鍼灸医学の懐

黄帝内経の意訳と解説 最後に原文と読み下しを記しています。

藏氣法時論篇第二十二.

一年の気の盛衰は、同様に十干の十日間と一日における十二支(刻)と同じであることを前提にして書かれており、部分は全体の反映でもあり、全体は部分の在り様を現すという東洋哲学に基づいて書かれている。 この篇で記載されている病が、臓にある場合の病因…

經脉別論篇第二十一.

本篇の題名に「別論」とあるが、通常の経脉については、『霊枢・経脉、経別、経水、経筋』の各篇にまとまって記載されているが、『素問』の中にまとまった説明はされていない。 この篇から察するに、経脉と臓象との関係を中心に述べているように思われる。 …

三部九候論篇第二十.

筆者はここで記されている、三部九候の脈診は採用していない。 その理由は、三部九候の脈診が、繁雑に過ぎて九候をひとつにまとめ上げ、認識する力量がないということがあげられる。 しかしながら実際の臨床においては、宝物の如く多くの示唆を与えてもらっ…

玉機眞藏論篇第十九.(4)

いよいよ最終段であるが、ここでもまた極めて重要なことがいくつか記載されている。 患者と相対して、症状がどのようであるのかということよりも、体つきや顔色、脉の状態などから正気と病邪の盛衰をまずしっかりと掴むことの重要性が説かれている。 そして…

玉機眞藏論篇第十九.(3)

ここでは、『胃の気』の重要性について記述されている。 『胃の気』については、ここに至るまでに内経医学の中で何度も触れられているが、何故か現代中医学では重要視されていないのが、不思議に思える。 日本では、この『胃の気』を重視する古流派が多い。 …

玉機眞藏論篇第十九.(2)

ここでは、病の伝変を五行の相生・相剋関係で説いているが、多くの疑問を感じる。 五行論に疑いを持ってしまえば、この医学が成り立たなくなるほど深く根付いている理論ではあるが、これまで何度か述べてきたように、五行論は使い方次第であると、筆者は考え…

玉機眞藏論篇第十九.(1)

本編は、玉版に記して毎日読み返すことを促している。 おそらく、これらの内容を丸暗記するのではなく、これらの内容から「いち」を掴み取りなさいとのことであると、筆者は感じている。 四季の変化につれて、人間もまた期を一にして変化するのだということ…

平人氣象論篇第十八

本篇は表題のように、一般的な健康人の脈象を異常な脈象と対比させて述べようとしているのであろう。 ともすれば、異常な脈象の解明に意識が向きがちだが、やはり四季に適った正常な脈象を捉え、自然に適った脈象に戻すという術者の意識が必要である。 自然…

脉要精微論篇第十七(2)

脈診に熟達するには、望診や問診などから得られた情報に照らし合わせて診ていく重要性が説かれている。 脈象と症状は、固定的に捉えるのではなく、やはり陰陽・表裏・寒熱・虚実の八綱を胸の内においてイメージすることが大切だと、筆者は理解している。 根…

脉要精微論篇第十七(1)

本篇は、題名の通り脈診の際の、要領や脈状などを説いているが、それだけでなく望診術や聞診術、夢と身体の相関性など、多彩な内容を含んでいる。 臨床に照らし合わせるには、十分すぎる内容である。 初学のころ、難解とされる脈診術へ、手を取っていざなっ…

診要經終論篇第十六

本篇は、表題の通り診察の要となることと、経気が尽きてしまう症候について記載されている。 その際、四季の変化に従って陰陽は消長し、人体の気の流れの深浅も変化するという大前提。 これは、内経医学に一貫している天人相応思想である。 人工的な環境に身…

玉版論要篇第十五

本篇は、難解に感じるところが多いのだが、大いに臨床に用いることのできる記述も散見できる。 もちろん、読解者の力量に依るのではあるが。 筆者は、顔面の気色の深浅が物語る意味合いと、気色の上下の変化が非常に重要に感じている。 気色の深浅は、そのよ…

