二味、取五升、去滓、内大黄、更煮取二升、去滓、内芒消、更上火、令一兩沸、分温再服、一服得利、止後服。

枳實(五枚、炙る) 厚朴(半斤、皮を去り、炙る) 大黄(四兩、酒もて洗う) 芒消(三合)

右四味、水一斗を以て、先ず二味を煮て、五升を取り、滓を去り、大黄を内れ、更に煮て二升を取り、滓を去り、芒消を内れ、更に火に上(の)せ、一兩沸せしめ、分かち温め再服す。一服にて利を得れば、後服を止む。

 

【三二一条】

少陰病、自利清水、色純青、心下必痛、口乾燥者、可下之、宜大承氣湯。二十(用前第十九方一法用大柴胡)。

少陰病、清水(せいすい)を自利し、色純青(じゅんせい)、心下必ず痛み、口乾燥する者は、之を下すべし、大承氣湯に宜し。二十(前の第十九方を用う。一法に、大柴胡を用う)。

 

【三二二条】

少陰病、六七日、腹脹、不大便者、急下之、宜大承氣湯。二十一(用前第十九方)。

少陰病、六、七日、腹脹(は)りて、大便せざる者は、急に之を下す、大承氣湯に宜し。二十一(前の第十九方を用う)。

 

【三二三条】

少陰病、脉沈者、急温之、宜四逆湯。方二十二。

少陰病、脉沈の者は、急ぎ之を温む。四逆湯に宜し。方二十二。

 

〔四逆湯方〕

甘草(二兩炙) 乾薑(一兩半) 附子(一枚生用去皮破八片)

右三味、以水三升、煮取一升二合、去滓、分温再服。強人可大附子一枚、乾薑三兩。

甘草(二兩、炙る) 乾薑(一兩、半) 附子(一枚、生を用い、皮を去り、八片に破る)

右三味、水三升を以て、煮て一升二合を取り、滓を去り、分かち温め再服す。強人は、大附子一枚、乾薑三兩とすべし。

 

【三二四条】

少陰病、飲食入口則吐。心中温温欲吐、復不能吐。始得之、手足寒、脉弦遲者、此胸中實、不可下也、當吐之。若膈上有寒飲、乾嘔者、不可吐也、當温之、宜四逆湯。二十三(方依上法)。

少陰病、飲食口に入れば則ち吐す。心中温温(うんうん)として吐せんと欲すも、復た吐すこと能わず。始め之を得て、手足寒(ひ)え、脉弦遲の者は、此れ胸中實す。下すべからざるなり。當に之を吐すべし。

若し膈上に寒飲(かんいん)有りて、乾嘔(かんおう)する者は、吐すべからざるなり。當に之を温むべし。四逆湯に宜し。二十三(方は上法に依(よ)る)。

 

【三二五条】

少陰病、下利、脉微濇、嘔而汗出、必數更衣、反少者、當温其上、灸之(脉經云灸厥陰可五十壮)。

少陰病、下利し、脉微濇(しょく)、嘔して汗出で、必ず數(しば)しば更衣(こうい)するも、反って少なき者は、當に其の上を温め、之を灸すべし(脉經に云う、厥陰に灸すること五十壮とすべしと)。

 

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辨太陰病脉證并治 273~280条

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 また初学者のため、重複の労をいとわずルビをふっています。

 誤りを見つけられましたら、どうかコメント欄に投稿をお願いいたします。

  

 底本 趙開美刊 「仲景全書」所収 『傷寒論』十巻

                    日本漢方協会学術部 編 東洋学術出版社

 

     辨太陰病脉證并治 273~280条

                          第十(合三法方三首)

         太陰病の脉證并(なら)びに治を辨(べん)ず・第十(合わせて三法、方三首)

 

【二七三条】

太陰之為病、腹滿而吐、食不下、自利益甚、時腹自痛。若下之、必胸下結鞕。

太陰の病為(た)るや、腹滿して吐し、食下らず、自利(じり)益々甚だしく、時に腹自ら痛む。若し之を下せば、必ず胸下結鞕(けっこう)す。

 

【二七四条】

太陰中風、四肢煩疼、陽微陰濇而長者、為欲愈。

太陰の中風、四肢煩疼(はんとう)し、陽微(び)陰濇(しょく)にして長の者は、愈(え)えんと欲すと為(な)す。

 

【二七五条】

太陰病欲解時、從亥至丑上。

太陰病解せんと欲する時は、亥(い)從(よ)り丑(うし)の上に至る。

 

【二七六条】

太陰病、脉浮者、可發汗、宜桂枝湯。方一。

太陰病、脉浮の者は、汗を發すべし、桂枝湯に宜し。方一。

 

〔桂枝湯方〕

桂枝(三兩去皮) 芍藥(三兩) 甘草(二兩炙) 生薑(三兩切) 大棗(十二枚擘)

右五味、以水七升、煮取三升、去滓、温服一升、須臾啜熱稀粥一升、以助藥力、温覆取汗。

桂枝(三兩、皮を去る) 芍藥(三兩) 甘草(二兩、炙る) 生薑(三兩、切る) 大棗(十二枚、擘く)

右五味、水七升を以て、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す。須臾(しゅゆ)に熱稀粥(ねつきしゅく)一升を啜(すす)り、以て藥力を助け、温覆(おんぷく)して汗を取る。

 

【二七七条】

自利、不渴者、屬太陰、以其藏有寒故也、當温之。宜服四逆輩。二。

自利して、渴せざる者は、太陰に屬す。其の藏に寒有るを以ての故なり。當に之を温むべし。四逆輩(しぎゃくはい)を服すに宜し。二。

 

【二七八条】

傷寒脉浮而緩、手足自温者、繫在太陰。太陰當發身黄。若小便自利者、不能發黄。至七八日、雖暴煩下利、日十餘行、必自止。以脾家實、腐穢當去故也。

傷寒、脉浮にして緩、手足自ら温かき者は、繫(かか)りて太陰に在り。太陰は當に身に黄を發すべし。若し小便自利する者は、黄を發すること能わず。

七、八日に至りて、暴煩(ぼうはん)し、下利(げり)日に十餘(よ)行(こう)なりと雖も、必ず自ら止む。脾家實し、腐穢(ふあい)當に去るべきを以ての故なり。

 

【二七九条】

本太陽病、醫反下之、因爾腹滿時痛者、屬太陰也、桂枝加芍藥湯主之。大實痛者、桂枝加大黄湯主之。三。

本(もと)太陽病、醫反って之を下し、爾(そ)れに因りて腹滿し、時に痛む者は、太陰に屬するなり。桂枝加芍藥湯(けいしかしゃくやくとう)之を主る。大いに實痛する者は、桂枝加大黄湯(けいしかだいおうとう)之を主る。三。

 

〔桂枝加芍藥湯方〕

桂枝(三兩去皮) 芍藥(六兩) 甘草(二兩炙) 大棗(十二枚擘) 生薑(三兩切)

右五味、以水七升、煮取三升、去滓、温分三服。本云桂枝湯、今加芍藥。

桂枝(三兩、皮を去る) 芍藥(六兩) 甘草(二兩、炙る) 大棗(十二枚、擘く) 生薑(三兩、切る)

右五味、水七升を以て、煮て三升を取り、滓を去り、温め分かち三服す。本(もと)云う、桂枝湯に今芍藥を加うと。

 

〔桂枝加大黄湯方〕

桂枝(三兩去皮) 大黄(二兩) 芍藥(六兩) 生薑(三兩切) 甘草(二兩炙) 大棗(十二枚擘)

右六味、以水七升、煮取三升、去滓、温服一升、日三服。

桂枝(三兩、皮を去り) 大黄(二兩) 芍藥(六兩) 生薑(三兩、切る) 甘草(二兩、炙る) 大棗(十二枚、擘く)

右六味、水七升を以て、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服し、日に三服す。

 

