鍼灸医学の懐

黄帝内経の意訳と解説 最後に原文と読み下しを記しています。

辨太陽病脉證并治下 128条~178条

 志ある学徒の、簡便な道具にならんことを願って読み下文を記しています。

 また初学者のため、重複の労をいとわずルビをふっています。

 誤りを見つけられましたら、どうかコメント欄に投稿をお願いいたします。

  

 底本 趙開美刊 「仲景全書」所収 『傷寒論』十巻

                    日本漢方協会学術部 編 東洋学術出版社

 

       辨太陽病脉證并治下   128条~178条

                第七(合三十九法方三十首并見太陽少陽合病法)

 

【第一二八条】問曰、病有結胸、有藏結、其何如。答曰、按之痛、寸脉浮、關脉沈、名曰結胸也。

問いて曰く、病に結胸(けっきょう)有り、藏結(ぞうけつ)有り、其の狀何如(いかに)と。

答えて曰く、之を按じて痛み、寸脉浮、關脉沈、名づけて結胸と曰うなり。

 

【第一二九条】何謂藏結。答曰、如結胸、飲食如故、時時下利、寸脉浮、關脉小細沈緊、名曰藏結。舌上白胎滑者、難治。

何をか藏結(ぞうけつ)と謂(い)うと。

答えて曰く、結胸狀の如くなるも、飲食故(もと)の如く、時時下利し、寸脉浮、關脉小細(しょうさい)沈緊なるを、名づけて藏結(ぞうけつ)と曰く。舌上白胎滑(はくたいかつ)の者は、治(ち)し難し。

 

【第一三〇条】藏結、無陽證、不往来寒熱(一云寒而不熱)、其人反靜、舌上胎滑者、不可攻也。

藏結、陽證無く、往来寒熱せず(一云寒而不熱)、其の人反って靜にして、舌上胎滑(たいかつ)の者は、攻むべからざるなり。

 

【第一三一条】病發於陽、而反下之、熱入因作結胸。病發於陰、而反下之(一作汗出)、因作痞也。所以成結胸者、以下之太早故也。結胸者、項亦強、如柔痓狀、下之則和、宜大陷胸丸。方一。

病陽に發す、而るに反って之を下し、熱入り因(よ)りて結胸を作(な)す。病陰に發す、而(しか)るに反って之を下し(一作汗出)、因りて痞(ひ)を作(な)すなり。結胸(けっきょう)を成(な)す所以(ゆえん)の者は、之を下すことを太(はなは)だ早きを以ての故なり。結胸の者は、項(うなじ)も亦(ま)た強(こわば)り、柔痓(じゅうけい)の狀の如し、之を下せば則ち和す、大陷胸丸(だいかんきょうがん)に宜し。

方一。

 

〔大陷胸丸方〕

大黄(半斤) 蔕子(半升熬) 芒消(半升) 杏仁(半升去皮尖熬黑)

右四味、擣篩二味、内杏仁、芒消、合研如脂、和散。取如彈丸一枚、別擣甘遂末一錢匕、白蜜二合、水二升、煮取一升、温頓服之、一宿乃下。如不下、更服、取下為效。禁如藥法。

大黄(半斤) 蔕藶子(ていれきし)(半升、熬る) 芒消(半升) 杏仁(半升、皮尖を去り、熬りて黑くす)

右四味、二味を擣(つ)きて篩(ふる)い、杏仁、芒消を内(い)れ、合わせて研(す)りて脂(あぶら)の如くし、散に和す。彈丸の如きもの一枚取り、別に甘遂(かんつい)末一錢匕(ひ)を擣(つ)き、白蜜二合、水二升もて、煮て一升を取り、温めて之を頓服す、一宿(いっしゅく)にして乃ち下る。

如(も)し下らざれば、更に服す、下(げ)を取るを效(こう)と為(な)す。禁ずること藥法の如くす。

 

【第一三二条】結胸證、其脉浮大者、不可下、下之則死。

結胸證、其の脉浮大の者は、下すべからず、之を下せば則ち死す。

 

【第一三三条】結胸證悉具、煩躁者亦死。

結胸證悉(ことごと)く具(そなわ)り、煩躁する者も亦(ま)た死す。

 

【第一三四条】太陽病、脉浮動數、浮則風為、數則熱為、動則為痛、數則為。頭痛、發熱、微盗汗出、而反惡寒者、表未解也。醫反下之、動數變遲、膈内拒痛(一云頭痛即眩)、胃中空、客氣動膈、短氣躁煩、心中懊、陽氣内陷、心下因、則為結胸、大陷胸湯主之。若不結胸、但頭汗出、餘處無汗、劑頸而還、小便不利、身必發黄。大陷胸湯。方二。

太陽病、脉浮にして動數、浮は則ち風と為し、數は則ち熱と為し、動は則ち痛と為し、數は則ち虛と為す。頭痛、發熱、微(すこ)しく盗汗出で、反って惡寒する者は、表未だ解(げ)せざるなり。醫(い)反って之を下し、動數遲(ち)に變(へん)じ、膈内拒痛(きょつう)(一云頭痛即眩)、胃中空虛(くうきょ)、客氣(きゃっき)膈を動じ、短氣して躁煩し、心中懊憹(おうのう)し、陽氣内陷(ないかん)し、心下因(よ)りて鞕(かた)きは、則ち結胸を為す、大陷胸湯(だいかんきょうとう)之を主る。若し結胸せず、但だ頭汗(づかん)のみ出でて、餘處(よしょ)に汗無く、頸(けい)を劑(かぎ)りて還り、小便不利なれば、身必ず黄を發す。大陷胸湯。方二。

 

〔大陷胸湯方〕

大黄(六兩去皮) 芒消(一升) 甘遂(一錢匕)

右三味、以水六升、先煮大黄、取二升、去滓、内芒消、煮一兩沸、内甘遂末、温服一升。得快利、止後服。

大黄(六兩去皮) 芒消(一升) 甘遂(かんつい)(一錢匕(ひ))

右三味、水六升を以て、先ず大黄を煮て二升を取り、滓を去り、芒消を内れ、煮ること一、兩沸、甘遂(かんつい)末を内れ、一升を温服す。快利を得れば、後服を止(とど)む。

 

