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鍼灸医学の懐

黄帝内経の意訳と解説 最後に原文と読み下しを記しています。

玉版論要篇第十五

本篇は、難解に感じるところが多いのだが、大いに臨床に用いることのできる記述も散見できる。 もちろん、読解者の力量に依るのではあるが。 筆者は、顔面の気色の深浅が物語る意味合いと、気色の上下の変化が非常に重要に感じている。 気色の深浅は、そのよ…

湯液醪醴論篇第十四

本篇は、前篇 『移精変気論』の続編のようにして読むのが、宜しいように考える。 時代が下がるにつれて、病気の質は深刻化し、治らない病が増加の一途である。 その原因のひとつには、本文にあるように、鍼灸医学を担う者が、鍼の妙道に達していないことが挙…

移精變氣論篇第十三

本篇は、東洋医学の最も東洋医学たらんとする。核心部分について触れていると感じている。筆者にとっては、特に思い入れの大きいところで、ここで述べられていることを治療の軸に据えようと、これまで努力してきたからだ。 鍼灸医学は気を扱う医学であるが、…

異法方宜論篇第十二.

本篇は、三国志以前の広大な大陸と、そこに住む人々の生活がどのようなものであったのか、自ずと思いが馳せる。 各種の養生法や治療法が伝播した背景に、広大な大陸を移動していた人々の「気」の壮大さを感じる。 文明というのは、広大な大陸が生み出す多種…

五藏別論篇第十一

本篇では、臓と腑の生理的特徴と、寸口部位の脈の大事。さらに、患者の精神状態を把握することの重要性を説いている。 患者の心と意識状態が、治療結果に大きく影響することを、この篇で少し触れているが、内経医学では、この点にかなりの重点を置いているよ…

五藏生成論篇第十(2)

本篇の後半は、顔に現れる色を脈状と兼ね合わせ、論じられている。 また鍼灸医学独特の世界観に基づいた病因病理が記載されており、さらに診察に当たっては、何が大切であるかを説いてある。 一定の理論を示しながらも、やはり治療者の感覚に訴えてきている…

五蔵生成論篇第十(1)

本篇は、六節蔵象論の後半に説かれている五臓の臓象と基に、脉・皮・肌・肉・骨の五体、酸・苦・甘・辛・鹹の五味、青・赤・黄・白・黒の五色を関連付けている。 とりわけ五色については詳細に説かれており、望診術がいかに重要であるのか。さらに、言葉で表…

六節蔵象論篇第九 (3)

本篇の後半には、鍼灸医学に欠くことのできない臓象の一端が記載されている。 文字を覚えることも大切だが、古人がこれまで自然界を認識してきた、その眼差しを感得することこそが肝心要のところである。 知識として文字を覚えるだけだと、死に体となって臨…

六節蔵象論(九) (2)

異常気象というのは、なにも今に始まったことではなく、やはり太古よりしばしば起こっていたことが本編の内容から推測することができる。 異常気象によって、世界的に感染症が大流行したのも、一度や二度ではなかったはずである。鍼灸医学は、その度に、死な…

六節藏象論(九)(1)

本編もまた、天人相応・合一思想をベースに説いてあり、自然界の変化がどのように人体に影響を及ぼすのかに主眼が置かれている。そして本篇は、大きく三部に分けて説いている。 第一部は、暦法を説明し、自然界の気の運行と人体の相関関係を述べている。 第…

靈蘭祕典論(八)

内経医学の思想の一つに、天人合一・相応がある。 国の有り様を人体に相応させ、国の中枢を君主とし、人体の中枢である心の臓を相応させて説いてある。 中国では、自然界の気が乱れると国が乱れ、国の君主が乱れると自然界も乱れるという相応思想がある。 小…

陰陽別論(七) (2)

後半は、六経の脈象と症状について述べられており、また五行論の相性・相克関係を用いて死する時期について言及しているが、数学的に割り出すことはできても、これを法として臨床に応用することは疑問である。このような考え方で、なにかを伝えようとしてい…

陰陽別論(七)(1)

