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鍼灸医学の懐

黄帝内経の意訳と解説 最後に原文と読み下しを記しています。

金匱真言論(四) - 季節と発病(1)

表題の『金匱真言』とは、今では考えられないほど当時貴重品であった金属の箱に保存しておく価値のある、法則・真理を述べた内容であるとの意味です。

 長いので、いくつかに分けて解説して参りますが、この篇の最初には、季節と病変を起こす部位との関係が説かれています。

 季節と病の発生との関連に意識を向けると、『冬に運動をし過ぎて陽気を乱すな』 『冬の間にしっかりと精を堅持しろ』いうメッセージが伝わってきます。

 読んで頂けると、四季の中でも、とりわけ冬の過ごし方に重要な意味があることがお分かりになると思います。

 また、この篇に至るまで、繰り返し述べられているように、人体の陽気と精の大切さ。とりわけ腎の陽気と精の保持がその要であることが理解できます。

 病変部も、それにとらわれることなく大雑把に意識している程度でよいと思われます。それよりも臨床で大切なことは、季節と病変部位との関係です。

 なぜその部位に病変が現れやすいのかということを、自然界の気の変化を具体的にイメージして、患者の素体を考慮しながら探ることで病の本質、根っこが見えてきます。

 具体的にイメージして、それを心意に堅持しながら脈診や腹診、その他の診察法を行うと、具体的な人体の気の偏在を、我が手中にすることが出来ます。

 下図をイメージしながら、お読み頂くと理解が進むと思います。

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※ここでは、五行学説の相生・相克関係で人体の生理・病理を説いていますが、 五行学説の用い方については、『カテゴリー・東洋医学理論』ですでに書いていますので、そちらをご覧ください。

原 文 意 訳

 黄帝が問われるには、自然界に八風があり、人体の経脈に五風あるというのは、一体どういうことなのか。
 岐伯がそれに対して、以下のように述べた。

 八風が邪を発すると、経絡に侵入し、さらに五臓に伝わってしまうと、その邪気は病を生じるのである。
 いわゆる四時の勝気を得るとは、春は長夏に勝ち、長夏は冬に勝ち、冬は夏に勝ち、秋は春に勝つということである。これがいわゆる四時の勝気の法則なのである。

  東風は春によく生じ、病変は肝に起こり、治療穴は頸項部にある。
 南風は夏によく生じ、病変は心に起こり、治療穴は胸脇にある。
 西風は秋に良く生じ、病変は肺に起こり、治療穴は肩背にある。
 北風は冬に良く生じ、病変は腎に起こり、治療穴は腰股にある。
 中央は土であり、病変は脾に起こり、治療穴は脊にある。
 
 したがって、春気の病は、気が上に昇るので頭にあり、夏気の病は、気が発散して消耗するので臓にあり、秋気の病は、気が締まって来るので発散が妨げられるようになって来るので肩背部にあり、冬気の病は、気が体幹部に集中するので、陽気が手足にめぐりにくくなるので、手足にある、とこのようである。

 具体的な症状としては、春には鼻血が出る病、夏は胸脇の病、長夏(中国では夏と秋の間に梅雨のような季節がある)には、お腹が冷えて下痢をする病、秋に寒熱が往来するような病、冬に手足が麻痺して冷え上がる病、という具合に現れる。

 したがって、冬に運動をし過ぎて陽気を乱し、陰精を傷つけなければ陽気が登り始める春になって鼻血が出るような事が無い

。また春に頸項部の病にならなければ、夏になって胸脇を病むことも無く、長夏に冷えて下痢する病にならなければ、秋になって寒熱が往来するような病にならず、冬に麻痺して冷え上がり、下痢をして汗が止まらないという病にならない、という関連がある。

 このように、冬の過ごし方がもっとも要となるのである。
 
 さて、精というものは身体の根本であり生命エネルギーの基盤となるものであるから、冬の間にしっかりと精を堅持している者は、春になって温病を発することが無いのである。

 また、夏の暑い時期に汗が出るべくして出ない者は、秋になって風邪によって寒熱が往来する「おこり」となる。これらは一般的な法則である。

 原文と読み下し

黄帝問曰.天有八風.經有五風.何謂.
岐伯對曰.
八風發邪.以爲經風.觸五藏.邪氣發病.
所謂得四時之勝者.春勝長夏.長夏勝冬.冬勝夏.夏勝秋.秋勝春.所謂四時之勝也.

黄帝問うて曰く。天に八風有り、經に五風有りとは何んの謂いぞや。
岐伯對えて曰く。
八風、邪を發するや、以って經風を爲す。五藏に觸れば、邪氣病を發っするは、所謂(いわゆる)四時の勝を得る者なり。
春は長夏に勝ち、長夏は冬に勝ち、冬は夏に勝ち、夏は秋に勝ち、秋は春に勝つとは所謂(いわゆる)四時の勝なり。

東風生於春.病在肝.兪在頸項.
南風生於夏.病在心.兪在胸脇.
西風生於秋.病在肺.兪在肩背.
北風生於冬.病在腎.兪在腰股.
中央爲土.病在脾.兪在脊.

東風春に生ず。病は肝に在り。兪は頸項に在り。
南風夏に生ず。病は心に在り。兪は胸脇に在り。
西風秋に生ず。病は肺に在り。兪は肩背に在り。
北風冬に生ず。病は腎に在り。兪は腰股に在り。
中央土を爲す。病は脾に在り。兪は脊に在り。

故春氣者.病在頭.夏氣者.病在藏.秋氣者.病在肩背.冬氣者.病在四支.

故に春氣なる者は病は頭に在り。夏氣なる者は病は藏に在り。秋氣なる者は病は肩背に在り。冬氣なる者は病は四支に在り。

故春善病鼽衄.仲夏善病胸脇.長夏善病洞泄寒中.秋善病風瘧.冬善病痺厥.

故に春に善く鼽衄(きゅうじく)を病み、仲夏に善く胸脇を病み、長夏に善く洞泄寒中を病み、秋に善く風瘧を病み、冬に善く痺厥を病む。

故冬不按蹻.春不鼽衄.春不病頸項.仲夏不病胸脇.長夏不病洞泄寒中.秋不病風瘧.冬不病痺厥.飧泄而汗出也.

故に冬に按蹻せざれば春に鼽衄せず。春に頸項を病まざれば、仲夏に胸脇を病まず、長夏に洞泄寒中を病まざれば、秋に風瘧を病まず。冬に痺厥・飧泄して汗出ずるを病まざるなり。

夫精者身之本也.故藏於精者.春不病温.

夫れ精なる者は身の本なり。故に精を藏する者は、春に温を病まず。

夏暑汗不出者.秋成風瘧.此平人脉法也.

夏、暑して出汗でざる者は、秋に風瘧を成す。此れ、平人の脉法なり。

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