【第一三五条】傷寒六七日、結胸熱實、脉沈而緊、心下痛、按之石者、大陷胸湯主之。三(用前第二方)。

傷寒六、七日、結胸(けっきょう)熱實(ねつじつ)、脉沈にして緊、心下痛み、之を按じて石鞕(せっこう)の者は、大陷胸湯之を主る。三(用前第二方)。

 

【第一三六条】傷寒十餘日、熱結在裏、復往来寒熱者、與大柴胡湯。但結胸、無大熱者、此為水結在胸脇也。但頭微汗出者、大陷胸湯主之。四(用前第二方)。

傷寒十餘日、熱結んで裏に在(あ)り、復(ま)た往来寒熱する者は、大柴胡湯を與(あた)う。但(た)だ結胸して、大熱無き者は、此れ水を結んで胸脇に在りと為すなり。但だ頭に微(かす)かに汗出ずる者は、大陷胸湯之を主る。四(用前第二方)。

 

〔大柴胡湯方〕

柴胡(半斤) 枳實(四枚炙) 生薑(五兩切) 黄(三兩) 芍藥(三兩) 半夏(半升洗) 大棗(十二枚擘)

右七味、以水一斗二升、煮取六升、去滓再煎、温服一升、日三服。一方、加大黄二兩。若不加、恐不名大柴胡湯。

柴胡(半斤) 枳實(四枚炙る) 生薑(五兩切る) 黄芩(三兩) 芍藥(三兩) 半夏(半升洗う) 大棗(十二枚擘く)

右七味、水一斗二升を以て、煮て六升を取り、滓を去りて再煎し、一升を温服し、日に三服す。一方に、大黄二兩を加う。若し加えざれば、恐らくは大柴胡湯と名づけず。

 

【第一三七条】太陽病、重發汗而復下之、不大便五六日、舌上燥而、日所小有潮熱(一云日所發心胸大煩)、從心下至少腹滿而痛不可近者、大陷胸湯主之。五(用前第二方)。

太陽病、重ねて汗を發して復た之を下し、大便せざるること五、六日、舌上燥きて渴し、日晡所(にっぽしょ)小(すこ)しく潮熱有り(一云日晡所發心胸大煩)、心下從り少腹に至り鞕滿(こうまん)して痛み近づくべからざる者は、大陷胸湯之を主る。五(用前第二方)。

 

【第一三八条】小結胸病、正在心下、按之則痛、脉浮滑者、小陷胸湯主之。方六。

小結胸の病は、正に心下に在り、之を按じれば則ち痛む、脉浮滑の者は、小陷胸湯之主る。方六。

 

〔小陷胸湯方〕

黄連(一兩) 半夏(半升洗) 樓實(大者一枚)

右三味、以水六升、先煮樓、取三升、去滓。内諸藥、煮取二升、去滓、分温三服。

黄連(一兩) 半夏(半升洗う) 栝樓實(かろじつ)(大の者一枚)

右三味、水六升を以て、先ず栝樓(かろ)を煮て、三升を取り、滓を去り。諸藥を内れ、煮て二升を取り、滓を去り、分かち温め三服す。

 

【第一三九条】太陽病、二三日、不能臥、但欲起、心下必結、脉微弱者、此本有寒分也。反下之、若利止、必作結胸。未止者、四日復下之、此作協熱利也。

太陽病、二、三日、臥(ふ)すこと能わず、但だ起きんと欲し、心下必ず結して、脉微弱の者は、此れ本(もと)寒分(かんぶん)有るなり。反って之を下し、若し利止めば、必ず結胸を作(な)す。未(いま)だ止まざる者は、四日にして復た之を下せば、此れ協熱利(きょうねつり)を作(な)すなり。

 

【第一四〇条】太陽病、下之、其脉促(一作縱)、不結胸者、此為欲解也。脉浮者、必結胸。脉緊者、必咽痛。脉弦者、必兩脇拘急。脉細數者、頭痛未止。脉沈緊者、必欲嘔。脉沈滑者、協熱利。脉浮滑者、必下血。

太陽病、之を下し、其の脉促(そく)(一作縱)、結胸せざる者は、此れを解せんと欲すと為すなり。脉浮の者は、必ず結胸す。脉緊の者は、必ず咽痛す。脉弦の者は、必ず兩脇(りょうきょう)拘急す。脉細數の者は、頭痛未だ止まず。脉沈緊の者は、必ず嘔せんと欲す。脉沈滑の者は、協(きょう)熱利す。脉浮滑の者は、必ず下血す。

 

【第一四一条】病在陽、應以汗解之。反以冷水之。若灌之、其熱被劫不得去、彌更益煩、肉上粟起、意欲飲水、反不者、服文蛤散。若不差者、與五苓散。寒實結胸、無熱證者、與三物小陷胸湯(用前第六方)。

白散亦可服(一云與三物小白散)。七。

病陽に在れば、應(おう)は汗を以て之を解すべし。反って冷水を以て之を潠(ふ)く。若も之を灌(そそ)げば、其の熱劫(おびや)かされて去るを得ず、彌(いよ)いよ更に益々(ますます)煩し、肉上粟起(にくじょうぞっき)す、意(こころ)に水を飲まんと欲すれども、反って渴せざる者は、文蛤散(ぶんごうさん)を服す。若し差(い)えざる者は、五苓散を與う。寒實(かんじつ)結胸(けっきょう)、熱證無き者は、三物小陷胸湯(さんもつしょうかんきょうとう)を與う(前の第六方を用う)。白散(はくさん)も亦(ま)た服すべし(一に云う、三物小白散(さんもつしょうはくさん)を與うと)。七。

 

〔文蛤散方〕

文蛤(五兩)

右一味、散為、沸湯以和一方寸匕服。湯用五合。

文蛤(ぶんごう)(五兩)

右一味、散と為し、沸湯を以て一方寸匕(ほうすんひ)和して服す。湯は五合を用う。

 

〔五苓散方〕

猪苓(十八銖去黑皮) 白朮(十八銖) 澤瀉(一兩六銖) 茯苓(十八銖) 桂枝(半兩去皮)

右五味、為散、更於臼中杵之、白飲和方寸匕、服之、日三服。多飲煖水、汗出愈。

猪苓(十八銖、黑皮を去る) 白朮(十八銖) 澤瀉(一兩六銖) 茯苓(十八銖) 桂枝(半兩、皮を去る)

右五味、散と為し、更に臼中に於て之を杵(つ)き、白飲(はくいん)もて方寸匕(ほうすんひ)を和し、之を服し、日に三服す。多く煖水(だんすい)を飲み、汗出でて愈ゆ。

 