この篇は、別論というだけあって、編集者の王冰(7世紀)が、ここに至るまで論じられている「陰陽論」を用い、脈象と病との関係を論じているが、非常に難解である。 編者の意図を出来るだけ汲み取るよう努めたが、不明な点は敢えて臨床に合致するよう、独断的…

陰陽離合論(六) - 一即他、多即一 (2)

原 文 意 訳 帝が、『三陰三陽が、それぞれ分かれて機能し、分かれていながら一つに集約し、協調して生命を維持している様。つまり陰陽の離合について聞きたく思う』、と申された。 岐伯が申された。 聖人が南面して立たれました場合、最も日光が当たる身体…

陰陽離合論(六) - 一即多、多即一 (1)

本篇は、臨床的に重要な内容を多分に含んでいる。1.<老子・道徳経>『 道可道、非常道(道の道とたるべきは、常の道にあらず)』 とあるように、これが陰だ、陽だと説明しうるものは陰陽変化の実態を示しているのでは無いのだということを、本文中に『陰…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(15)

この段では、より具体的に陰陽偏在の兆候を読み取る方法と手順が、簡明に記されている。 早速、意訳してみることにする。原 文 意 訳 すぐれた医師は、患者の現す顔の気色や肌の色から、体内で何が起きているのかを察し、脈が表現している気の状態をじっくり…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(16)

前回は、東洋医学の診察法の基本中の基本について述べられていた。 前回の流れを引き継ぎ、今回はもう少し具体的に治療法の考え方を述べている。 さっそく本文に入ります。原 文 意 訳 病が起こったばかりの初期においては、刺法を施せば直ちに癒えるもので…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(12)

『天は北西に不足して陰であり、地は東南に満たないので陽である。』 非常に難解な段落である。 中国大陸の黄河と揚子江は、西から東へと流れているので、土地の高低と天の高低とを比較して述べられたものであるという説は、一見説得性があるようだ。 ところ…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(13)

この段においては、天人相応思想を、具体的な事例を用いて説いている。 荒唐無稽なこじつけと、捉えてしまえば、すべては台無しである。 現象を通じて現象を起こしている、目には見えない気の動きをイメージとして掴み、これをあらゆるものに応用したのが、…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(14)

この段の難解なところは『從陰引陽.從陽引陰.以右治左.以左治右.』 であった。 できるだけ臨床に則してリアリティーが感じられるよう、これを意訳するように努めた。陰陽、左右、内外の気の偏在は、四診を駆使して具体的に把握するのである。天人合一思…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(11)

この段落では、上古天真論(1)に立ち返って養生を説いている。 七損八益に関しては諸説あるも、柴崎保三氏の説が最もしっくりと来たので、これを採用した。 改めて、以下の文の意味を深く傾注するようにと、この段落で再び説いているように思える。 『恬惔…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(9)

原 文 意 訳 天は高くして尊く、万物を覆い、地は卑(ひ)くくして万物を載せる。 天気は下り、地気は上り、天地陰陽の気の変化・交流で万物は生じるのである。 万物にとって天地は生み出す元である父母であり、上下である。 陰陽なるものは、たとえば動いて…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(10)

いよいよ具体的に身体のあるべき状態と、異常を説いている。 単純なモデルだが、単純であるがゆえに応用無辺である。 たとえば、現代病のアトピー性皮膚炎は、発汗がしにくい方が結構多い。 当然、体内の熱が盛んになって出口で渋滞を起こして発症する。 当…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(7)

原 文 意 訳 南方は、昇った朝日の陽気が最も盛んで熱化するので、熱を生じるのである。熱せられると燃えやすくなるので火を生じ、火は苦味の灰土を生じる。 苦味は心に入って心の陰気を養って血を生じ、血は脾気を生じるのである。そして心は脾気の状態が現…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(8)

原 文 意 訳 (一部、太素に従う) 西方は、一日の内では落陽の時期であり、陽気が衰え空気も乾いて来るので燥を生じるのである。 乾燥すると形が固まるので、燥は金を生じる。辛は、取手のついた大きな鍼であり、辛い味は、鍼で刺すようでつらい感覚を生じ…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(5)

