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鍼灸医学の懐

黄帝内経の意訳と解説 最後に原文と読み下しを記しています。

辨太陽病脉證并治中(1) 31~80条

傷寒論 原文と読み下し

 志ある学徒の、簡便な道具にならんことを願って読み下し文を記しています。

 また初学者のため、重複の労をいとわずルビをふっています。

 誤りを見つけられましたら、どうかコメント欄に投稿をお願いいたします。

 

底本 趙開美刊 「仲景全書」所収 『傷寒論』十巻

                    日本漢方協会学術部 編 東洋学術出版社

  辨太陽病脉證并治中(1)31~80条

                第六(合六十六法方三十九首并見太陽陽明合病法)

 

【第三一条】

太陽病、項背強几几、無汗、惡風、葛根湯主之。方一。

太陽病、項背(こうはい)強ばること几几(しゅしゅ)として、汗無く、惡風するは、葛根湯之(これ)を主る。方一。

 

〔葛根湯方〕

葛根(四兩) 麻黄(三兩去節) 桂枝(二兩去皮) 生薑(三兩切) 甘草(二兩炙) 芍藥(二兩) 大棗(十二枚擘)

右七味、以水一斗、先煮麻黄、葛根、減二升、去白沫、内諸藥、煮取三升、去滓、温服一升、覆取微似汗。餘如桂枝法將息及禁忌、諸湯皆倣此。

葛根(四兩) 麻黄(三兩節を去る) 桂枝(二兩皮を去る) 生薑(三兩切る) 甘草(二兩炙る) 芍藥(二兩) 大棗(十二枚擘く)

右七味、水一斗を以て、先ず麻黄、葛根を煮て、二升を減じ、白沫を去り、諸藥を内れ、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す。覆(おお)いて微(すこ)しく汗に似たるを取る。

餘(余)は桂枝の法の將息(しょうそく)及び禁忌の如し。諸湯(しょとう)皆此れに倣(なら)え。

 

【第三二条】

太陽與陽明合病者、必自下利、葛根湯主之。方二(用前第一方一云用後第四方)。

太陽と陽明の合病なる者は、必ず自から下利す。葛根湯之を主る。方二

 

【第三三条】

太陽與陽明合病、不下利、但嘔者、葛根加半夏湯主之。方三。

太陽と陽明の合病、下利せず、但だ嘔する者は、葛根加半夏湯(かっこんかはんげとう)之を主る。方三。

〔葛根加半夏湯方〕

葛根(四兩) 麻黄(三兩去節) 甘草(二兩炙) 芍藥(二兩) 桂枝(二兩去皮) 生薑(二兩切) 半夏(半升洗) 大棗(十二枚擘)

右八味、以水一斗、先煮葛根、麻黄、減二升、去白沫、内諸藥、煮取三升、去滓、温服一升。

覆取微似汗。

葛根(四兩) 麻黄(三兩節を去る) 甘草(二兩炙る) 芍藥(二兩) 桂枝(二兩皮を去る) 生薑(二兩切る) 半夏(半升洗う) 大棗(十二枚擘く)

右八味、水一斗を以て、先ず葛根、麻黄を煮て、二升を減じ、白沫を去り、諸藥を内(い)れ、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す。覆(おお)いて微(すこ)しく汗に似たるを取る。

 

【第四条】

太陽病、桂枝證、醫反下之、利遂不止、脉促(促一作縱)者、表未解也。喘而汗出者、

葛根黄黄連湯主之。方四。

太陽病、桂枝證、醫(い)反って之を下し、利遂(つい)に止まず、脉促の(促一作縱)者は、表未だ解(げ)せざるなり。喘(ぜい)して汗出ずる者は、葛根黄芩黄連湯(かっこんおうごんおうれんとう)之を主る。方四。

 

〔葛根黄黄連湯方〕

葛根(半斤) 甘草(二兩炙) 黄(三兩) 黄連(三兩)

右四味、以水八升、先煮葛根、減二升、内諸藥、煮取二升、去滓、分温再服。

葛根(半斤) 甘草(二兩炙る) 黄芩(おうごん)(三兩) 黄連(三兩)

右四味、水八升を以て、先ず葛根を煮て、二升を減じ、諸藥を内れ、煮て二升を取り、滓を去り、分かち温め再服す。

 

【第三五条】

太陽病、頭痛、發熱、身疼、腰痛、骨節疼痛、惡風無汗而喘者、麻黄湯主之。方五。

太陽病、頭痛、發熱、身疼(とう)し、腰痛、骨節疼痛し、惡風し汗無くして喘(ぜい)する者は、麻黄湯之を主る。方五

 

〔麻黄湯方〕

麻黄(三兩去節) 桂枝(二兩去皮) 甘草(一兩炙) 杏仁(七十箇去皮尖)

右四味、以水九升、先煮麻黄、減二升、去上沫、内諸藥、煮取二升半、去滓、温服八合、

覆取微似汗、不須啜粥、餘如桂枝法將息。

麻黄(三兩節を去る) 桂枝(二兩皮を去る) 甘草(一兩炙る) 杏仁(七十箇、皮尖を去る)

右四味、水九升を以て、先ず煮黄を煮て、二升を減じ、上沫を去り、諸藥を内れ、煮て二升半を取り、滓を去り、八合を温服す、覆いて微(すこ)しく汗に似たるを取る。須(すべ)からず粥を啜(すす)らず。餘(よ)は桂枝法の將息(しょうそく)の如くす。

 

【第三六条】

太陽與陽明合病、喘而胸滿者、不可下、宜麻黄湯。六(用前第五方)。

太陽と陽明の合病、喘(ぜい)して胸滿する者は、下すべからず、麻黄湯に宜し。六(用前第五方)。

 

【第三七条】

太陽病、十日以去、脉浮細而嗜臥者、外已解也。設胸滿脇痛者、與小柴胡湯。脉但浮者、與麻黄湯。七(用前第五方)。

太陽病、十日を以て去り、脉浮細にして嗜臥(しが)する者は、外已(すで)に解(げ)するなり。設(も)し胸滿脇痛する者は、小柴胡湯を與(与)う。脉但(た)だ浮の者は、麻黄湯を與う。七(用前第五方)

 

〔小柴胡湯方〕

柴胡(半斤) 黄 人參 甘草(炙) 生薑(各三兩切) 大棗(十二枚擘) 半夏(半升洗)

右七味、以水一斗二升、煮取六升、去滓、再煎取三升、温服一升、日三服。

柴胡(半斤) 黄芩 人參 甘草(炙る) 生薑(各三兩切る) 大棗(十二枚擘く) 半夏(半升洗う)

右七味、水一斗二升を以て、煮て六升を取り、滓を去り、再び煎じて三升を取り、一升を温服し、日に三服す。

 

【第三八条】

太陽中風、脉浮緊、發熱、惡寒、身疼痛、不汗出而煩躁者、大青龍湯主之。若脉微弱、汗出惡風者、不可服之。服之則厥逆、筋惕肉、此為逆也。大青龍湯方。八。

太陽の中風、脉浮緊、發熱、惡寒し、身疼痛し、汗出でずして煩躁する者は、大青龍湯之を主る。

若し脉微弱、汗出で惡風する者は、之を服すべからず。之を服すれば則ち厥逆し、筋惕(きんてき)肉瞤(にくじゅん)す。此を逆と為すなりなり。大青龍湯方。八。

 

〔大青龍湯方〕

麻黄(六兩去節) 桂枝(二兩去皮) 甘草(二兩炙) 杏仁(四十枚去皮尖) 生薑(三兩切) 大棗(十枚擘) 石膏(如子大碎)

右七味、以水九升、先煮麻黄、減二升、去上沫、内諸藥、煮取三升、去滓、温服一升、

取微似汗。汗出多者、温粉粉之。一服汗者、停後服。若復服、汗多亡陽、遂(一作逆)

、惡風、煩躁、不得眠也。

麻黄(六兩節を去る) 桂枝(二兩皮を去る) 甘草(二兩炙る) 杏仁(四十枚、皮尖を去る) 生薑(三兩切る) 大棗(十枚擘く)石膏(雞子大(けいしだい)の如きを碎(くだ)く)

右七味、水九升を以て、先ず麻黄を煮て、二升を減じ、上沫を去り、諸藥を内れ、煮て

三升を取り、滓を去り、一升を温服す、微しく汗に似たるを取る。

汗出ずること多き者は、温粉(おんふん)もて之を粉(はた)く。一服にて汗する者

は、後服を停(とど)む。若し復た服すれば、汗多く亡陽(ぼうよう)し、遂に(一作

逆)虚し、惡風し、煩躁し、眠を得ざるなり。

 

【第九条】

傷寒、脉浮緩、身不疼、但重、乍有輕時、無少陰證者、大青龍湯發之。九(用前第八方)。

傷寒、脉浮緩、身疼(とう)せず、但だ重く、乍(たちま)ち輕き時有り。少陰の證無き者は、大青龍湯之を發(発)す。九(用前第八方)。

 

【第四〇条】

傷寒、表不解、心下有水氣、乾嘔、發熱而、或、或利、或噎、或小便不利、少腹滿、或喘者、小青龍湯主之。方十。

傷寒、表解(げ)せず、心下に水氣有り。乾嘔(かんおう)し、發熱して欬(がい)し、或いは渴は(かっ)し、或いは利(り)し、或いは噎(いっ)し、或いは小便不利し、少腹滿し、或いは喘(ぜい)する者は、小青龍湯之を主る。方十。

 

〔小青龍湯方〕

麻黄(去節) 芍藥 細辛 乾薑 甘草(炙) 桂枝(各三兩去皮) 五味子(半升) 半夏(半升洗)