〔白散方〕

桔梗(三分) 巴豆(一分去皮心熬黑研如脂) 貝母(三分)

右三味為散、内巴豆、更於臼中杵之、以白飲和服。強人半錢匕、羸者減之。病在膈上必吐、在膈下必利。不利、進熱粥一杯。利過不止、進冷粥一杯。身熱、皮粟不解、欲引衣自覆。若以水之洗之、益令熱劫不得出、當汗而不汗則煩。假令汗出已、腹中痛、與芍藥三兩如上法。

桔梗(三分) 巴豆(はず)(一分、皮心を去り、熬(い)りて黑くし研(す)りて脂の如くす) 貝母(ばいも)(三分)

右三味、散と為し、巴豆を内れ、更に臼中に於て之を杵(つ)き、白飲を以て和し服す。強人は半錢匕、羸者(るいしゃ)は之を減ず。病膈上に在れば必ず吐し、膈下に在れば必ず利す。利せざれば、熱粥(ねつしゅく)一杯を進む。

利過ぎて止まざれば、冷粥(れいしゅく)一杯を進む。身熱して皮粟(ひぞく)解せず、衣を引き自ら覆(おお)わんと欲す。若し水を以て之を潠(ふ)き之を洗えば、益々熱劫(おびや)かされて出ずることを得ざらしむ、

當に汗すべくして汗せざれば則ち煩す。假令(たと)えば汗出で已(おわ)り、腹中痛めば、芍藥三兩を與うること上法の如くす。

 

【第一四二条】太陽與少陽併病、頭項強痛、或眩冒、時如結胸、心下痞者、當刺大椎第一間、肺愈、肝兪、慎不可發汗。發汗則語、脉弦、五日語不止、當刺期門。八。

太陽と少陽の併病(へいびょう)、頭項強痛、或は眩冒(げんぼう)し、時に結胸の如く、心下痞鞕する者は、當に大椎第一間、肺愈、肝兪を刺すべし。慎(つつし)んで汗を發す可からず。汗を發すれば則ち讝語(せんご)す。脉弦、五日にして讝語止まざれば、當に期門を刺すべし。八。

 

【第一四三条】婦人中風、發熱惡寒、經水適来、得之七八日、熱除而脉遲、身涼、胸脇下滿、如結胸語者、此為熱入血室也。當刺期門、隨其實而取之。九。

婦人中風、發熱惡寒し、經水(けいすい)適(たまた)ま来る、之を得て七、八日、熱除きて脉遲、身涼しく、胸脇の下(した)滿ちること結胸狀の如く、讝語する者は、此れ熱血室に入ると為すなり。當に期門を刺すべし、其の實するに隨って之を取る。九。

 

【第一四四条】婦人中風、七八日續得寒熱、發作有時、經水適斷者、此為熱入血室、其血必結、故使如瘧發作有時、小柴胡湯主之。方十。

婦人中風、七、八日續いて寒熱を得(え)、發作に時有り、經水(けいすい)適(たまた)ま斷つ者は、此れ熱血室に入ると為す。其の血必ず結(けっ)す。故に瘧狀(ぎゃくじょう)の如く發作に時有らしむ。小柴胡湯之を主る。方十。

 

〔小柴胡湯方〕

柴胡(半斤) 黄(三兩) 人參(三兩) 半夏(半升洗) 甘草(三兩) 生薑(三兩切) 大棗(十二枚擘)

右七味、以水一斗二升、煮取六升、去滓、再煎取三升、温服一升、日三服。

柴胡(半斤) 黄芩(三兩) 人參(三兩) 半夏(半升洗う) 甘草(三兩) 生薑(三兩切る) 大棗(十二枚擘く)

右七味、水一斗二升を以て、煮て六升を取り、滓を去り、再煎して三升を取り、一升を温服し、日に三服す。

 

【第一四五条】婦人傷寒、發熱、經水適来、晝日明了、暮則語、如見鬼者、此為熱入血室。無犯胃氣、及上二焦、必自愈。十一。

婦人傷寒、發熱し、經水(けいすい)適(たまた)ま来り、晝日(ちゅうじつ)は明了(めいりょう)なるも、暮(くれ)れば則ち讝語し、鬼狀(きじょう)を見(あら)わすが如くなる者は、此れ熱血室(けっしつ)に入ると為す。胃氣及び上の二焦を犯すこと無ければ必ず自(おのずか)ら愈ゆ。十一。

 

【第一四六条】傷寒六、七日、發熱、微惡寒、支節煩疼、微嘔、心下支結、外證未去者、柴胡桂枝湯主之。方十二。

傷寒六、七日、發熱、微惡寒(びおかん)、支節(しせつ)煩疼(はんとう)、微嘔(びおう)、心下支結(しけつ)し、外證未だ去らざる者は、柴胡桂枝湯之を主る。方十二。

 

〔柴胡桂枝湯方〕

桂枝(去皮) 黄(一兩半) 人參(一兩半) 甘草(一兩炙) 半夏(二合半洗) 芍藥(一兩半) 大棗(六枚擘) 生薑(一兩半切) 柴胡(四兩)

右九味、以水七升、煮取三升、去滓、温服一升。本云人參湯、作如桂枝法、加半夏、柴胡、黄、復如柴胡法。今用人參作半劑。

桂枝(皮を去り) 黄芩(一兩半) 人參(一兩半) 甘草(一兩炙る) 半夏(二合半洗う) 芍藥(一兩半) 大棗(六枚擘く) 生薑(一兩半切る) 柴胡(四兩)

右九味、水七升以て、煮て三升取り、滓を去り、一升を温服す。本(もと)云う人參湯、作(つく)ること桂枝の法の如く、半夏、柴胡、黄芩を加え、復た柴胡の法の如く。今、人參を用い半劑(はんざい)と作(な)すと。

 

【第一四七条】傷寒五六日、已發汗而復下之、胸脇滿微結、小便不利、而不嘔、但頭汗出、往来寒熱、心煩者、此為未解也。柴胡桂枝乾薑湯主之。方十三。

傷寒五、六日、已(すで)に汗を發して復た之を下し、胸脇滿微結(びけつ)、小便不利、渴して嘔せず、但だ頭汗(づかん)出で、往来寒熱、心煩する者は、此れ未だ解(げ)せずと為すなり。柴胡桂枝乾薑湯(さいこけいしかんきょうとう)之を主る。方十三。