【二八〇条】

太陰為病、脉弱、其人續自便利、設當行大黄、芍藥者、宜減之、以其人胃氣弱、易動故也(下利者先煎芍藥三沸)。

太陰の病為(た)るや、脉弱、其の人續(つづ)いて自ら便利す。設(も)し當に大黄、芍藥を行(や)るべき者は、宜しく之を減ずべし。其の人胃氣弱く、動じ易きを以ての故なり(下利する者は先ず芍藥を煎じて三沸す)。

 

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辨少陽病脉證并治 263~272条

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 底本 趙開美刊 「仲景全書」所収 『傷寒論』十巻

                    日本漢方協会学術部 編 東洋学術出版社

       辨少陽病脉證并治 263~272条

                              第九(方一首并見三陽合病法)

 少陽病の脉證(みゃくしょう)并(なら)びに治を辨(べん)ず・第九(方一首、并びに三陽の合病の法を見(あらわ)す)

 

【二六三条】

少陽之為病、口苦、咽乾、目眩也。

少陽の病為(た)る、口苦(にが)く、咽(のど)乾き、目眩(くるめ)くなり。

 

【二六四条】

少陽中風、兩耳無所聞、目赤、胸中滿而煩者、不可吐下、吐下則悸而驚。

少陽の中風、兩耳聞く所無く、目赤く、胸中滿ちて煩する者は、吐下すべからず。吐下すれば則ち悸して驚す。

 

【二六五条】

傷寒、脉弦細、頭痛發熱者、屬少陽。少陽不可發汗、發汗則讝語。此屬胃、胃和則愈。胃不和、煩而悸(一云躁)。

傷寒、脉弦細(げんさい)、頭痛發熱する者は、少陽に屬(ぞく)す。少陽は汗を發すべからず。汗を發すれば則ち讝語す。此れ胃に屬す。胃和すれば則ち愈ゆ。胃和せざれば、煩して悸す(一云躁)。

 

【二六六条】

本太陽病不解、轉入少陽者、脇下鞕滿、乾嘔不能食、往来寒熱、尚未吐下、脉沈緊者、與小柴胡湯。方一。

本(もと)太陽病解(げ)せず、轉じて少陽に入る者は、脇下(きょうか)鞕滿(こうまん)し、乾嘔(かんおう)して食すること能わず、往来寒熱す。尚お未だ吐下せず、脉沈緊の者は、小柴胡湯を與う。方一。

 

〔小柴胡湯方〕

柴胡(八兩) 人參(三兩) 黄芩(三兩) 甘草(三兩炙) 半夏(半升洗) 生薑(三兩切) 大棗(十二枚擘)

右七味、以水一斗二升、煮取六升、去滓、再煎取三升、温服一升、日三服。

 

柴胡(八兩) 人參(三兩) 黄芩(三兩) 甘草(三兩、炙る) 半夏(半升、洗う) 生薑(三兩、切る) 大棗(十二枚、擘く)

右七味、水一斗二升を以て、煮て六升を取り、滓を去り、再煎して三升を取り、一升を温服し、日に三服す。

 

【二六七条】

若已吐、下、發汗、温鍼、讝語、柴胡湯證罷、此為壞病、知犯何逆、以法治之。

若し已(すで)に吐し、下し、發汗し、温鍼し、讝語し、柴胡湯の證罷(や)むは、此れを壞病(えびょう)と為(な)す、何れの逆を犯すかを知り、法を以て之を治す。

 

【二六八条】

三陽合病、脉浮大、上關上、但欲眠睡、目合則汗。

三陽の合病、脉浮大にして、關上に上り。但だ眠睡(みんすい)せんと欲し、目合(がっ)すれば則ち汗す。

 

【二六九条】

傷寒六七日、無大熱、其人躁煩者、此為陽去入陰故也。

傷寒六、七日、大熱無く、其の人躁煩する者は、此れ陽去りて陰に入るを為(な)すが故なり。

 

【二七〇条】

傷寒三日、三陽為盡、三陰當受邪。其人反能食而不嘔、此為三陰不受邪也。

傷寒三日、三陽盡(つ)くると為す、三陰當に邪を受くべし。其の人反って能く食して嘔せざるは、此れ三陰邪を受けずと為すなり。

 

【二七一条】

傷寒三日、少陽脉小者、欲已也。

傷寒三日、少陽脉小なる者は、已(や)まんと欲するなり。

 

【二七二条】

少陽病欲解時、從寅至辰上。

少陽病解せんと欲する時は、寅(とら)從(よ)り辰(たつ)の上に至る。

 

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辨陽明病脉證并治 179~262条

 志ある学徒の、簡便な道具にならんことを願って読み下し文を記しています。

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 底本 趙開美刊 「仲景全書」所収 『傷寒論』十巻

                    日本漢方協会学術部 編 東洋学術出版社

 

   辨陽明病脉證并治 179~262条

              第八(合四十四法方一十首一方附并見陽明少陽合病法)

 陽明病の脉證、并(なら)びに治を辨(べん)ず。第八。(合わせて四十四法、方一十首、一方附す、并びに陽明少陽の合病の法を見(あらわ)す)

 

【一七九条】

問曰、病有太陽陽明、有正陽陽明、有少陽陽明、何謂也。答曰、太陽陽明者、脾約(【一云絡)是也。正陽陽明者、胃家實是也。少陽陽明者、發汗、利小便已、胃中燥、煩、實、大便難是也。

 

問いて曰く、病に太陽陽明有り、正陽陽明有り、少陽陽明有りとは、何の謂(い)いぞや。

答えて曰く、太陽陽明なる者は、脾約(ひやく)(一云絡)是れなり。

正陽の陽明なる者は、胃家實是れなり。少陽陽明なる者は、汗を發し、小便利し已(おわ)り、胃中燥き、煩し、實し、大便難是れなり。

 

【一八〇条】

陽明之為病、胃家實(一作寒)是也。

陽明の病為(た)るや、胃家實(一作寒)是れなり。

 

【一八一条】

問曰、何緣得陽明病。答曰、太陽病、若發汗、若下、若利小便、此亡津液、胃中乾燥、因轉屬陽明。不更衣、内實大便難者、此名陽明也。

問いて曰く、何に緣(よ)りて陽明病を得るや。答えて曰く、太陽病、若しくは汗を發し、若しくは下し、若しくは小便利す。此れ津液を亡(なく)し、胃中乾燥し、因(よ)りて陽明に轉屬す。更衣せず、内實し大便難の者は、此れを陽明と名づく。

 

【一八二条】

問曰、陽明病外證云何。答曰、身熱、汗自出、不惡寒反惡熱也。

問いて曰く、陽明病の外證とは何を云うや。答えて曰く、身熱し、自ずと汗出で、惡寒せず、反って惡熱するなり。

 

【一八三条】

問曰、病有得之一日、不發熱而惡寒者、何也。答曰、雖得之一日、惡寒將自罷、即自汗出而惡熱也。

問いて曰く、病之を得ること一日、發熱せずして惡寒する者有りとは、何ぞや。答えて曰く、之を得ること一日と雖も、惡寒し將(まさ)に自ら罷(や)まんとするは、即ち自ずと汗出でて惡熱するなりと。

 

【一八四条】

問曰、惡寒何故自罷。答曰、陽明居中、主土也。萬物所歸、無所復傳。始雖惡寒、二日自止、此為陽明病也。

問いて曰く、惡寒何が故(ゆえ)に自ら罷(や)むと。答えて曰く、陽明は中に居きて、土を主るなり。萬物の歸(き)する所にして、復た傳わる所無しと。始め惡寒すると雖も、二日に自ずと止む。此れ陽明病と為すなり。

 

【一八五条】

本太陽、初得病時、發其汗、汗先出不徹、因轉屬陽明也。傷寒發熱、無汗、嘔不能食、而反汗出濈濈然者、是轉屬陽明也。

本(もと)太陽、初め病を得る時、其の汗を發し、汗先ず出づるも徹せず、因りて陽明に轉屬するなり。傷寒、發熱、汗無く、嘔して食すること能わず。而るに反って汗出ずること濈濈(しゅうしゅう)然たる者は、是れ陽明に轉屬するなり。

