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鍼灸医学の懐

黄帝内経の意訳と解説 最後に原文と読み下しを記しています。

辨太陽病脉證并治上 1-30条

傷寒論 原文と読み下し

 志ある学徒の、簡便な道具にならんことを願って読み下文を記しています。

 また初学者のため、重複の労をいとわずルビをふっています。

 誤りを見つけられましたら、どうかコメント欄に投稿をお願いいたします。

 

底本 趙開美刊 「仲景全書」所収 『傷寒論』十巻

                    日本漢方協会学術部 編 東洋学術出版社

   辨太陽病脉證并治上・第五(合一十六法方一十四首)

 

【一条】

太陽之為病、脉浮、頭項強痛而惡寒。

太陽の病為(た)るや、脉浮、頭項強痛して惡寒す。

 

【二条】

太陽病、發熱、汗出、惡風、脉緩者、名為中風。

太陽病、發熱(はつねつ)、汗出で、惡風し、脉緩(かん)なる者は、名づけて中風と為(な)す。

 

【三条】

太陽病、或已發熱、或未發熱、必惡寒、體痛、嘔逆、脉陰陽倶緊者、名為傷寒。

太陽病、或いは已(すで)に發熱し、或いは未(いまだ)發熱せずとも、必ず惡寒し、體痛(たいつう)、嘔逆(おうぎゃく)、脉陰陽倶(とも)に緊なる者は、名づけて傷寒と為す。

 

【四条】   

傷寒一日、太陽受之。脉若靜者、為不傳。頗吐欲、若躁煩、脉數急者、為傳也。

傷寒一日、太陽之を受く。脉若し靜なる者は、傳(つた)えずと為す。頗(すこぶ)る吐(と)さんと欲し、若しくは躁煩(そうはん)し、脉數急(さくきゅう)なる者は、傳(つた)うと為すなり。

 

【五条】

傷寒二三日、陽明、少陽證不見者、為不傳也。

傷寒二三日、陽明、少陽の證(しょう)見(あらわ)れざる者は、傳えずと為すなり。

 

【六条】

太陽病、發熱而渴、不惡寒者、為温病。若發汗已、身灼熱者、名風温。風温為病、脉陰陽倶浮、自汗出、身重、多眠睡、鼻息必鼾、語言難出。若被下者、小便不利、直視、失溲。若被火者、微發黄色、劇則如驚癇、時瘲。火熏之、一逆尚引日、再逆促命期。

太陽病、發熱して渇し、惡寒せざる者は、温病(うんびょう)と為す。若し發汗し已(おわ)り、身(み)灼熱する者は、風温(ふうおん)と名づく。風温(ふうおん)の病為(た)るや、脉陰陽倶(とも)に浮(ふ)、自ずと汗出で、身重く、眠睡(みんすい)多く、鼻息必ず鼾(かん)し、語言出で難し。若し下(くだし)を被(こうむ)る者は、小便利せず、直視して、失溲(しっしゅう)す。若し火を被(こうむ)る者は、微(すこ)しく黄色を發し、劇しければ則ち驚癇(きょうかん)の如く、時に瘈瘲(けいじゅう)す。火之を熏(くん)ずるは、一逆(いちぎゃく)にして尚(な)お日を引き、再逆(さいぎゃく)すれば命期(めいき)を促す。

 

【七条】

病有發熱惡寒者、發於陽也。無熱惡寒者、發於陰也。發於陽、七日愈。發於陰、六日愈。以陽數七、陰數六故也。

病にして發熱有りて惡寒する者は、陽に發するなり。熱無くして惡寒する者は、陰に發するなり。陽に發すれば、七日にして愈(い)ゆ。陰に發すれば、六日にして愈ゆ。陽數(ようすう)七、陰數(いんすう)六を以ての故(ゆえ)なり。

 

【八条】

太陽病、頭痛至七日以上自愈者、以行其經盡故也。若欲作再經者、鍼足陽明、使經不傳則愈。

太陽病、頭痛七日以上に至り自ずと愈ゆる者は、其の經を行(めぐ)り盡(つ)くすを以ての故なり(其の經を行るを以て盡(つ)くる故なり)。若し再經(さいけい)を作(な)さんと欲する者は、足の陽明に鍼し、經をして傳えざらしめば則ち愈ゆ。