 

〔柴胡桂枝乾薑湯方〕

柴胡(半斤) 桂枝(三兩去皮) 乾薑(二兩) 樓根(四兩) 黄(三兩) 牡蠣(二兩熬) 甘草(二兩炙) 

右七味、以水一斗二升、煮て六升を取り、去滓、再煎取三升、温服一升、日三服。初服微煩、復服汗出便愈。

柴胡(半斤) 桂枝(三兩皮を去り) 乾薑(二兩) 栝樓根(かろこん)(四兩) 黄芩(三兩) 牡蠣(ぼれい)(二兩熬る) 甘草(二兩炙る) 

右七味、水一斗二升を以て、煮て六升を取り、滓を去り、再煎し三升を取り、一升を温服し、日に三服す。初め服して微煩(びはん)し、復た服して汗出でて便(すなわ)ち愈ゆ。

 

【第一四八条】傷寒五六日、頭汗出、微惡寒、手足冷、心下滿、口不欲食、大便、脉細者、此為陽微結、必有表、復有裏也。脉沈、亦在裏也。汗出、為陽微。假令純陰結、不得復有外證、悉入在裏、此為半在裏半在外也。脉雖沈緊、不得為少陰病。所以然者、陰不得有汗、今頭汗出、故知非少陰也、可與小柴胡湯。設不了了者、得屎而解。十四(用前第十方)。

傷寒五六日、頭汗(づかん)出で、微(び)惡寒し、手足冷え、心下滿ち、口食を欲せず、大便鞕(かた)く、脉細の者は、此れ陽微結(ようびけつ)と為す、必ず表有り、復た裏有るなり。脉沈なるも、亦(ま)た裏在るなり。汗出ずるは、陽微(ようび)と為す。假令(たと)えば純陰(じゅんいん)結すれば、復た外證有ることを得ず、悉(ことごと)く入りて裏在り、此れ半(なか)ば裏に在り半ば外に在りと為すなり。

脉沈緊なりと雖(いえど)も、少陰病と為すを得ず。然(しか)る所以(ゆえん)の者は、陰は汗有るを得ざるに、今頭汗(づかん)出ずるが故に少陰に非ざるを知るなり。小柴胡湯を與うべし。設(も)し了了(りょうりょう)とせざる者は、屎(し)を得て解(げ)す。十四(前の第十方を用う)。

 

【第一四九条】傷寒五六日、嘔而發熱者、柴胡湯證具、而以他藥下之、柴胡證仍在者、復與柴胡湯。此雖已下之、不為逆、必蒸蒸而振、却發熱汗出而解。若心下滿而痛者、此為結胸也、大陷胸湯主之。但滿而不痛者、此為痞、柴胡不中與之、宜半夏瀉心湯。方十五。

傷寒五、六日、嘔して發熱する者は、柴胡湯證具(そな)わる、而(しか)るに他藥(たやく)を以て之を下し、柴胡の證仍(な)お在る者は、復た柴胡湯を與う。此れ已に之を下すと雖も、逆と為さず、必ず蒸蒸(じょうじょう)として振(ふる)い、却って發熱汗出でて解す。若し心下滿して鞕痛(こうつう)する者は、此れを結胸と為すなり。大陷胸湯之を主る。但だ滿して痛まざる者は、此れを痞(ひ)と為す、柴胡之を與(あた)うるに中(あた)らず。半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)に宜し。方十五。

 

〔半夏瀉心湯方〕

半夏(半升洗) 黄 乾薑 人參 甘草(炙各三兩) 黄連(一兩) 大棗(十二枚擘)

右七味、以水一斗、煮取六升、去滓、再煎取三升、温服一升、日三服(一方用半夏一升)。須大陷胸湯者、方用前第二法。

半夏(半升洗う) 黄芩 乾薑 人參 甘草(炙る、各三兩) 黄連(一兩) 大棗(十二枚擘く)

右七味、水一斗を以て、煮て六升を取り、滓を去り、再煎して三升を取り、一升を温服し、日に三服す(一方に半夏一升を用うと)。大陷胸湯を須(もち)いる者は、方前の第二法を用う。

 

【第一五〇条】太陽少陽併病、而反下之、成結胸。心下、下利不止、水漿不下、其人心煩。

太陽と少陽の併病(へいびょう)、而(しか)るに反って之を下し、結胸と成る。心下鞕(かた)く、下利止まず、水漿(すいしょう)入らず、其の人心煩(しんはん)す。

 

【第一五一条】脉浮而緊、而復下之、緊反入裏、則作痞。按之自濡、但氣痞耳。

脉浮にして緊、而(しか)るに復た之を下し、緊反って裏に入れば、則ち痞を作(な)す。之を按じて自(おのずか)ら濡(なん)なるは、但だ氣痞するのみ。

 

【第一五二条】太陽中風、下利、嘔逆、表解者、乃可攻之。其人漐漐汗出、發作有時、頭痛、心下痞滿、引脇下痛、乾嘔、短氣、汗出不惡寒者、此表解裏未和也、十棗湯主之。方十六。

太陽の中風、下利、嘔逆(おうぎゃく)し、表解(げ)する者は、乃ち之を攻むべし。其人漐漐(ちゅうちゅう)として汗出で、發作時有り、頭痛、心下痞して鞕滿(こうまん)し、脇下に引きて痛み、乾嘔、短氣、汗出でて惡寒せざる者は、此れ表解すれども裏未だ和せざるなり、十棗湯(じゅっそうとう)之を主る。方十六。

 

〔十棗湯方〕

芫花(熬) 甘遂 大戟

右三味、等分、各別擣為散。以水一升半、先煮大棗肥者十枚、取八合、去滓、内藥末。強人服一錢匕、羸人服半錢、温服之。平旦服。若下少病不除者、明日更服、加半錢。得快下利後、糜粥自養。

芫花(げんか)(熬る) 甘遂(かんつい) 大戟(だいげき)

右三味、等分し、各別に擣(つ)きて散と為す。水一升半を以て、先ず大棗の肥(ひ)なる者十枚を煮て、八合を取り、滓を去り、藥末(やくまつ)を内(いれ)る。強人(きょうじん)は一錢匕(ひ)を服し、羸人(るいじん)は半錢を服し、之を温服す。平旦(へいたん)に服す。若し下(げ)少なく病除(のぞ)かざる者は、明日更に服し、半錢を加う。快下利(かいげり)を得たる後は、糜粥(びしゅく)もて自(みずか)らを養う。

