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鍼灸医学の懐

黄帝内経の意訳と解説 最後に原文と読み下しを記しています。

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(14)

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 この段の難解なところは

『從陰引陽.從陽引陰.以右治左.以左治右.』 であった。

 できるだけ臨床に則してリアリティーが感じられるよう、これを意訳するように努めた。

陰陽、左右、内外の気の偏在は、四診を駆使して具体的に把握するのである。

天人合一思想を基底にして気の変化法則を我がものとした上で、人体を完成された一個体として認識し、

気の偏在こそが病の本質であることを説いている。

 そして部分的現象=症状に捕われず、気の偏在を鍼で整え、

本来あるべき陰陽変化の循環に戻してやるという考え方に注目して頂きたい。


 原 文 意 訳


 人を害する邪を伴った風が至る様は、矢のように早く、しかも激しいもので、まるで風雨の如きである。

 したがって、治療に秀でた者は、邪気が皮毛を犯した段階で治めてしまうのである。

 邪気は、皮毛→皮膚→筋脈→六腑→五臓と侵入するのであるから、治療者は、邪気がどの部位に居るのか見定めてから治療するのが肝要である。

 ところが五臓に邪気の侵入を許してしまってから治療すれば、もう手遅れとなってしまい、半分程度しか助からないのである。

 このように、外邪としての天の邪気を感受すれば、最終的には人の五臓を害し、死に至ることが多いのである。

 飲食物の寒熱が、その度を越えて大きく偏っていれば、水穀の海であり、直接飲食物が納まる六腑が障害され嘔吐・下痢などを生じる。これは内因である

 また外邪としての地の陰邪である湿気を感受すれば、陽気が阻まれて皮膚病が生じたり、筋脈が思うように動かなくなる病を生じるのである。


『陰は内にあり、陽の守なり。陽は外にあり、陰の使なり。』 

 体外に現れた陽気は、体内が外邪に侵されないように働くのであるから、陽は陰の使いなのであり、陰気は求心性であり、陽気は遠心性ということであった。

さらに

『左右は陰陽の道路』

 陰陽の消長は左右という場に、その変化が現れるということであった。


 鍼を用いるのに巧みな者は、これらのことを熟知して自然の法則=道に法った治療を行うのである。

 つまり、内外・表裏の陰陽関係の虚実をよく見極め、陰に邪があれば正邪抗争の場を陽に移動させるのが得策である。

 反対に、正邪抗争の場が陽にあれば、陽の守りである陰を鼓舞するのが道理に適っているのである。

 さらにこれを、上下と読み替えることも可能である。


 左右も同様である。

 相対的に、左に気が偏在しているのなら右に鍼をし、右に気が偏在しているのなら左に鍼をして、陰陽の平衡を一旦整え、自ずと陰陽が消長するよう導けば、治癒するのである。

 そして治療者は、自分を基準として患者の状態を把握するのであるから、自分を正常な、良い状態にしておかなくてはならないのである。

 このような熟達した治療者は、陽である表の状態を診て、陰である裏の状態を察知し、陰陽の過と不及。

 つまり陰陽の有余・不足、平衡・虚実を見定めるのである。

 そして、かすかな雲行きから天気の大きな崩れを予測するように、微かな兆候から有余・不足を的確に把握し得た後に治療するのであるから、鍼を用いて誤るということがないのである。



原文と読み下し


故邪風之至.疾如風雨.故善治者治皮毛.其次治肌膚.其次治筋脉.其次治六府.其次治五藏.治五藏者.半死半生也.
故天之邪氣感.則害人五藏.水穀之寒熱感.則害於六府.地之濕氣感.則害皮肉筋脉.

故に邪風の至るや、疾こと風雨の如し。故に善く治する者は皮毛を治す。其の次に肌膚を治す。其の次に筋脉を治す。其次に六府を治す。其の次に五藏を治す。
五藏を治する者は、半死半生なり。
故に天の邪氣に感ずれば則ち人五藏を害す。水穀の寒熱に感ずれば則ち六府を害す。地の濕氣に感ずれば則ち皮肉筋脉を害す。

故善用鍼者.從陰引陽.從陽引陰.以右治左.以左治右.以我知彼.以表知裏.以觀過與不及之理.見微得過.用之不殆.

故に善く鍼を用いる者は、陰從り陽を引き、陽從り陰を引き、右を以って左を治し、左を以って右を治し、我を以って彼を知り、表を以って裏を知り、以って、過と不及の理を觀、微を見て過を得れば、これを用いて殆からず。

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