 

【九条】

太陽病欲解時、從巳至未上。

太陽病、解(げ)せんと欲する時は、巳(み)より未(ひつじ)の上に至る。

 

【一〇条】

風家、表解而不了了者、十二日愈。

風家(ふうけ)、表解(げ)して了了(りょうりょう)たらざる者は、十二日にして愈ゆ。

 

【一一条】

病人身大熱、反欲得衣者、熱在皮膚、寒在骨髓也。身大寒、反不欲近衣者、寒在皮膚、熱在骨髓也。

病人身(み)大いに熱し、反って衣を得んと欲する者は、熱は皮膚に在り、寒が骨髓に在るなり。身(み)大いに寒(ひ)え、反って衣を近づけんと欲せざる者は、寒は皮膚に在り、熱が骨髓に在るなり。

 

【一二条】

太陽中風、陽浮而陰弱、陽浮者、熱自發。陰弱者、汗自出。嗇嗇惡寒、淅淅惡風、翕翕發熱、鼻鳴乾嘔者、桂枝湯主之。方一。

太陽の中風、陽浮にして陰弱(いんじゃく)、陽浮なる者は、熱自ずと發す。陰弱なる者は、汗自ずと出ず。嗇嗇(しょくしょく)として惡寒し、淅淅(せきせき)として惡風し、翕翕(きゅうきゅう)として發熱し、鼻鳴(びめい)乾嘔(かんおう)する者は、桂枝湯之(これ)を主る。方一。

 

〔桂枝湯方〕

桂枝(三兩去皮)芍藥(三兩)甘草(二兩炙)生薑(三兩切)大棗(十二枚擘)

右五味、㕮咀三味、以水七升、微火煮取三升、去滓、適寒温、服一升。服已須臾、歠熱稀粥一升餘、以助藥力、温覆令一時許、遍身漐漐微似有汗者益佳。不可令如水流離、病必不除、若一服汗出病差、停後服、不必盡劑。若不汗、更服、依前法。

又不汗、後服小促其間、半日許令三服盡。若病重者、一日一夜服、周時觀之、服一劑盡、病證猶在者、更作服。若汗不出、乃服至二三劑。禁生冷、粘滑、肉麺、五辛、酒酪、臭惡等物。

 

桂枝(三兩、皮を去る)芍藥(三兩)甘草(二兩、炙(あぶる))生薑(しょうきょう)(三兩、切る)大棗(たいそう)(十二枚、擘(つんざ)く)

右の五味、三味を㕮咀(ふそ)し、水七升を以て、微火(びか)にて煮て三升を取り、滓(かす)を去り、寒温に適(かな)えて、一升を服す。服し已(おわ)り須臾(しゅゆ)にして、熱稀粥(ねっきかゆ)一升餘(あまり)を歠(すす)り、以て藥力を助け、温覆(おんぷく)すること一時許(ばか)りならしめ、遍身(へんしん)漐漐(ちゅうちゅう)として微(すこ)しく汗有るに似たる者は益々佳(よ)し。水の流離(りゅうり)するが如くならしむべからず。病必ず除かれず。若し一服し汗出で病差(い)ゆれば、後服(ごふく)を停め、必ずしも劑(ざい)を盡(つ)くさず。若し汗せざれば、更に服すること、前法(ぜんぽう)に依(よ)る。

又、汗せざれば、後服は小(すこ)しく其の間を促し、半日許(ばか)りにして三服を盡(つ)くさしむ。若し病重き者は、一日一夜服し、周時(しゅうじ)之を觀る、一劑を服し盡(つ)くし、病證猶(な)お在る者は、更に作りて服す。若し汗出でざれば、乃ち服すること二、三劑に至る。生冷(せいれい)、粘滑(ねんかつ)、肉麺(にくめん)、五辛(ごしん)、酒酪(しゅらく)、臭惡(しゅうあく)等の物を禁ず。

 

