鍼灸医学の懐

主に黄帝内経の意訳と解説 最後に原文と読み下しを記しています。その他、随時古典資料を追加しています。

黄帝内経 素問

標本病傳論篇第六十五.

ともすれば、今現在目の前に現れた症状に対して、どのように捉え、どこからアプローチするのかという問題提示されているところです。 これは、<傷寒論>における原則のひとつである「先表後裏」にも通じる概念であると思います。 <傷寒論>の原則は「先表…

四時刺逆從論篇第六十四.

本篇は、四時陰陽の消長により気血が浮沈し、それによって気血が大きく偏った場合の、モデルになる病症を挙げ、さらに鍼の深度の目安を述べているに過ぎないと考えています。 本編で述べられている、例えば冒頭の厥陰が臓或いは経脉を指しているのかは定かで…

繆刺論篇第六十三.

本編では、絡脉の病と経脈の病との違いで、巨刺と繆刺を使い分けることを説いている。 実際問題として、絡脉と経脈の病証の違いや診断については触れられていない。 また巨刺と繆刺を刺法として、明確に湧ける必要性も感じていない。 痛んでいる部位がすなわ…

調經論篇第六十二.

本篇の表題は、経絡の気血を調えることを目的として、虚実・補瀉の概念とその方法が説かれているということでつけられたのであろう。 ところが筆者は経絡よりもむしろ人体を空間として意識した虚実・補瀉概念のように理解される。 なぜなら本文中に、<陰陽…

水熱穴論篇第六十一.

本篇は、骨空論で記載されている水兪五十七穴の詳細が表題となっているが、腎と肺、腎と胃の生理関係のほか刺法にまで論及されている。 「腎は胃の関」と「四季の刺法」に関しては、気の動きを筆者なりに臨床に合致するように意訳を試みた。 諸氏、ご意見を…

骨空論篇第六十

本篇は、骨空論であるが、さっと一読して内容に多少まとまりが無いように感じられる。 おそらく散逸していたものを継ぎ合わせたのではないかと推測されるのですが、読者の方々、いかがでしょう。 また、治療穴に関しても、全体の気血陰陽の調和という観点か…

氣府論篇第五十九.

梅の蕾もほころんで 筆者は、本篇「気府論」は、前篇「気穴論」の続編と捉えても差し支えはないと思っている。 ところで、ここに記されている経絡の巡行と経穴は、他経と入り混じっている。この点の意味においては、次篇「骨空論」の内容が示唆している。 こ…

氣穴論篇第五十八.

本篇は天人合一思想に基づいて、主に経穴の数と位置について述べられている。 筆者自身、本篇と次篇(気府論)は、あまり取るべきところを感じないが、それはすでに経絡・経穴を伝承されているからである。(ありがたいことです) それはさておき経穴の数に…

經絡論篇第五十七.

本篇は、前篇『皮部論篇』の続編であるように感じる。 筆者の感覚では、例えば手足を診た時、経絡別に五色が現れているとは認識できない。 しかし、顔面の気色だけでなく体幹部や四肢が現す色は、大変重要と感じている。 本篇で取るべきところは、四時陰陽の…

皮部論篇第五十六.

七種山 虹の滝 東洋医学は、体表に現れる気色や肌の色つやなどによって、五臓六腑の充実度を観る。 瓜やスイカなど、外から眺めて触って軽く叩いて、中の状態を候うようなものである。 ただ、候うに、瓜やスイカと違う点は、命がけだということである。 本篇…

長刺節論篇第五十五.

慶良間 前篇に引き続き鍼法について述べられているが、鍼の補寫、遅速、深浅に関しては、他篇と矛盾することが多々ある。 これらから推測できることは、刺法に関しては当時から様々な流派ややり方があったことが分かる。 これは巨刺と繆刺も同じである。 巨…

鍼解篇第五十四.

花咲き虫が飛び交う・・・盛夏 本篇は、鍼の基本的な補瀉法と、それを施したのちの変化の目安について述べられている。 さらに、内経医学で一貫している『天人相応』思想が、ここでも記載されているが、これをこじつけと思ってしまうと、内経医学の深いとこ…

刺志論篇第五十三.

本篇は、基本的な虚実の概念と、変証について述べられている。また初歩的な刺鍼後の手技についても記載されている。 実に関しては、邪気実としての解説と外邪侵入との解説を多く見るが、「鬱滞即邪」の概念からすると、正気の鬱滞・有余もまた即邪気と転化す…

刺禁論篇第五十二.

もうすぐ梅雨明けでしょうか この篇では、禁鍼穴と過誤の起こりやすい部位を明確にし、同時に深く刺すことを戒めている。 この篇を読み返す度に、病に苦しむ人を、治してあげたいという想いで行った鍼治療で、反って患者が目の前で悪化したり死亡する情景に…

刺齊論篇第五十一.

梅雨明けが待ち遠しい 本篇『刺齊論』は、前篇「刺要論」の続編となっている。筆者の考えは、前編ですでに述べているので、特筆すべき事柄はない。 ただ、なぜ『刺齊論』として別に論じているのだろうという漠然とした疑問は残る。 『刺齊論』の齊の文字は、…

刺要論篇第五十.