 

【一八六条】

傷寒三日、陽明脉大。

傷寒三日、陽明の脉大。

 

【一八七条】

傷寒脉浮而緩、手足自温者、是為繫在太陰。太陰者、身當發黄。若小便自利者、不能發黄。至七八日、大便鞕者、為陽明病也。

傷寒、脉浮にして緩、手足自ら温なる者は、是れ太陰に在りて繫(かか)ると為す。太陰の者、身當(まさ)に黄を發すべし。若し小便自利する者は、黄を發すること能わず。七、八日に至り、大便鞕(かた)き者は、陽明病と為すなり。

 

【一八八条】

傷寒轉繫陽明者、其人濈然微汗出也。

傷寒、轉じて陽明に繫(かか)る者は、其の人濈然(しゅうぜん)として微(すこ)しく汗出ずるなり。

 

【一八九条】

陽明中風、口苦、咽乾、腹滿、微喘、發熱、惡寒、脉浮而緊。若下之、則腹滿小便難也。

陽明の中風、口苦く、咽乾き、腹滿し、微(かす)かに喘(ぜん)し、發熱し、惡寒し、脉浮にして緊。若し之を下せば、則ち腹滿し、小便難なり。

 

【一九〇条】

陽明病、若能食、名中風。不能食、名中寒。

陽明病、若し能(よ)く食するは、中風と名づく。食すること能わざるは、中寒と名づく。

 

【一九一条】

陽明病、若中寒者、不能食、小便不利、手足濈然汗出、此欲作固瘕、必大便初鞕後溏。所以然者、以胃中冷、水穀不別故也。

陽明病、若し中寒する者は、食すること能わず、小便不利し、手足濈然(しゅくぜん)汗出ず。此れ固瘕(こか)を作(な)さんと欲す。必ず大便初め鞕く、後溏(とう)す。然る所以の者は、胃中冷え、水穀別たざるを以ての故なり。

 

【一九二条】

陽明病、初欲食、小便反不利、大便自調、其人骨節疼、翕翕如有熱狀、奄然發狂、濈然汗出而解者、此水不勝穀氣、與汗共并、脉緊則兪。

陽明病、初め食を欲し、小便反って利せず、大便自ら調う、其の人骨節疼(うず)き、翕翕(きゅうきゅう)として熱狀有るが如く、奄然(えんぜん)として狂を發し、濈然(しゅうぜん)として汗出でて解する者は、此れ水穀氣に勝たず、汗と共に并(あわ)さり、脉緊なれば則ち兪ゆ。

 

【一九三条】

陽明病、欲解時、從申至戌上。

陽明病、解せんと欲する時は、申(さる)從(よ)り戌(いぬ)の上に至る。

 

【一九四条】

陽明病、不能食、攻其熱必噦。所以然者、胃中虛冷故也。以其人本虛、攻其熱必噦。

陽明病、食すること能わざるに、其の熱を攻むれば必ず噦(えっ)す。然る所以(ゆえん)の者は、胃中虛冷するが故なり。其の人本(もと)虛するを以て、其の熱を攻むれば必ず噦す。

 

【一九五条】

陽明病、脉遲、食難用飽。飽則微煩頭眩、必小便難、此欲作穀癉、雖下之、腹滿如故。所以然者、脉遲故也。

陽明病、脉遲、食を用いて飽き難し。飽けば則ち微煩(びはん)、頭眩(ずげん)し、必ず小便難。此れ穀癉(こくたん)を作(な)さんと欲す。之を下すと雖も、腹滿故(もと)の如し。然る所以の者は、脉遲なるが故なり。

 

【一九六条】

陽明病、法多汗、反無汗、其身如蟲行皮中狀者、此以久虛故也。

陽明病、法は汗多きに、反って汗無く、其の身蟲(むし)の皮中を行く狀の如き者は、此れ久しく虛するを以ての故なり。

 

【一九七条】

陽明病、反無汗而小便利、二三日嘔而欬、手足厥者、必苦頭痛。若不欬、不嘔、手足不厥者、頭不痛。(一云冬陽明)

陽明病、反って汗無くして小便利し、二、三日嘔して欬(がい)し、手足厥する者は、必ず頭痛を苦しむ。若し欬せず、嘔せず、手足厥せざる者は、頭痛まず。(一云冬陽明)

 

【一九八条】

陽明病、但頭眩、不惡寒。故能食而欬、其人咽必痛。若不欬者、咽不痛。(一云冬陽明)

陽明病、但だ頭眩(ずげん)して、惡寒せず。故に能(よ)く食して欬し、其の人咽(のど)必ず痛む。若し欬せざる者は、咽痛まず。(一云冬陽明)

 

【一九九条】

陽明病、無汗、小便不利、心中懊憹者、身必發黄。

陽明病、汗無く、小便不利し、心中懊憹(おうのう)する者は、身必ず黄を發す。

 

【二〇〇条】

陽明病、被火、額上微汗出、而小便不利者、必發黄。

陽明病、火を被(こおむ)り、額上(がくじょう)微(すこ)しく汗出でて、小便不利する者は、必ず黄を發す。

 

【二〇一条】

陽明病、脉浮而緊者、必潮熱發作有時。但浮者、必盗汗出。

陽明病、脉浮にして緊の者は、必ず潮熱し、發作に時(とき)有り。但だ浮の者は、必ず盗汗(とうかん)出ず。

 

【二〇二条】

陽明病、口燥但欲漱水、不欲嚥者、此必衄。

陽明病、口燥(かわ)き、但だ水を漱(すす)がんと欲し、嚥(の)むことを欲せざる者は、此れ必ず衄(じく)す。

 

【二〇三条】

陽明病、本自汗出。醫更重發汗、病已差、尚微煩不了了者、此必大便鞕故也。以亡津液、胃中乾燥、故令大便鞕。當問其小便日幾行、若本小便日三四行、今日再行、故知大便不久出。今為小便數少、以津液當還入胃中、故知不久必大便也。

陽明病、本(もと)自ずと汗出ず。醫更に重ねて汗を發し、病已(すで)に差(い)ゆるも、尚(な)お微煩して了了とせざる者は、此れ必ず大便鞕(かた)きが故なり。津液を亡(なく)し、胃中乾燥するを以ての故に、大便をして鞕からしむ。當に其の小便日に幾行(いくこう)なるかを問うべし。若し本(もと)小便日に三、四行なるに、今日に再行す。故に大便久しからずして出づるを知る。今、小便の數(かず)少なきが為に、津液當に還(めぐ)りて胃中に入るべきを以ての故に、久しからずして必ず大便するを知るなり。

 

【二〇四条】

傷寒嘔多、雖有陽明證、不可攻之。

傷寒、嘔多きは、陽明の證有りと雖も、之を攻む可からず。

 

【二〇五条】

陽明病、心下鞕滿者、不可攻之。攻之、利遂不止者死。利止者愈。

陽明病、心下鞕滿(こうまん)する者は、之を攻むべからず。之を攻め、利遂(つい)に止まざる者は死す。利止む者は愈ゆ。

 

【二〇六条】

陽明病、面合色赤、不可攻之。必發熱、色黄者、小便不利也。

陽明病、面色赤きを合するは、之を攻むべからず。必ず發熱す。色黄の者は、小便利せざるなり。

 

【二〇七条】

陽明病、不吐、不下、心煩者、可與調胃承氣湯。方一。

陽明病、吐さず、下さず、心煩する者は、調胃承氣湯を與うべし。方一。

 

 

〔調胃承氣湯方〕

甘草(二兩炙) 芒消(半升) 大黄(四兩清酒洗)

右三味、切、以水三升、煮二物至一升、去滓、内芒消。更上微火一二沸、温頓服之、以調胃氣。

甘草(二兩、炙る) 芒消(半升) 大黄(四兩、清酒もて洗う)

