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鍼灸医学の懐

黄帝内経の意訳と解説 最後に原文と読み下しを記しています。

刺熱篇第三十二.

黄帝内経 素問



雨に濡れても、燃えるようなツツジ


《霊枢・壽夭剛柔第六》に「風寒は形を傷り、憂恐忿怒は気を傷る。氣は藏を傷れば、乃ち藏を病む。寒は形を傷れば、乃ち形に應ず」と、明確に記載されている。

しかしながら、この篇で言うところの熱病の病因は、外感病と七情内傷病と入り混じって記載されているようで、非常に分かりにくい。

筆者が臨床的に重要と思い、実際に用いている部分は、太字にしているので参考になればと思う。

頬の赤色の左右の問題は、東=陽、西=陰であると観念的でなく、実態を観察した上でのことで腹証や脉証との相関性が高いことが臨床的にも観察できる。

また督脈上の三椎~七椎の反応は、熱感と圧痛となって現れる。

督脈は、腎陽の通路であるが、神気によって流れを調整されている。

このことを考えれば、この記載部分に関してだけは、七情内傷がその原因と考えても妥当だと思う。

他の病症に関しては、類推されたし。





原 文 意 訳


 肝熱を病む者は、先ず小便が黄色くなり、腹が痛んで臥することが多くなり発熱いたします。

 正邪が激しく抗争して発熱いたしますと、狂ったかのようにものを言ったり、少しのことでハッと驚くようになり、脇が脹痛し、手足が落ち着かずバタバタとして安眠することができなくなります。