【一三条】

太陽病、頭痛、發熱、汗出、惡風、桂枝湯主之。方二(用前第一方)。

太陽病、頭痛、發熱、汗出で、惡風するは、桂枝湯之を主る。方二(前の第一方を用う)。

 

【一四条】

太陽病、項背強几几、反汗出惡風者、桂枝加葛根湯主之。方三。

太陽病、項背(こうはい)強(こわ)ばること几几(しゅしゅ)とし、反って汗出で惡風する者は、桂枝加葛根湯之を主る。方三。

 

〔桂枝加葛根湯方〕

葛根(四兩)麻黄(三兩去節)芍藥(二兩)生薑(三兩切)甘草(二兩炙)大棗(十二枚擘)桂枝(二兩去皮)

右七味、以水一斗、先煮麻黄、葛根、減二升、去上沫、内諸藥、煮取三升、去滓、温服一升。覆取微似汗、不須啜粥、餘如桂枝法將息及禁忌。(臣億等謹按仲景本論、太陽中風自汗用桂枝、傷寒無汗用麻黄、今證云汗出惡風、而方中麻黄、恐非本意也。第三巻有葛根湯證云、無汗惡風、正與此方向、是合用麻黄也。此云桂枝加葛根湯、恐是桂枝中但加葛根耳。)

葛根(四兩)麻黄(三兩、節を去る)芍藥(二兩)生薑(しょうきょう)(三兩、切る)甘草(二兩、炙(あぶ)る)大棗(たいそう)(十二枚、擘(つんざ)く)桂枝(二兩、皮を去る)

右七味、水一斗を以て、先ず麻黄、葛根を煮て、二升を減じ、上沫(じょうまつ)を去り、諸藥を内(い)れ、煮て三升を取り、滓(かす)を去り、一升を温服す。覆(ふく)して微(すこ)しく汗に似たるを取り、須(すべから)く粥を啜(すす)らず、餘は桂枝の法の將息(しょうそく)及び禁忌の如くす。(臣億等謹んで仲景本論を按ずるに、太陽中風の自汗は桂枝を用い、傷寒の無汗は麻黄を用う。今の證は汗出で惡風すと云う。而して方中の麻黄、恐らく本意に非ざるなり。第三巻に葛根湯證は、無汗にして惡風すと云う有り、正に此の方と向かい、是れ麻黄を合して用うなり。此れ桂枝加葛根湯と云うは、恐らく是れ桂枝中に但だ葛根を加うるのみ。)

 

【一五条】

太陽病、下之後、其氣上衝者、可與桂枝湯、方用前法。若不上衝者、不得與之。四。

太陽病、之を下したる後、其の氣上衝する者は、桂枝湯を與(あた)うべし。方は前法を用う。若し上衝せざる者は、之を與(あた)うることを得ず。四。

 

【一六条】

太陽病三日、已發汗、若吐、若下、若温鍼、仍不解者、此為壞病、桂枝不中與之也。觀其脉證、知犯何逆、隨證治之。桂枝本為解肌、若其人脉浮緊、發熱、汗不出者、不可與之也。常須識此、勿令誤也。五。

太陽病三日、已に發汗し、若しくは吐し、若しくは下し、若しくは温鍼し、仍(な)お解せざる者は、此れ壞病(えびょう)と為す、桂枝之を與(あた)うるに中(あた)らざるなり。其の脉證を觀て、何の逆を犯すかを知り、證に隨いて之を治す。桂枝本(もと)解肌(げき)と為す、若し其の人脉浮緊、發熱、汗出でざる者は、之を與(あた)うべからざるなり。常に須(すべから)く此を識(し)りて、誤らしむること勿(な)かれ。五。

 

【一七条】

若酒客病、不可與桂枝湯、得之則嘔、以酒客不喜甘故也。

若し酒客(しゅきゃく)病めば、桂枝湯を與うべからず、之を得(う)れば則ち嘔(おう)す、酒客は甘きを喜(この)まざるを以ての故(ゆえ)なり。

 

【一八条】

喘家、作桂枝湯、加厚朴、杏子佳。六。

喘家(ぜんか)、桂枝湯を作るに、厚朴(こうぼく)、杏子(きょうし)を加うるを佳(よ)しとす。六。

 