右三味、切り、水三升を以て、二物を煮て一升に至り、滓を去り、芒消を内れ。更に微火(びか)に上(の)せて一、二沸し、温めて之を頓服し、以て胃氣を調う。

 

【二〇八条】

陽明病、脉遲、雖汗出不惡寒者、其身必重、短氣、腹滿而喘、有潮熱者、此外欲解、可攻裏也。手足濈然汗出者、此大便已鞕也、大承氣湯主之。若汗多、微發熱惡寒者、外未解也(一法與桂枝湯)。其熱不潮、未可與承氣湯。若腹大滿不通者、可與小承氣湯、微和胃氣、勿令至大泄下。大承氣湯。方二。

陽明病、脉遲(ち)、汗出ずると雖も、惡寒せざる者は、其の身必ず重く、短氣し、腹滿して喘(ぜん)し、潮熱有る者は、此れ外解(げ)せんと欲す、裏を攻むべきなり。手足濈然(しゅうぜん)として汗出づる者は、此れ大便已(すで)に鞕(こう)なり、大承氣湯(だいじょうきとう)之を主る。若し汗多く、微(すこ)しく發熱惡寒する者は、外未(いま)だ解せざるなり(一法與桂枝湯)。其れ熱潮せずんば、未だ承氣湯を與うべからず。若し腹大いに滿ちて通せざる者は、小承氣湯を與え、微(すこ)しく胃氣を和すべし、大いに泄下(せつか)に至らしむことなかれ。大承氣湯。方二。

 

〔大承氣湯方〕

大黄(四兩酒洗) 厚朴(半斤炙去皮) 枳實(五枚炙) 芒消(三合)

右四味、以水一斗、先煮二物、取五升、去滓。内大黄、更煮取二升、去滓。内芒消、更上微火一兩沸、分温再服。得下、餘勿服。

大黄(四兩、酒もて洗う) 厚朴(半斤、炙り、皮を去る) 枳實(きじつ)(五枚、炙る) 芒消(三合)

右四味、水一斗を以て、先ず二物を煮て、五升を取り、滓を去る。大黄を内れ、更に煮て二升を取り、滓を去る。芒消を内れ、

更に微火に上(の)せ、一、兩沸し、分かち温め再服す。下(げ)を得れば、餘は服すことなかれ。

 

〔小承氣湯方〕

大黄(四兩酒洗) 厚朴(二兩炙去皮) 枳實(三枚大者炙)

右三味、以水四升、煮取一升二合、去滓、分温二服。初服湯當更衣、不爾者盡飲之。若更衣者、勿服之。

大黄(四兩、酒もて洗う) 厚朴(二兩、炙り、皮を去る) 枳實(三枚、大なる者、炙る)

右三味、水四升を以て、煮て一升二合を取り、滓を去り、分かち温め二服す。初め湯を服して當(まさ)に更衣すべし、爾(しか)らざる者は、盡(ことごと)く之を飲む。若し更衣する者は、之を服すなかれ。

 

【二〇九条】

陽明病、潮熱、大便微鞕者、可與大承氣湯。不鞕者、不可與之。若不大便六七日、恐有燥屎、欲知之法、少與小承氣湯、湯入腹中、轉失氣者、此有燥屎也、乃可攻之。若不轉失氣者、此但初頭鞕、後必溏、不可攻之、攻之必脹滿不能食也。欲飲水者、與水則噦。其後發熱者、必大便復鞕而少也、以小承氣湯和之。不轉失氣者、慎不可攻也。小承氣湯。三(用前第二方)。

陽明病、潮熱し、大便微(すこ)しく鞕なる者は、大承氣湯を與うべし。鞕ならざる者は、之を與うべからず。若し大便せざること六、七日なれば、恐らくは燥屎(そうし)有り。之を知らんと欲するの法は、少しく小承氣湯を與え、湯腹中に入り、轉(てん)失氣する者は、此れ燥屎有るなり、乃(すなわ)ち之を攻むべし。若し轉失氣せざる者は、此れ但(た)だ初頭(しょとう)鞕く、後必ず溏(とう)す、之を攻むべからず。之を攻むれば、必ず脹滿し食すること能わざるなり。水を飲まんと欲する者に、水を與えれば則ち噦(えつ)す。其の後發熱する者は、必ず大便復(ま)た鞕くして少なきなり、小承氣湯を以て之を和す。轉失氣せざる者は、慎んで攻むべからざるなり。小承氣湯。三(用前第二方)。

 

【二一〇条】

夫實則讝語、虛則鄭聲。鄭聲者、重語也。直視、讝語、喘滿者死、下利者亦死。

夫(そ)れ實すれば則ち讝語(せんご)し、虛すれば則ち鄭聲(ていせい)す。鄭聲なる者は、重語(じゅうご)なり。直視し、讝語(せんご)し、喘滿(ぜんまん)する者は死す。下利する者も亦た死す。

 

【二一一条】

發汗多、若重發汗者、亡其陽、讝語、脉短者死。脉自和者不死。

汗を發すること多く、若し重ねて發汗する者は、其の陽を亡(なく)し、讝語(せんご)す。脉短(たん)の者は死す。脉自(おのずか)ら和す者は死せず。

 

【二一二条】

傷寒若吐、若下後不解、不大便五六日、上至十餘日、日晡所發潮熱、不惡寒、獨語如見鬼狀。若劇者、發則不識人、循衣摸牀、惕而不安(一云順衣妄撮怵惕不安)、微喘直視、脉弦者生、濇者死。微者、但發熱讝語者、大承氣湯主之。若一服利、則止後服。四(用前第二方)。

傷寒、若しくは吐し、若しくは下したる後解(げ)せず、大便せざること五、六日、上は十餘日に至り、日晡所潮熱(にっぽしょちょうねつ)を發し、惡寒せず、獨語(どくご)して鬼狀を見るが如し。若し劇しき者は、發すれば則ち人を識(し)らず、循衣摸牀(じゅんいもしょう)、惕(てき)して安(やすら)かならず。(一云順衣妄撮怵惕不安)、微喘(びぜん)して直視す。脉弦の者は生き、濇(しょく)の者は死す。微(び)の者、但だ發熱讝語(せんご)する者は、大承氣湯之を主る。若し一服にて利せば、則ち後服(こうふく)を止む。四(用前第二方)。

 

【二一三条】

陽明病、其人多汗、以津液外出、胃中燥、大便必鞕、鞕則讝語、小承氣湯主之。若一服讝語止者、更莫復服。五(用前第二方)。

陽明病、其の人汗多く、津液外に出で、胃中燥くを以て、大便必ず鞕す。鞕なれば則ち讝語す。小承氣湯之を主る。若し一服にて讝語止む者は、更に復た服することなかれ。五(用前第二方)。

 

【二一四条】

陽明病、讝語、發潮熱、脉滑而疾者、小承氣湯主之。因與承氣湯一升、腹中轉氣者、更服一升。若不轉氣者、勿更與之。明日又不大便、脉反微濇者、裏虛也、為難治、不可更與承氣湯也。六(用前第二方)。

陽明病、讝語し、潮熱を發し、脉滑にして疾(しつ)の者は、小承氣湯之を主る。因(よ)りて承氣湯一升を與え、腹中轉氣(てんき)する者は、更に一升を服す。若し轉氣せざる者は、更に之を與うることなかれ。

明日、又、大便せず、脉反って微濇(びしょく)の者は、裏虛するなり、治し難しと為す。更に承氣湯を與うべからざるなり。六(前の第二方を用う)。

 

【二一五条】

陽明病、讝語、有潮熱、反不能食者、胃中必有燥屎五六枚也。若能食者、但鞕耳。宜大承氣湯下之。七(用前第二方)。

陽明病、讝語して、潮熱有り。反って食すること能わざる者は、胃中に必ず燥屎五、六枚有るなり。若し能く食する者は、但だ鞕きのみ。宜しく大承氣湯にて之を下すべし。七(前に第二方を用いる)。

 