右八味、以水一斗、先煮麻黄減二升、去上沫、内諸藥。煮取三升、去滓、温服一升。

、去半夏、加樓根三兩。若微利、去麻黄、加蕘花、如一子、熬令赤色。若噎者、

去麻黄、加附子一枚、炮。若小便不利、少腹滿者、去麻黄、加茯苓四兩。若喘、去麻

黄、加杏仁半升、去皮尖。且蕘花不治利、麻黄主喘、今此語反之、疑非仲景意。

(臣億等謹按小青龍湯大要治水。又按本草蕘花下十二水、若水去利則止也。又按千金形

腫者應内麻黄、乃内杏仁者、以麻黄發其陽故也、以此證之、豈非仲景意也。

麻黄(節を去る) 芍藥 細辛(さいしん) 乾薑 甘草(炙る) 桂枝(各三兩、皮を去る) 五味子(半升) 半夏(半升洗う)

右八味、水一斗を以て、先ず麻黄を煮て二升を減じ、上沫を去り、諸藥を内れ、煮て三

升を取り、滓を去り、一升を温服す。若し渴すれば、半夏を去り、栝樓根(かろこん)

三兩を加う。若し微利(びり)すれば、麻黄を去り、蕘花(ぎょうか)、一雞子(いち

けいし)の如きを熬(い)りて赤色ならしめ加う。

若し噎(いっ)する者は、麻黄を去り、附子一枚を炮(ほう)じて加える。若し小便不

利し、少腹滿する者は、麻黄を去り、茯苓四兩を加える。若し喘すれば、麻黄を去り、

杏仁半升、皮尖を去りて加える。

且つ蕘花(ぎょうか)は利を治せず、麻黄は喘を主る、今此の語、之に反す。仲景の意

にあらずを疑う。

臣億ら謹んで按ずるに、小青龍湯の要は治水。又た本草を按ずれば、蕘花は十二水を下

し、若し水去らば、利則ち止むなり。又た千金按ずれば、形腫れるものは、応じて麻黄

を内れるべきに、乃ち杏仁を内れるは、麻黄を以て其の陽を発するが故なり。此れを以

て之を証し、豈(あ)に仲景の意にあらざらんや。

 

 

【第四一条】

傷寒、心下有水氣、而微喘、發熱不。服湯已、者、此寒去欲解也、小青龍湯主之。十一(用前第十方)。

傷寒、心下に水氣有り、欬(がい)して微喘(びぜい)し、發熱して渴せず。湯を服し已(おわ)り、渴する者は、此れ寒去りて解せんと欲するなり。小青龍湯之を主る。十一(用前第十方)

 

【第四二条】

太陽病、外證未解、脉浮弱者、當以汗解、宜桂枝湯。方十二。

太陽病、外證(がいしょう)未だ解(げ)せず、脉浮弱の者は、當(まさ)に汗を以て解くべし、桂枝湯に宜し。方十二。

 

〔桂枝湯方〕

桂枝(去皮) 芍藥 生薑(各三兩切) 甘草(二兩炙) 大棗(十二枚擘)

右五味、以水七升、煮取三升、去滓、温服一升。須臾啜熱稀粥一升、助藥力、取微汗。

桂枝(皮を去る) 芍藥 生薑(各三兩切る) 甘草(二兩炙(あぶ)る) 大棗(十二枚擘(つんざ)く)

右五味、水七升を以て、煮て三升を取る、滓を去り、一升を温服す。須臾(しゅゆ)にして熱稀粥(ねっきがゆ)一升を啜り、藥力を助け、微(すこ)しく汗に似たるを取る。

 

【第四三条】

太陽病、下之微喘者、表未解故也、桂枝加厚朴杏子湯主之。方十三。

太陽病、之を下し微喘(びぜい)する者は、表未だ解(げ)せざるが故(ゆえ)なり、桂枝加厚朴杏子湯(けいしかこうぼくきょうしとう)之を主る。方十三。

 

〔桂枝加厚朴杏子湯方〕

桂枝(三兩去皮) 甘草(二兩炙) 生薑(三兩切) 芍藥(三兩) 大棗(十二枚擘) 厚朴(二兩炙去皮) 杏仁(五十枚去皮尖)

右七味、以水七升、微火煮取三升、去滓、温服一升、覆取微似汗。

桂枝(三兩皮を去る) 甘草(二兩炙る) 生薑(三兩切る) 芍藥(三兩) 大棗(十二枚擘く) 厚朴(二兩炙り皮を去る) 杏仁(五十枚皮尖を去る)

右七味、水七升を以て、微火(びか)にて煮て三升を取る、滓を去る、一升を温服す、覆いて微(すこ)しく汗に似たるを取る。

 

【第四四条】

太陽病、外證未解、不可下也、下之為逆。欲解外者、宜桂枝湯。十四(用前第十二方)。

太陽病、外證未だ解(げ)せざるは、下すべからざるなり、之を下すを逆と為す。外を解せんと欲する者は、桂枝湯に宜し。十四(用前第十二方)。

 

【第四五条】

太陽病、先發汗不解、而復下之、脉浮者不愈。浮為在外、而反下之、故令不愈。今脉浮、故在外、當須解外則愈、宜桂枝湯。十五(用前第十二方)。

太陽病、先ず汗を發して解(げ)せず、而(しか)るに復た之を下し、脉浮の者は愈え

ず。浮は外に在りと為す、而(しか)るに反って之を下すが故に愈えざらしむ。今脉浮

なるが故に外に在り、當(まさ)に須(すべから)く外を解せば則ち愈ゆべし、桂枝湯

に宜し。十五(用前第十二方)。

 

【第四六条】

太陽病、脉浮緊、無汗、發熱、身疼痛、八九日不解、表證仍在、此當發其汗。服藥已微除、其人發煩目瞑、劇者必衄、衄乃解。所以然者、陽氣重故也。麻黄湯主之。十六(用前第五方)。

太陽病、脉浮緊、汗無く、發熱、身(み)疼痛し、八、九日解せず。表證仍(な)お在

るは、此れ當に其の汗を發すべし。藥を服し已(おわ)り微(すこ)しく除き、其の人

煩(はん)を發し目瞑(もくめい)す、

劇(はげ)しき者は必ず衄(じく)す、衄すれば乃(すなわ)ち解す。然(しか)る所

以(ゆえん)の者は、陽氣重きが故なり。麻黄湯之を主る。十六(用前第五方)。

 

【第四七条】

太陽病、脉浮緊、發熱、身無汗、自衄者愈。

太陽病、脉浮緊、發熱、身(み)汗無く、自(おのずか)ら衄(じく)する者は愈ゆ。

 

【第四八条】

二陽併病、太陽初得病時、發其汗、汗先出不徹、因轉屬陽明、續自微汗出、不惡寒。

若太陽病證不罷者、不可下、下之為逆。如此可小發汗。設面色緣緣正赤者、陽氣怫鬱在

表、當解之熏之。若發汗不徹、不足言、陽氣怫鬱不得越、當汗不汗、其人躁煩、不知痛

處、乍在腹中、乍在四肢、按之不可得、其人短氣但坐、以汗出不徹故也、更發汗則愈。

何以知汗出不徹、以脉故知也。

二陽の併病(へいびょう)、太陽初め病を得たる時、其の汗を發し、汗先ず出でて徹

(てっ)せず、因りて陽明に轉屬(てんぞく)す。續(つづ)いて自(おのずか)ら微

(すこ)しく汗出でて、惡寒せず。若し太陽病の證罷(や)まざる者は、下すべから

ず、之を下すを逆と為す。此の如きは小(すこ)しく汗を發すべし。設(も)し面色緣

緣(えんえん)として正(まさ)に赤き者は、陽氣怫鬱(ふついく)として表に在り。

當(まさ)に之を解くに之を熏(くん)ずべし。若し發汗し徹(てっ)せず、言うに足

らざれば、陽氣怫鬱(ふついく)として越するを得ず、當に汗すべくして汗せざれば、

其の人躁煩し、痛處を知らず、乍(たちま)ち腹中に在り、乍ち四肢に在り、之を按じ

て得(う)べからず。其の人短氣して但だ坐するは、汗出ずるも徹せざるを以ての故な

り。更に汗を發すれば則ち愈ゆ。何を以て汗出ずること徹せざるを知らん。脉濇を以て

の故に知るなり。

 

【第四九条】

脉浮數者、法當汗出而愈。若下之、身重、心悸者、不可發汗、當自汗出乃解。所以然者、尺中脉微、此裏。須表裏實、津液自和、便自汗出愈。

脉浮數(さく)の者は、法は當(まさ)に汗出でて愈ゆべし。若し之を下し、身重く、

心悸する者は、汗を發すべからず、當に自ずと汗出でれば乃ち解すべし。然る所以(ゆ

えん)の者は、尺中の脉微(び)、此れ裏虚(りきょ)す。須からく表裏實し、津液自

ずと和せば、便(すなわ)ち自ずと汗出で愈ゆる。

 

【第五〇条】

脉浮緊者、法當身疼痛、宜以汗解之。假令尺中遲者、不可發汗。何以知然。以榮氣不足、血少故也。

脉浮緊の者は、法(ほう)は當に身(み)疼痛す。宜しく汗を以て之を解すべし。假令

(たと)えば尺中遲の者は、汗を發すべからず。何を以て然るを知るや。榮氣足らず血

少なきを以ての故なり。

 

【第五一条】

脉浮者、病在表、可發汗、宜麻黄湯。十七。(用前第五方法用桂枝湯)

脉浮の者は、病表に在り、汗を發すべし。麻黄湯に宜し。十七。(前の第五方を用う。法に桂枝湯を用う)

 

【第五二条】脉浮而數者、可發汗、宜麻黄湯。十八(用前第五方)。

脉浮にして數の者は、汗を發すべし、麻黄湯に宜し。十八(前の第五方を用う)。

 

【第五三条】

病常自汗出者、此為榮氣和。榮氣和者、外不諧、以衛氣不共榮氣諧和故爾。以榮行脉中、衛行脉外。復發其汗、榮衛和則愈。宜桂枝湯。十九(用前第十二方)。

病常に自汗出ずる者は、此れ榮氣和すと為す。榮氣和する者は、外諧(ととの)わず、

衛氣、榮氣共に諧和(かいわ)せざるを以ての故に爾(しか)り。榮は脉中を行(め

ぐ)り、衛は脉外を行るを以てなり。復た其の汗を發し、榮衛和すれば則ち愈ゆ。桂枝

湯に宜し。十九(前の第十二方を用う)。

 

