鍼灸医学の懐

黄帝内経の意訳と解説 最後に原文と読み下しを記しています。

陰陽応象大論(五) - 大宇宙と小宇宙(8)

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  原 文 意 訳 (一部、太素に従う)

 西方は、一日の内では落陽の時期であり、陽気が衰え空気も乾いて来るので燥を生じるのである。

 乾燥すると形が固まるので、燥は金を生じる。辛は、取手のついた大きな鍼であり、辛い味は、鍼で刺すようでつらい感覚を生じる。そこで金は辛を生じるのである。

 辛味は気の滞りを発散させ巡らせるので肺を生じ、肺は、発散と固摂の両方の作用を併せ持つ皮毛を生じる。

 この皮毛の働きによって水の流れは正常に機能し、腎は正常に機能するので皮毛は水を主る腎を生じるのである。そして肺気の状態は、鼻に現れるので肺は鼻を主るのである。

 これらのことは、天にあっては燥であり、地においては金であり、これを人体にあてはめると皮毛は人体の形を維持する袋であり、また直接外気に触れる体表の皮毛であり、臓にあっては、直接外気が出入りする肺である。
 
 色では白、音階では商、声の調子は哭、肺の大きな変動は咳、九竅では鼻、肺に入る味は辛、気が向かう方向である志は憂である。

 憂は、気が鬱するので肺を傷るが、気を緩めて発散する喜は、憂を制御する。

 過剰な熱気は皮毛を傷るが、寒気は熱気を制御する。過剰な辛味は発散の作用が強いため、皮毛の機能を傷るが、固める作用のある苦味は辛味を制御するのである。


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 北方は、一日の内では最も陰気が盛んになる時期であり、陽気が衰えて寒気を生じるのである。

 寒気は空気中の湿気を水滴に変化させるので、寒は水を生じるのである。塩は水を煮詰めて生成するので水は鹹(かん=塩からい)を生じる。

 鹹味は、物の乾きを抑制するので、鹹は潤す作用がある。

 鹹味は水臓である腎を潤すので、鹹は腎を生じ、腎は骨の深いところの骨髄を生じるのである。

 この最も陰気の盛んな髄から肝が生じ、腎気の状態は耳に現れるので、腎は耳を主るのである。

 これらのことは、天にあっては寒であり、地においては水である。

 これを人体にあてはめると、人体の空間を形成する骨であり、臓にあっては、人体の最も下部で奥に位置する陰臓たる腎である。

 色は黒、音階では羽、声の調子は呻、腎の大きな変動は慄、九竅では耳、腎に入る味は鹹、気が向かう方向である志は恐である。
 
 恐は、気が下降して腰が抜けるようになるので腎を傷るが、気を一ヶ所に留める思は、恐を制御する。

 過剰な寒は水を溢れさせて骨を傷るが、水に比べて陽気の強い湿は寒を制御する。

 過剰な鹹味は、潤し柔らかくする作用があるので骨を傷るが、気を緩め熱を生じさせ散じて腎水を乾かす作用のある甘味は、鹹味を制御するのである。


原文と読み下し

西方生燥.燥生金.金生辛.辛生肺.肺生皮毛.皮毛生腎.肺主鼻.
其在天爲燥.在地爲金.在體爲皮毛.在藏爲肺.在色爲白.在音爲商.在聲爲哭.在變動爲咳.在竅爲鼻.在味爲辛.在志爲憂.
憂傷肺.喜勝憂.熱傷皮毛.寒勝熱.辛傷皮毛.苦勝辛.
西方燥を生じ、燥は金を生じ、金は辛を生し、辛は肺を生じ、肺は皮毛を生じ、皮毛は腎を生じ、肺は鼻を主る。
其れ天に在りては燥と爲し、地に在りては金と爲し、體に在りては皮毛と爲し、藏に在りては肺と爲し、色に在りては白と爲し、音に在りては商と爲し、聲に在りては哭と爲し、變動に在りては咳と為し、竅に在りては鼻と爲し、味に在りては辛と爲し、志に在りては憂と爲す。
憂は肺を傷り、喜は憂に勝ち、熱は皮毛を傷り、寒は熱に勝ち、辛は皮毛を傷り、苦は辛に勝つ。

北方生寒.寒生水.水生鹹.鹹生腎.腎生骨髓.髓生肝.腎主耳.
其在天爲寒.在地爲水.在體爲骨.在藏爲腎.在色爲黒.在音爲羽.在聲爲呻.在變動爲慄.在竅爲耳.在味爲鹹.在志爲恐.
恐傷腎.思勝恐.寒傷血(太素、骨).燥(太素、湿)勝寒.鹹傷血(太素、骨).甘勝鹹.
北方寒を生じ、寒は水を生じ、水は鹹を生じ、鹹は腎を生じ、腎は骨髓を生じ、髓は肝を生じ、腎は耳を主る。
其れ天に在りては寒と爲し、地に在りては水と爲し、體に在りては骨と爲し、藏に在りては腎と爲し、色に在りては黒と爲し、音に在りては羽と爲し、聲に在りては呻と爲し、變動に在りては慄と爲し、竅に在りては耳と爲し、味に在りては鹹と爲し、志に在りては恐と爲す。
恐は腎を傷り、思は恐に勝つ。寒は血を傷り、燥は寒に勝ち、鹹は血を傷り、甘は鹹に勝つ。

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