【一九条】

凡服桂枝湯吐者、其後必吐膿血也。

凡(およ)そ桂枝湯を服して吐する者は、其の後必ず膿血(のうけつ)を吐するなり。

 

【二〇条】

太陽病、發汗、遂漏不止、其人惡風、小便難、四肢微急、難以屈伸者、桂枝加附子湯主之。方七。

太陽病、發汗し、遂に漏れ止まず、其の人惡風し、小便難、四肢微急(びきゅう)し、屈伸以て難き者は、桂枝加附子湯(けいしかぶしとう)之を主る。方七。

 

〔桂枝加附子湯方〕

桂枝(三兩去皮)芍藥(三兩)甘草(三兩炙)生薑(三兩切)大棗(十二枚擘)附子(一枚炮去皮破八片)

右六味、以水七升、煮取三升、去滓、温服一升。本云桂枝湯、今加附子、將息如前法。

桂枝(三兩、皮を去る)芍藥(三兩)甘草(三兩、炙(あぶ)る)生薑(三兩、切る)大棗(十二枚、擘(つんざ)く)附子(一枚、炮(ほう)じて皮を去り八片に破る)

右六味、水七升を以て、煮て三升を取り、滓(かす)を去り、一升を温服す。本(もと)云う桂枝湯に、今附子を加うと。將息(しょうそく)は前法の如くす。

 

【二一条】

太陽病、下之後、脉促(促一作縱)、胸滿者、桂枝去芍藥湯主之。方八。

太陽病、之を下したる後、脉促(そく)(促を一つは縱と作す)、胸滿する者は、桂枝去芍藥湯(けいしきょしゃくやくとう)之を主る。方八。

 

〔桂枝去芍藥湯方〕

桂枝(三兩去皮)甘草(二兩炙)生薑(三兩切)大棗(十二枚擘)

右四味、以水七升、煮取三升、去滓、温服一升。本云桂枝湯、今去芍藥、將息如前法。

桂枝(三兩、皮を去る)甘草(二兩、炙る)生薑(三兩、切る)大棗(十二枚、擘(つんざ)く)

右四味、水七升を以て、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す。本(もと)云う桂枝湯より、今芍藥を去ると。將息(しょうそく)は前法の如くす。

 

【二二条】

若微寒者、桂枝去芍藥加附子湯主之。方九。

若し微寒する者は、桂枝去芍藥加附子湯(けいしきょしゃくやくかぶしとう)之を主る。方九。

 

〔桂枝去芍藥加附子湯方〕

桂枝(三兩去皮)甘草(二兩炙)生薑(三兩切)大棗(十二枚擘)附子(一枚炮去皮破八片)

右五味、以水七升、煮取三升、去滓、温服一升。本云桂枝湯、今去芍藥、加附子、將息如前法。

桂枝(三兩、皮を去る)甘草(二兩、炙る)生薑(三兩、切る)大棗(十二枚、擘く)附子(一枚、炮(ほう)じて皮を去り八片に破る)

右五味、水七升を以て、煮て三升を取る、滓を去り、一升を温服す。本(もと)云う桂枝湯より、今芍藥を去り、附子を加うと。將息(しょうそく)は前法の如くす。

 

【二三条】

太陽病、得之八九日、如瘧狀、發熱惡寒、熱多寒少、其人不嘔、清便欲自可、一日二三度發。脉微緩者、為欲愈也。脉微而惡寒者、此陰陽倶虛、不可更發汗、更下、更吐也。面色反有熱色者、未欲解也、以其不能得小汗出、身必痒、宜桂枝麻黄各半湯。方十。

太陽病、之を得て八、九日、瘧狀(ぎゃくじょう)の如く、發熱惡寒するも、熱多く寒少なく、其の人嘔せず、清便自可せんと欲し、一日二、三度發す。脉微緩なる者は、愈えんと欲すと為すなり。脉微にして惡寒する者は、此れ陰陽倶(とも)に虚す、更に發汗し、更に下し、更に吐(と)すべからざるなり。面色反って熱色有る者は、未だ解せんと欲さざるなり、其の小(すこ)しく汗出づるを得ること能わざるを以て、身必ず痒し。桂枝麻黄各半湯(けいしまおうかくはんとう)に宜し。方十。