【第五四条】

病人藏無他病、時發熱、自汗出、而不愈者、此衛氣不和也。先其時發汗則愈、宜桂枝湯。二十(用前第十二方)。

病人、藏に他病無く、時に發熱し、自ずと汗出で、愈えざる者は、此れ衛氣和せざるなり。其の時に先だちて汗を發すれば則ち愈ゆ、桂枝湯に宜し。二十(前の第十二方用う)

 

【第五五条】

傷寒、脉浮緊、不發汗、因致衄者、麻黄湯主之。二十一(用前第五方)。

傷寒、脉浮緊、汗を發せず、因(よ)りて衄(じく)を致す者は、麻黄湯之を主る。二十一(前の第五方を用う)。

 

【第五六条】

傷寒、不大便六七日、頭痛有熱者、與承氣湯。其小便清(一云大便青)者、知不在裏、仍在表也、當須發汗。若頭痛者必衄。宜桂枝湯。二十二(用前第十二方)。

傷寒、大便せざること六、七日、頭痛し熱有る者は、承氣湯(じょうきとう)を

辨太陽病脉證并治中・第六(合六十六法方三十九首并見太陽陽明合病法)

 

【第三一条】

太陽病、項背強几几、無汗、惡風、葛根湯主之。方一。

太陽病、項背(こうはい)強ばること几几(しゅしゅ)として、汗無く、惡風するは、葛根湯之(これ)を主る。方一。

 

〔葛根湯方〕

葛根(四兩) 麻黄(三兩去節) 桂枝(二兩去皮) 生薑(三兩切) 甘草(二兩炙) 芍藥(二兩) 大棗(十二枚擘)

右七味、以水一斗、先煮麻黄、葛根、減二升、去白沫、内諸藥、煮取三升、去滓、温服一升、覆取微似汗。餘如桂枝法將息及禁忌、諸湯皆倣此。

葛根(四兩) 麻黄(三兩節を去る) 桂枝(二兩皮を去る) 生薑(三兩切る) 甘草(二兩炙る) 芍藥(二兩) 大棗(十二枚擘く)

右七味、水一斗を以て、先ず麻黄、葛根を煮て、二升を減じ、白沫を去り、諸藥を内れ、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す。覆(おお)いて微(すこ)しく汗に似たるを取る。

餘(余)は桂枝の法の將息(しょうそく)及び禁忌の如し。諸湯(しょとう)皆此れに倣(なら)え。

 

【第三二条】

太陽與陽明合病者、必自下利、葛根湯主之。方二(用前第一方一云用後第四方)。

太陽と陽明の合病なる者は、必ず自から下利す。葛根湯之を主る。方二

 

【第三三条】

太陽與陽明合病、不下利、但嘔者、葛根加半夏湯主之。方三。

太陽と陽明の合病、下利せず、但だ嘔する者は、葛根加半夏湯(かっこんかはんげとう)之を主る。方三。

〔葛根加半夏湯方〕

葛根(四兩) 麻黄(三兩去節) 甘草(二兩炙) 芍藥(二兩) 桂枝(二兩去皮) 生薑(二兩切) 半夏(半升洗) 大棗(十二枚擘)

右八味、以水一斗、先煮葛根、麻黄、減二升、去白沫、内諸藥、煮取三升、去滓、温服一升。

覆取微似汗。

葛根(四兩) 麻黄(三兩節を去る) 甘草(二兩炙る) 芍藥(二兩) 桂枝(二兩皮を去る) 生薑(二兩切る) 半夏(半升洗う) 大棗(十二枚擘く)

右八味、水一斗を以て、先ず葛根、麻黄を煮て、二升を減じ、白沫を去り、諸藥を内(い)れ、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す。覆(おお)いて微(すこ)しく汗に似たるを取る。

 

【第四条】

太陽病、桂枝證、醫反下之、利遂不止、脉促(促一作縱)者、表未解也。喘而汗出者、

葛根黄黄連湯主之。方四。

太陽病、桂枝證、醫(い)反って之を下し、利遂(つい)に止まず、脉促の(促一作縱)者は、表未だ解(げ)せざるなり。喘(ぜい)して汗出ずる者は、葛根黄芩黄連湯(かっこんおうごんおうれんとう)之を主る。方四。

 

〔葛根黄黄連湯方〕

葛根(半斤) 甘草(二兩炙) 黄(三兩) 黄連(三兩)

右四味、以水八升、先煮葛根、減二升、内諸藥、煮取二升、去滓、分温再服。

葛根(半斤) 甘草(二兩炙る) 黄芩(おうごん)(三兩) 黄連(三兩)

右四味、水八升を以て、先ず葛根を煮て、二升を減じ、諸藥を内れ、煮て二升を取り、滓を去り、分かち温め再服す。

 

【第三五条】

太陽病、頭痛、發熱、身疼、腰痛、骨節疼痛、惡風無汗而喘者、麻黄湯主之。方五。

太陽病、頭痛、發熱、身疼(とう)し、腰痛、骨節疼痛し、惡風し汗無くして喘(ぜい)する者は、

麻黄湯之を主る。方五

 

〔麻黄湯方〕

麻黄(三兩去節) 桂枝(二兩去皮) 甘草(一兩炙) 杏仁(七十箇去皮尖)

右四味、以水九升、先煮麻黄、減二升、去上沫、内諸藥、煮取二升半、去滓、温服八合、覆取微似汗、不須啜粥、餘如桂枝法將息。

麻黄(三兩節を去る) 桂枝(二兩皮を去る) 甘草(一兩炙る) 杏仁(七十箇、皮尖を去る)

右四味、水九升を以て、先ず煮黄を煮て、二升を減じ、上沫を去り、諸藥を内れ、煮て二升半を取り、滓を去り、八合を温服す、覆いて微(すこ)しく汗に似たるを取る。須(すべ)からず粥を啜(すす)らず。

餘(よ)は桂枝法の將息(しょうそく)の如くす。

 

【第三六条】

太陽與陽明合病、喘而胸滿者、不可下、宜麻黄湯。六(用前第五方)。

太陽と陽明の合病、喘(ぜい)して胸滿する者は、下すべからず、麻黄湯に宜し。六(用前第五方)。

 

【第三七条】

太陽病、十日以去、脉浮細而嗜臥者、外已解也。設胸滿脇痛者、與小柴胡湯。脉但浮者、與麻黄湯。七(用前第五方)。

太陽病、十日を以て去り、脉浮細にして嗜臥(しが)する者は、外已(すで)に解(げ)するなり。設(も)し胸滿脇痛する者は、小柴胡湯を與(与)う。脉但(た)だ浮の者は、麻黄湯を與う。

七(用前第五方)

 

〔小柴胡湯方〕

柴胡(半斤) 黄 人參 甘草(炙) 生薑(各三兩切) 大棗(十二枚擘) 半夏(半升洗)

右七味、以水一斗二升、煮取六升、去滓、再煎取三升、温服一升、日三服。

柴胡(半斤) 黄芩 人參 甘草(炙る) 生薑(各三兩切る) 大棗(十二枚擘く) 半夏(半升洗う)

右七味、水一斗二升を以て、煮て六升を取り、滓を去り、再び煎じて三升を取り、一升を温服し、日に三服す。

 

【第三八条】

太陽中風、脉浮緊、發熱、惡寒、身疼痛、不汗出而煩躁者、大青龍湯主之。若脉微弱、汗出惡風者、不可服之。服之則厥逆、筋惕肉、此為逆也。大青龍湯方。八。

太陽の中風、脉浮緊、發熱、惡寒し、身疼痛し、汗出でずして煩躁する者は、大青龍湯之を主る。

若し脉微弱、汗出で惡風する者は、之を服すべからず。之を服すれば則ち厥逆し、筋惕(きんてき)肉瞤(にくじゅん)す。此を逆と為すなりなり。大青龍湯方。八。

 

〔大青龍湯方〕

麻黄(六兩去節) 桂枝(二兩去皮) 甘草(二兩炙) 杏仁(四十枚去皮尖) 生薑(三兩切) 大棗(十枚擘) 石膏(如子大碎)

右七味、以水九升、先煮麻黄、減二升、去上沫、内諸藥、煮取三升、去滓、温服一升、取微似汗。汗出多者、温粉粉之。一服汗者、停後服。若復服、汗多亡陽、遂(一作逆)、惡風、煩躁、不得眠也。

麻黄(六兩節を去る) 桂枝(二兩皮を去る) 甘草(二兩炙る) 杏仁(四十枚、皮尖を去る) 生薑(三兩切る) 大棗(十枚擘く)石膏(雞子大(けいしだい)の如きを碎(くだ)く)

右七味、水九升を以て、先ず麻黄を煮て、二升を減じ、上沫を去り、諸藥を内れ、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す、微しく汗に似たるを取る。

汗出ずること多き者は、温粉(おんふん)もて之を粉(はた)く。一服にて汗する者

は、後服を停(とど)む。若し復た服すれば、汗多く亡陽(ぼうよう)し、遂に(一作

逆)虚し、惡風し、煩躁し、眠を得ざるなり。

 

【第九条】

傷寒、脉浮緩、身不疼、但重、乍有輕時、無少陰證者、大青龍湯發之。九(用前第八方)。

傷寒、脉浮緩、身疼(とう)せず、但だ重く、乍(たちま)ち輕き時有り。少陰の證無き者は、大青龍湯之を發(発)す。九(用前第八方)。

 

【第四〇条】

傷寒、表不解、心下有水氣、乾嘔、發熱而、或、或利、或噎、或小便不利、少腹滿、或喘者、小青龍湯主之。方十。

傷寒、表解(げ)せず、心下に水氣有り。乾嘔(かんおう)し、發熱して欬(がい)し、或いは渴は(かっ)し、或いは利(り)し、或いは噎(いっ)し、或いは小便不利し、少腹滿し、或いは喘(ぜい)する者は、小青龍湯之を主る。方十。

 

