鍼灸医学の懐

主に黄帝内経の意訳と解説 最後に原文と読み下しを記しています。その他、随時古典資料を追加しています。

2014-05-17から1日間の記事一覧

陰陽離合論(六) - 一即多、多即一 (1)

本篇は、臨床的に重要な内容を多分に含んでいる。1.<老子・道徳経>『 道可道、非常道(道の道とたるべきは、常の道にあらず)』 とあるように、これが陰だ、陽だと説明しうるものは陰陽変化の実態を示しているのでは無いのだということを、本文中に『陰…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(16)

前回は、東洋医学の診察法の基本中の基本について述べられていた。 前回の流れを引き継ぎ、今回はもう少し具体的に治療法の考え方を述べている。 さっそく本文に入ります。原 文 意 訳 病が起こったばかりの初期においては、刺法を施せば直ちに癒えるもので…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(15)

この段では、より具体的に陰陽偏在の兆候を読み取る方法と手順が、簡明に記されている。 早速、意訳してみることにする。原 文 意 訳 すぐれた医師は、患者の現す顔の気色や肌の色から、体内で何が起きているのかを察し、脈が表現している気の状態をじっくり…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(14)

この段の難解なところは『從陰引陽.從陽引陰.以右治左.以左治右.』 であった。 できるだけ臨床に則してリアリティーが感じられるよう、これを意訳するように努めた。陰陽、左右、内外の気の偏在は、四診を駆使して具体的に把握するのである。天人合一思…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(13)

この段においては、天人相応思想を、具体的な事例を用いて説いている。 荒唐無稽なこじつけと、捉えてしまえば、すべては台無しである。 現象を通じて現象を起こしている、目には見えない気の動きをイメージとして掴み、これをあらゆるものに応用したのが、…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(12)

『天は北西に不足して陰であり、地は東南に満たないので陽である。』 非常に難解な段落である。 中国大陸の黄河と揚子江は、西から東へと流れているので、土地の高低と天の高低とを比較して述べられたものであるという説は、一見説得性があるようだ。 ところ…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(11)

この段落では、上古天真論(1)に立ち返って養生を説いている。 七損八益に関しては諸説あるも、柴崎保三氏の説が最もしっくりと来たので、これを採用した。 改めて、以下の文の意味を深く傾注するようにと、この段落で再び説いているように思える。 『恬惔…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(10)

いよいよ具体的に身体のあるべき状態と、異常を説いている。 単純なモデルだが、単純であるがゆえに応用無辺である。 たとえば、現代病のアトピー性皮膚炎は、発汗がしにくい方が結構多い。 当然、体内の熱が盛んになって出口で渋滞を起こして発症する。 当…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(9)

原 文 意 訳 天は高くして尊く、万物を覆い、地は卑(ひ)くくして万物を載せる。 天気は下り、地気は上り、天地陰陽の気の変化・交流で万物は生じるのである。 万物にとって天地は生み出す元である父母であり、上下である。 陰陽なるものは、たとえば動いて…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(8)

原 文 意 訳 (一部、太素に従う) 西方は、一日の内では落陽の時期であり、陽気が衰え空気も乾いて来るので燥を生じるのである。 乾燥すると形が固まるので、燥は金を生じる。辛は、取手のついた大きな鍼であり、辛い味は、鍼で刺すようでつらい感覚を生じ…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(7)

原 文 意 訳 南方は、昇った朝日の陽気が最も盛んで熱化するので、熱を生じるのである。熱せられると燃えやすくなるので火を生じ、火は苦味の灰土を生じる。 苦味は心に入って心の陰気を養って血を生じ、血は脾気を生じるのである。そして心は脾気の状態が現…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(6)

原 文 意 訳 黄帝が申される。 余が聞くところでは、上古の聖人が人の形(臧)を論じて整理し、蔵府を分類して列挙し、端に経脈を関連づけた。これは六合(陰=臓腑)に相通じ、それぞれの蔵府が各経脈に従っている。 さらにそれぞれの経には、体内の気が体…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(5)

陰陽応象大論は、基本的に押さえておくべき重要なことが多く述べられている。 今回は天人合一思想で述べられている。 五臓の気は、自然界の五行と相関があるという前提で論理が進められている。 自然界の天の気は、人間においては神気であり、その神気は五臓…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(4)

ここからは易の思想で説いてあるので、あらかじめ少し解説をしておきます。 まずは、物質である水を陰とし、非物質である火を陽とするとある。 これら両者はまったく別の性質を持ちながらも、分かれていないことに気づくのが肝要である。 易学の卦で現してみ…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(3)

大きくは天地陰陽の気の変化を述べ、その変化の法則を人体の気の変化に当てはめて認識する。 これを天人合一とも天人相応哲学と称する。 本文では、具体的にその応用例を説いているが、これを暗記しようとするのではなく、変化の法則をイメージで理解するこ…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(2)