 

〔桂枝麻黄各半湯方〕

桂枝(一兩十六銖去皮)芍藥生薑(切)甘草(炙)麻黄(各一兩去節)大棗(四枚擘)杏仁(二十四枚湯浸去皮尖及兩仁者)

右七味、以水五升、先煮麻黄一二沸、去上沫、内諸藥、煮取一升八合、去滓、温服六合。本云桂枝湯三合、麻黄湯三合、併為六合、頓服、將息如上法。

(臣億等謹按桂枝湯方、桂枝芍藥生薑各三兩、甘草二兩、大棗十二枚。麻黄湯方、麻黄三兩、桂枝二兩、甘草一兩、杏仁七十箇。今以算法約之、二湯各取三分之一、即得桂枝一兩十六銖、芍藥生薑甘草各一兩、大棗四枚、杏仁二十三箇零三分枚之一、收之得二十四箇、合方。詳此方乃三分之一、非各半也、宜云合半湯。)

桂枝(一兩十六銖(しゅ)、皮を去る)芍藥生薑(切る)甘草(炙る)麻黄(各一兩、節を去る)大棗(四枚、擘く)杏仁(二十四枚、湯に浸け皮尖(ひせん)及び兩仁(りょうにん)の者を去る)

右七味、水五升を以て、先ず麻黄を煮ること一、二沸、上沫(じょうまつ)を去り、諸藥を内(い)れ、煮て一升八合を取り、滓を去り、六合を温服す。本(もと)云う桂枝湯三合、麻黄湯三合、併せて六合と為し、頓服(とんぷく)すと。將息(しょうそく)は上法の如くす。

(臣億等謹んで桂枝湯方を按ずるに、桂枝、芍藥、生薑各三兩、甘草二兩、大棗十二枚。麻黄湯方は、麻黄三兩、桂枝二兩、甘草一兩、杏仁七十箇。今算法を以て之を約するに、二湯各三分の一を取り、即ち桂枝一兩十六銖、芍藥、生薑、甘草各一兩、大棗四枚を得、杏仁二十三箇零三分枚の一、之を收めて二十四箇を得、合方とす。此の方を詳らかにすれば乃ち三分の一、各半に非ざるなり、合半湯と云うに宜し。)

 

【二四条】

太陽病、初服桂枝湯、反煩、不解者、先刺風池、風府、却與桂枝湯則愈。十一(用前第一方)。

太陽病、初め桂枝湯を服し、反って煩し、解(げ)せざる者は、先ず風池、風府を刺し、却って桂枝湯を與(あた)うれば則ち愈ゆ。十一(前の第一方を用う)。

 

【二五条】

服桂枝湯、大汗出、脉洪大者、與桂枝湯、如前法。若形似瘧、一日再發者、汗出必解、宜桂枝二麻黄一湯。方十二。

桂枝湯を服し、大いに汗出で、脉洪大なる者は、桂枝湯を與うること、前法の如くす。若し形瘧(おこり)に似て、一日に再發する者は、汗出ずれば必ず解(げ)す、桂枝二麻黄一湯(けいしにまおういっとう)に宜し。方十二。

 

〔桂枝二麻黄一湯方〕

桂枝(一兩十七銖去皮)芍藥(一兩六銖)麻黄(十六銖去節)生薑(一兩六銖切)杏仁(十六箇去皮尖)甘草(一兩二銖炙)大棗(五枚擘)

右七味、以水五升、先煮麻黄一二沸、去上沫、内諸藥、煮取二升、去滓、温服一升、日再服。本云桂枝湯二分、麻黄湯一分、合為二升、分再服。今合為一方、將息如前法。

(臣億等謹按桂枝湯方、桂枝芍藥生薑各三兩、甘草二兩、大棗十二枚。麻黄湯方、麻黄三兩、桂枝二兩、甘草一兩、杏仁七十箇。今以算法約之、桂枝湯取十二分之五、即得桂枝芍藥生薑各一兩六銖、甘草二十銖、大棗五枚。麻黄湯取九分之二、即得麻黄十六銖、桂枝十銖三分銖之二、收之得十一銖、甘草五銖三分銖之一、收之得六銖、杏仁十五箇九分枚之四、收之得十六箇。二湯所取相合、即共得桂枝一兩十七銖、麻黄十六銖、生薑芍藥各一兩六銖、甘草一兩二銖、大棗五枚、杏仁十六箇、合方。)