湯液醪醴論篇第十四

本篇は、前篇 『移精変気論』の続編のようにして読むのが、宜しいように考える。 時代が下がるにつれて、病気の質は深刻化し、治らない病が増加の一途である。 その原因のひとつには、本文にあるように、鍼灸医学を担う者が、鍼の妙道に達していないことが挙…

移精變氣論篇第十三

本篇は、東洋医学の最も東洋医学たらんとする。核心部分について触れていると感じている。筆者にとっては、特に思い入れの大きいところで、ここで述べられていることを治療の軸に据えようと、これまで努力してきたからだ。 鍼灸医学は気を扱う医学であるが、…

異法方宜論篇第十二.

本篇は、三国志以前の広大な大陸と、そこに住む人々の生活がどのようなものであったのか、自ずと思いが馳せる。 各種の養生法や治療法が伝播した背景に、広大な大陸を移動していた人々の「気」の壮大さを感じる。 文明というのは、広大な大陸が生み出す多種…

五藏別論篇第十一

本篇では、臓と腑の生理的特徴と、寸口部位の脈の大事。さらに、患者の精神状態を把握することの重要性を説いている。 患者の心と意識状態が、治療結果に大きく影響することを、この篇で少し触れているが、内経医学では、この点にかなりの重点を置いているよ…

五藏生成論篇第十(2)

本篇の後半は、顔に現れる色を脈状と兼ね合わせ、論じられている。 また鍼灸医学独特の世界観に基づいた病因病理が記載されており、さらに診察に当たっては、何が大切であるかを説いてある。 一定の理論を示しながらも、やはり治療者の感覚に訴えてきている…

五蔵生成論篇第十(1)

本篇は、六節蔵象論の後半に説かれている五臓の臓象と基に、脉・皮・肌・肉・骨の五体、酸・苦・甘・辛・鹹の五味、青・赤・黄・白・黒の五色を関連付けている。 とりわけ五色については詳細に説かれており、望診術がいかに重要であるのか。さらに、言葉で表…

第3回 一の会

昨日29日に行われました、第三回、「一の会」の様子です。 冒頭は、稲垣順也先生による中医学。 今回は、五行論を臨床で有効に用いるため、是非とも必要な考え方・用い方の基本についての講義でした。 五行論は鍼灸必須の臓象学と深く結びついているのですが…

六節蔵象論篇第九 (3)

本篇の後半には、鍼灸医学に欠くことのできない臓象の一端が記載されている。 文字を覚えることも大切だが、古人がこれまで自然界を認識してきた、その眼差しを感得することこそが肝心要のところである。 知識として文字を覚えるだけだと、死に体となって臨…

六節蔵象論(九) (2)

異常気象というのは、なにも今に始まったことではなく、やはり太古よりしばしば起こっていたことが本編の内容から推測することができる。 異常気象によって、世界的に感染症が大流行したのも、一度や二度ではなかったはずである。鍼灸医学は、その度に、死な…

六節藏象論(九)(1)

本編もまた、天人相応・合一思想をベースに説いてあり、自然界の変化がどのように人体に影響を及ぼすのかに主眼が置かれている。そして本篇は、大きく三部に分けて説いている。 第一部は、暦法を説明し、自然界の気の運行と人体の相関関係を述べている。 第…

靈蘭祕典論(八)

内経医学の思想の一つに、天人合一・相応がある。 国の有り様を人体に相応させ、国の中枢を君主とし、人体の中枢である心の臓を相応させて説いてある。 中国では、自然界の気が乱れると国が乱れ、国の君主が乱れると自然界も乱れるという相応思想がある。 小…

陰陽別論(七) (2)

後半は、六経の脈象と症状について述べられており、また五行論の相性・相克関係を用いて死する時期について言及しているが、数学的に割り出すことはできても、これを法として臨床に応用することは疑問である。このような考え方で、なにかを伝えようとしてい…

陰陽別論(七)(1)

この篇は、別論というだけあって、編集者の王冰(7世紀)が、ここに至るまで論じられている「陰陽論」を用い、脈象と病との関係を論じているが、非常に難解である。 編者の意図を出来るだけ汲み取るよう努めたが、不明な点は敢えて臨床に合致するよう、独断的…