〔小青龍湯方〕

麻黄(去節) 芍藥 細辛 乾薑 甘草(炙) 桂枝(各三兩去皮) 五味子(半升) 半夏(半升洗)

右八味、以水一斗、先煮麻黄減二升、去上沫、内諸藥。煮取三升、去滓、温服一升。、去半夏、加樓根三兩。若微利、去麻黄、加蕘花、如一子、熬令赤色。若噎者、去麻黄、加附子一枚、炮。若小便不利、少腹滿者、去麻黄、加茯苓四兩。若喘、去麻黄、加杏仁半升、去皮尖。且蕘花不治利、麻黄主喘、今此語反之、疑非仲景意。(臣億等謹按小青龍湯大要治水。又按本草蕘花下十二水、若水去利則止也。又按千金形腫者應内麻黄、乃内杏仁者、以麻黄發其陽故也、以此證之、豈非仲景意也。

麻黄(節を去る) 芍藥 細辛(さいしん) 乾薑 甘草(炙る) 桂枝(各三兩、皮を去る) 五味子(半升) 半夏(半升洗う)

右八味、水一斗を以て、先ず麻黄を煮て二升を減じ、上沫を去り、諸藥を内れ、煮て三

升を取り、滓を去り、一升を温服す。若し渴すれば、半夏を去り、栝樓根(かろこん)

三兩を加う。若し微利(びり)すれば、麻黄を去り、蕘花(ぎょうか)、一雞子(いち

けいし)の如きを熬(い)りて赤色ならしめ加う。

若し噎(いっ)する者は、麻黄を去り、附子一枚を炮(ほう)じて加える。若し小便不

利し、少腹滿する者は、麻黄を去り、茯苓四兩を加える。若し喘すれば、麻黄を去り、

杏仁半升、皮尖を去りて加える。

且つ蕘花(ぎょうか)は利を治せず、麻黄は喘を主る、今此の語、之に反す。仲景の意

にあらずを疑う。

臣億ら謹んで按ずるに、小青龍湯の要は治水。又た本草を按ずれば、蕘花は十二水を下

し、若し水去らば、利則ち止むなり。又た千金按ずれば、形腫れるものは、応じて麻黄

を内れるべきに、乃ち杏仁を内れるは、麻黄を以て其の陽を発するが故なり。此れを以

て之を証し、豈(あ)に仲景の意にあらざらんや。

 

【第四一条】

傷寒、心下有水氣、而微喘、發熱不。服湯已、者、此寒去欲解也、小青龍湯主之。十一(用前第十方)。

傷寒、心下に水氣有り、欬(がい)して微喘(びぜい)し、發熱して渴せず。湯を服し已(おわ)り、渴する者は、此れ寒去りて解せんと欲するなり。小青龍湯之を主る。十一(用前第十方)

 

【第四二条】

太陽病、外證未解、脉浮弱者、當以汗解、宜桂枝湯。方十二。

太陽病、外證(がいしょう)未だ解(げ)せず、脉浮弱の者は、當(まさ)に汗を以て解くべし、桂枝湯に宜し。方十二。

 

〔桂枝湯方〕

桂枝(去皮) 芍藥 生薑(各三兩切) 甘草(二兩炙) 大棗(十二枚擘)

右五味、以水七升、煮取三升、去滓、温服一升。須臾啜熱稀粥一升、助藥力、取微汗。

桂枝(皮を去る) 芍藥 生薑(各三兩切る) 甘草(二兩炙(あぶ)る) 大棗(十二枚擘(つんざ)く)

右五味、水七升を以て、煮て三升を取る、滓を去り、一升を温服す。須臾(しゅゆ)にして熱稀粥(ねっきがゆ)一升を啜り、藥力を助け、微(すこ)しく汗に似たるを取る。

 

【第四三条】

太陽病、下之微喘者、表未解故也、桂枝加厚朴杏子湯主之。方十三。

太陽病、之を下し微喘(びぜい)する者は、表未だ解(げ)せざるが故(ゆえ)なり、桂枝加厚朴杏子湯(けいしかこうぼくきょうしとう)之を主る。方十三。

 

〔桂枝加厚朴杏子湯方〕

桂枝(三兩去皮) 甘草(二兩炙) 生薑(三兩切) 芍藥(三兩) 大棗(十二枚擘) 

厚朴(二兩炙去皮) 杏仁(五十枚去皮尖)

右七味、以水七升、微火煮取三升、去滓、温服一升、覆取微似汗。

桂枝(三兩皮を去る) 甘草(二兩炙る) 生薑(三兩切る) 芍藥(三兩) 大棗(十二枚擘く) 厚朴(二兩炙り皮を去る) 杏仁(五十枚皮尖を去る)

右七味、水七升を以て、微火(びか)にて煮て三升を取る、滓を去る、一升を温服す、覆いて微(すこ)しく汗に似たるを取る。

 

【第四四条】

太陽病、外證未解、不可下也、下之為逆。欲解外者、宜桂枝湯。十四(用前第十二方)。

太陽病、外證未だ解(げ)せざるは、下すべからざるなり、之を下すを逆と為す。外を解せんと欲する者は、桂枝湯に宜し。十四(用前第十二方)。

 

【第四五条】

太陽病、先發汗不解、而復下之、脉浮者不愈。浮為在外、而反下之、故令不愈。今脉浮、故在外、當須解外則愈、宜桂枝湯。十五(用前第十二方)。

太陽病、先ず汗を發して解(げ)せず、而(しか)るに復た之を下し、脉浮の者は愈え

ず。浮は外に在りと為す、而(しか)るに反って之を下すが故に愈えざらしむ。今脉浮

なるが故に外に在り、當(まさ)に須(すべから)く外を解せば則ち愈ゆべし、桂枝湯

に宜し。十五(用前第十二方)。

 

【第四六条】

太陽病、脉浮緊、無汗、發熱、身疼痛、八九日不解、表證仍在、此當發其汗。服藥已微除、其人發煩目瞑、劇者必衄、衄乃解。所以然者、陽氣重故也。麻黄湯主之。十六(用前第五方)。

太陽病、脉浮緊、汗無く、發熱、身(み)疼痛し、八、九日解せず。表證仍(な)お在

るは、此れ當に其の汗を發すべし。藥を服し已(おわ)り微(すこ)しく除き、其の人

煩(はん)を發し目瞑(もくめい)す、

劇(はげ)しき者は必ず衄(じく)す、衄すれば乃(すなわ)ち解す。然(しか)る所

以(ゆえん)の者は、陽氣重きが故なり。麻黄湯之を主る。十六(用前第五方)。

 

【第四七条】

太陽病、脉浮緊、發熱、身無汗、自衄者愈。

太陽病、脉浮緊、發熱、身(み)汗無く、自(おのずか)ら衄(じく)する者は愈ゆ。

 

【第四八条】

二陽併病、太陽初得病時、發其汗、汗先出不徹、因轉屬陽明、續自微汗出、不惡寒。若太陽病證不罷者、不可下、下之為逆。如此可小發汗。設面色緣緣正赤者、陽氣怫鬱在表、當解之熏之。若發汗不徹、不足言、陽氣怫鬱不得越、當汗不汗、其人躁煩、不知痛處、乍在腹中、乍在四肢、按之不可得、其人短氣但坐、以汗出不徹故也、更發汗則愈。何以知汗出不徹、以脉故知也。

二陽の併病(へいびょう)、太陽初め病を得たる時、其の汗を發し、汗先ず出でて徹

(てっ)せず、因りて陽明に轉屬(てんぞく)す。續(つづ)いて自(おのずか)ら微

(すこ)しく汗出でて、惡寒せず。若し太陽病の證罷(や)まざる者は、下すべから

ず、之を下すを逆と為す。此の如きは小(すこ)しく汗を發すべし。設(も)し面色緣

緣(えんえん)として正(まさ)に赤き者は、陽氣怫鬱(ふついく)として表に在り。

當(まさ)に之を解くに之を熏(くん)ずべし。若し發汗し徹(てっ)せず、言うに足

らざれば、陽氣怫鬱(ふついく)として越するを得ず、當に汗すべくして汗せざれば、

其の人躁煩し、痛處を知らず、乍(たちま)ち腹中に在り、乍ち四肢に在り、之を按じ

て得(う)べからず。其の人短氣して但だ坐するは、汗出ずるも徹せざるを以ての故な

り。更に汗を發すれば則ち愈ゆ。何を以て汗出ずること徹せざるを知らん。脉濇を以て

の故に知るなり。

 

【第四九条】

脉浮數者、法當汗出而愈。若下之、身重、心悸者、不可發汗、當自汗出乃解。所以然者、尺中脉微、此裏。須表裏實、津液自和、便自汗出愈。

脉浮數(さく)の者は、法は當(まさ)に汗出でて愈ゆべし。若し之を下し、身重く、

心悸する者は、汗を發すべからず、當に自ずと汗出でれば乃ち解すべし。然る所以(ゆ

えん)の者は、尺中の脉微(び)、此れ裏虚(りきょ)す。須からく表裏實し、津液自

ずと和せば、便(すなわ)ち自ずと汗出で愈ゆる。

 

【第五〇条】

脉浮緊者、法當身疼痛、宜以汗解之。假令尺中遲者、不可發汗。何以知然。以榮氣不足、血少故也。

脉浮緊の者は、法(ほう)は當に身(み)疼痛す。宜しく汗を以て之を解すべし。假令

(たと)えば尺中遲の者は、汗を發すべからず。何を以て然るを知るや。榮氣足らず血

少なきを以ての故なり。

 

【第五一条】

脉浮者、病在表、可發汗、宜麻黄湯。十七。(用前第五方法用桂枝湯)

脉浮の者は、病表に在り、汗を發すべし。麻黄湯に宜し。十七。(前の第五方を用う。法に桂枝湯を用う)

 

【第五二条】脉浮而數者、可發汗、宜麻黄湯。十八(用前第五方)。

脉浮にして數の者は、汗を發すべし、麻黄湯に宜し。十八(前の第五方を用う)。

 