 

【第一五三条】太陽病、醫發汗、遂發熱、惡寒。因復下之、心下痞。表裏倶、陰陽氣並竭、無陽則陰獨。復加燒鍼、因胸煩、面色青黄、膚者、難治。今色微黄、手足温者、易愈。

太陽病、醫汗を發し、遂に發熱、惡寒す。因りて復た之を下し、心下痞す。表裏倶(とも)に虛し、陰陽の氣並び竭(つ)き、陽無ければ則ち陰獨(ひと)りなり。復た燒鍼(しょうしん)を加え、因りて胸煩す。面色青黄(せいおう)、膚(はだ)瞤(じゅん)する者は、治し難し。今色微黄(びおう)、手足温なる者は、愈え易し。

 

【第一五四条】心下痞、按之濡。其脉關上浮者。大黄黄連瀉心湯主之。方十七。

心下痞し、之を按じて濡(なん)。其の脉關上浮の者は。大黄黄連瀉心湯(だいおうおうれんしゃしんとう)之を主る。方十七。

 

〔大黄黄連瀉心湯方〕

大黄(二兩) 黄連(一兩)

右二味、以麻沸湯二升漬之、須臾絞去滓。分温再服。(臣億等看詳大黄黄連瀉心湯、諸本皆二味、又後附子瀉心湯、用大黄黄連黄附子、恐是前方中亦有黄、後但加附子也、故後云附子瀉心湯、本云加附子也。

大黄(二兩) 黄連(一兩)

右二味、麻沸湯(まふつとう)二升を以て之を漬(ひた)し、須臾(しゅゆ)にして絞り滓を去り。分かち温め再服す。(臣億等看詳大黄黄連瀉心湯、諸本皆二味、又後附子瀉心湯、用大黄黄連黄芩附子、恐是前方中亦有黄芩、後但加附子也、故後云附子瀉心湯、本云加附子也。)

 

【第一五五条】心下痞、而復惡寒、汗出者、附子瀉心湯主之。方十八。

心下痞して復た惡寒し、汗出ずる者は、附子瀉心湯(ぶししゃしんとう)之を主る。方十八。

 

〔附子瀉心湯方〕

大黄(二兩) 黄連(一兩) 黄(一兩) 附子(一枚炮去皮破別煮取汁)

右四味、切三味、以麻沸湯二升漬之、須臾絞去滓、内附子汁、分温再服。

大黄(二兩) 黄連(一兩) 黄芩(一兩) 附子(一枚、炮じて皮を去り、破り別ち、煮て汁を取る)

右四味、三味に切り、麻沸湯(まふつとう)二升を以て之を漬(した)し、須臾(しゅゆ)にして絞り滓を去り、附子汁を内(い)れ、分かち温め再服す。

 

【第一五六条】本以下之、故心下痞、與瀉心湯。痞不解、其人而口燥煩、小便不利者、五苓散主之。十九(用前第七證方)。一方云、忍之一日乃愈。

本(もと)之を下すを以ての故に、心下痞す。瀉心湯(しゃしんとう)を與うれども、痞解(げ)せず、其の人渴して口燥して煩し、小便不利する者は、五苓散之を主る。十九(前の第七證方を用う)。一方に云(い)う、之を忍ぶこと一日にして乃ち愈ゆと。

 

【第一五七条】傷寒汗出解之後、胃中不和、心下痞、乾噫食臭、脇下有水氣、腹中雷鳴下利者、生薑瀉心湯主之。方二十。

傷寒汗出でて解したるの後、胃中和せず、心下痞鞕(ひこう)し、食臭(しょくしゅう)を乾噫(かんあい)し、脇下に水氣有り、腹中雷鳴(ふくちゅうらいめい)、下利する者は、生薑瀉心湯(しょうきょうしゃしんとう)之を主る。方二十。

 

〔生薑瀉心湯方〕

生薑(四兩切) 甘草(三兩炙) 人參(三兩) 乾薑(一兩) 黄(三兩) 半夏(半升洗) 黄連(一兩) 大棗(十二枚擘)

右八味、以水一斗、煮取六升、去滓、再煎取三升。温服一升、日三服。附子瀉心湯、本云加附子、半夏瀉心湯、甘草瀉心湯、同體別名耳。生薑瀉心湯、本云理中人參黄湯、去桂枝、朮、加黄連、并瀉肝法。

生薑(四兩切る) 甘草(三兩炙る) 人參(三兩) 乾薑(一兩) 黄芩(三兩) 半夏(半升洗う) 黄連(一兩) 大棗(十二枚擘く)

右八味、水一斗を以て、煮て六升を取り、滓を去り、再煎して三升を取り。一升を温服し、日に三服す。附子瀉心湯は、本(もと)云う附子を加うと。半夏瀉心湯、甘草瀉心湯は、同體別名なるのみ。生薑瀉心湯は、本云う、理中人參黄芩湯より桂枝、朮を去り、黄連を加う。并(なら)びに瀉肝法(しゃかんほう)なりと。

 

【第一五八条】傷寒中風、醫反下之、其人下利、日數十行、穀不化、腹中雷鳴、心下痞而滿、乾嘔心煩不得安。醫見心下痞、謂病不盡、復下之、其痞益甚。此非結熱、但以胃中、客氣上逆、故使也。甘草瀉心湯主之。方二十一。

傷寒中風、醫反って之を下し、其の人下利すること日に數十行(こう)、穀化(こくか)せず、腹中雷鳴(ふくちゅうらいめい)、心下痞鞕して滿し、乾嘔心煩(かんおうしんぱん)して安を得ず。醫心下痞するを見て、病盡(つ)きずと謂い、復た之を下すに、其の痞(ひ)益々甚し。此れ結熱(けつねつ)に非ず。但だ胃中虛し、客氣上逆するを以ての故に鞕(かた)からしむるなり。甘草瀉心湯之を主る。方二十一。

 

〔甘草瀉心湯方〕

甘草(四兩炙) 黄(三兩) 乾薑(三兩) 半夏(半升洗) 大棗(十二枚擘) 黄連(一兩)

