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鍼灸医学の懐

黄帝内経の意訳と解説 最後に原文と読み下しを記しています。

生気通天論(三) - 人は小宇宙(3)

 前回までは、陽気の性質とその病的な症状について述べられてい
ましたが、今回は陰気について述べています。
 陽=気、陰=精血(せいけつ)と置き換えると、理解しやすいかも
しれません。
 気は、動力・エネルギー、精血はそのエネルギーの原料です。

 人体の生理は、この陰陽二気のバランスが、ちょうど四季の陰陽


変化と同様に、陽が大きくなるにつれて陰が減って行く。(下図)

陽有余陰不足ー昼.jpg

 反対に陽が減って行くと陰が大きくなってくる、というように交互に
減ったり増えたりします。(下図)


陽有余陰不足ー夜.jpg



 そしてその病理は、陰陽の変化が陰陽どちらかに大きく偏ったり、
交流しなくなった状態です。
 人間は死ぬと、その身体は必ず冷たくなります。

 東洋医学では、この陽気の存亡をもっとも重要な視点として位置

付けています。

 人間は、単なる物体ではなく、生命を宿しています。その生命の

現象がすなわち炎であり、明るさであり、それを東洋医学では

『気』

と表現するのです。(下図)

 神は、気であり生命現象。・・・ 炎
 
 精は、気を支える物質的基盤。・・・ ロウの部分

 このロウの部分は、飲食物を元に気が作りだします。

精神.png

  
  気は陰血から生まれ、陰血は飲食物を原料に、気が作りだします。
  この、陰陽気血が相互に交流しないと、死にいたる訳です。
  東洋医学には、栄養学というものが無いのですが、味によって気
の動きに変化があることを捉えています。
 その味は、五種類あり、五味と言い、その味の性質を気味と称しま
す。
 五味とは、酸(すっぱい)・苦(にがい)・甘(あまい)・辛(からい)
・鹹(しおからい)の5種類です。
  ① 酸は、収でひきしめる。
 ② 苦は、下降でひきおろす。
 ③ 甘は、緩でゆっくりゆるめる。
 ④ 辛は、散で解放。
 ⑤ 鹹は軟で軟らかい。
と、それぞれ心体の気に働きます。漢方薬に用いられる薬種は、
この五味に寒性・熱性を掛けた10種類の性質に分類したもの
を用います。さらに詳しいことは、いずれ書きます。
 さて、毎日の食事は、これらの味に偏らないことを説いている
のですが、現代においては、間食の占める割合が多くなってき
ているので、このことの方が問題が大きいですね。
 飲食物は、肉体を作る大切なもの。
 手にした食べ物を、口に入れる際には、よくよく心を用いるべ
きですよ。
 
  原 文 意 訳

 岐伯が申す。
 陰というものは、内に精をしまい込み、必要に応じて供給するので
ある。
陽というものは、身体を外邪から堅固に守るものである。
もし陰陽のバランスが崩れ、陰気が消耗して陽気が盛んになると、
脈流は迫るように速くなり、陽気が積み重なり合うように盛んにな
れば、大暴れするような狂った状態になる。
反対に陽気が消耗し、陰気が盛んになると、五臓の気は動きがと
れず互いに引き合い膠着するので、九竅(きゅうきょう=耳・目・鼻
・口・前陰・後陰の穴)もふさがって通じなくなるのである。
しかしながら聖人は、陰陽の法則を心に明らかにして体得している
ので、筋脈は和らぎ、骨髄は堅固でがっちりとしており、気血もまた
それに従って円滑に巡るのである。
このようであるから、聖人の身体の内外は調和がとれているので、
いかなる外邪がやってこようとも、耳目は健全にはっきりと物事を
捉え、陰陽の気は安定し、本来の姿を維持して壊れると言うことが
ないのである。
風邪が侵入してジワジワと深く入って来ると、精血は傷害される。
風邪は肝の臓を傷害するのである。
このような状態にあって、食欲にまかせて食べ過ぎると、筋脈は
バラバラになって機能しなくなり、下痢を伴う痔疾になる。
さらに大いに酒を過ごすと、気が昇って降りて来なくなるようにな
る。
また、大いに力を用いるようなことをすれば、腎気が傷害され、
腰の関節が緩んで立てなくなるのである。
おおよそ陰陽の要は、陽気を充実させておくことである。
気が充実していると身体を堅固に保つことが出来るのである。
陰陽が調和していないのは、春があって秋が無いようなもので
あるし、また冬があって夏が無いようなものである。
陰陽の法則に順応することは、天の神意である。
したがって、陽気が強く充実していることが出来ないと、陰気は
その拠り所を失って絶えてしまう。陰気が穏やかで和平であり、
陽気をもらさないでしっかりと守っておれば、心身ともに円満で
生命を全うできるのである。
それに反して、陰陽が互いに交流せず分裂してしまえば、生命
活動の原動力である精気も絶えて、人生もまた中断を余儀なく
されるのである。(陰陽離決)
 