【第五三条】

病常自汗出者、此為榮氣和。榮氣和者、外不諧、以衛氣不共榮氣諧和故爾。以榮行脉中、衛行脉外。復發其汗、榮衛和則愈。宜桂枝湯。十九(用前第十二方)。

病常に自汗出ずる者は、此れ榮氣和すと為す。榮氣和する者は、外諧(ととの)わず、

衛氣、榮氣共に諧和(かいわ)せざるを以ての故に爾(しか)り。榮は脉中を行(め

ぐ)り、衛は脉外を行るを以てなり。復た其の汗を發し、榮衛和すれば則ち愈ゆ。桂枝

湯に宜し。十九(前の第十二方を用う)。

 

【第五四条】

病人藏無他病、時發熱、自汗出、而不愈者、此衛氣不和也。先其時發汗則愈、宜桂枝湯。二十(用前第十二方)。

病人、藏に他病無く、時に發熱し、自ずと汗出で、愈えざる者は、此れ衛氣和せざるなり。其の時に先だちて汗を發すれば則ち愈ゆ、桂枝湯に宜し。二十(前の第十二方用う)

 

【第五五条】

傷寒、脉浮緊、不發汗、因致衄者、麻黄湯主之。二十一(用前第五方)。

傷寒、脉浮緊、汗を發せず、因(よ)りて衄(じく)を致す者は、麻黄湯之を主る。二十一(前の第五方を用う)。

 

【第五六条】

傷寒、不大便六七日、頭痛有熱者、與承氣湯。其小便清(一云大便青)者、知不在裏、仍在表也、當須發汗。若頭痛者必衄。宜桂枝湯。二十二(用前第十二方)。

傷寒、大便せざること六、七日、頭痛し熱有る者は、承氣湯(じょうきとう)を與

(与)う。其の小便清き(一云大便青)者は、裏に在らずして、仍(な)お表に在ある

を知るなり。當(まさ)に須(すべから)く汗を發すべし。若し頭痛む者は必ず衄(じ

く)す。桂枝湯に宜し。二十二(前の第十二方を用う)。

 

【第五七条】

傷寒、發汗已解、半日許復煩、脉浮數者、可更發汗、宜桂枝湯。二十三(前の第十二方を用う)。

傷寒、汗を發し已に解(げ)すること半日許(ばか)りにして復(ま)た煩(はん)し、脉浮數の者は、更に汗を發すべし。桂枝湯に宜し。二十三(前の第十二方を用う)。

 

【第五八条】

凡病、若發汗、若吐、若下、若亡血、亡津液、陰陽自和者、必自愈。

凡(おおよ)そ病、若しくは發汗し、若しくは吐し、若しくは下し、若しくは亡血(ぼうけつ)し、津液を亡(うしな)うも、陰陽自(おのずか)ら和す者は、必ず自ら愈ゆ。

 

【第五九条】

大下之後、復發汗、小便不利者、亡津液故也。勿治之、得小便利、必自愈。

大いに之を下したる後、復た發汗し、小便不利の者は、津液を亡(うしな)うが故なり。之を治すること勿(な)かれ。小便利するを得れば、必ず自ら愈ゆ。

 

【第六〇条】

下之後、復發汗、必振寒、脉微細。所以然者、以内外倶故也。

之を下したる後、復た發汗すれば、必ず振寒し、脉微細なり。然る所以の者は、内外倶(とも)に虚するを以ての故なり。

 

【第六一条】

下之後、復發汗、晝日煩躁不得眠、夜而安靜、不嘔、不、無表證、脉沈微、身無大熱者、乾薑附子湯主之。方二十四。

之を下したる後、復た發汗し、晝日(ちゅうじつ)煩躁して眠を得ず、夜にして安靜、嘔せず、渇せず、表證無く、脉沈微(ちんび)、身(み)に大熱無き者は、乾薑附子湯(かんきょうぶしとう)之を主る。方二十四。

 

〔乾薑附子湯方〕

乾薑(一兩) 附子(一枚生用去皮切八片)

右二味、以水三升、煮取一升、去滓、頓服。

乾薑(一兩) 附子(一枚、生を用い、皮を去り、八片に切る)

右二味、水三升を以て、煮て一升を取り、滓を去り、頓服す。

 

【第六二条】

發汗後、身疼痛、脉沈遲者、桂枝加芍藥生薑各一兩人參三兩新加湯主之。方二十五。

發汗後、身疼痛し、脉沈遲の者は、桂枝加芍藥生薑各一兩人參三兩新加湯(けいしかしょくやくしょうきょうかくいちりょうにんじんさんりょうしんかとう)之を主る。方二十五。

 

〔桂枝加芍藥生薑各一兩人參三兩新加湯方〕

桂枝(三兩去皮) 芍藥(四兩) 甘草(二兩炙) 人參(三兩) 大棗(十二枚擘) 生薑(四兩)

右六味、以水一斗二升、煮取三升、去滓、温服一升。本云桂枝湯、今加芍藥生薑人參。

桂枝(三兩皮を去る) 芍藥(四兩) 甘草(二兩炙る) 人參(三兩) 大棗(十二枚擘く) 生薑(四兩)

右六味、水一斗二升を以て、煮て三升を取る、滓を去り、一升を温服す。本(もと)云(い)う桂枝湯に今芍藥、生薑、人參を加えると。

 

【第六三条】

發汗後、不可更行桂枝湯。汗出而喘、無大熱者、可與麻黄杏子甘草石膏湯。方二十六。

發汗後、更(さら)に桂枝湯を行(や)るべからず。汗出でて喘し、大熱無き者は、麻黄杏仁甘草石膏湯(まおうきょうにんかんぞうせっこうとう)を與うべし。方二十六。

 

〔麻黄杏子甘草石膏湯方〕

麻黄(四兩去節) 杏仁(五十箇去皮尖) 甘草(二兩炙) 石膏(半斤碎綿裹)

右四味、以水七升、煮麻黄、減二升、去上沫、内諸藥、煮取二升、去滓、温服一升。本云、黄耳杯。

麻黄(四兩節を去る) 杏仁(五十箇皮尖を去る) 甘草(二兩炙る) 石膏(半斤、碎き、綿もて裹(つつ)む)

右四味、水七升以て、麻黄を煮て、二升を減じ、上沫を去り、諸藥を内(い)れ、煮て二升を取り、滓を去り、一升を温服す。本(もと)云う、黄耳杯(おうじはい)と。

 

【第六四条】

發汗過多、其人叉手自冒心、心下悸欲得按者、桂枝甘草湯主之。方二十七。

發汗過多、其の人叉手(さしゅ)して自ら心を冒(おお)い、心下悸(き)し按を得んと欲する者は、桂枝甘草湯之を主る。方二十七。

 

〔桂枝甘草湯方〕

桂枝(四兩去皮) 甘草(二兩炙)

右二味、以水三升、煮取一升、去滓、頓服。

桂枝(四兩皮を去る) 甘草(二兩炙る)

右二味、水三升を以て、煮て一升を取る、滓を去り、頓服す。

 

【第六五条】

發汗後、其人臍下悸者、欲作奔豚、茯苓桂枝甘草大棗湯主之。方二十八。

發汗後、其の人臍下悸(き)する者は、奔豚(ほんとん)を作(な)さんと欲す、茯苓桂枝甘草大棗湯(ぶくりょうけいしかんぞうだいそうとう)之を主る。方二十八。

 

〔茯苓桂枝甘草大棗湯方〕

茯苓(半斤) 桂枝(四兩去皮) 甘草(二兩炙) 大棗(十五枚擘)

右四味、以甘爛水一斗、先煮茯苓、減二升、内諸藥、煮取三升、去滓、温服一升、日三服。作甘爛水法、取水二斗、置大盆内、以杓揚之、水上有珠子五六千顆相逐、取用之。

茯苓(半斤) 桂枝(四兩皮を去る) 甘草(二兩炙る) 大棗(十五枚擘く)

右四味、甘爛水(かんらんすい)一斗を以て、先ず茯苓を煮て、二升を減じ、諸藥を内れ、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す、日に三服す。甘爛水(かんらんすい)を作るの法、水二斗を取り、

大盆内に置き、杓を以て之を揚げ、水上に珠子(しゅし)五六千顆(か)相(あ)い逐(お)うもの有らば、取りて之を用う。

 

【第六六条】

發汗後、腹脹滿者、厚朴生薑半夏甘草人參湯主之。方二十九。

發汗後、腹脹滿する者は、厚朴生薑半夏甘草人參湯(こうぼくしょうきょうはんげかんぞうにんじんとう)之を主る。方二十九。

 

〔厚朴生薑半夏甘草人參湯方〕

厚朴(半斤炙去皮) 生薑(半斤切) 半夏(半斤洗) 甘草(二兩) 人參(一兩)

右五味、以水一斗、煮取三升、去滓温服一升、日三服。

厚朴(半斤、炙り、皮を去る) 生薑(半斤、切る) 半夏(半斤、洗る) 甘草(二兩) 人參(一兩)

右五味、水一斗を以て、煮て三升を取り、滓を去り一升を温服し、日に三服す。

 

【第六七条】

傷寒、若吐、若下後、心下逆滿、氣上衝胸、起則頭眩、脉沈緊、發汗則經動、身為振振揺者、茯苓桂枝白朮甘草湯主之。方三十。

傷寒、若しくは吐し、若しくは下したる後、心下逆滿し、氣上りて胸を衝き、起きれば

則ち頭眩(ずげん)し、脉沈緊、發汗すれば則ち經動じ、身(み)振振(しんしん)と

して揺(よう)を為(な)す者は、茯苓桂枝白朮甘草湯(ぶくりょうけいしびゃくじゅ

つかんぞうとう)之を主る。方三十。

 

〔茯苓桂枝白朮甘草湯方〕

茯苓(四兩) 桂枝(三兩去皮) 白朮 甘草(各二兩炙)

右四味、以水六升、煮取三升、去滓、分温三服。

茯苓(四兩) 桂枝(三兩皮を去る) 白朮 甘草(各二兩炙る)