右六味、以水一斗、煮取六升、去滓、再煎取三升。温服一升、日三服。(臣億等謹按、上生薑瀉心湯法、本云理中人參黄湯、今詳瀉心以療痞、痞氣因發陰而生、是半夏生薑甘草瀉心三方、皆本於理中也。其方必各有人參、今甘草瀉心中無者、脱落之也。又按千金并外臺秘要治傷寒𧏾食、用此方、皆有人參、知脱落無疑。

甘草(四兩炙る) 黄芩(三兩) 乾薑(三兩) 半夏(半升洗う) 大棗(十二枚擘く) 黄連(一兩)

右六味、水一斗を以て、煮て六升を取り、滓を去り、再煎して三升を取り。一升を温服し、日に三服す。(臣億等謹按、上生薑瀉心湯法、本云理中人參黄芩湯、今詳瀉心以療痞、痞氣因發陰而生、是半夏生薑甘草瀉心三方、皆本於理中也。其方必各有人參、今甘草瀉心中無者、脱落之也。又按千金并外臺秘要治傷寒𧏾食、用此方、皆有人參、知脱落無疑。)

 

【第一五九条】傷寒服湯藥、下利不止、心下痞、服瀉心湯已、復以他藥下之、利不止。醫以理中與之、利益甚。理中者、理中焦、此利在下焦、赤石脂禹餘粮湯主之。復不止者、當利其小便。赤石脂禹餘粮湯。方二十二。

傷寒、湯藥服して、下利止まず、心下痞鞕す。瀉心湯を服し已(おわ)り、復た他藥を以て之を下すに、利止まず。醫理中(りちゅう)を以て之に與(あた)うるに、利益々甚し。理中なる者は、中焦理(おさ)む、此の利は下焦に在り。赤石脂禹餘粮湯(しゃくせきしうよりようとう)之を主る。復た止まざる者は、當(まさ)に其の小便を利すべし。赤石脂禹餘粮湯。方二十二。

 

〔赤石脂禹餘粮湯方〕

赤石脂(一斤碎) 太一禹餘粮(一斤碎)

右二味、以水六升、煮取二升、去滓、分温三服。

赤石脂(しゃくせきし)(一斤、碎(くだ)く) 太一禹餘粮(たいいつうよりよう)(一斤、碎く)

右二味、水六升を以て、煮て二升を取り、滓を去り、分かち温め三服す。

 

【第一六〇条】傷寒吐下後、發汗、煩、脉甚微、八九日心下痞、脇下痛、氣上衝咽喉、眩冒、經脉動惕者、久而成痿。

傷寒、吐下の後、汗を發して、虛煩(きょはん)し、脉甚だ微(び)。八、九日にして心下痞鞕し、脇下痛み、氣上りて咽喉に衝(つ)き、眩冒(げんぼう)し、經脉動惕(どうてき)する者は、久しくして痿(い)と成る。

 

【第一六一条】傷寒發汗、若吐、若下、解後、心下痞、噫氣不除者、旋復代赭湯主之。方二十三。

傷寒汗を發し、若くは吐し、若くは下し、解(げ)して後、心下痞鞕し、噫氣(あいき)除かざる者は、旋復代赭湯(せんぷくたいしゃとう)之を主る。方二十三。

 

〔旋復代赭湯方〕

旋復花(三兩) 人參(二兩) 生薑(五兩) 代赭(一兩) 甘草(三兩炙) 半夏(半升洗) 大棗(十二枚擘)

右七味、以水一斗、煮取六升、去滓、再煎取三升。温服一升、日三服。

旋復花(せんぷくか)(三兩) 人參(二兩) 生薑(五兩) 代赭(たいしゃ)(一兩) 甘草(三兩炙る) 半夏(半升洗う) 大棗(十二枚擘く)

右七味、水一斗を以て、煮て六升を取り、滓を去り、再煎して三升を取り。一升を温服し、日に三服す。

 

【第一六二条】下後、不可更行桂枝湯。若汗出而喘、無大熱者、可與麻黄杏子甘草石膏湯。方二十四。

下したる後、更に桂枝湯を行(や)るべからず。若し汗出でて喘(ぜい)し、大熱無き者は、麻黄杏子甘草石膏湯(まおうきょうしかんぞうせっこうとう)を與(あた)うべし。方二十四。

 

〔麻黄杏子甘草石膏湯方〕)

麻黄(四兩) 杏仁(五十箇去皮尖) 甘草(二兩炙) 石膏(半斤碎綿裹)

右四味、以水七升、先煮麻黄、減二升、去白沫、内諸藥、煮取三升、去滓、温服一升。本云黄耳杯。

麻黄(四兩) 杏仁(五十箇、皮尖を去る) 甘草(二兩、炙る) 石膏(半斤、碎き、綿もて裹む)

右四味、水七升を以て、先ず麻黄を煮て、二升を減じ、白沫を去り、諸藥を内れ、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す。本(もと)云う黄耳杯(おうじはい)と。

 

【第一六三条】太陽病、外證未除而數下之、遂協熱而利、利下不止、心下痞、表裏不解者、桂枝人參湯主之。方二十五。

太陽病、外證未だ除かざるに數(しば)しば之を下し、遂に協熱(きょうねつ)して利す、利下(りげ)止まず、心下痞鞕し、表裏解せざる者は、桂枝人參湯之を主る。方二十五。

 

〔桂枝人參湯方〕

桂枝(四兩別切) 甘草(四兩炙) 白朮(三兩) 人參(三兩) 乾薑(三兩)

右五味、以水九升、先煮四味、取五升。内桂、更煮取三升、去滓。温服一升、日再夜一服。

桂枝(四兩、別に切る) 甘草(四兩、炙る) 白朮(三兩) 人參(三兩) 乾薑(三兩)

右五味、水九升を以て、先ず四味を煮て、五升を取る。桂(けい)を内れ、更に煮て三升を取り、滓を去る。一升を温服し、日に再び夜に一服す。

 

【第一六四条】傷寒大下後、復發汗、心下痞、惡寒者、表未解也。不可攻痞、當先解表、表解乃可攻痞。解表宜桂枝湯、攻痞宜大黄黄連瀉心湯。二十六(瀉心湯用前第十七方)。

傷寒大いに下したる後、復た發汗し、心下痞し、惡寒する者は、表未(いま)だ解(げ)せざるなり。痞を攻むべからず、當に先ず表を解くべし。表解して乃ち痞を攻むべし。表を解するには桂枝湯に宜しく、痞を攻むるは大黄黄連瀉心湯に宜し。二十六(瀉心湯は前の第十七方を用う)。