【二一六条】

陽明病、下血、讝語者、此為熱入血室。但頭汗出者、刺期門、隨其實而寫之、濈然汗出則愈。

陽明病、下血、讝語する者は、此れ熱血室に入ると為す。但だ頭に汗出ずる者は、期門を刺す。其の實に隨(したが)って之を寫す、濈然(しゅうぜん)として汗出づれば則ち愈ゆ。

 

【二一七条】

汗(汗一作臥)出讝語者、以有燥屎在胃中、此為風也。須下者、過經乃可下之。下之若早、語言必亂、以表虛裏實故也。下之愈、宜大承氣湯。八(用前第二方一云大柴胡湯)。

汗(汗一作臥)出でて讝語する者は、燥屎有りて胃中に在(あ)るを以て、此れを風と為すなり。須(すべから)く下すべき者は、過經(かけい)すれば乃ち之を下すべし。之を下すこと若し早ければ、語言必ず亂る。

表虛し裏實するを以ての故なり。之を下せば愈ゆ。大承氣湯に宜し。八(前の第二方を用う。一に大柴胡湯と云う)。

 

【二一八条】

傷寒四五日、脉沈而喘滿。沈為在裏、而反發其汗、津液越出、大便為難。表虛裏實、久則讝語。

傷寒四、五日、脉沈にして喘滿(ぜんまん)す。沈は裏に在ると為す、而(しか)るに反って其の汗を發し、津液越出(えつしゅつ)し、大便難(がた)きを為し、表虛し裏實す。久しければ則ち讝語す。

 

二一九条】

三陽合病、腹滿、身重、難以轉側、口不仁、面垢(又作枯一云向經)、讝語、遺尿。發汗、則讝語、下之則額上生汗、手足逆冷。若自汗出者、白虎湯主之。方九。

三陽の合病、腹滿し、身重く、以って轉側し難く、口不仁し、面垢(あか)づき(又作枯一云向經)、讝語し、遺尿す。汗を發すれば、則ち讝語す、之を下せば則ち額上に汗を生じ、手足逆冷す。若し自汗出ずる者は、白虎湯之を主る。方九。

 

〔白虎湯方〕

知母(六兩) 石膏(一斤碎) 甘草(二兩炙) 粳米(六合)

右四味、以水一斗、煮米熟、湯成、去滓、一升温服、日三服。

知母(六兩) 石膏(一斤碎) 甘草(二兩炙) 粳米(六合)

右四味、水一斗を以て、煮て米熟し、湯成りて、滓を去り、一升を温服し、日に三服す。

 

【二二〇条】

二陽併病、太陽證罷、但發潮熱、手足漐漐汗出、大便難而讝語者、下之則愈、宜大承氣湯。十(用前第二方)。

二陽の併病、太陽の證罷(や)みて、但だ潮熱を發し、手足漐漐(ちゅうちゅう)として汗出で、大便難くして讝語する者は、之を下せば則ち愈ゆ、大承氣湯に宜し。十(前の第二方を用う)。

 

【二二一条】

陽明病、脉浮而緊、咽燥、口苦、腹滿而喘、發熱汗出、不惡寒反惡熱、身重。若發汗則躁、心憒憒(公對切)反讝語。若加温鍼、必怵惕煩躁不得眠。若下之、則胃中空虛、客氣動膈、心中懊憹。舌上胎者、梔子豉湯主之。方十一。

陽明病、脉浮にして緊、咽(のど)燥(かわ)き、口苦く、腹滿して喘し、發熱汗出で、惡寒せず反って惡熱し、身重し。若し汗發すれば則ち躁(そう)し、心憒憒(しんかいかい)として(公對切)反って讝語す。若し温鍼を加うれば、必ず怵惕(じゅってき)煩躁して眠を得ず。若し之を下せば、則ち胃中空虛し、客氣膈を動じ、心中懊憹(おうのう)す。舌上胎ある者は、梔子豉湯(しししとう)之を主る。方十一。

 

〔梔子豉湯方〕

肥梔子(十四枚擘) 香豉(四合綿裹)

右二味、以水四升、煮梔子、取二升半、去滓、内豉、更煮取一升半、去滓、分二服、温進一服。得快吐者、止後服。

 

肥梔子(十四枚擘く) 香豉(四合、綿もて裹む)

右二味、水四升を以て、梔子を煮て、二升半を取り、滓を去り、豉(し)を内(い)れ、更に煮て一升半を取り、滓を去り、二服に分かち、一服を温進す。快吐(かいと)を得る者は、後服を止む。

 

【二二二条】

若渴欲飲水、口乾舌燥者、白虎加人參湯主之。方十二。

若し渴して飲水せんと欲し、口乾き舌燥(かわ)く者は、白虎加人參湯之を主る。方十二。

 

〔白虎加人參湯方〕

知母(六兩) 石膏(一斤碎) 甘草(二兩炙) 粳米(六合) 人參(三兩)

右五味、以水一斗、煮米熟、湯成、去滓、温服一升、日三服。

 

知母(六兩) 石膏(一斤、碎(くだ)く) 甘草(二兩、炙る) 粳米(六合) 人參(三兩)

右五味、水一斗を以て、煮て米熟し、湯成りて、滓を去り、一升を温服し、日に三服す。

 

【二二三条】

若脉浮、發熱、渴欲飲水、小便不利者、猪苓湯主之。方十三。

若し脉浮、發熱、渴して飲水せんと欲し、小便不利する者は、猪苓湯(ちょれいとう)之を主る。方十三。

 

〔猪苓湯方〕

猪苓(去皮) 茯苓 澤瀉 阿膠 滑石(碎各一兩)

右五味、以水四升、先煮四味、取二升、去滓。内阿膠烊消。温服七合、日三服。

 

猪苓(ちょれい)(皮を去る) 茯苓 澤瀉(たくしゃ) 阿膠(あきょう) 滑石(かっせき)(碎(くだ)く、各一兩)

右五味、水四升を以て、先ず四味を煮て、二升を取り、滓を去る。阿膠を内(い)れて烊消(ようしょう)す。七合を温服し、日に三服す。

 

【二二四条】

陽明病、汗出多而渴者、不可與猪苓湯。以汗多胃中燥、猪苓湯復利其小便故也。

陽明病、汗出ずること多くして渴する者は、猪苓湯を與(あた)うべからず。汗多く胃中燥(かわ)くに、猪苓湯にて復た其の小便を利するを以ての故なり。

 

【二二五条】

脉浮而遲、表熱裏寒、下利清穀者、四逆湯主之。方十四。

脉浮にして遲、表熱し裏寒し、下利(げり)清穀する者は、四逆湯之を主る。方十四。

 

〔四逆湯方〕

甘草(二兩炙) 乾薑(一兩半) 附子(一枚生用去皮破八片)

右三味、以水三升、煮取一升二合、去滓、分温二服、強人可大附子一枚、乾薑三兩。

 

甘草(二兩炙る) 乾薑(一兩半) 附子(一枚、生を用い、皮を去り、八片に破る)

右三味、水三升を以て、煮て一升二合を取り、滓を去り、分かち温ため二服す、強人は、大附子一枚、乾薑三兩とすべし。

 

【二二六条】

若胃中虛冷、不能食者、飲水則噦。

若し胃中虛冷し、食すること能わざる者は、水を飲めば則ち噦(えっ)す。

 

【二二七条】

脉浮、發熱、口乾、鼻燥、能食者則衄。

脉浮、發熱、口乾き、鼻燥(かわ)き、能く食する者は、則ち衄(じく)す。

 

【二二八条】

陽明病、下之、其外有熱、手足温、不結胸、心中懊憹、飢不能食、但頭汗出者、梔子豉湯主之。十五(用前第十一方)。

陽明病、之を下し、其の外に熱有り、手足温(おん)にして、結胸せず、心中懊憹(おうのう)し、飢えて食すること能わず、但だ頭汗出ずる者は、梔子豉湯(しししとう)之を主る。十五(前の第十一方を用う)。

 