右四味、水六升を以て、煮て三升を取り、滓を去り、分かち温め三服す。

 

【第六八条】

發汗病不解、反惡寒者、故也。芍藥甘草附子湯主之。方三十一。

發汗し、病解(げ)せず、反て惡寒する者は、虚するが故なり。芍藥甘草附子湯(しゃくやくかんぞうぶしとう)之を主る。方三十一。

 

〔芍藥甘草附子湯方〕

芍藥 甘草(各三兩炙) 附子(一枚炮去皮破八片)

右三味、以水五升、煮取一升五合、去滓、分温三服。疑非仲景方。

芍藥 甘草(各三兩、炙る) 附子(一枚炮じて、皮を去り、八片を破る)

右三味、水五升を以て、煮て一升五合を取り、滓を去り、分かち温め三服す。仲景の方に非ざるを疑う。

 

【第六九条】

發汗、若下之、病仍不解、煩躁者、茯苓四逆湯主之。方三十二。

發汗し、若し之を下し、病仍(な)お解せず、煩躁する者は、茯苓四逆湯(ぶくりょうしぎゃくとう)之を主る。方三十二。

 

〔茯苓四逆湯方〕

茯苓(四兩) 人參(一兩) 附子(一枚生用去皮破八片) 甘草(二兩炙) 乾薑(一兩半)

右五味、以水五升、煮取三升、去滓、温服七合、日二服。

茯苓(四兩) 人參(一兩) 附子(一枚、生を用い、皮を去り、八片に破る) 甘草(二兩炙る) 乾薑(一兩半)

右五味、水五升を以て、煮て三升を取る、滓を去り、七合を温服し、日に二服す。

 

【第七〇条】

發汗後、惡寒者、虚故也。不惡寒、但熱者、實也、當和胃氣、與調胃承氣湯。方三十三。(玉函云與小承氣湯)

發汗後、惡寒する者は、虚するが故なり。惡寒せず、但だ熱する者は、實なり。當に胃氣を和すべし。調胃承氣湯(ちょういじょうきとう)を與う。方三十三。(玉函云與小承氣湯)

 

〔調胃承氣湯方〕

芒消(半升) 甘草(二兩炙) 大黄(四兩去皮清酒洗)

右三味、以水三升、煮取一升、去滓、内芒消、更煮兩沸、頓服。

芒消(半升) 甘草(二兩炙る) 大黄(四兩皮を去り清酒で洗う)

右三味、水三升を以て、煮て一升を取り、滓を去り、芒消を内れ、更に煮て兩沸し、頓服す。

 

【第七一条】

太陽病、發汗後、大汗出、胃中乾、煩躁不得眠、欲得飲水者、少少與飲之、令胃氣和則愈。若脉浮、小便不利、微熱、消者、五苓散主之。方三十四。(即猪苓散是)

太陽病、發汗後、大いに汗出で、胃中乾き、煩躁して眠を得ず、飲水を得んと欲する者

は、少少與(あた)え之を飲み、胃氣をして和せしむれば則ち愈ゆ。若し脉浮、小便利

せず、微熱し、消渇(しょうかつ)する者は、五苓散之を主る。方三十四。(即猪苓散

是)

 

〔五苓散方〕

猪苓(十八銖去皮) 澤瀉(一兩六銖) 白朮(十八銖) 茯苓(十八銖) 桂枝(半兩去皮)

右五味、擣為散、以白飲和服方寸匕、日三服。多飲煖水、汗出愈、如法將息。

猪苓(ちょれい)(十八銖、皮を去る) 澤瀉(たくしゃ)(一兩六銖) 白朮(びゃくじゅつ)(十八銖) 茯苓(十八銖) 桂枝(半兩皮を去る)

右五味、擣(つ)きて散と為し、白飲を以て和し方寸匕(ほうすんひ)にて服し、日に三服す。多く煖水(だんすい)を飲み、汗出でて愈ゆ。法は將息の如し。

 

【第七二条】

發汗已、脉浮數、煩渇者、五苓散主之。三十五(用前第三十四方)。

發汗已(おわ)り、脉浮數、煩渇する者は、五苓散之を主る。三十五(前の第三十四方を用う)。

 

【第七三条】

傷寒、汗出而渇者、五苓散主之。不渇者、茯苓甘草湯主之。方三十六。

傷寒、汗出で渇する者は、五苓散之を主る。渇せざる者は、茯苓甘草湯之を主る。方三十六。

 

〔茯苓甘草湯方〕

茯苓(二兩) 桂枝(二兩去皮) 甘草(一兩炙) 生薑(三兩切)

右四味、以水四升、煮取二升、去滓、分温三服。

茯苓(二兩) 桂枝(二兩去皮) 甘草(一兩炙) 生薑(三兩切)

右四味、水四升を以て、煮て二升を取り、滓を去り、分かち温め三服す。

 

【第七四条】

中風、發熱六七日不解而煩、有表裏證、欲飲水、水入則吐者、名曰水逆、五苓散主之。三十七(用前第三十四方)。

中風、發熱すること六、七日。解(げ)せずして煩(はん)し、表裏の證有り。渇して飲水せんと欲し、水入れば則ち吐する者は、名づけて水逆と曰く。五苓散之を主る。三十七(前の第三十四方を用う)。

 

【第七五条】

未持脉、病人手叉自冒心。師因教試令、而不者、此必兩耳聾無聞也。所以然者、以重發汗、虚故如此。發汗後、飲水多必喘、以水灌之亦喘。

未(いま)だ脉を持(じ)せざる時、病人手叉(しゅさ)して自ら心を冒(おお)う。

師因(よ)りて試しに欬(がい)せしめんと教す。而(しか)るに欬(がい)せざる者

は、此れ必ず兩耳(りょうじ)聾(し)いて聞くこと無きなり。然(しか)る所以(ゆ

えん)の者は、重ねて發汗する以て、虚するが故に此(か)くの如し。發汗後、飲水多

ければ必ず喘(ぜい)す。水を以て之を灌(そそ)ぐも亦(ま)た喘す。

 

【第七六条】

發汗後、水藥不得入口、為逆。若更發汗、必吐下不止。發汗、吐下後、煩不得眠、若劇者、必反覆顛倒(音到下同)、心中懊、梔子湯主之。若少氣者、梔子甘草湯主之。若嘔者、梔子生薑湯主之。三十八。

發汗後、水藥口に入るを得ざるを、逆と為す。若し更に發汗すれば、必ず吐下(とげ)

止まず。發汗、吐下の後、虚煩(きょはん)して眠を得ず。若し劇しき者は、必ず反覆

顛倒(はんぷくしんとう)(音到下同)し、心中懊憹(しんちゅうおうのう)す(上烏

浩下奴冬切下同)。梔子豉湯(しししとう)之を主る。若し少氣(しょうき)する者

は、梔子甘草豉湯(ししかんぞうしとう)之を主る。若し嘔する者は、梔子生薑豉湯

(しししょうきょうしとう)之を主る。三十八。

 

〔梔子湯方〕

梔子(十四箇擘) 香(四合綿裹)

右二味、以水四升、先煮梔子、得二升半、内、煮取一升半、去滓、分為二服、温進一服、得吐者、止後服。

梔子(しし)(十四箇、擘く) 香豉(こうし)(四合、綿もて裹(つつ)む)

右二味、水四升を以て、先ず梔子を煮て二升半を得、豉(し)を内(い)れ、煮て一升半を取り、滓を去り、分かちて二服と為し、一服を温進(おんしん)す、吐を得る者は、後服を止(とど)む。

 

〔梔子甘草湯方〕

梔子(十四箇擘) 甘草(二兩炙) 香(四合綿裹)

右三味、以水四升、先煮梔子、甘草、取二升半、内、煮取一升半、去滓、分二服。温進一服、得吐者、止後服。

梔子(しし)(十四箇、擘く) 甘草(二兩炙る) 香豉(こうし)(四合綿を裹(つつ)む)

右三味、水四升を以て、先ず梔子、甘草を煮て、二升半を取る、豉(し)を内(い)れ、煮て一升半を取り、滓を去り、二服を分かつ。一服を温進し、吐を得る者は、後服を止む。

 

〔梔子生薑湯方〕

梔子(十四箇擘) 生薑(五兩) 香(四合綿裹)

右三味、以水四升、先煮梔子、生薑、取二升半、内、煮取一升半、去滓、分二服。温進一服、得吐者、止後服。

梔子(しし)(十四箇擘) 生薑(五兩) 香豉(四合綿裹)

右三味、水四升を以て、先ず梔子(しし)と生薑を煮て、二升半を取り、豉(し)を内(い)れ、煮て一升半を取り、滓を去る、二服を分かつ。一服を温進し、吐を得る者は、後服を止む。

 

【第七七条】發汗、若下之、而煩熱胸中窒者、梔子湯主之。三十九(用上初方)。

發汗し、若しくは之を下し、而(しこう)して煩熱胸中窒(ふさ)がる者は、梔子豉湯之を主る。三十九(上の初方を用う)。

 

【第七八条】傷寒五六日、大下之後、身熱不去、心中結痛者、未欲解也、梔子湯主之。四十(用上初方)。

傷寒五六日、大いに之を下した後、身熱去らず、心中結痛(けっつう)する者は、未だ解せんと欲せざるなり、梔子豉湯之を主る。四十(上の初方を用う)。

 

【第七九条】傷寒、下後、心煩、腹滿、臥起不安者、梔子厚朴湯主之。方四十一。

傷寒、下して後、心煩(しんはん)し、腹滿(ふくまん)し、臥起(がき)安からざる者は、梔子厚朴湯(ししこうぼくとう)之を主る。方四十一。

 

〔梔子厚朴湯方〕

梔子(十四箇擘) 厚朴(四兩炙去皮) 枳實(四枚水浸炙令黄)

右三味、以水三升半、煮取一升半、去滓、分二服。温進一服、得吐者、止後服。

梔子(十四箇、擘く) 厚朴(四兩、炙り、皮を去る) 枳實(きじつ)(四枚、水に浸し、炙り黄にならしむ)