 

【第一六五条】傷寒發熱、汗出不解、心中痞、嘔吐而下利者、大柴胡湯主之。二十七(用前第四方)。

傷寒發熱、汗出でて解せず、心中痞鞕し、嘔吐して下利する者は、大柴胡湯之を主る。二十七(前の第四方を用う)。

 

【第一六六条】病如桂枝證、頭不痛、項不強、寸脉微浮、胸中痞、氣上衝咽喉不得息者、此為胸有寒也。當吐之、宜瓜蔕散。方二十八。

病、桂枝の證の如くなるも、頭痛せず、項(うなじ)強らず、寸脉微(すこ)しく浮、胸中痞鞕し、氣咽喉に上衝し、息することを得ざる者は、此れ胸に寒有りと為すなり。當に之を吐すべし。瓜蔕散(かていさん)に宜し。方二十八。

 

〔瓜蔕散方〕

瓜蔕(一分熬黄) 赤小豆(一分)

右二味、各別擣篩、為散已、合治之。取一錢匕、以香一合、用熱湯七合煮作稀糜、去滓、取汁和散、温頓服之。不吐者、少少加。得快吐乃止。諸亡血家、不可與瓜蔕散。

瓜蔕(かてい)(一分、熬(い)りて黄ならしむ) 赤小豆(せきしょうず)(一分)

右二味、各々別に擣(つ)きて篩(ふる)い、散と為し已(おわ)りて、合して之を治(おさ)む。一錢匕(ひ)を取り、香豉(こうし)一合を以て、熱湯七合を用いて煮て稀糜(きび)を作り、滓を去り、汁を取り散に和し、温めて之を頓服す。

吐せざる者は、少少加う。快吐(かいと)を得れば、乃ち止む。諸亡血虛家(しょぼうけっきょか)は、瓜蔕散(かていさん)を與うべからず。

 

【第一六七条】病脇下素有痞、連在臍傍、痛引少腹、入陰筋者、此名藏結、死。二十九。

病、脇下に素(もと)痞有り、連りて臍傍(さいぼう)に在り、痛み少腹に引き、陰筋に入る者は、此れを藏結と名づく、死す。二十九。

 

【第一六八条】傷寒若吐若下後、七八日不解、熱結在裏、表裏倶熱、時時惡風、大、舌上乾燥而煩、欲飲水數升者、白虎加人參湯主之。方三十。

傷寒若しくは吐し、若しくは下したる後、七、八日解せず。熱結裏に在り、表裏倶に熱し、時時惡風し、大いに渴し、舌上乾燥して煩し、水數升飲まんと欲する者は、白虎加人參湯之を主る。方三十。

 

〔白虎加人參湯方〕

知母(六兩) 石膏(一斤碎) 甘草(二兩炙) 人參(二兩) 粳米(六合)

右五味、以水一斗、煮米熟、湯成、去滓、温服一升、日三服。此方、立夏後立秋前、乃可服。立秋後、不可服。正月二月三月尚凛冷、亦不可與服之。與之則嘔利而腹痛、諸亡血家、亦不可與、得之則腹痛利者、但可温之、當愈。

知母(六兩) 石膏(一斤、碎く) 甘草(二兩、炙る) 人參(二兩) 粳米(六合)

右五味、水一斗を以て、煮て米を熟し、湯成りて、滓を去り、一升を温服し、日に三服す。此の方、立夏の後、立秋の前は、乃ち服すべし。立秋の後は、服すべからず。正月二月、三月は尚凛冷(りんれい)にして、亦(ま)た與えて之を服すべからず。

之を與えれば則ち嘔利して腹痛す、諸亡血虛家(しょぼうけっきょか)も、亦ま與うべからず、之を得れば則ち腹痛し利する者は、但(た)だ之を温むべし、當に愈ゆべし。

 

【第一六九条】傷寒無大熱、口燥、心煩、背微惡寒者、白虎加人參湯主之。三十一(用前方)。

傷寒、大熱無く、口燥(かわ)きて渴し、心煩し、背に微(すこ)しく惡寒する者は、白虎加人參湯之を主る。三十一(前方を用いる)。

 

【第一七〇条】傷寒脉浮、發熱、無汗、其表不解、不可與白虎湯。欲飲水、無表證者、白虎加人參湯主之。三十二(用前方)。

傷寒、脉浮、發熱して、汗無く、其の表解せざるは、白虎湯を與うべからず。渴して水を飲まんと欲し、表證無き者は、白虎加人參湯之を主る。三十二(前方を用いる)。

 

【第一七一条】太陽少陽併病、心下、頸項強而眩者、當刺大椎、肺兪、肝兪、慎勿下之。三十三。

太陽と少陽の併病、心下鞕く、頸項強ばりて眩(くら)む者は、當に大椎、肺兪、肝兪を刺すべし、慎んで之を下すなかれ。三十三。

 

【第一七二条】太陽與少陽合病、自下利者、與黄湯。若嘔者、黄加半夏生薑湯主之。三十四。

太陽と少陽の合病、自下利(じげり)する者は、黄芩湯(おうごんとう)を與う。若し嘔する者は、黄芩加半夏生薑湯之を主る。三十四。

 

〔黄湯方〕

(三兩) 芍藥(二兩) 甘草(二兩炙) 大棗(十二枚擘)

右四味、以水一斗、煮取三升、去滓、温服一升、日再、夜一服。

黄芩(三兩) 芍藥(二兩) 甘草(二兩炙る) 大棗(十二枚擘く)

右四味、水一斗以て、煮て三升を取り、去滓、一升を温服す、日に再び、夜に一たび服す。

 

〔黄加半夏生薑湯方〕

(三兩) 芍藥(二兩) 甘草(二兩炙) 大棗(十二枚擘) 半夏(半升洗) 生薑(一兩半一方三兩切)

右六味、以水一斗、煮取三升、去滓、温服一升、日再、夜一服。

黄芩(三兩) 芍藥(二兩) 甘草(二兩炙る) 大棗(十二枚擘く) 半夏(半升洗う) 生薑(一兩半、一方三兩切る)

右六味、水一斗以て、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す、日に再び、夜に一たび服す。

 

【第一七三条】傷寒、胸中有熱、胃中有邪氣、腹中痛、欲嘔吐者、黄連湯主之。方三十五。

傷寒、胸中に熱有り、胃中に邪氣有り、腹中痛み、嘔吐せんと欲する者は、黄連湯(おうれんとう)之を主る。方三十五。

 

