鍼灸医学の懐

黄帝内経の意訳と解説 最後に原文と読み下しを記しています。

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(4)

ここからは易の思想で説いてあるので、あらかじめ少し解説をしておきます。

 まずは、物質である水を陰とし、非物質である火を陽とするとある。
 
 これら両者はまったく別の性質を持ちながらも、分かれていないことに気づくのが肝要である。

 易学の卦で現してみると  陽.jpg は陽を、 陰.jpg は陰を表現しています。

 そして水は水.jpg 、火は 火.pngと表現されます。

 卦を見ていただくとよくお分かりいただけるように、水は、その内に無形の陽気を含んでいるから流れることができるのであり、火は、その内に物質である陰気を含んでいるから燃えることが出来ることが理解されると思います。

 水に陽気が無くなると凍って固まり(地 地.jpg )、陽気が多くなると気化して無形の(天 天.jpg )となる。

 火に陰気が無くなると消えてしまい、火に陰気が多くなると火はさらに大きくなる。

 この場合の水火は、別々の物のようであるが、分かれていないのである。

 気は物質を基盤として生じ、物質は気によって形成される。

 生命現象=明るさは、陰陽の交流の姿。火とロウによって成り立っている。

精神.png

 死とは、陰陽が交流せず火が消えた状態である。これを、陰陽互根の法則という。

 これらをしっかりと踏まえて読み進めると、より理解が深まるであろう。


 原 文 意 訳

 象徴としての水は陰であり、火は陽である。火である陽は、人体においては気であり、陰は5つの味の作用を有している飲食物である。

 五味を有する飲食物によって肉体は形成され、飲食物によって充実した肉体からは元気が生じる。

 元気は物質的に最も尊い人体の物質的基盤である精を作ることが出来、その精は、五臓六腑の消化作用を強固にし、飲食物をまったく異なる気血に化する作用を生みだすのである。

 精を作り出すには気を消費し、肉体は飲食物を消費することで成り立っているのである。

 そして消化という言葉通り、消えて別物になることを化といい動きを変というのである。

 この化の作用によって精は生まれるのであり、気によって肉体を育て個体として維持するのである。

 これを裏返せば、飲食物の不摂生は肉体を傷害し、肉体が傷害されると気が弱って精も傷害され、精は気を生み出すのであるから、結局は飲食物によって気は傷害されると言うことになる。

 要約すれば、過不足なく清潔で正しいものを食べていると、肉体的にも気が充実して精をたくさん作ることが出来、精が充実してくると身体の気血が充実して来る。

 反対に、飲食の不摂生をしていると、肉体が弱り気も不足して来るので精を作り出すことが出来なくなってくるということである。

 気は精をその根にしているので、結局のところ気は、飲食の不摂生によって傷害されるのである。

 飲食物は有形であるから陰であり、水である。水は陽気を内包している。
 
 飲食物は有形であるために下降して、尿道と肛門から排泄される。

 飲食物の陽気は、無形であるために頭部にある鼻・口・耳・目などの穴から排泄されるのである。このように、飲食物には、陰陽の二気が内包されているのである。
 
 その内の陰気に焦点を当てると、味の厚い濃厚な飲食物は、陰中の陰であり、味の薄い飲食物は陰中の陽である。
 
次に陽気についてみると、気の厚い酒や熱いものなどは陽中の陽であり、気の薄い薬味や適度な温かさのものは陽中の陰である。

 さて、味の厚い濃厚な飲食物は陰中の陰であるがゆえに、下降・停滞の性質が強いので泄瀉を起こし、薄いものは陰中の陽であるがゆえに、上昇・活発の性質が強まるので全身の気血がよく回って通じるのである。
 そして陽気の薄い飲食物は、発汗する程度であるが、陽気の厚い飲食物は、当然のことながら発熱するのである。

 体温が異常に高い壮火であると気は衰え、正常である少火は、気を壮んにする。

 壮火は気を消耗させ、気は少火に養われる。

 壮火というのは陽気過剰であるから気を発散させてしまい、少火は気を益々充実させるのである。

 さて、酸・苦・甘・辛・鹹の五味の働きを気味というのであるが、それらを陰陽に分類すると、辛は舌を刺してピリピリとして熱を生じ、甘は柔らかく緩めて気を停滞させるので熱を生じ、共に熱は発散の作用があるので陽である。