陰陽応象大論は、基本的に押さえておくべき重要なことが多く述べられている。 今回は天人合一思想で述べられている。 五臓の気は、自然界の五行と相関があるという前提で論理が進められている。 自然界の天の気は、人間においては神気であり、その神気は五臓…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(6)

原 文 意 訳 黄帝が申される。 余が聞くところでは、上古の聖人が人の形(臧)を論じて整理し、蔵府を分類して列挙し、端に経脈を関連づけた。これは六合(陰=臓腑)に相通じ、それぞれの蔵府が各経脈に従っている。 さらにそれぞれの経には、体内の気が体…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(4)

ここからは易の思想で説いてあるので、あらかじめ少し解説をしておきます。 まずは、物質である水を陰とし、非物質である火を陽とするとある。 これら両者はまったく別の性質を持ちながらも、分かれていないことに気づくのが肝要である。 易学の卦で現してみ…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(2)

ほんの僅かの文章の中に、応用無限の真理が説かれている。 特にここでは、陽気、陰気の性質と、極まるということについて述べられている。 これを陰陽の転化法則という。 極まるとは。 いつ極まるのか。 これは自らの心意を以て測り、見極めることである。 …

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(3)

大きくは天地陰陽の気の変化を述べ、その変化の法則を人体の気の変化に当てはめて認識する。 これを天人合一とも天人相応哲学と称する。 本文では、具体的にその応用例を説いているが、これを暗記しようとするのではなく、変化の法則をイメージで理解するこ…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(1)

本篇では、マクロコスモスである大自然と、ミクロコスモスである人間とは、等しく同じ法則の中で生々流転していることを説いている。 これを、天人合一=天人相応思想と称し、鍼灸医学の基本中の基本であり、寄って立つ基盤となる思想である。 当然医学とい…

金匱真言論(四) - 季節と発病(2)

ここから陰陽論を用いての展開となります。 一年の内の四季は、四時の気として陰陽の割合が変化することは、これまでに繰り返し述べられてきました。しこれを陰陽の消長と称するのですが、この1年の陰陽の消長法則は、1日の陰陽法則にも当てはまり、さらに人…

金匱真言論(四) - 季節と発病(1)

表題の『金匱真言』とは、今では考えられないほど当時貴重品であった金属の箱に保存しておく価値のある、法則・真理を述べた内容であるとの意味です。 長いので、いくつかに分けて解説して参りますが、この篇の最初には、季節と病変を起こす部位との関係が説…

生気通天論(三) - 人は小宇宙(3)

前回までは、陽気の性質とその病的な症状について述べられていましたが、今回は陰気について述べています。 陽=気、陰=精血(せいけつ)と置き換えると、理解しやすいかもしれません。 気は、動力・エネルギー、精血はそのエネルギーの原料です。 人体の生…

生気通天論(三) ‐ 人は小宇宙(1)

本篇、生気通天論の生気とは、人間の元気の別称である。この元気は、自然界と同じ原理で運動変化する天人合一(てんじんごういつ)であると同時に、天の気の支配を受ける天人相応(てんじんそうおう)の思想を説いた内容となっている。 もう少し平たく広く解…

生気通天論(三) - 人は小宇宙(2)

西洋医学では、人間の中枢は脳にあると考えていますが、東洋医学では心の臓にあると考えています。ここに『神』が宿るとしているのです。 心の蔵は、胸郭部にあって、消化器がありません。ですから、胸郭部は自然界の天に相当するという発想になるのです。 …

四気調神大論(二)- 未病の思想

本編の最終稿にふさわしく、総まとめとなる内容である。 自然は、その移ろいに従って、四季折々の美しい姿を見せてくれる。 私たちはそのような変化の景観と空気に触れて、様々なことを感じ・想いながら、季節の移ろいに寄り添うような生活を営む。 伝統文化…

四気調神大論(二)- 真実を生きる

人間は天地に支配される。図のように、とりわけ天の気に。 ここから天帝という名称も生まれ、日本の名だたる神々も、天から降りて来られたー天孫降臨説が生まれたものだと推測する。 天に支配されるとは、どういうことか。 自分の意思に関係なく、夏になれば…