梅雨と言えば紫陽花 本篇は、刺鍼に際しての基本的な深度について述べられている。 <素問・金匱真言論篇、宣明五気篇>に記されている五主(皮・肉・脉・筋・骨髄)を例に挙げて、どこを狙って針先を進めるのかを説いている。 ちなみに、筆者は五主を目標に…

脉解篇第四十九.

本篇の表題は「脉解」であるので、経脉の変動、つまり偏盛・偏衰した場合の病症について解説したものと理解される。 ところが、経脉の変動が主たる原因ではなく、あくまで臓腑そのものが原因で、臓腑の状態が経脉に現れた状態を解説したものと捉えるのが正確…

大奇論篇第四十八.

冬と緑と赤本篇では、脉証から病証を論じているが、気血の盛衰と病邪の位置を連想しながら読み進めても、判然としないところが多々ある。 ここで記されている脉証は、多分に主観的なものであるが、本来言葉で伝えることのできないものを、何とか伝えようとし…

奇病論篇第四十七.

やさしい色 奇病とは、四季に関連なく生じる病のことである。 本文中の胞とは、本来袋の意味で用いられており、内経では時に膀胱腑であったり子宮胞を指している。 さらに本文中の「胞脈」が何を指しているのかは、長年の疑問であった。心の絡脉であると理解…

病能論篇第四十六.

秋空に似合う花 表題の「病能」とは、一体いかなるものを指し示しているのであろうかは、いまひとつ筆者には明確に言い切れるものがない。 本篇内に取り上げられている内科・外科・精神科領域の疾病を通じて、「病態」を把握して治療を施する視点を述べてい…

厥論篇第四十五.

可憐です。11月といえども、まだ草花を楽しめます。 本編で述べられている厥(けつ)の病理は、陰陽の偏盛・偏衰により、気が本来の流れから逸脱して逆流する様を指している。 厥逆は、その逆流の激しいもので、現代ではさしずめ、単に冷えのぼせといった…

痿論篇第四十四.

秋粛殺 枯れ始めた足の草花に、薄くクモが糸を引いている 本篇では、「痿病」という手足の力が抜けて自由に動くことが出来なくなる病について述べられている。 現代における、筋ジストロフィーや膠原病、中でもシェーグレン症候群、多発性筋炎、全身性硬化症…

痹論篇第四十三.

近くの石垣で目に留まった、名知らずの雑草? 筆者は、痹論には特別な思い入れがある。 筆者が平成元年に開業して間もないころ、いわゆる関節リュウマチで鍼灸院を訪れる患者が比較的多かった。 が、しかし治療所に訪れたリウマチ患者の願いに反して、こと…

風論篇第四十二.

ベランダの庭先で 内経時代の人々の生活を想像すると、我々現代人の想像以上に感染症が巷に溢れていたのだろうと思う。 本篇で述べられている風証について、当時は未だ外風と内風の区別が明確にされていないことが分かる。 癘風などの記載は、ハンセン氏病が…

刺腰痛篇第四十一.

金剛山系から秋空に臨んで 本篇では、古来から現代にいたるまで、人を苦しめてきた腰痛に焦点を当て、その治療法が記されている。 我々がすでに知っている十二経絡と奇経以外の脉証も記されており、それらが現代のどの経絡を指しているのか、さらにまた治療…

腹中論篇第四十.

いつもの花壇で 本篇に述べられている熱中、消中は、現代においては、さしずめ糖尿病のような病態である。 ただ、ひと世代前のような、激しい口の渇きや頻尿、次第に痩せていくといった病態は見られなくなったが、その代わり癌は、いつ、だれがなってもおか…

擧痛論篇第三十九.

近くの花壇で 本篇では、何をさておいてもつらい痛みについての病理と、内から起こる内傷病はすべて過度な感情によって引き起こされることについて述べられている。 素問の時代においてさえこの様であったのだから、いわんや現代は、である。 天地自然の道理…

欬論篇第三十八.

金剛山にて 本篇は、現代病の病因・病理を把握する上で、重要な視点が記載されている。 近年急増している肺癌をはじめ、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、喘息、循環器疾患の一部などは、東洋医学的にはすべて肺臓の病変の範疇に属する。 これら疾患の病…

氣厥論篇第三十七.

花壇にて さてさて、ここに至っていまさらながら日常よく使っている 『厥』 の意味について改めて再考せざるを得なかった。 六経の厥陰と、この篇で用いられている氣厥とは、意味するところが別であると認識するのが良いのであろうと考える。 厥陰の意味は、…

刺瘧篇第三十六.

金剛山から 本篇では、経絡病と臓腑病の病証が記載されている。臨床的に経絡病と臓腑病と、きれいに一線を引いて分けて治療することができるのだろうかという疑問を感じる。 脈象に関しては、陰陽・虚実の盛衰をイメージしながら読むと楽しいと感じたが、こ…