ほんの僅かの文章の中に、応用無限の真理が説かれている。 特にここでは、陽気、陰気の性質と、極まるということについて述べられている。 これを陰陽の転化法則という。 極まるとは。 いつ極まるのか。 これは自らの心意を以て測り、見極めることである。 …

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(1)

本篇では、マクロコスモスである大自然と、ミクロコスモスである人間とは、等しく同じ法則の中で生々流転していることを説いている。 これを、天人合一=天人相応思想と称し、鍼灸医学の基本中の基本であり、寄って立つ基盤となる思想である。 当然医学とい…

金匱真言論(四) - 季節と発病(2)

ここから陰陽論を用いての展開となります。 一年の内の四季は、四時の気として陰陽の割合が変化することは、これまでに繰り返し述べられてきました。しこれを陰陽の消長と称するのですが、この1年の陰陽の消長法則は、1日の陰陽法則にも当てはまり、さらに人…

金匱真言論(四) - 季節と発病(1)

表題の『金匱真言』とは、今では考えられないほど当時貴重品であった金属の箱に保存しておく価値のある、法則・真理を述べた内容であるとの意味です。 長いので、いくつかに分けて解説して参りますが、この篇の最初には、季節と病変を起こす部位との関係が説…

五行論は妄説?(4)

これまで、五行論の相生・相剋関係について、簡単に説明してきました。 五行論の成り立ちから考えて、五行を機械的・法則的に用いるのは誤りであると僕は考えています。 もう一度別の例をあげると、木=春、火=夏、土=長夏、金=秋、水=冬と順番に季節と…

五行論は妄説?(3)

今回は、相剋関係を説明致します。 相克関係は、簡単に述べると、下図のように相互に制約する関係です。 木は土を尅し、土は水を尅し、水は火を尅し、火は金を尅す。 これをイメージにつなげると、木は土から養分を取り上げ、土は水をせき止め、水は火を消…

五行論は妄説?(2)

まず、五行論の源を訪ねてみます。 五行は、四書五経の内の書経(しょきょう)、またの名を尚書(しょうしょ)の中の洪範に初めて見ることができる。 そこに記されているのは、水→火→木→金→土という順序で一般的に知られている木→火→土→金→水とは異なる。 当…

五行論は妄説?(1)

筆者の場合、東洋医学の入り口は『黄帝内経』だったのですが、この書物の背景となる思想背景のひとつに、陰陽五行学説がある。 実は初学の頃からずっと抱いてきた疑問のひとつに、五行学説への不信感があった。 ここ数年、やっとその疑問が解けてきたので、…

生気通天論(三) - 人は小宇宙(3)

前回までは、陽気の性質とその病的な症状について述べられていましたが、今回は陰気について述べています。 陽=気、陰=精血(せいけつ)と置き換えると、理解しやすいかもしれません。 気は、動力・エネルギー、精血はそのエネルギーの原料です。 人体の生…

生気通天論(三) - 人は小宇宙(2)

西洋医学では、人間の中枢は脳にあると考えていますが、東洋医学では心の臓にあると考えています。ここに『神』が宿るとしているのです。 心の蔵は、胸郭部にあって、消化器がありません。ですから、胸郭部は自然界の天に相当するという発想になるのです。 …

生気通天論(三) ‐ 人は小宇宙(1)

本篇、生気通天論の生気とは、人間の元気の別称である。この元気は、自然界と同じ原理で運動変化する天人合一(てんじんごういつ)であると同時に、天の気の支配を受ける天人相応(てんじんそうおう)の思想を説いた内容となっている。 もう少し平たく広く解…

四気調神大論(二)- 未病の思想

本編の最終稿にふさわしく、総まとめとなる内容である。 自然は、その移ろいに従って、四季折々の美しい姿を見せてくれる。 私たちはそのような変化の景観と空気に触れて、様々なことを感じ・想いながら、季節の移ろいに寄り添うような生活を営む。 伝統文化…

四気調神大論(二)- 真実を生きる

人間は天地に支配される。図のように、とりわけ天の気に。 ここから天帝という名称も生まれ、日本の名だたる神々も、天から降りて来られたー天孫降臨説が生まれたものだと推測する。 天に支配されるとは、どういうことか。 自分の意思に関係なく、夏になれば…

四気調神大論(二)- 冬・生活の要点(6)

冬の過ごし方のポイントは、図のようにすべてが内に入って鎮まるということです。 人間は、陽気が無くなると代謝が落ちて死亡してしまうので、人体は陽気の存亡、特にこの寒気には敏感です。 東洋医学には、独特の脈診術があるのですが、夏は皮膚面の浅いと…

四気調神大論(二)-秋・生活の要点(5)

秋は、下図のように春から夏にかけて、自然界の陽気が上・外へと次第に大きくり、秋になって下・内へと大きく気の流れの向きが変化する時期です。 この時期は、空気も澄んで夏の暑気も治まり、気持ち的にはやれやれと言った感じで鎮まる時期でもあります。自…