 庚辛の日時に甚だしくなり、甲乙の日時に大汗をかいて解熱いたします。さらに発熱が高じて氣逆を起こしますと、庚辛の日時に死します。

 このような場合、足の厥陰と少陽を取りて刺します。軽い氣逆であれば、眩暈を伴った頭痛がし、脉に沿って熱が上衝するので、ズキズキと拍動性の頭痛がします。


 心熱を病む者は、まず気持ちが鬱々として伸びやかになれず、楽しくない状態が数日続くと発熱するようになります。

 正邪が激しく抗争して発熱いたしますと、にわかに心の臓が痛み、胸のあたりがモヤモヤとして落ち着かず、もだえるようになります。

 さらによくからえずきをし、頭痛がして顔色は紅潮するのに気滞で汗が出ません。

 壬癸の日時に甚だしく、丙丁の日時に大汗をかいて解熱いたします。さらに発熱が高じて氣逆を起こしますと、壬癸の日時に死します。手の少陰と太陽を取りて刺します。


 脾熱を病む者は、まず頭が重く感じて頬が痛み、モヤモヤと煩わしい感じがして心が落ち着かずに顔色も青く、吐き気を催して発熱いたします。

 正邪が激しく抗争して発熱いたしますと、脾胃の気がそれぞれ協調せず、腰痛がしてしかも仰向けになれず、腹満して下痢をし、両顎が痛みます。

 甲乙に甚だしく、戊己に大汗をかいて解熱いたします。さらに発熱が高じて氣逆を起こしますと、甲乙の日時に死します。足の太陰と陽明を取りて刺します。

 肺熱を病む者は、先ず突然手足が冷えあがって鳥肌が立ち、風や寒さを嫌がり、舌の上が黄ばんで発熱いたします。

 正邪が激しく抗争して発熱いたしますと、ゼーゼーと喘ぎながら咳が出るようになり、胸と背に痛みが走るようになり、大きな息もできません。

 耐え難いほどの頭痛がし、汗が出て寒がります。丙丁に甚だしく、庚辛に大汗をかいて解熱いたします。

 発熱が高じて氣逆を起こしますと、丙丁に死します。このような場合、手太陰と陽明を取りて刺します。刺絡して大豆大の血を得ましたら、病は立ちどころに癒えます。


 腎熱を病む者は、先ず腰が痛みむこうずねが重だるく、ひどく水を飲みたがるようになり発熱いたします。

 正邪が激しく抗争して発熱いたしますと、項が痛んで強ばり、むこうずねが冷えて重だるく、しかも足の裏は熱く、あまり話したがらなくなります。

 発熱が高じて氣逆を起こしますと、頭が重くてフラフラするようになり、項も痛みます。戊己に甚だしく、壬癸に大汗をかいて解熱いたします。

 発熱が高じて氣逆を起こしますと、戊己に死します。足少陰と太陽を取りて刺します。



 それぞれの臓で汗が出るのは、その勝つところの日時に至って発汗し解熱するのであります。

 肝熱を病む者は、左の頬が先ず赤くなる。

 心熱を病む者は、顔全体が先ず赤くなる。

 脾熱を病む者は、鼻が先ず赤くなる。

 肺熱を病む者は、右の頬が先ず赤くなる。

 腎熱を病む者は、顎が先ず赤くなる。

 具体的な病となっていなくとも、赤の色が現れましたら、鍼治療を行います。

 これが未病を治すということでありまして、発病を未然に察知して処置することができるのであります。

 熱病が五臓の対応するところに起きましたら、その臓が旺する時期に至ると自然治癒いたしますが、この時に判断を誤って刺鍼しても日時が三周すれば治りますが、さらに誤治を致しますと死します。

 五臓の熱病は、その勝つところに至るのを見計らって、タイミングよく大いに発汗させるのであります。

 それぞれの熱病を治する際には、寒水を飲ませて裏熱を冷まし、刺鍼いたします。

 さらに必ず薄着をさせ、寒い場所に留め置いて治療すれば、身体が寒え熱病も治まるのであります。


 熱を病み、痛みが先ず胸脇に起こり、手足が落ち着かずにバタバタするものは、足の少陽を瀉し、足の太陰を補います。病が甚だしいようですと「水熱穴論」にあります五十九穴を用います。

 熱を病み、痛みが先ず手臂(しゅひ=上腕)から始まるものは、手の陽明と太陰を刺し、汗が出ますと熱は止みます。

 熱を病み、痛みが頭と首から始まるものは、太陽の項を刺し、汗が出ますと熱は止みます。

 熱を病み、痛みが足の脛から始まるものは、足の陽明を刺し、汗が出ますと熱は止みます。

 熱を病み、先ず身体が重く骨痛が起こり、耳聾し目を閉じて眠ることを好むようになる時は、足の少陰を刺し、病が甚だしければ五十九穴を用います。

 熱を病み、先ず目が回るようにクラクラとして発熱し、胸脇が満ちて苦しむ時は、足の少陰と少陽を刺します。


 頬骨に赤色が栄えるようですと、太陽脉証の熱病であります。まだはっきりと赤色が栄えていない状態でしたら、時期が至りましたら発汗して治まります。

 しかし、厥陰脉証とのまだはっきりと赤色が栄えていない状態でしたら、時期が至りましたら発汗して治まります。この場合、その熱病が、内は腎に連なっているからであります。

 頬に赤色が栄えるようですと、少陽脉証の熱病であります。まだはっきりと赤色が栄えていない状態でしたら、時期が至りましたら発汗して治まります。

 少陰脉証とのまだはっきりと赤色が栄えていない状態でしたら、時期が至りましたら発汗して治まります。


 どこの熱が中心の病であるかの目安となる気穴は、以下であります。

 椎下の間は、胸中の熱を主ります。

 四椎下の間は、膈中の熱を主ります。

 五椎下の間は、肝の熱を主ります。

 六椎下の間は、脾の熱を主ります。

 七椎下の間は、腎の熱を主ります。

 気の熱化の現れが上記であることに対して、栄血の現れは腎の府である尾骨にある。

 項部分の気穴は三椎下以下のそれぞれの陥凹部の中にあります。

 頬の下に現れた赤色が頬骨に上がると、遊走性の大きなしこりが出来、頬車穴に下ると腹満を生じ、頬骨の後ろに移動すると脇痛を生じる。頬より上は、全て膈より上の状態を表します。



原文と読み下し

肝熱病者.小便先黄.腹痛.多臥.身熱.熱爭.則狂言及驚.脇滿痛.手足躁.不得安臥.庚辛甚.甲乙大汗.氣逆則庚辛死.
刺足厥陰少陽.其逆則頭痛員員.脉引衝頭也.

