鍼灸医学の懐

黄帝内経の意訳と解説 最後に原文と読み下しを記しています。

四気調神大論(二)-夏・生活の要点(4)

夏は図のように、精神的にも肉体的にも『発散』を心がける時期です。
要は、すべて外向きにして、内に鬱しないことが大切。


夏発散・上昇





 見方を変えると1年で、最も体力が消耗する時期でもあります。
 なぜか。
 それは汗をかくからです。
 汗について少し解説します。
 汗というのは、汗=体液+陽気という簡単な数式で考えます。
 図をよく見て頂けると分かると思いますが、気が外向きに発
散するので、肉体的には内部に気が不足気味になります。
 世間では、暑気が盛んになって来ると水分の補給を呼びか
けますが、東洋医学では人体内部の陽気が傷つかないように
がけます。
 つまり、陽気が不足しているところに、冷たい飲食を取り過
ぎて胃腸機能を低下させないことです。
 夏場はただでさえ、下痢を起こしやすいので、冷たいものだ
けでなく、水分を摂り過ぎると消化器機能低下に陥り、いわゆ
る『夏バテ』となります。
夏バテのメカニズムを簡単に説明します。
図のように鍋で調理をしているところをイメージして下さい。

腎の臓.png

鍋の中の水が過剰であったり冷えていると、なかなか鍋が
温まらず食物が柔らかくなりませんでしょう。
人体の胃腸機能もまさに同じで、水分を摂り過ぎると消化
機能が低下し、食欲そのものも低下してきます。
 食欲が無くなると、当然元気がなくなるので、消化する力も
次第に失われ、悪循環を起こすようになります。これが『夏
バテ』の病理です。
 精神的に、イライラや怒りは、どの季節においても禁忌
すが、夏は特に気の動きが激しいので、感情の中で最も激
しく気を動かす怒気に注意するのがよろしい。
 また、クーラーなどの冷えた場所で、あまり汗をかかない
でいると、代謝が悪くなり、本来排泄されるべきものが体内
にため込むことになります。

 その状態で図のように秋になり、自然界の気が引き締
めに働くようになって来ると、夏の間にため込んだ排泄され
るべき邪気が、発熱・咳という形で排泄しようとします。
秋の花粉症も同様です。
ちょうど、雑巾が絞られるようなイメージですね。

秋収斂・下降

 現代人は、クーラーの効いた場所で、冷たいものを飲み
食いするので、かつての時代には無かった様々な珍病・奇
病が現れます。
 黄帝内経が著された時代と現代とでは、生活環境が大
きく様変わりしていますが、自然という人体の生理機能は、
太古のままだと認識して下さい。
 
では、原文の意訳です。

 夏の季節、すなわち立夏から立秋までの3カ月を蕃秀
(ばんしゅう)と称し、この季節は芽が上に勢いよく伸びようと
するように、天地陰陽上下の気の交流が盛んとなるので、
万物は華やいだように花を咲かせ実をつける季節である。
 この時期は、芽を出した植物があっという間に伸びる様
や鳥や虫たちも盛んに飛び交う様子に象徴される。人もま
た、海や山に出かけたくなるような気持ちになるものである。
 この時期の太陽の動きに応じて、少し遅く寝て早く起き、
日の長さや暑さを嫌うことのないようにするのが良い。、
 夏は炎暑で気が上に激しく昇るので、気持ち的には怒っ
てさらに気が昇らないようにするべきである。
 花々が勢いよく十分に成長して花を咲かせるように、
も同じように活発に動いて汗と共に気を発散させるのが良い。
 精神的には、恋人が外で待っているかのように、心を弾ま
せて外に出かけるようにし、内にこもることのないように心掛
けるのがよい。
 この自然界の夏気の気の状態に応じて、成長・発散を意
識した生活・心持が、自然の理に適ったことなのである。
 この自然界の法則に逆らえば、心の臓を傷ることになる。
 秋になって、人体の肌表が閉じるようになると、発熱と悪
寒が交互に繰り返すような瘧(がいぎゃく)という病になる。
 この状態に陥ると、秋の結実の気を受けることが出来なく
なる人が多い。
 そうなって冬季になってしまうと、さらにいろんな病気に罹
ようになってしまうのである。

原文
夏三月.此謂蕃秀.天地氣交.萬物華實.夜臥早起.無厭於日.
使志無怒.使華英成秀.使氣得泄.若所愛在外.此夏氣之應.
養長之道也.
逆之則傷心.秋爲瘧.奉收者少.冬至重病
夏三月、此を蕃秀(ばんしゅう)と謂う。天地の氣は交り、萬物は華(はな)
さき實のる。夜臥して早く起き、日を厭(いと)うことなかれ。志しをして怒
ること無さしめ、華英をして成秀ならしめる。氣をして泄らすを得せしめ、
愛する所外に在るが若くす。此れ夏氣の應、長を養うの道なり。
これに逆えば則ち心を傷る。秋に瘧(がいぎゃく)を為す。收を奉ずる
者少なし。冬に至りて重ねて病む。
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