【二二九条】

陽明病、發潮熱、大便溏、小便自可、胸脇滿不去者、與小柴胡湯。方十六。

陽明病、潮熱を發し、大便溏(とう)し、小便自(おのずか)ら可(か)なり、胸脇滿ちて去らざる者は、小柴胡湯を與う。方十六。

 

〔小柴胡湯方〕

柴胡(半斤) 黄芩(三兩) 人參(三兩) 半夏(半升洗) 甘草(三兩炙) 生薑(三兩切) 大棗(十二枚擘)

右七味、以水一斗二升、煮取六升、去滓、再煎取三升、温服一升、日三服。

 

柴胡(半斤) 黄芩(三兩) 人參(三兩) 半夏(半升、洗う) 甘草(三兩、炙る) 生薑(三兩、切る) 大棗(十二枚、擘(つんざ)く)

右七味、水一斗二升を以て、煮て六升を取り、滓を去り、再煎して三升を取り、一升を温服し、日に三服す。

 

【二三〇条】

陽明病、脇下鞕滿、不大便而嘔、舌上白胎者、可與小柴胡湯。上焦得通、津液得下、胃氣因和、身濈然汗出而解。十七(用上方)。

陽明病、脇下鞕滿(こうまん)し、大便せずして嘔し、舌上白胎(はくたい)の者は、小柴胡湯を與うべし。上焦通ずるを得、津液下るを得、胃氣因(よ)りて和し、身濈然(しゅうぜん)として汗出で解す。十七(上方を用う)。

 

【二三一条】

陽明中風、脉弦浮大、而短氣、腹都滿、脇下及心痛、久按之氣不通、鼻乾、不得汗、嗜臥、一身及目悉黄、小便難、有潮熱、時時噦、耳前後腫、刺之小差、外不解。病過十日、脉續浮者、與小柴胡湯。十八(用上方)。

陽明中風、脉弦浮大にして短氣し、腹都(すべ)て滿ち、脇下及び心痛み、久しく之を按ずれども氣通ぜず、鼻乾き、汗を得ず、嗜臥(しが)し、一身及び目悉(ことごと)く黄ばみ、小便難(がた)く、潮熱有り、時時噦(えっ)し、耳の前後腫れ、之を刺せば小しく差(い)ゆれども、外解せず。病十日を過ぎ、脉續いて浮の者は、小柴胡湯を與う。十八(上方を用う)。

 

【二三二条】

脉但浮、無餘證者、與麻黄湯。若不尿、腹滿加噦者、不治。麻黄湯。方十九。

脉但(た)だ浮にして、餘證(よしょう)無き者は、麻黄湯を與う。若し尿せず、腹滿ちて噦(えつ)を加うる者は、治せず。麻黄湯。方十九。

 

〔麻黄湯方〕

麻黄(三兩去節) 桂枝(二兩去皮) 甘草(一兩炙) 杏仁(七十箇去皮尖)

右四味、以水九升、煮麻黄、減二升、去白沫、内諸藥、煮取二升半、去滓、温服八合。覆取微似汗。

 

麻黄(三兩、節を去る) 桂枝(二兩、皮を去る) 甘草(一兩、炙る) 杏仁(七十箇、皮尖を去る)

右四味、水九升を以て、麻黄を煮て、二升を減じ、白沫を去り、諸藥を内れ、煮て二升半を取り、滓を去り、八合を温服す。覆(おお)いて微(すこ)しく汗に似たるを取る。

 

【二三三条】

陽明病、自汗出。若發汗、小便自利者、此為津液内竭、雖鞕不可攻之。當須自欲大便、宜蜜煎導而通之。若土瓜根及大猪膽汁、皆可為導。二十。

陽明病、自汗出ず。若し汗を發し、小便自利する者は、此れ津液内に竭(つ)くると為す。鞕(かた)きと雖も之を攻むべからず。

當に須(すべから)く大便せんと欲は、蜜煎導(みつせんどう)にて之を通じるに宜し。若しくは土瓜根(どかこん)、及び大猪(だいちょ)膽汁(たんじゅう)、皆導(どう)を為すべし。二十。

 

〔蜜煎方〕(みつせんほう)

食蜜(七合)

右一味、於銅器内微火煎、當須凝如飴狀、攪之勿令焦著、欲可丸、併手捻作挺、令頭營鋭、大如指、長二寸許。當熱時急作、冷則鞕。以内穀道中、以手急抱、欲大便時乃去之。疑非仲景意、已試甚良。

又大猪膽一枚、瀉汁、和少許法醋、以灌穀道内、如一食頃、當大便出宿食惡物、甚效。

 

食蜜(七合)

右一味、銅器内に於て微火にて煎ず。當に凝(こ)りて飴狀(いじょう)の如くなるを須(ま)ちて、之を攪(かきま)わして焦げ著(つ)かせしむることなかれ。

丸ずべしと欲せば、手を併(あわ)せて捻(ひね)りて挺(てい)と作(な)し、頭をして鋭ならしめ、大きさ指の如く、長さ二寸許(ばか)りにす。當に熱き時に急に作(つく)るべし。冷ゆれば則ち鞕し。以て穀道の中に内れ、手を以て急に抱え、大便せんと欲する時は、乃ち之を去る。疑うらくは仲景の意に非ざるも、已に試みて甚だ良し。

又、大猪膽(だいちょたん)一枚、汁を瀉(そそ)ぎ、少し許(ばか)りの法醋(ほうさく)に和して、以て穀道の内に灌(そそ)ぐ。一食頃(いっしょくけい)の如きうちに、當に大便して宿食惡物(おぶつ)を出だすべし、甚だ效あり。

 

【二三四条】

陽明病、脉遲、汗出多、微惡寒者、表未解也、可發汗、宜桂枝湯。二十一。

陽明病、脉遲、汗出ずること多く、微惡寒する者は、表未だ解(げ)せざるなり、汗を發すべし、桂枝湯に宜し。二十一。

 

〔桂枝湯方〕

桂枝(三兩去皮) 芍藥(三兩) 生薑(三兩) 甘草(二兩炙) 大棗(十二枚擘)

右五味、以水七升、煮取三升、去滓、温服一升。須臾啜熱稀粥一升、以助藥力、取汗。

 

桂枝(三兩、皮を去る) 芍藥(三兩) 生薑(三兩) 甘草(二兩、炙る) 大棗(十二枚、擘く)

右五味、水七升を以て、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す。須臾(しゅゆ)に熱稀粥(ねつきしゅく)一升を啜(すす)り、以て藥力を助け、汗を取る。

 

【二三五条】

陽明病、脉浮、無汗而喘者、發汗則愈、宜麻黄湯。二十二(用前第十九方)。

陽明病、脉浮、汗無くして喘(ぜん)する者は、汗を發すれば則ち愈ゆ。麻黄湯に宜し。二十二(前の第十九方を用う)。

 

【二三六条】

陽明病、發熱、汗出者、此為熱越、不能發黄也。但頭汗出、身無汗、劑頸而還、小便不利、渴引水漿者、此為瘀熱在裏、身必發黄、茵蔯蒿湯主之。方二十三。

陽明病、發熱し、汗出ずる者は、此れ熱越すと為(な)す、黄を發すること能わざるなり。但だ頭汗(づかん)出で、身に汗無く、頸(けい)を劑(かぎ)りて還(かえ)り、小便不利し、渴して水漿(すいしょう)を引く者は、此れ瘀熱裏に在りと為す。身必ず黄を發す。茵蔯蒿湯(いんちんこうとう)之を主る。方二十三。

 

〔茵蔯蒿湯方〕(いんちんこうとうほう)

茵蔯蒿(六兩) 梔子(十四枚擘) 大黄(二兩去皮)

右三味、以水一斗二升、先煮茵蔯、減六升。内二味、煮取三升、去滓、分三服。小便當利、尿如皁莢汁狀、色正赤、一宿腹減、黄從小便去也。

 