陰陽離合論(六) - 一即他、多即一 (2)

原 文 意 訳 帝が、『三陰三陽が、それぞれ分かれて機能し、分かれていながら一つに集約し、協調して生命を維持している様。つまり陰陽の離合について聞きたく思う』、と申された。 岐伯が申された。 聖人が南面して立たれました場合、最も日光が当たる身体…

陰陽離合論(六) - 一即多、多即一 (1)

本篇は、臨床的に重要な内容を多分に含んでいる。1.<老子・道徳経>『 道可道、非常道(道の道とたるべきは、常の道にあらず)』 とあるように、これが陰だ、陽だと説明しうるものは陰陽変化の実態を示しているのでは無いのだということを、本文中に『陰…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(16)

前回は、東洋医学の診察法の基本中の基本について述べられていた。 前回の流れを引き継ぎ、今回はもう少し具体的に治療法の考え方を述べている。 さっそく本文に入ります。原 文 意 訳 病が起こったばかりの初期においては、刺法を施せば直ちに癒えるもので…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(15)

この段では、より具体的に陰陽偏在の兆候を読み取る方法と手順が、簡明に記されている。 早速、意訳してみることにする。原 文 意 訳 すぐれた医師は、患者の現す顔の気色や肌の色から、体内で何が起きているのかを察し、脈が表現している気の状態をじっくり…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(14)

この段の難解なところは『從陰引陽.從陽引陰.以右治左.以左治右.』 であった。 できるだけ臨床に則してリアリティーが感じられるよう、これを意訳するように努めた。陰陽、左右、内外の気の偏在は、四診を駆使して具体的に把握するのである。天人合一思…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(13)

この段においては、天人相応思想を、具体的な事例を用いて説いている。 荒唐無稽なこじつけと、捉えてしまえば、すべては台無しである。 現象を通じて現象を起こしている、目には見えない気の動きをイメージとして掴み、これをあらゆるものに応用したのが、…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(12)

『天は北西に不足して陰であり、地は東南に満たないので陽である。』 非常に難解な段落である。 中国大陸の黄河と揚子江は、西から東へと流れているので、土地の高低と天の高低とを比較して述べられたものであるという説は、一見説得性があるようだ。 ところ…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(11)

この段落では、上古天真論(1)に立ち返って養生を説いている。 七損八益に関しては諸説あるも、柴崎保三氏の説が最もしっくりと来たので、これを採用した。 改めて、以下の文の意味を深く傾注するようにと、この段落で再び説いているように思える。 『恬惔…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(10)

いよいよ具体的に身体のあるべき状態と、異常を説いている。 単純なモデルだが、単純であるがゆえに応用無辺である。 たとえば、現代病のアトピー性皮膚炎は、発汗がしにくい方が結構多い。 当然、体内の熱が盛んになって出口で渋滞を起こして発症する。 当…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(9)

原 文 意 訳 天は高くして尊く、万物を覆い、地は卑(ひ)くくして万物を載せる。 天気は下り、地気は上り、天地陰陽の気の変化・交流で万物は生じるのである。 万物にとって天地は生み出す元である父母であり、上下である。 陰陽なるものは、たとえば動いて…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(8)

原 文 意 訳 (一部、太素に従う) 西方は、一日の内では落陽の時期であり、陽気が衰え空気も乾いて来るので燥を生じるのである。 乾燥すると形が固まるので、燥は金を生じる。辛は、取手のついた大きな鍼であり、辛い味は、鍼で刺すようでつらい感覚を生じ…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(7)

原 文 意 訳 南方は、昇った朝日の陽気が最も盛んで熱化するので、熱を生じるのである。熱せられると燃えやすくなるので火を生じ、火は苦味の灰土を生じる。 苦味は心に入って心の陰気を養って血を生じ、血は脾気を生じるのである。そして心は脾気の状態が現…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(6)

