鍼灸医学の懐

黄帝内経の意訳と解説 最後に原文と読み下しを記しています。

四気調神大論(二)- 真実を生きる

 人間は天地に支配される。図のように、とりわけ天の気に。


四季と三才図.png

  ここから天帝という名称も生まれ、日本の名だたる神々も、天から降
りて来られたー天孫降臨説が生まれたものだと推測する。
 天に支配されるとは、どういうことか。
 自分の意思に関係なく、夏になれば汗を発し、冬になれば肌表を閉
じる。風・雪・雨・雷・寒・暑・・・すべて天の気のなせるところである。
 万有引力の法則が発見される前から、リンゴの実は地面に落ち、
気は上に昇っていた。
 科学によって認識される以前から、自然の法則は働いているのである。
 小さな人間として謙虚になれば、今すでに存在していてもまだ我々
認識の及ばない法則や存在があろうというもの。科学を通して見る目は、
自然界のほんの一部しか見えていないということである。

 あたかも、「風と太陽」の如く、私たち人間は自然の気にあがらえない
のである。
自然は淘汰されるべき者は情け容赦なく殺し、生きるものは生かす。
我々のように小さな人間にとっては、残酷なように思えるが、人類は
天の気に、生かされもし、殺されもしてきたのだ。
何もかもが自然が良いと主張している人たちは、この残酷な自然の
もう一つの顔を直視し、受け入れるべきだろう。

人の老・死は、敗北ではなく、自然のなせる流れなのだと受け入れてこ
そ、人は真実を生きることが出来るのだ。

生くべき者は、これを救い、死に赴く者はこれを見守る。

古代の医師は、病者を目の前にし、生くべき者か、死に赴く者かを見分ける
ために心血を注いだ。
治療という介入は、出来るだけの手を尽くしたと言葉はきれいでも、自
然の流れとして死に赴かんと欲する者にとっては、苦痛を与えることに
なりかねない。
 
 エアコンや暖房は、今や私たちの生活に無くてはならないものになって
いる。それはすなわち、恩恵を受けているようだが、自然の気の流れに
反していることでもある。
 その結果は、身体の不調として、まるで神の祟りであるかのように私た
ちの心身を蝕む。多くは、その事に気がついていない。
 いまこそ私たちは、自然の子(ミクロコスモス)として、科学ではないもう
一つの方法で、自分たちの在り様を見つめ直すべきであろう。
 よりどころを、僕は古典に求める。
 今となっては、すべてを望むことは叶わないかもしれない。
 だが、せめて季節の移り変わりを楽しみ、季節のものを食べ、季節に
適った心持で過ごす。
 物質的に豊かになり、便利な世の中になったが、こんな当たり前のこ
とがかなわい現代。
 病気にもなろうもの。
 これらは、すべて自分自身の体験を振り返って感じたことである。
 
  意 訳
 
 天の気は、清きもので、はっきりとしないものを明確にさせる働きが
あり、その働きを自ら誇示することがない。
それを徳という。天はその徳をあからさまにせず、内に秘めている
から我々人間は生きていることが出来るのである。
 天がこのような徳を明らかにして誇示するようなことがあれば、昼
間の懐中電灯の灯りのように、太陽も月も明るく輝くことはできないの
である。
 人間の元気も同じようなものである。自然の理に反して、自分の存
在をあからさまに誇示するために、働き過ぎたり自己主張が過ぎる
と、徳を失い同時に内をしっかりと守るべき元気も散じて失ってしまう
のである
 そうなると人体の弱りにつけ込むかのように外邪が人を犯し、目鼻
耳口前陰後陰などの人体の穴が詰まってしまい、出るべき陽気は体
内に詰まってしまい、陰気はそのはっきりとした働きが阻まれ、発揮出
来なくなってしまうのである。
 天地の雲露は、雲が真に澄みきっていなければ、下って透明な露を
大地に結ぶことが出来ない。天地の交流が確かなもので無くなれば、
万物の生命もその施しを受けることが出来なくなり、名のある大木まで
が枯れてしまうということになる。人もまた同様である。
 風も起こらず自然界の気が停滞して動かない、季節外れの風雨、
白露も下らない。そうなってしまうと大地の万物は枯れて固くなり花も咲
かず、豊かに茂ることが出来なくなってしまう。
 季節外れの風がしばしば吹き、台風のような風が頻繁に起こり、
四季の変化に異常をきたすなど、自然界の法則が乱れてしまうと、元
々元気でこれからまだ生きることが出来る人であってもすべて死に絶
えてしまうのである。
 人は、自然界の法則に支配されているのだ。
 このような場合でも、聖人は元々自然の理に従って生きているので、
異常気象であってもその変化をとらえて身を処したので、身体に奇病
を生じることもなかったのである。
 聖人はまた、あらゆることに対峙しても、自然の道理を失わずに対
処することが出来たので、生気が尽きるということも無かったのである。
 
 原文と読み下し
天氣清淨光明者也.藏徳不止.故不下也.
天明.則日月不明.邪害空竅.陽氣者閉塞.地氣者冒明.雲霧不精.則上應白露不下.
交通不表.萬物命故不施.不施則名木多死.
惡氣不發.風雨不節.白露不下.則稾不榮.
賊風數至.暴雨數起.天地四時不相保.與道相失.則未央絶滅.
唯聖人從之.故身無奇病.萬物不失.生氣不竭.
天氣は清淨にして光明なる者なり。徳を藏して止まず。故に下らざるなり。
天明らかなれば則ち日月は明らかならず。邪、空竅を害せば、陽氣なる者は閉塞し、地氣なる
者は明を冒(おお)う。雲霧精ならざれば則ち上に應じて白露は下らず。
交通は表われず。萬物の命、故に施こされず。施こさざれば則ち名木多く死す。
惡氣發せず、風雨節ならず、白露下らざれば則稾(えんこう)して榮えず。
賊風、數(しば)しば至り、暴雨、數(しば)しば起り、天地四時相保たず。道と相失すれば則ち
未だ央(なか)ばならずして絶滅せん。
唯聖人のみ之に従う。故に身に奇病なく、萬物は失せず、生氣は竭きざるなり。
(以下、意訳省略)
逆春氣.則少陽不生.肝氣内變.
逆夏氣.則太陽不長.心氣内洞.
逆秋氣.則太陰不收.肺氣焦滿.
逆冬氣.則少陰不藏.腎氣獨沈.
春氣に逆えば則ち少陽は生ぜず。肝氣内に變す。
夏氣に逆えば則ち太陽は長ぜず。心氣は内に洞(うつろ)なり。
秋氣に逆えば則ち太陰は收せず。肺氣は焦滿す。
冬氣に逆えば則ち少陰は藏せず。腎氣は濁り沈む。


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