右三味、水三升半を以て、煮て一升半を取り、滓を去り、二服に分かち。一服を温進す、吐を得る者は、後服を止む。

 

【第八〇条】傷寒、醫以丸藥大下之、身熱不去、微煩者、梔子乾薑湯主之。方四十二。

傷寒、醫(い)丸藥(がんやく)を以て大いに之を下し、身熱去らず、微煩(びはん)する者は、梔子乾薑湯(ししかんきょうとう)之を主る。方四十二。

 

〔梔子乾薑湯方〕

梔子(十四箇擘) 乾薑(二兩)

右二味、以水三升半、煮取一升半、去滓、分二服、温進一服。得吐者、止後服。

梔子(十四箇擘) 乾薑(二兩)

右二味、水三升半を以て、煮て一升半を取り、滓を去り、二服を分かち、一服を温進す。吐を得る者は、後服を止む。(与)う。其の小便清き(一云大便青)者は、裏に在らずして、仍(な)お表に在ある

を知るなり。當(まさ)に須(すべから)く汗を發すべし。若し頭痛む者は必ず衄(じ

く)す。桂枝湯に宜し。二十二(前の第十二方を用う)。

 

【第五七条】

傷寒、發汗已解、半日許復煩、脉浮數者、可更發汗、宜桂枝湯。二十三(前の第十二方を用う)。

傷寒、汗を發し已に解(げ)すること半日許(ばか)りにして復(ま)た煩(はん)し、脉浮數の者は、更に汗を發すべし。桂枝湯に宜し。二十三(前の第十二方を用う)。

 

【第五八条】

凡病、若發汗、若吐、若下、若亡血、亡津液、陰陽自和者、必自愈。

凡(おおよ)そ病、若しくは發汗し、若しくは吐し、若しくは下し、若しくは亡血(ぼうけつ)し、津液を亡(うしな)うも、陰陽自(おのずか)ら和す者は、必ず自ら愈ゆ。

 

【第五九条】

大下之後、復發汗、小便不利者、亡津液故也。勿治之、得小便利、必自愈。

大いに之を下したる後、復た發汗し、小便不利の者は、津液を亡(うしな)うが故なり。之を治すること勿(な)かれ。小便利するを得れば、必ず自ら愈ゆ。

 

【第六〇条】

下之後、復發汗、必振寒、脉微細。所以然者、以内外倶故也。

之を下したる後、復た發汗すれば、必ず振寒し、脉微細なり。然る所以の者は、内外倶(とも)に虚するを以ての故なり。

 

【第六一条】

下之後、復發汗、晝日煩躁不得眠、夜而安靜、不嘔、不、無表證、脉沈微、身無大熱者、乾薑附子湯主之。方二十四。

之を下したる後、復た發汗し、晝日(ちゅうじつ)煩躁して眠を得ず、夜にして安靜、嘔せず、渇せず、表證無く、脉沈微(ちんび)、身(み)に大熱無き者は、乾薑附子湯(かんきょうぶしとう)之を主る。方二十四。

 

〔乾薑附子湯方〕

乾薑(一兩) 附子(一枚生用去皮切八片)

右二味、以水三升、煮取一升、去滓、頓服。

乾薑(一兩) 附子(一枚、生を用い、皮を去り、八片に切る)

右二味、水三升を以て、煮て一升を取り、滓を去り、頓服す。

 

【第六二条】

發汗後、身疼痛、脉沈遲者、桂枝加芍藥生薑各一兩人參三兩新加湯主之。方二十五。

發汗後、身疼痛し、脉沈遲の者は、桂枝加芍藥生薑各一兩人參三兩新加湯(けいしかしょくやくしょうきょうかくいちりょうにんじんさんりょうしんかとう)之を主る。方二十五。

 

〔桂枝加芍藥生薑各一兩人參三兩新加湯方〕

桂枝(三兩去皮) 芍藥(四兩) 甘草(二兩炙) 人參(三兩) 大棗(十二枚擘) 生薑(四兩)

右六味、以水一斗二升、煮取三升、去滓、温服一升。本云桂枝湯、今加芍藥生薑人參。

桂枝(三兩皮を去る) 芍藥(四兩) 甘草(二兩炙る) 人參(三兩) 大棗(十二枚擘く) 生薑(四兩)

右六味、水一斗二升を以て、煮て三升を取る、滓を去り、一升を温服す。本(もと)云(い)う桂枝湯に今芍藥、生薑、人參を加えると。

 

【第六三条】

發汗後、不可更行桂枝湯。汗出而喘、無大熱者、可與麻黄杏子甘草石膏湯。方二十六。

發汗後、更(さら)に桂枝湯を行(や)るべからず。汗出でて喘し、大熱無き者は、麻黄杏仁甘草石膏湯(まおうきょうにんかんぞうせっこうとう)を與うべし。方二十六。

 

〔麻黄杏子甘草石膏湯方〕

麻黄(四兩去節) 杏仁(五十箇去皮尖) 甘草(二兩炙) 石膏(半斤碎綿裹)

右四味、以水七升、煮麻黄、減二升、去上沫、内諸藥、煮取二升、去滓、温服一升。本云、黄耳杯。

麻黄(四兩節を去る) 杏仁(五十箇皮尖を去る) 甘草(二兩炙る) 石膏(半斤、碎き、綿もて裹(つつ)む)

右四味、水七升以て、麻黄を煮て、二升を減じ、上沫を去り、諸藥を内(い)れ、煮て二升を取り、滓を去り、一升を温服す。本(もと)云う、黄耳杯(おうじはい)と。

 

【第六四条】

發汗過多、其人叉手自冒心、心下悸欲得按者、桂枝甘草湯主之。方二十七。

發汗過多、其の人叉手(さしゅ)して自ら心を冒(おお)い、心下悸(き)し按を得んと欲する者は、桂枝甘草湯之を主る。方二十七。

 

〔桂枝甘草湯方〕

桂枝(四兩去皮) 甘草(二兩炙)

右二味、以水三升、煮取一升、去滓、頓服。

桂枝(四兩皮を去る) 甘草(二兩炙る)

右二味、水三升を以て、煮て一升を取る、滓を去り、頓服す。

 

【第六五条】

發汗後、其人臍下悸者、欲作奔豚、茯苓桂枝甘草大棗湯主之。方二十八。

發汗後、其の人臍下悸(き)する者は、奔豚(ほんとん)を作(な)さんと欲す、茯苓桂枝甘草大棗湯(ぶくりょうけいしかんぞうだいそうとう)之を主る。方二十八。

 

〔茯苓桂枝甘草大棗湯方〕

茯苓(半斤) 桂枝(四兩去皮) 甘草(二兩炙) 大棗(十五枚擘)

右四味、以甘爛水一斗、先煮茯苓、減二升、内諸藥、煮取三升、去滓、温服一升、日三服。作甘爛水法、取水二斗、置大盆内、以杓揚之、水上有珠子五六千顆相逐、取用之。

茯苓(半斤) 桂枝(四兩皮を去る) 甘草(二兩炙る) 大棗(十五枚擘く)

右四味、甘爛水(かんらんすい)一斗を以て、先ず茯苓を煮て、二升を減じ、諸藥を内れ、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す、日に三服す。甘爛水(かんらんすい)を作るの法、水二斗を取り、

大盆内に置き、杓を以て之を揚げ、水上に珠子(しゅし)五六千顆(か)相(あ)い逐(お)うもの有らば、取りて之を用う。

 

【第六六条】

發汗後、腹脹滿者、厚朴生薑半夏甘草人參湯主之。方二十九。

發汗後、腹脹滿する者は、厚朴生薑半夏甘草人參湯(こうぼくしょうきょうはんげかんぞうにんじんとう)之を主る。方二十九。

 

〔厚朴生薑半夏甘草人參湯方〕

厚朴(半斤炙去皮) 生薑(半斤切) 半夏(半斤洗) 甘草(二兩) 人參(一兩)

右五味、以水一斗、煮取三升、去滓温服一升、日三服。

厚朴(半斤、炙り、皮を去る) 生薑(半斤、切る) 半夏(半斤、洗る) 甘草(二兩) 人參(一兩)

右五味、水一斗を以て、煮て三升を取り、滓を去り一升を温服し、日に三服す。

 

【第六七条】

傷寒、若吐、若下後、心下逆滿、氣上衝胸、起則頭眩、脉沈緊、發汗則經動、身為振振揺者、茯苓桂枝白朮甘草湯主之。方三十。

傷寒、若しくは吐し、若しくは下したる後、心下逆滿し、氣上りて胸を衝き、起きれば則ち頭眩(ずげん)し、脉沈緊、發汗すれば則ち經動じ、身(み)振振(しんしん)として揺(よう)を為(な)す者は、茯苓桂枝白朮甘草湯(ぶくりょうけいしびゃくじゅつかんぞうとう)之を主る。方三十。

 

〔茯苓桂枝白朮甘草湯方〕

茯苓(四兩) 桂枝(三兩去皮) 白朮 甘草(各二兩炙)

右四味、以水六升、煮取三升、去滓、分温三服。

茯苓(四兩) 桂枝(三兩皮を去る) 白朮 甘草(各二兩炙る)

右四味、水六升を以て、煮て三升を取り、滓を去り、分かち温め三服す。

 

【第六八条】

發汗病不解、反惡寒者、故也。芍藥甘草附子湯主之。方三十一。

發汗し、病解(げ)せず、反て惡寒する者は、虚するが故なり。芍藥甘草附子湯(しゃくやくかんぞうぶしとう)之を主る。方三十一。

 

〔芍藥甘草附子湯方〕

芍藥 甘草(各三兩炙) 附子(一枚炮去皮破八片)

右三味、以水五升、煮取一升五合、去滓、分温三服。疑非仲景方。

芍藥 甘草(各三兩、炙る) 附子(一枚炮じて、皮を去り、八片を破る)

右三味、水五升を以て、煮て一升五合を取り、滓を去り、分かち温め三服す。仲景の方に非ざるを疑う。

 