風にさらされると、風邪となって身体を侵し、寒熱を生じる病と
なる。
これを基本として、春の風邪を感受し、久しく留まって連なると、
脾気が失調して未消化の下痢が起きる。
夏の暑気に傷害されると、秋になって身体はやせ細り、熱と悪
寒が交互にやって来る瘧(おこり)を病む。
秋に湿気の邪に傷害されると、肺気が湿気に阻まれて降りなく
なるので、気が上に突きあがって咳嗽が生じるのである。
体幹部の湿邪が、手足に流れて停滞すると、陰邪であるがゆえ
に手足が冷えあがり、萎えて動かなくなる痿厥(いけつ)という病
になるのである。
冬の寒気に傷害されると、春になって必ず目・喉が赤く充血して
痛む温病となる。
これらのように四季の気、すなわち春の風気、夏の暑気、秋の
湿気、冬の寒気は、四季に適った生活をしていないと、それぞれ
五臓を傷害するのである。
 
陰気の生まれる大本は、飲食物の五味にあるのだが、飲食物の
精をしまっておく五宮、すなわち五臓を傷害するのも、またこの五
味にあるのである。
酸味が過ぎると、肝気が盛んとなり、肝が尅する脾気が絶えてし
まう。
鹹味(かんみ=しおからい)が過ぎると、大腿骨のような大きな骨
が疲弊し、肌肉は縮んで弾力がなくなり、心気は滞って伸びない
ので抑鬱になる。
甘味が過ぎると、胸が煩悶して喘ぐようになり、心気もせわしなく
なり、皮膚の色も黒くなって、腎精と腎陽のバランスがとれなくなり、
早く老けこんでしまう。
苦みが過ぎると、脾気が潤いを失くし、胃に津液を送って冷やすこ
とが出来なくなるので、胃に熱を持つようになってくる。
辛味が過ぎると、気が散ってしまい、筋脈も緩んで力が減弱し、心
身共に本来の活動を制限されるようになる。
このようであるから、特定の味の物を偏って摂るのではなく、よく心
を用いて五味が調和するようにしなければならない。
五味が調和した食生活を送っていれば、骨は正しく真っ直ぐで、筋
肉は柔軟で弾力があり、気血は滞りなく順調に流れるので、体表の
守りも充実するのである。
そうであれば、腎精の現れである骨もしっかりと堅固で、人体をしっ
かりと支えることが出来るのである。
陰陽の変化の法則、これを「道」というのであるが、身を謹んで道
に従えば、天与の生命を無病で長く保つことができるのである。
 