茵蔯蒿(いんちんこう)(六兩) 梔子(しし)(十四枚、擘く) 大黄(二兩、皮を去る)

右三味、水一斗二升を以て、先ず茵蔯(いんちん)を煮て、六升を減ず。二味を内(い)れ、煮て三升を取り、滓を去り、分かちて三服す。小便當に利すべし。尿皁莢(そうきょう)汁の狀の如く、色正赤(せいせき)なり。一宿にして腹減じ、黄(おう)小便從(よ)り去るなり。

 

【二三七条】

陽明證、其人喜忘者、必有畜血。所以然者、本有久瘀血、故令喜忘。屎雖鞕、大便反易、其色必黑者、宜抵當湯下之。方二十四。

陽明の證、其の人喜忘(きぼう)する者、必ず畜血(ちくけつ)有り。然(しか)る所以の者は、本(もと)久しく瘀血有るが故に喜忘せしむ。屎(し)鞕しと雖も、大便反って易く、其の色必ず黑き者は、宜しく抵當湯にて之を下すべし。方二十四。

 

〔抵當湯方〕

水蛭(熬) 蝱蟲(去翅足熬各三十箇) 大黄(三兩酒洗) 桃仁(二十箇去皮尖及兩人者)

右四味、以水五升、煮取三升、去滓、温服一升、不下更服。

 

水蛭(すいてつ)(熬る) 蝱蟲(ぼうちゅう)(翅足を去り、熬る。各三十箇) 大黄(三兩、酒もて洗う) 桃仁(とうにん)(二十箇、皮尖を去り、兩人に及ぶ者なり)

右四味、水五升を以て、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す。下らざれば、更に服す。

 

【二三八条】

陽明病、下之、心中懊憹而煩、胃中有燥屎者、可攻。腹微滿、初頭鞕、後必溏、不可攻之。若有燥屎者、宜大承氣湯。二十五(用前第二方)。

陽明病、之を下し、心中懊憹(おうのう)として煩し、胃中に燥屎(そうし)有る者は、攻む可し。腹微(すこ)しく滿ちて、初頭(しょとう)鞕く、後必ず溏(とう)なるは、之を攻むべからず。

若し燥屎有る者は、大承氣湯に宜し。二十五(前の第二方を用う)。

 

【二三九条】

病人不大便五六日、繞臍痛、煩躁、發作有時者、此有燥屎、故使不大便也。

病人大便せざること五、六日、臍を繞(めぐ)りて痛み、煩躁し、發作時有る者は、此れ燥屎(そうし)有るが故に大便せざらしむるなり。

 

【二四〇条】

病人煩熱、汗出則解。又如瘧狀、日晡所發熱者、屬陽明也。脉實者、宜下之。脉浮虛者、宜發汗。下之與大承氣湯、發汗宜桂枝湯。二十六(大承氣湯用前第二方桂枝湯用前第二十一方)。

病人煩熱するは、汗出ずれば則ち解す。又、瘧狀(ぎゃくじょう)の如く、日晡所發熱する者は、陽明に屬するなり。脉實の者は、宜しく之を下すべし。脉浮虛の者は、宜しく汗を發すべし。之を下すに大承氣湯を與(あた)え、汗を發するに桂枝湯に宜し。二十六(大承氣湯は前の第二方を用い、桂枝湯は前の第二十一方を用う)。

 

【二四一条】

大下後、六七日不大便、煩不解、腹滿痛者、此有燥屎也。所以然者、本有宿食故也、宜大承氣湯。二十七(用前第二方)。

大いに下したる後、六、七日大便せず、煩解(はんげ)せず、腹滿痛する者は、此れ燥屎(そうし)有るなり。然る所以の者は、本(もと)宿食(しゅくしょく)有るが故なり。大承氣湯に宜し。二十七(前の第二方を用う)。

 

【二四二条】

病人小便不利、大便乍難乍易、時有微熱、喘冒(一作怫鬱)不能臥者、有燥屎也、宜大承氣湯。二十八(用前第二方)。

病人小便不利し、大便乍(たちま)ち難く乍(たちま)ち易く、時に微熱有り、喘冒(ぜんぼう)して臥(ふ)すこと能ざる者は、燥屎有るなり、大承氣湯に宜し。二十八(前の第二方を用う)。

 

【二四三条】

食穀欲嘔、屬陽明也、呉茱萸湯主之。得湯反劇者、屬上焦也。呉茱萸湯。方二十九。

穀を食して嘔せんと欲するは、陽明に屬するなり、呉茱萸湯(ごしゅゆとう)之を主る。湯を得て反って劇しき者は、上焦に屬するなり。呉茱萸湯。方二十九。

 

〔呉茱萸湯方〕

呉茱萸(一升洗) 人參(三兩) 生薑(六兩切) 大棗(十二枚擘)

右四味、以水七升、煮取二升、去滓、温服七合。日三服。

 

呉茱萸(ごしゅゆ)(一升、洗う) 人參(三兩) 生薑(六兩、切る) 大棗(十二枚、擘く)

右四味、水七升を以て、煮て二升を取り、滓を去り、七合を温服し、日に三服す。

 

【二四四条】

太陽病、寸緩、關浮、尺弱、其人發熱汗出、復惡寒、不嘔、但心下痞者、此以醫下之也。如其不下者、病人不惡寒而渴者、此轉屬陽明也。小便數者、大便必鞕、不更衣十日、無所苦也。渴欲飲水、少少與之、但以法救之。渴者、宜五苓散。方三十。

太陽病、寸緩、關浮、尺弱、其の人發熱して汗出で、復た惡寒し、嘔せず、但だ心下痞(ひ)する者は、此れ醫之を下すを以てなり。如(も)し其の下らざる者、病人惡寒せずして渴する者は、此れ陽明に轉屬(てんぞく)するなり。小便數の者は、大便必ず鞕く、更衣せざること十日なれども、苦しむ所無きなり。渴して飲水せんと欲するは、少少之を與う。但だ法を以て之を救う。渴する者は、五苓散に宜し。方三十。

 

〔五苓散方〕

猪苓(去皮) 白朮 茯苓(各十八銖) 澤瀉(一兩六銖) 桂枝(半兩去皮)

右五味、為散、白飲和、服方寸匕、日三服。

 

猪苓(皮を去る) 白朮 茯苓(各十八銖) 澤瀉(一兩六銖) 桂枝(半兩、皮を去る)

右五味、散と為し、白飲もて和し、方寸匕(ひ)を服し、日に三服す。

 

【二四五条】

脉陽微而汗出少者、為自和(一作如)也。汗出多者、為太過。陽脉實、因發其汗出多者、亦為太過。太過者、為陽絶於裏、亡津液、大便因鞕也。

脉陽微(ようび)にして汗出ずること少なき者は、自ら和すと為すなり。汗出ずること多き者は、太過と為す。陽脉實し、因りて其の汗を發するに、出ずること多き者は、亦(ま)た太過と為す。太過の者は、陽裏に絶すと為し、津液を亡(なく)し、大便因りて鞕きなり。

 

【二四六条】

脉浮而芤、浮為陽、芤為陰。浮芤相搏、胃氣生熱、其陽則絶。

脉浮にして芤(こう)、浮は陽と為し、芤は陰と為す。浮芤相い搏(う)ち、胃氣熱を生じ、其の陽則ち絶す。

 

【二四七条】

趺陽脉浮而濇、浮則胃氣強、濇則小便數。浮濇相搏、大便則鞕、其脾為約、麻子仁丸主之。方三十一。

趺陽(ふよう)の脉浮にして濇(しょく)、浮は則ち胃氣強く、濇は則ち小便數(さく)。浮濇(ふしょく)相い搏ち、大便則ち鞕し。其れ脾約と為す。麻子仁丸(ましにんがん)之を主る。方三十一。

 

〔麻子仁丸方〕

麻子仁(二升) 芍藥(半斤) 枳實(半斤炙) 大黄(一斤去皮) 厚朴(一尺炙去皮) 杏仁(一升去皮尖熬別作脂)