【第六九条】

發汗、若下之、病仍不解、煩躁者、茯苓四逆湯主之。方三十二。

發汗し、若し之を下し、病仍(な)お解せず、煩躁する者は、茯苓四逆湯(ぶくりょうしぎゃくとう)之を主る。方三十二。

 

〔茯苓四逆湯方〕

茯苓(四兩) 人參(一兩) 附子(一枚生用去皮破八片) 甘草(二兩炙) 乾薑(一兩半)

右五味、以水五升、煮取三升、去滓、温服七合、日二服。

茯苓(四兩) 人參(一兩) 附子(一枚、生を用い、皮を去り、八片に破る) 甘草(二兩炙る) 乾薑(一兩半)

右五味、水五升を以て、煮て三升を取る、滓を去り、七合を温服し、日に二服す。

 

【第七〇条】

發汗後、惡寒者、虚故也。不惡寒、但熱者、實也、當和胃氣、與調胃承氣湯。方三十三。(玉函云與小承氣湯)

發汗後、惡寒する者は、虚するが故なり。惡寒せず、但だ熱する者は、實なり。當に胃氣を和すべし。調胃承氣湯(ちょういじょうきとう)を與う。方三十三。(玉函云與小承氣湯)

 

〔調胃承氣湯方〕

芒消(半升) 甘草(二兩炙) 大黄(四兩去皮清酒洗)

右三味、以水三升、煮取一升、去滓、内芒消、更煮兩沸、頓服。

芒消(半升) 甘草(二兩炙る) 大黄(四兩皮を去り清酒で洗う)

右三味、水三升を以て、煮て一升を取り、滓を去り、芒消を内れ、更に煮て兩沸し、頓服す。

 

【第七一条】

太陽病、發汗後、大汗出、胃中乾、煩躁不得眠、欲得飲水者、少少與飲之、令胃氣和則愈。若脉浮、小便不利、微熱、消者、五苓散主之。方三十四。(即猪苓散是)

太陽病、發汗後、大いに汗出で、胃中乾き、煩躁して眠を得ず、飲水を得んと欲する者

は、少少與(あた)え之を飲み、胃氣をして和せしむれば則ち愈ゆ。若し脉浮、小便利

せず、微熱し、消渇(しょうかつ)する者は、五苓散之を主る。方三十四。(即猪苓散

是)

 

〔五苓散方〕

猪苓(十八銖去皮) 澤瀉(一兩六銖) 白朮(十八銖) 茯苓(十八銖) 桂枝(半兩去皮)

右五味、擣為散、以白飲和服方寸匕、日三服。多飲煖水、汗出愈、如法將息。

猪苓(ちょれい)(十八銖、皮を去る) 澤瀉(たくしゃ)(一兩六銖) 白朮(びゃくじゅつ)(十八銖) 茯苓(十八銖) 桂枝(半兩皮を去る)

右五味、擣(つ)きて散と為し、白飲を以て和し方寸匕(ほうすんひ)にて服し、日に三服す。多く煖水(だんすい)を飲み、汗出でて愈ゆ。法は將息の如し。

 

【第七二条】

發汗已、脉浮數、煩渇者、五苓散主之。三十五(用前第三十四方)。

發汗已(おわ)り、脉浮數、煩渇する者は、五苓散之を主る。三十五(前の第三十四方を用う)。

 

【第七三条】

傷寒、汗出而渇者、五苓散主之。不渇者、茯苓甘草湯主之。方三十六。

傷寒、汗出で渇する者は、五苓散之を主る。渇せざる者は、茯苓甘草湯之を主る。方三十六。

 

〔茯苓甘草湯方〕

茯苓(二兩) 桂枝(二兩去皮) 甘草(一兩炙) 生薑(三兩切)

右四味、以水四升、煮取二升、去滓、分温三服。

茯苓(二兩) 桂枝(二兩去皮) 甘草(一兩炙) 生薑(三兩切)

右四味、水四升を以て、煮て二升を取り、滓を去り、分かち温め三服す。

 

【第七四条】

中風、發熱六七日不解而煩、有表裏證、欲飲水、水入則吐者、名曰水逆、五苓散主之。三十七(用前第三十四方)。

中風、發熱すること六、七日。解(げ)せずして煩(はん)し、表裏の證有り。渇して飲

水せんと欲し、水入れば則ち吐する者は、名づけて水逆と曰く。五苓散之を主る。三十

七(前の第三十四方を用う)。

 

【第七五条】

未持脉、病人手叉自冒心。師因教試令、而不者、此必兩耳聾無聞也。所以然者、以重發汗、虚故如此。發汗後、飲水多必喘、以水灌之亦喘。

未(いま)だ脉を持(じ)せざる時、病人手叉(しゅさ)して自ら心を冒(おお)う。

師因(よ)りて試しに欬(がい)せしめんと教す。而(しか)るに欬(がい)せざる者

は、此れ必ず兩耳(りょうじ)聾(し)いて聞くこと無きなり。然(しか)る所以(ゆ

えん)の者は、重ねて發汗する以て、虚するが故に此(か)くの如し。發汗後、飲水多

ければ必ず喘(ぜい)す。水を以て之を灌(そそ)ぐも亦(ま)た喘す。

 

【第七六条】

發汗後、水藥不得入口、為逆。若更發汗、必吐下不止。發汗、吐下後、煩不得眠、若劇者、必反覆顛倒(音到下同)、心中懊、梔子湯主之。若少氣者、梔子甘草湯主之。若嘔者、梔子生薑湯主之。三十八。

發汗後、水藥口に入るを得ざるを、逆と為す。若し更に發汗すれば、必ず吐下(とげ)

止まず。發汗、吐下の後、虚煩(きょはん)して眠を得ず。若し劇しき者は、必ず反覆

顛倒(はんぷくしんとう)(音到下同)し、心中懊憹(しんちゅうおうのう)す(上烏

浩下奴冬切下同)。梔子豉湯(しししとう)之を主る。若し少氣(しょうき)する者

は、梔子甘草豉湯(ししかんぞうしとう)之を主る。若し嘔する者は、梔子生薑豉湯

(しししょうきょうしとう)之を主る。三十八。

 

〔梔子湯方〕

梔子(十四箇擘) 香(四合綿裹)

右二味、以水四升、先煮梔子、得二升半、内、煮取一升半、去滓、分為二服、温進一服、得吐者、止後服。

梔子(しし)(十四箇、擘く) 香豉(こうし)(四合、綿もて裹(つつ)む)

右二味、水四升を以て、先ず梔子を煮て二升半を得、豉(し)を内(い)れ、煮て一升半を取り、滓を去り、分かちて二服と為し、一服を温進(おんしん)す、吐を得る者は、後服を止(とど)む。

 

〔梔子甘草湯方〕

梔子(十四箇擘) 甘草(二兩炙) 香(四合綿裹)

右三味、以水四升、先煮梔子、甘草、取二升半、内、煮取一升半、去滓、分二服。温進一服、得吐者、止後服。

梔子(しし)(十四箇、擘く) 甘草(二兩炙る) 香豉(こうし)(四合綿を裹(つつ)む)

右三味、水四升を以て、先ず梔子、甘草を煮て、二升半を取る、豉(し)を内(い)れ、煮て一升半を取り、滓を去り、二服を分かつ。一服を温進し、吐を得る者は、後服を止む。

 

〔梔子生薑湯方〕

梔子(十四箇擘) 生薑(五兩) 香(四合綿裹)

右三味、以水四升、先煮梔子、生薑、取二升半、内、煮取一升半、去滓、分二服。温進一服、得吐者、止後服。

梔子(しし)(十四箇擘) 生薑(五兩) 香豉(四合綿裹)

右三味、水四升を以て、先ず梔子(しし)と生薑を煮て、二升半を取り、豉(し)を内(い)れ、煮て一升半を取り、滓を去る、二服を分かつ。一服を温進し、吐を得る者は、後服を止む。

 

【第七七条】發汗、若下之、而煩熱胸中窒者、梔子湯主之。三十九(用上初方)。

發汗し、若しくは之を下し、而(しこう)して煩熱胸中窒(ふさ)がる者は、梔子豉湯之を主る。三十九(上の初方を用う)。

 

【第七八条】傷寒五六日、大下之後、身熱不去、心中結痛者、未欲解也、梔子湯主之。四十(用上初方)。

傷寒五六日、大いに之を下した後、身熱去らず、心中結痛(けっつう)する者は、未だ解せんと欲せざるなり、梔子豉湯之を主る。四十(上の初方を用う)。

 

【第七九条】傷寒、下後、心煩、腹滿、臥起不安者、梔子厚朴湯主之。方四十一。

傷寒、下して後、心煩(しんはん)し、腹滿(ふくまん)し、臥起(がき)安からざる者は、梔子厚朴湯(ししこうぼくとう)之を主る。方四十一。

 

〔梔子厚朴湯方〕

梔子(十四箇擘) 厚朴(四兩炙去皮) 枳實(四枚水浸炙令黄)

右三味、以水三升半、煮取一升半、去滓、分二服。温進一服、得吐者、止後服。

梔子(十四箇、擘く) 厚朴(四兩、炙り、皮を去る) 枳實(きじつ)(四枚、水に浸し、炙り黄にならしむ)

右三味、水三升半を以て、煮て一升半を取り、滓を去り、二服に分かち。一服を温進す、吐を得る者は、後服を止む。

 

【第八〇条】傷寒、醫以丸藥大下之、身熱不去、微煩者、梔子乾薑湯主之。方四十二。

傷寒、醫(い)丸藥(がんやく)を以て大いに之を下し、身熱去らず、微煩(びはん)する者は、梔子乾薑湯(ししかんきょうとう)之を主る。方四十二。

 

〔梔子乾薑湯方〕

梔子(十四箇擘) 乾薑(二兩)

右二味、以水三升半、煮取一升半、去滓、分二服、温進一服。得吐者、止後服。

梔子(十四箇擘) 乾薑(二兩)

右二味、水三升半を以て、煮て一升半を取り、滓を去り、二服を分かち、一服を温進す。吐を得る者は、後服を止む。