 酸はツーンとした刺激で引き締める作用があり、苦は苦痛を生じて我慢するので固める作用があり、共に気を内に閉じ込める作用があるので陰である。内に閉じ込められた気は口・肛門から出て行くので涌泄、つまり吐下の作用があるのである。

 正常無病の人は、陰陽二気が上手くバランスを保っているが、陰陽二気が大きくどちらかに偏在する時には病気となるのである。

 陰が盛んであると陽が病み、陽が盛んであると陰が病む。

 その姿は、陽は火の性質なので陰に勝って盛んになり過ぎると熱を生じ、陰は水の性質なので陽に勝って盛んになり過ぎると寒を生じるのである。


                          例 陽が盛ん、陰不足

陽有余陰不足ー昼.jpg

                         

 寒によって陽気が内に閉じ込められ、極点に達すると熱するようになる。

 熱によって陽気が外に発散し、極点に達すると寒するようになる。これを陰陽の転化法則という。

 寒は収斂の働きがあるので肉体を傷害し、熱は発散の働きがあるので気を傷害する。

 寒は肉体を傷害し、熱は気を傷害する。

 気が傷害されると通じさせる力がないので痛みを生じ、肉体が寒に傷害されると寒によって閉じ込められた内部の熱がせめぎ合って停滞するので腫れを生じる。

 したがって、まず初めに痛みがあった後に腫れて来るものは、気の傷害が肉体に及んだものであり、反対にまず腫れを生じてから後に痛んでくるのは、肉体の傷害が気に及んだものである。

 風気が過ぎると突然倒れたり震え・痙攣が生じ、熱気が過剰であると出口が渋滞して赤く腫れ、燥気が過ぎると血不足のように乾き、寒が過剰であると体液が動かなくなるので浮腫が生じ、陰邪である湿気が過ぎると胃腸を傷害されて下痢を起こすのである。

 原文と読み下し

水爲陰.火爲陽.陽爲氣.陰爲味.
水は陰と爲し、火は陽と爲す。陽は氣と爲し、陰は味と爲す。
味歸形.形歸氣.氣歸精.精歸化.精食氣.形食味.化生精.氣生形.
味は形に歸し、形は氣に歸す。氣は精に歸し、精は化に歸す。
精は氣を食い、形は味を食い、化は精を生じ、氣は形を生ず。
味傷形.氣傷精.精化爲氣.氣傷於味.
味は形を傷り、氣は精を傷り、精は化して氣と爲し、氣は味に傷れる。
陰味出下竅.陽氣出上竅.味厚者爲陰.薄爲陰之陽.
氣厚者爲陽.薄爲陽之陰.味厚則泄.薄則通.氣薄則發泄.厚則發熱.
陰味は下竅に出で、陽氣は上竅に出ず。味厚き者は陰と爲す。薄きは陰の陽と爲す。
氣厚き者は陽と爲し、薄きは陽の陰と爲す。味厚ければ則ち泄し、薄ければ則ち通ず。氣薄ければ則ち發泄し、厚ければ則ち發熱す。
壯火之氣衰.少火之氣壯.壯火食氣.氣食少火.壯火散氣.少火生氣.
氣味辛甘發散爲陽.酸苦涌泄爲陰.
壯火の氣衰え、少火の氣は壯ん。壯火は氣を食い、氣は少火を食う。壯火は氣を散じ、少火は氣を生ず。
氣味辛甘は發散して陽と爲し、酸苦は涌泄して陰と爲す。
陰勝則陽病.陽勝則陰病.陽勝則熱.陰勝則寒.
重寒則熱.重熱則寒.寒傷形.熱傷氣.氣傷痛.形傷腫.
陰勝てば則ち陽病み、陽勝てば則ち陰病む。陽勝てば則ち熱し、陰勝てば則ち寒す。
重寒すれば則ち熱し、重熱すれば則ち寒す。寒は形を傷り、熱は氣を傷り、氣傷れば痛み、形傷れば腫れる。
故先痛而後腫者.氣傷形也.先腫而後痛者.形傷氣也.
風勝則動.熱勝則腫.燥勝則乾.寒勝則浮.濕勝則濡寫.
故に先ず痛みて後腫れる者は、氣、形を傷るなり。先ず腫れて後痛む者は、形、氣を傷るなり。
風勝てば則ち動じ、熱勝てば則ち腫れ、燥勝てば則ち乾し、寒勝てば則ち浮き、濕勝てば則ち濡寫す。

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