右六味、蜜和丸如梧桐子大。飲服十丸、日三服、漸加、以知為度。

 

麻子仁(ましにん)(二升) 芍藥(半斤) 枳實(半斤、炙る) 大黄(一斤、皮を去る) 厚朴(一尺、炙り、皮を去る) 杏仁(一升皮尖を去り、熬(い)り、別に脂と作(な)す)

右六味、蜜もて和して丸とし、梧桐子(ごどうし)大の如くす。十丸を飲服し、日に三服す。漸(ようや)く加えて、知るを以て度と為す。

 

【二四八条】

太陽病三日、發汗不解、蒸蒸發熱者、屬胃也、調胃承氣湯主之。三十二(用前第一方)。

太陽病三日、發汗して解せず、蒸蒸(じょうじょう)として發熱する者は、胃に屬するなり。調胃承氣湯之を主る。三十二(前の第一方を用う)。

 

【二四九条】

傷寒吐後、腹脹滿者、與調胃承氣湯。三十三(用前第一方)。

傷寒、吐して後、腹脹滿する者は、調胃承氣湯を與う。三十三(前の第一方を用う)。

 

【二五〇条】

太陽病、若吐、若下、若發汗後、微煩、小便數、大便因鞕者、與小承氣湯、和之愈。三十四(用前第二方)。

太陽病、若(も)しくは吐し、若しくは下し、若しくは汗を發して後、微煩(びはん)、小便數、大便因りて鞕き者は、小承氣湯を與え之を和すれば愈ゆ。三十四(前の第二方を用う)。

 

【二五一条】

得病二三日、脉弱、無太陽柴胡證、煩躁、心下鞕。至四五日、雖能食、以小承氣湯、少少與、微和之、令小安。至六日、與承氣湯一升。若不大便六七日、小便少者、雖不受食(一云不大便)、但初頭鞕、後必溏、未定成鞕、攻之必溏。須小便利、屎定鞕、乃可攻之、宜大承氣湯。三十五(用前第二方)。

病を得て二、三日、脉弱、太陽柴胡の證無く、煩躁し、心下鞕し。四、五日に至り、能(よ)く食すと雖も、小承氣湯を以て、少少與えて微(すこ)しく之を和し、小(すこ)しく安からしむ。六日に至らば、承氣湯一升を與う。若し大便せざること六、七日、小便少なき者は、食を受けずと雖も(一云不大便)、但だ初頭鞕く、後必ず溏し、未だ定まりて鞕を成さず。之を攻むれば必ず溏す。小便利し、屎(し)定まり鞕きを須(ま)ちて、乃ち之を攻むべし。大承氣湯に宜し。三十五(前の第二方を用う)。

 

【二五二条】

傷寒六七日、目中不了了、睛不和、無表裏證、大便難、身微熱者、此為實也。急下之、宜大承氣湯。三十六(用前第二方)。

傷寒六、七日、目中了了(りょうりょう)たらず、睛和(せいわ)せず、表裏の證無く、大便難く、身微熱する者は、此れを實と為すなり。急ぎ之を下す。大承氣湯に宜し。三十六(前の第二方を用う)。

 

【二五三条】

陽明病、發熱、汗多者、急下之、宜大承氣湯。三十七(用前第二方一云大柴胡湯)。

陽明病、發熱し、汗多き者は、急ぎ之を下す。大承氣湯に宜し。三十七(前の第二方を用う。一に大柴胡湯と云う)。

 

【二五四条】

發汗不解、腹滿痛者、急下之、宜大承氣湯。三十八(用前第二方)。

汗を發して解せず、腹滿痛するは、急ぎ之を下す。大承氣湯を宜し。三十八(前の第二方を用う)。

 

【二五五条】

腹滿不減、減不足言、當下之、宜大承氣湯。三十九(用前第二方)。

腹滿減ぜず、減ずるも言うに足らざるは、當に之を下すべし。大承氣湯に宜し。三十九(前の第二方を用う)。

 

【二五六条】

陽明少陽合病、必下利。其脉不負者、為順也。負者、失也。互相剋賊、名為負也。脉滑而數者、有宿食也、當下之、宜大承氣湯。四十(用前第二方)。

陽明と少陽の合病、必ず下利す。其の脉負ならざる者は、順と為すなり。負の者は、失なり。互いに相(あ)い剋賊(こくぞく)するを、名づけて負と為すなり。

脉滑にして數の者は、宿食有るなり。當に之を下すべし。大承氣湯に宜し。四十(前の第二方を用う)。

 

【二五七条】

病人無表裏證、發熱七八日、雖脉浮數者、可下之。假令已下、脉數不解、合熱則消穀喜飢、至六七日、不大便者、有瘀血、宜抵當湯。四十一(用前第二十四方)。

病人表裏の證無く、發熱すること七、八日。脉浮數と雖も、之を下すべし。假令(たと)えば已に下し、脉數解(げ)せず、熱を合すれば則ち消穀喜飢(きき)して、六、七日に至るも、大便せざる者は、瘀血有り。抵當湯に宜し。四十一(前の第二十四方を用う)。

 

【二五八条】

若脉數不解、而下不止、必協熱便膿血也。

若し脉數解せず、而(しか)も下(げ)止まざれば、必ず協熱(きょうねつ)して膿血(のうけつ)を便するなり。

 

【二五九条】

傷寒發汗已、身目為黄、所以然者、以寒濕(一作温)在裏不解故也。以為不可下也、於寒濕中求之。

傷寒、發汗已(おわ)り、身目(しんもく)黄を為す。然る所以の者は、寒濕(かんしつ)裏に在りて解せざるを以ての故なり。以て下すべからずと為すなり。寒濕中に於て之を求む。

 

【二六〇条】

傷寒七八日、身黄如橘子色、小便不利、腹微滿者、茵蔯蒿湯主之。四十二(用前第二十三方)。

傷寒七、八日、身黄(おう)なること橘子(きっし)の色の如く、小便不利し、腹微滿する者は、茵蔯蒿湯之を主る。四十二(前の第二十三方を用う)。

 

【二六一条】

傷寒身黄發熱、梔子檗皮湯主之。方四十三。

傷寒、身黄にして發熱するは、梔子檗皮湯(ししはくひとう)之を主る。方四十三。

 

〔梔子檗皮湯方〕

肥梔子(十五箇擘) 甘草(一兩炙) 黄檗(二兩)

右三味、以水四升、煮取一升半、去滓、分温再服。

 

肥梔子(十五箇、擘く) 甘草(一兩、炙る) 黄檗(おうばく)(二兩)

右三味、水四升を以て、煮て一升半を取り、滓を去り、分かち温め再服す。

 

【二六二条条】

傷寒瘀熱在裏、身必黄、麻黄連軺赤小豆湯主之。方四十四。

傷寒瘀熱裏に在り、身必ず黄す、麻黄連軺赤小豆湯(まおうれんしょうせきしょうずとう)之を主る。方四十四。

 

〔麻黄連軺赤小豆湯方〕

麻黄(二兩去節) 連軺(二兩連翹根是) 杏仁(四十箇去皮尖) 赤小豆(一升) 大棗(十二枚擘) 生梓白皮(切一升) 生薑(二兩切) 甘草(二兩炙)

右八味、以潦水一斗、先煮麻黄再沸、去上沫、内諸藥、煮取三升、去滓。分温三服、半日服盡。

 

麻黄(二兩節を去る) 連軺(れんしょう)(二兩、連翹根(れんぎょうこん)、是れなり) 杏仁(四十箇、皮尖を去る) 赤小豆(せきしょうず)(一升) 大棗(十二枚、擘く) 生梓白皮(しょうしんはくひ)(切る、一升) 生薑(二兩、切る) 甘草(二兩、炙る)

右八味、潦水(りょうすい)一斗を以て、先ず麻黄を煮て再沸し、上沫を去り、諸藥を内(い)れ、煮て三升を取り、滓を去る。分かち温め三服し、半日に服し盡(つく)す。

 

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