四気調神大論(二)- 冬・生活の要点(6)

冬の過ごし方のポイントは、図のようにすべてが内に入って鎮まるということです。 人間は、陽気が無くなると代謝が落ちて死亡してしまうので、人体は陽気の存亡、特にこの寒気には敏感です。 東洋医学には、独特の脈診術があるのですが、夏は皮膚面の浅いと…

四気調神大論(二)-夏・生活の要点(4)

夏は図のように、精神的にも肉体的にも『発散』を心がける時期です。要は、すべて外向きにして、内に鬱しないことが大切。 見方を変えると1年で、最も体力が消耗する時期でもあります。 なぜか。 それは汗をかくからです。 汗について少し解説します。 汗と…

四気調神大論(二)-秋・生活の要点(5)

秋は、下図のように春から夏にかけて、自然界の陽気が上・外へと次第に大きくり、秋になって下・内へと大きく気の流れの向きが変化する時期です。 この時期は、空気も澄んで夏の暑気も治まり、気持ち的にはやれやれと言った感じで鎮まる時期でもあります。自…

)四気調神大論(二)-続春・生活の要点(3)

難しく感じておられる方も多いと思います。以下の図のように、単純にイメージすると分かりやすいです。 赤と青の矢印は、相反する気の働きを示したものです。赤は熱の性質、青は寒の性質とイメージして下さい。 さらに赤は怒りや喜び悲しみなどの感情、青は…

四気調神大論(二)- 春・生活の要点(2)

いよいよ四気調神大論の内容に踏み込んで参ります。 前回、四季は四気に通じて春夏秋冬それぞれ特有の気の動きがあるのだとお話しました。 1年の気の変化は、1日についても同じことが言えます。 春―朝、夏―昼、秋―夕方、冬―夜、ということです。 四季の過…

四気調神大論(二)-生活の要点(1)

四気調神大論は、漢文の素人である愚が読んでも、格調高い感じがする。それはともかくとして、この篇では東洋哲学の天人合一・天人相応思想が色濃く反映されている。 四季を失ってしまった現代人にとって、健康に生きるためには必須の内容が記述されている。…

上古天真論(一)-天寿を全うする(6)

さて、いよいよ上古天真論3段目、最後の部分に差し掛かって参りました。 この部分は、当時の宗教が反映されているのですが、現代の道教とは違って老子・荘子、神仙思想が色濃く反映されています。 老子は、天地陰陽の法則=道に法った生き方、無為自然を説き…

上古天真論(一)-天寿を全うする(5)

どうでしょう、ここまでかなり難しく感じられるかもしれません。 ここに書いておりますことは、鍼灸専門学校の教育課程でも扱っていないことですし、一般的な人体の認識概念とは全く異なるので、難しく感じられるのも無理はありません。これまでに書いてきた…

上古天真論(一)-天寿を全うする(4)

いよいよ上古天真論2段目です。 これまでは、主に養生法について述べられていました。 ここからは、人の成長と老化の過程について述べられているのですが、臨床的にも非常に大切な所でもあります。 女性は7の倍数、男子は8の倍数で変化していくと説かれて…

上古天真論(一)-天寿を全うする(3)

今回は、精神について。 現代では、精神と言えば「精神科」が思い浮かぶように、心の動きとかバランスというイメージが定着しています。ところが、実はこの精神という言葉。元は東洋医学用語で、もっと奥の深い意味を持っています。 ひとつは肉体と、肉体を…

上古天真論(一)-天寿を全うする(2)

前回の内容を、もう少し詳しく解説したいと思います。 素問は、81篇にまとめられているのですが、この上古天真論の内容を説明したいがゆえに残りの篇があると言っても過言ではない。つまり上古天真論に始まって上古天真論にまた還って終わるのである。僕は…

上古天真論(一)-天寿を全うする(1)

黄帝内経(こうていだいけい)は、伝説上の黄帝と岐伯(ぎはく)を筆頭に、幾人かの臣下との対話形式で書かれている。 本篇は、主に3段に分かれていて、1段では、元気で天寿を全うするにはどうすればよいのか。2段は、人の成長と老化の過程を。3段では、…