肝の熱病なる者は、小便先ず黄ばみ、腹痛み、臥すること多くして、身熱す。熱爭えば則ち狂言して驚するに及び、脇滿ちて痛み、手足躁して安臥を得ず。庚辛に甚だしく、甲乙に大いに汗す。氣逆すれば則ち庚辛に死す。
足厥陰少陽を刺せ。其の逆するは則ち頭痛むこと員員とし、脉引きて頭を衝くなり。

心熱病者.先不樂.數日乃熱.熱爭.則卒心痛.煩悶.善嘔.頭痛.面赤.無汗.
壬癸甚.丙丁大汗.氣逆則壬癸死.刺手少陰太陽.
心の熱病なる者は、先ず樂しまず、數日にして乃ち熱す。熱爭えば則ち卒(にわか)に心痛し、煩悶して善く嘔し、頭痛みて面赤く、汗無し。
壬癸に甚しく、丙丁に大いに汗す。氣逆すれば則ち壬癸に死す。手少陰太陽を刺せ。

脾熱病者.先頭重.頬痛.煩心.顏青.欲嘔.身熱.熱爭.則腰痛.不可用俛仰.腹滿泄.兩頷痛.甲乙甚.戊己大汗.氣逆則甲乙死.刺足太陰陽明.
脾の熱病なる者は、先ず頭重く、頬痛み、煩心して顏青く、嘔せんと欲し、身熱す。熱爭えば則ち腰痛み、俛仰を用うべからず。腹滿して泄し、兩頷痛む。甲乙に甚だしく、戊己に大いに汗す。氣逆すれば則ち甲乙に死す。足太陰陽明を刺せ。

肺熱病者.先淅然厥.起毫毛.惡風寒.舌上黄身熱.熱爭.則喘.痛走胸膺背.不得大息.頭痛不堪.汗出而寒.丙丁甚.庚辛大汗.氣逆則丙丁死.刺手太陰陽明.出血如大豆.立已.
肺の熱病なる者は、先ず淅然として厥し、毫毛起き、風寒を惡(にく)み、舌上黄ばみて身熱す。熱爭えば則ち喘し、痛み胸膺背に走り、大息するを得ず。頭痛みて堪えず、汗出でて寒す。丙丁に甚しく、庚辛に大いに汗す。氣逆すれば則ち丙丁に死す。手太陰陽明を刺せ。血出ずること大豆の如くにして立ちどころに已ゆ。

腎熱病者.先腰痛䯒痠.苦渇數飮.身熱.熱爭.則項痛而強.寒且.足下熱.不欲言.其逆則項痛員員澹澹然.戊己甚.壬癸大汗.氣逆則戊己死.刺足少陰太陽.
諸汗者.至其所勝日.汗出也.
腎の熱病なる者は、先ず腰痛み、(こう)(しゅん)す。渇するを苦しみ數しば飮し、身熱す。熱爭えば則ち項痛みて強ばり、寒えて且つし、足下熱し、言うを欲せず。其の逆なれば則ち項痛みこと員員(いんいん)澹澹(たんたん)然たり。
戊己に甚だしく、壬癸に大いに汗す。氣逆すれば則ち戊己に死す。足少陰太陽を刺せ。
諸々の汗する者は、其の勝所の日に至りて、汗出ずるなり。