桂枝(一兩十七銖(しゅ)、皮を去る)芍藥(一兩六銖)麻黄(十六銖、節を去る)生薑(一兩六銖、切る)杏仁(十六箇、皮尖を去る)甘草(一兩二銖、炙る)大棗(五枚、擘く)

右七味、水五升を以て、先ず麻黄を煮ること一、二沸、上沫を去り、諸藥を内れ、煮て二升を取り、滓を去り、一升を温服し、日に再服す。本(もと)云う桂枝湯二分、麻黄湯一分、合して二升と為し、分かちて再服すと。今合して一方と為す、將息は前法の如くす。

(臣億等謹んで桂枝湯方を按ずるに、桂枝、芍藥、生薑各三兩、甘草二兩、大棗十二枚。麻黄湯方、麻黄三兩、桂枝二兩、甘草一兩、杏仁七十箇。今算法を以て之を約するに、桂枝湯十二分の五を取り、即ち桂枝、芍藥、生薑各一兩六銖、甘草二十銖、大棗五枚を得。麻黄湯九分の二を取り、即ち麻黄十六銖、桂枝十銖三分銖の二を得、之を收めて十一銖を得、甘草五銖三分銖の一、之を收めて六銖を得、杏仁十五箇九分枚の四、之を收めて十六箇を得。二湯取る所は相合して、即ち共に桂枝一兩十七銖、麻黄十六銖、生薑、芍藥各一兩六銖、甘草一兩二銖、大棗五枚、杏仁十六箇を得、合方とす。)

 

【二六条】

服桂枝湯、大汗出後、大煩渴不解、脉洪大者、白虎加人參湯主之。方十三。

桂枝湯を服し、大いに汗出でたる後、大いに煩渴して解せず、脉洪大なる者は、白虎加人參湯(びゃっこかにんじんとう)之を主る。方十三。

 

〔白虎加人參湯方〕

知母(六兩)石膏(一斤碎綿裹)甘草(炙二兩)粳米(六合)人參(三兩)

右五味、以水一斗、煮米熟、湯成去滓、温服一升、日三服。

知母(ちも)(六兩)石膏(一斤、碎(くだ)き綿もて裹(つつ)む)甘草(二兩を炙る)粳米(こうべい)(六合)人參(三兩)

右五味、水一斗を以て、煮て米を熟し、湯成りて滓を去り、一升を温服し、日に三服す。

 

【二七条】

太陽病、發熱惡寒、熱多寒少、脉微弱者、此無陽也。不可發汗、宜桂枝二越婢一湯。方十四。

太陽病、發熱惡寒し、熱多く寒少なく、脉微弱なる者は、此れ陽無きなり。發汗すべからず、

桂枝二越婢一湯(けいしにえっぴいっとう)に宜し。方十四。

 

〔桂枝二越婢一湯〕

桂枝(去皮)芍藥麻黄甘草(各十八銖炙)大棗(四枚擘)生薑(一兩二銖切)石膏(二十四銖碎綿裹)

右七味、以水五升、煮麻黄一二沸、去上沫、内諸藥、煮取二升、去滓、温服一升。

本云、當裁為越婢湯、桂枝湯、合之飲一升。今合為一方、桂枝湯二分、越婢湯一分。

(臣億等謹按桂枝湯方、桂枝芍藥生薑各三兩、甘草二兩、大棗十二枚。越婢湯方、麻黄二兩、生薑三兩、甘草二兩、石膏半斤、大棗十五枚。今以算法約之、桂枝湯取四分之一、即得桂枝芍藥生薑各十八銖、甘草十二銖、大棗三枚。越婢湯取八分之一、即得麻黄十八銖、生薑九銖、甘草六銖、石膏二十四銖、大棗一枚八分之七、棄之、二湯所取相合、即共得桂枝芍藥甘草麻黄各十八銖、生薑一兩三銖、石膏二十四銖、大棗四枚、合方。舊云桂枝三、今取四分之一、即當云桂枝二也。越婢湯方見仲景雜方中、外臺秘要一云起脾湯。)