原 文 意 訳 黄帝が申される。 余が聞くところでは、上古の聖人が人の形(臧)を論じて整理し、蔵府を分類して列挙し、端に経脈を関連づけた。これは六合(陰=臓腑)に相通じ、それぞれの蔵府が各経脈に従っている。 さらにそれぞれの経には、体内の気が体…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(5)

陰陽応象大論は、基本的に押さえておくべき重要なことが多く述べられている。 今回は天人合一思想で述べられている。 五臓の気は、自然界の五行と相関があるという前提で論理が進められている。 自然界の天の気は、人間においては神気であり、その神気は五臓…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(4)

ここからは易の思想で説いてあるので、あらかじめ少し解説をしておきます。 まずは、物質である水を陰とし、非物質である火を陽とするとある。 これら両者はまったく別の性質を持ちながらも、分かれていないことに気づくのが肝要である。 易学の卦で現してみ…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(3)

大きくは天地陰陽の気の変化を述べ、その変化の法則を人体の気の変化に当てはめて認識する。 これを天人合一とも天人相応哲学と称する。 本文では、具体的にその応用例を説いているが、これを暗記しようとするのではなく、変化の法則をイメージで理解するこ…

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(2)

ほんの僅かの文章の中に、応用無限の真理が説かれている。 特にここでは、陽気、陰気の性質と、極まるということについて述べられている。 これを陰陽の転化法則という。 極まるとは。 いつ極まるのか。 これは自らの心意を以て測り、見極めることである。 …

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(1)

本篇では、マクロコスモスである大自然と、ミクロコスモスである人間とは、等しく同じ法則の中で生々流転していることを説いている。 これを、天人合一=天人相応思想と称し、鍼灸医学の基本中の基本であり、寄って立つ基盤となる思想である。 当然医学とい…

金匱真言論(四) - 季節と発病(2)

ここから陰陽論を用いての展開となります。 一年の内の四季は、四時の気として陰陽の割合が変化することは、これまでに繰り返し述べられてきました。しこれを陰陽の消長と称するのですが、この1年の陰陽の消長法則は、1日の陰陽法則にも当てはまり、さらに人…

金匱真言論(四) - 季節と発病(1)

表題の『金匱真言』とは、今では考えられないほど当時貴重品であった金属の箱に保存しておく価値のある、法則・真理を述べた内容であるとの意味です。 長いので、いくつかに分けて解説して参りますが、この篇の最初には、季節と病変を起こす部位との関係が説…

五行論は妄説?(4)

これまで、五行論の相生・相剋関係について、簡単に説明してきました。 五行論の成り立ちから考えて、五行を機械的・法則的に用いるのは誤りであると僕は考えています。 もう一度別の例をあげると、木=春、火=夏、土=長夏、金=秋、水=冬と順番に季節と…

五行論は妄説?(3)

今回は、相剋関係を説明致します。 相克関係は、簡単に述べると、下図のように相互に制約する関係です。 木は土を尅し、土は水を尅し、水は火を尅し、火は金を尅す。 これをイメージにつなげると、木は土から養分を取り上げ、土は水をせき止め、水は火を消…

五行論は妄説?(2)

まず、五行論の源を訪ねてみます。 五行は、四書五経の内の書経(しょきょう)、またの名を尚書(しょうしょ)の中の洪範に初めて見ることができる。 そこに記されているのは、水→火→木→金→土という順序で一般的に知られている木→火→土→金→水とは異なる。 当…

五行論は妄説?(1)

筆者の場合、東洋医学の入り口は『黄帝内経』だったのですが、この書物の背景となる思想背景のひとつに、陰陽五行学説がある。 実は初学の頃からずっと抱いてきた疑問のひとつに、五行学説への不信感があった。 ここ数年、やっとその疑問が解けてきたので、…

生気通天論(三) - 人は小宇宙(3)

前回までは、陽気の性質とその病的な症状について述べられていましたが、今回は陰気について述べています。 陽=気、陰=精血(せいけつ)と置き換えると、理解しやすいかもしれません。 気は、動力・エネルギー、精血はそのエネルギーの原料です。 人体の生…