※澹澹然・・・ずっしりと重い様

肝熱病者.左頬先赤.
心熱病者.顏先赤.
脾熱病者.鼻先赤.
肺熱病者.右頬先赤.
腎熱病者.頤先赤.
病雖未發.見赤色者刺之.名曰治未病.
熱病從部所起者.至期而已.其刺之反者.三周而已.重逆則死.
諸當汗者.至其所勝日.汗大出也.
肝の熱病なる者は、左の頬先ず赤し。
心の熱病なる者は、顏先ず赤し。
脾の熱病なる者は、鼻先ず赤し。
肺の熱病なる者は、右の頬先ず赤し。
腎の熱病なる者は、頤(い)先ず赤し。
病未だ發せずと雖ども、赤色を見(あら)わす者はこれを刺す。名づけて未病を治すと曰く。
熱病部所從り起こる者は、期に至りて已む。其の之を刺して反する者は、三周して已む。重ねて逆すれば則ち死す。
諸々の當に汗すべき者は、其の勝つ所の日に至りて、汗大いに出ずるなり。

諸治熱病.以飮之寒水.乃刺之.
必寒衣之.居止寒處.身寒而止也.
諸々の熱病を治するに、以てこれに寒水を飮まして、乃ちこれを刺す。
必ずこれに寒衣し、寒處に居き止め、身寒して止むなり。

熱病先胸脇痛.手足躁.刺足少陽.補足太陰.病甚者.爲五十九刺.
熱病始手臂痛者.刺手陽明太陰.而汗出止.
熱病始於頭首者.刺項太陽.而汗出止.
熱病始於足脛者.刺足陽明.而汗出止.
熱病先身重骨痛.耳聾好暝.刺足少陰.病甚.爲五十九刺.
熱病先眩冒而熱.胸脇滿.刺足少陰少陽.
熱病の先ず胸脇痛み、手足躁なるは、足少陽を刺し、足太陰を補う。病甚だしき者は、五十九刺を爲す。
熱病の手臂の痛みに始まる者は、手陽明太陰を刺し、汗出づれば止む。
熱病の頭首に始まる者は、項の太陽し、汗出づれば止む。
熱病の足脛に始まる者は、足陽明を刺し、汗出づれば止む。
熱病の先ず身重く骨痛み、耳聾し、好(よ)く暝するは、足少陰を刺し、病甚だしければ、五十九刺を爲す。
熱病の先ず眩冒して熱し、胸脇滿するは、足少陰少陽を刺す。

太陽之脉.色榮顴骨.熱病也.榮未交.曰今且得汗.待時而已.
與厥陰脉爭見者.死期不過三日.其熱病内連腎.少陽之脉色也.
少陽之脉.色榮頬前.熱病也.榮未交.曰今且得汗.待時而已.與少陰脉爭見者.死期不過三日.
太陽の脉、色顴骨(かんこつ)に榮するは、熱病なり。榮未だ交わらざるを、今且(まさ)に汗を得、時を待ちて已むと曰く。
厥陰の脉と爭い見われる者は、死期三日を過ぎず。其の熱病内は腎に連なる。少陽之脉色也.
少陽の脉、色頬前に榮するは、熱病なり。榮未だ交わざるを、今且に汗を得、時を待ちて已むと曰く。少陰の脉と爭い見われる者は、死期三日を過ぎず。
※少陽之脉色也.「新校正」に従い削除す。

熱病氣穴.
三椎下間.主胸中熱.
四椎下間.主鬲中熱.
五椎下間.主肝熱.
六椎下間.主脾熱.
七椎下間.主腎熱.
榮在也.項上三椎陷者中也.
熱病の氣穴。
三椎下の間は、胸中熱するを主る。
四椎下の間は、鬲中の熱を主る。
五椎下の間は、肝熱を主る。
六椎下の間は、脾熱を主る。
七椎下の間は、腎熱.
榮は(てい)に在るなり。項の上三椎陷なる者の中なり。

頬下逆顴.爲大.下牙車.爲腹滿.顴後.爲脇痛.
頬上者.鬲上也.
頬下より顴に逆するを、大瘕と爲す。牙車に下るを腹滿と爲し、顴後を脇痛と爲す。

頬の上なる者は、鬲の上なり。


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