桂枝(皮を去る)芍藥麻黄甘草(各十八銖、炙る)大棗(四枚、擘く)生薑(一兩二銖、切る)石膏(二十四銖、碎き綿もて裹(つつ)む)

右七味、水五升を以て、麻黄を煮ること一、二沸、上沫を去り、諸藥を内(い)れ、煮て二升を取り、滓を去り、一升を温服す。

本(もと)云う、當(まさ)に裁(た)ちて越婢湯(えっぴとう)、桂枝湯と為るべくして、之を合して一升を飲む。今、合して一方と為す、桂枝湯二分、越婢湯一分とす。

(臣億等謹んで桂枝湯方を按ずるに、桂枝、芍藥、生薑各三兩、甘草二兩、大棗十二枚。越婢湯方、麻黄二兩、生薑三兩、甘草二兩、石膏半斤、大棗十五枚。今算法を以て之を約するに、桂枝湯四分の一を取り、即ち桂枝、芍藥、生薑各十八銖、甘草十二銖、大棗三枚を得。越婢湯八分の一を取り、即ち麻黄十八銖、生薑九銖、甘草六銖、石膏二十四銖、大棗一枚八分の七を得、之を棄て、二湯取る所は相合して、即ち共に桂枝、芍藥、甘草、麻黄各十八銖、生薑一兩三銖、石膏二十四銖、大棗四枚を得、合方とす。舊(ふる)くは桂枝三と云い、今は四分の一を取る、即ち當に桂枝二と云うべきなり。越婢湯方は仲景雜方中に見え、外臺秘要は一つに起脾湯と云う。)

 

【二八条】

服桂枝湯、或下之、仍頭項強痛、翕翕發熱、無汗、心下滿微痛、小便不利者、桂枝去桂加茯苓白朮湯主之。方十五。

桂枝湯を服し、或は之を下し、仍(な)お頭項強痛し、翕翕(きゅきゅう)として發熱し、汗無く、心下滿微痛(まんびつう)し、小便利せざる者は、桂枝去桂加茯苓白朮湯(けいしきょけいかぶくりょうびゃくじゅつとう)之を主る。方十五。

 

桂枝去桂加茯苓白朮湯方〕

芍藥(三兩)甘草(二兩炙)生薑(切)白朮茯苓(各三兩)大棗(十二枚擘)

右六味、以水八升、煮取三升、去滓、温服一升、小便利則愈。本云桂枝湯、今去桂枝、加茯苓、白朮。

芍藥(三兩)甘草(二兩、炙る)生薑(切る)白朮茯苓(各三兩)大棗(十二枚、擘く)

右六味、水八升を以て、煮て三升を取る、滓を去り、一升を温服す、小便利すれば則ち愈ゆ。本(もと)云う桂枝湯より、今、桂枝を去り、茯苓、白朮を加うと。

 

【二九条】

傷寒脉浮、自汗出、小便數、心煩、微惡寒、脚攣急、反與桂枝、欲攻其表、此誤也。得之便厥、咽中乾、煩躁吐逆者、作甘草乾薑湯與之、以復其陽。若厥愈足温者、更作芍藥甘草湯與之、其脚即伸。若胃氣不和讝語者、少與調胃承氣湯。若重發汗、復加燒鍼者、四逆湯主之。方十六。

傷寒の脉浮、自ずと汗出で、小便數(さく)、心煩、微惡寒し、脚(きゃく)攣急(れんきゅう)するに、反って桂枝を與(あた)え、其の表を攻めんと欲するは、此れ誤りなり。之を得れば便(すなわ)ち厥(けつ)し、咽中乾き、煩躁吐逆する者は、甘草乾薑湯(かんぞうかんきょうとう)を作り之に與え、以て其の陽を復す。若し厥愈え足温かなる者は、更に芍藥甘草湯を作り之を與うれば、其の脚即ち伸びる。若し胃氣和せず讝語(せんご)する者は、少しく調胃承氣湯(ちょうきじょういとう)を與う。若し重ねて汗を發し、復た燒鍼(しょうしん)を加うる者は、四逆湯之を主る。方十六。