岐伯曰.
陰者藏精而起亟也.
陽者衞外而爲固也.陰不勝其陽.則脉流薄疾.并乃狂.
陽不勝其陰.則五藏氣爭.九竅不通.
是以聖人陳陰そ陽.筋脉和同.骨髓堅固.氣血皆從.
如是則内外調和.邪不能害.耳目聰明.氣立如故.
岐伯曰く。
陰なる者は精を藏して起亟するものなり。
陽なる者は外を衞りて固を爲すなり。陰其の陽に勝たざれば、則ち脉流は薄疾す。
并せれば乃ち狂す。
陽其の陰に勝たざれば、則ち五藏の氣は爭い、九竅は通ぜず。
是を以って聖人陰陽を陳べ、筋脉を和同し、骨髓は堅固にして、氣血皆從う。
是の如くなれば則ち内外は調和し、邪は害すること能わず。耳目は聰明にして氣
立つこと故の如し。
風客淫氣.精乃亡.邪傷肝也.
因而飽食.筋脉横解.腸爲痔.
因而大飮.則氣逆.
因而強力.腎氣乃傷.高骨乃壞
風客して淫氣なれば、精は乃ち亡ぶ。邪は肝を傷るなり。
因りて飽食すれば、筋脉は横解し、腸して痔を爲す。
因りて大飮すれば則ち氣逆す。
因りて強力すれば、腎氣は乃ち傷れ、高骨乃ち壞す。
凡陰陽之要.陽密乃固.兩者不和.若春無秋.若冬無夏.因而和之.
是謂聖度.
故陽強不能密.陰氣乃絶.陰平陽祕.精神乃治.陰陽離決.精氣乃絶.
凡そ陰陽の要、陽密なれば乃ち固し。兩者和せざれば、春に秋無きが若し。冬
に夏無きが若し。因りてこれを和す。是を聖度と謂う。
故に陽強くして密なること能わざれば、陰氣は乃ち絶す。陰平らかにして陽祕な
れば、精神は乃ち治まる。陰陽離決すれば、精氣乃ち絶っす。
因於露風.乃生寒熱.是以春傷於風.邪氣留連.乃爲洞泄.
夏傷於暑.秋爲痎瘧.秋傷於濕.上逆而欬.發爲痿厥.
冬傷於寒.春必温病.四時之氣.更傷五藏.
露風に因りては、乃ち寒熱を生ず。是を以って春風に傷れ、邪氣留連すれば、
乃ち洞泄を爲す。
夏暑に傷れれば、秋に痎瘧を為す。秋濕に傷れれば、上逆して欬す。發っし
て痿厥を爲す。
冬寒に傷れれば、春に必ず温病たり。四時の氣、更も五藏を傷る。
陰之所生.本在五味.陰之五宮.傷在五味.
是故味過於酸.肝氣以津.脾氣乃絶.
味過於鹹.大骨氣勞.短肌.心氣抑.
味過於甘.心氣喘滿.色黒.腎氣不衡.
味過於苦.脾氣不濡.胃氣乃厚.
味過於辛.筋脉沮弛.精神乃央.
是故謹和五味.骨正筋柔.氣血以流.湊理以密.如是則骨氣以精.
謹道如法.長有天命.
陰の生ずるところ、本は五味に在り。陰の五宮、傷らるるは五味に在り。
是れ故に味酸に過ぎれば、肝氣は以って津(あふ)れ、脾氣は乃ち絶す。
味鹹に過ぎれば、大骨の氣は勞し短肌し、心氣抑す。
味甘に過ぎれば、心氣は喘滿し、色黒く、腎氣衡ならず。
味苦に過ぎれば、脾氣は濡おわず、胃氣は乃ち厚し。
味辛に過ぎれば、筋脉は沮弛(そし)し、精神は乃ち央(おお)す。
是れ故に謹みて五味を和せば、骨正しく筋柔らかく、氣血は以って流れ、
湊理は以って密(ひそ)かなり。是の如くなれば則ち、骨氣は以て精なり。
道を謹しみ、法の如くければ、長く天命あり。
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