 

〔甘草乾薑湯方〕

甘草(四兩炙)乾薑(二兩)

右二味、以水三升、煮取一升五合、去滓、分温再服。

甘草(四兩、炙る)乾薑(二兩)

右二味、水三升を以て、煮て一升五合を取る、滓を去り、分かちて温め再服す。

 

〔芍藥甘草湯方〕

白芍藥甘草(各四兩炙)

右二味、以水三升、煮取一升五合、去滓、分温再服。

白芍藥甘草(各四兩、炙る)

右二味、水三升を以て、煮て一升五合を取る、滓を去り、分かちて温め再服す。

 

〔調胃承氣湯方〕

大黄(四兩去皮清酒洗)甘草(二兩炙)芒消(半升)

右三味、以水三升、煮取一升、去滓、内芒消、更上火微煮令沸、少少温服之。

大黄(四兩、皮を去り清酒で洗う)甘草(二兩、炙る)芒消(ぼうしょう)(半升)

右三味、水三升を以て、煮て一升を取る、滓を去り、芒消を内(い)れ、更に火に上(の)せて微(すこ)しく煮て沸(わか)せしめ、少少之を温服す。

 

〔四逆湯方〕

甘草(二兩炙)乾薑(一兩半)附子(一枚生用去皮破八片)

右三味、以水三升、煮取一升二合、去滓、分温再服。強人可大附子一枚、乾薑三兩。

甘草(二兩、炙る)乾薑(一兩半)附子(一枚、生を用い皮を去り八片に破る)

右三味、水三升を以て、煮て一升二合を取り、滓を去り、分かちて温め再服す。強人は大附子一枚、乾薑三兩とすべし。

 

【三〇条】

問曰、證象陽旦、按法治之而増劇、厥逆、咽中乾、兩脛拘急而讝語。師曰、言夜半手足當温、兩脚當伸。後如師言、何以知此。答曰、寸口脉浮而大、浮為風、大為虛。風則生微熱、虛則兩脛攣。病形象桂枝、因加附子參其間、増桂令汗出、附子温經、亡陽故也。厥逆、咽中乾、煩躁、陽明内結、讝語煩亂、更飲甘草乾薑湯、夜半陽氣還、兩足當熱、脛尚微拘急、重與芍藥甘草湯、爾乃脛伸。以承氣湯微溏、則止其讝語。故知病可愈。

問いて曰く、證(しょう)は陽旦(ようたん)に象(かたど)り、法を按じて之を治す。而(しか)れども増して劇しく、厥逆(げつぎゃく)し、咽中乾き、兩脛(りょうけい)拘急して讝語(せんご)す、と。師曰く、夜半に手足當(まさ)に温まるべし、兩脚(りょうきゃく) 當に伸ぶべし、と。後(のち)師の言の如し。何を以てか此れを知らん。答えて曰く、寸口脉浮にして大、浮は風と為し、大は虚と為す。風は則ち微熱を生じ、虚は則ち兩脛(りょうけい)攣(れん)す。病形桂枝に象(かたど)り、因りて附子を加え其の間に參(まじ)え、桂を増して汗を出さしむ、附子は經を温む、亡陽(ぼうよう)するが故(ゆえ)なり。厥逆し、咽中乾き、煩躁す、陽明内結(ないけつ)し、讝語(せんご)し煩亂(はんらん)す、更に甘草乾薑湯(かんぞうかんきょうとう)を飲む、夜半陽氣還(めぐ)り、兩足當に熱すべし、脛尚(な)お微(すこ)しく拘急し、重ねて芍藥甘草湯を與う、爾(しか)らば乃(すなわ)ち脛伸ぶ。承氣湯を以て微しく溏すれば、則ち其の讝語(せんご)止む。故に病愈ゆべきを知る、と。

 

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