〔黄連湯方〕

黄連(三兩) 甘草(三兩炙) 乾薑(三兩) 桂枝(三兩去皮) 人參(二兩) 半夏(半升洗) 大棗(十二枚擘)

右七味、以水一斗、煮取六升、去滓、温服。晝三夜二。疑非仲景方。

黄連(三兩) 甘草(三兩、炙る) 乾薑(三兩) 桂枝(三兩、皮を去る) 人參(二兩) 半夏(半升洗う) 大棗(十二枚、擘く)

右七味、水一斗を以て、煮て六升を取り、滓を去り、温服す。晝(ひる)に三たび夜に二たびす。疑うらくは仲景の方に非ず。

 

【第一七四条】傷寒八九日、風濕相搏、身體疼煩、不能自轉側、不嘔、不、脉浮者、桂枝附子湯主之。若其人大便(一云臍下心下)、小便自利者、去桂加白朮湯主之。三十六。

傷寒八、九日、風濕(ふうしつ)相(あ)い搏(う)ち、身體疼煩(しんたいとうはん)して、自ら轉側(てんそく)すること能わず、嘔(おう)せず、渴せず、脉浮虛にして濇(しょく)の者は、桂枝附子湯(けいしぶしとう)之を主る。若し其の人大便鞕(かた)く(一云臍下心下鞕)、小便自利する者は、去桂加白朮湯(きょけいかびゃくじゅつとう)之を主る。三十六。

 

〔桂枝附子湯方〕

桂枝(四兩去皮) 附子(三枚炮去皮破) 生薑(三兩切) 大棗(十二枚擘) 甘草(二兩炙)

右五味、以水六升、煮取二升、去滓、分温三服。

桂枝(四兩皮を去る) 附子(三枚、炮じ皮を去り破る) 生薑(三兩切る) 大棗(十二枚擘く) 甘草(二兩炙る)

右五味に、水六升を以て、煮て二升を取り、滓を去り、分かち温め三服す。

 

〔去桂加白朮湯方〕

附子(三枚炮去皮破) 白朮(四兩) 生薑(三兩切) 甘草(二兩炙) 大棗(十二枚擘)

右五味、以水六升、煮取二升、去滓、分温三服。初一服、其人身如痺、半日許復服之。三服都盡、其人如冒、勿怪。此以附子、朮、併走皮内、逐水氣未得除、故使之耳。法當加桂四兩。此本一方二法。以大便、小便自利、去桂也。以大便不、小便不利、當加桂。附子三枚恐多也、弱家及産婦、宜減服之。

附子(三枚、炮じ皮を去り破る) 白朮(四兩) 生薑(三兩切る) 甘草(二兩炙る) 大棗(十二枚擘く)

右五味、水六升を以て、煮て二升を取り、滓を去り、分かち温め三服す。初め一服して、其の人身痺(ひ)するが如し、半日許(ばか)りに復た之を服す。三服都(すべ)て盡(つく)し、其の人冒狀(ぼうじょう)の如くなるも、怪しむ勿(な)かれ。此れ附子、朮、併(あわ)せ皮内を走り、水氣を逐(お)いて未だ除くことを得ざるを以ての故に、之をして使(しか)らしむのみ。

法は當に桂(けい)四兩を加うべし。此れ、本(もと)一方に二法あり。大便鞕く、小便自利するを以て、桂を去るなり。大便鞕からず、小便不利するを以て、當に桂を加うべし。附子三枚は、多きを恐るるなり。虛弱家(きょじゃくか)及び産婦は、宜しく減らして之を服すべし。

 

【第一七五条】風濕相搏、骨節疼煩、掣痛不得屈伸、近之則痛劇、汗出短氣、小便不利、惡風不欲去衣、或身微腫者、甘草附子湯主之。方三十七。

風濕(ふうしつ)相い搏(う)ち、骨節疼煩(こっせつとうはん)し、掣痛(せいつう)して屈伸することを得ず、之に近づけば則ち痛み劇しく、汗出でて短氣し、小便不利、惡風して衣を去るを欲せず、或は身(み)微腫(びしゅ)する者は、甘草附子湯(かんぞうぶしとう)之を主る。方三十七。

 

〔甘草附子湯方〕

甘草(二兩炙) 附子(二枚炮去皮破) 白朮(二兩) 桂枝(四兩去皮)

右四味、以水六升、煮取三升、去滓、温服一升、日三服。初服得微汗則解。能食、汗止復煩者、將服五合。恐一升多者、宜服六七合為始。

甘草(二兩、炙る) 附子(二枚、炮じ、皮を去りて破る) 白朮(二兩) 桂枝(四兩、皮を去る)

右四味、水六升を以て、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服し、日に三服す。初め服して微汗を得れば則ち解(げ)す。能(よ)く食し、汗止まり、復た煩する者は、

將(まさ)に五合を服すべし。一升の多きを恐るる者は、宜しく服するに六、七合を始めと為す。

 

【第一七六条】傷寒脉浮滑、此以表有熱、裏有寒、白虎湯主之。方三十八。

傷寒脉浮滑なるは、此れ表に熱有り、裏に寒有るを以てなり。白虎湯之を主る。方三十八。

 

〔白虎湯方〕

知母(六兩) 石膏(一斤碎) 甘草(二兩炙) 粳米(六合)

右四味、以水一斗、煮米熟、湯成去滓、温服一升、日三服。(臣億等謹按前篇云熱結在裏、表裏倶熱者、白虎湯主之。又云其表不解、不可與白虎湯。此云脉浮滑、表有熱、裏有寒者、必表裏字差矣。又陽明一證云脉浮遲、表熱裏寒、四逆湯主之。又少陰一證云、裏寒外熱、通脉四逆湯主之、以此表裏自差明矣、千金翼方云白通湯非也。

知母(六兩) 石膏(一斤碎(くだ)く) 甘草(二兩、炙る) 粳米(六合)

右四味、水一斗を以て、煮て米熟し、湯成りて滓を去り、一升を温服し、日に三服す。(臣億等謹按前篇云熱結在裏、表裏倶熱者、白虎湯主之。又云其表不解、不可與白虎湯。此云脉浮滑、表有熱、裏有寒者、必表裏字差矣。又陽明一證云脉浮遲、表熱裏寒、四逆湯主之。又少陰一證云、裏寒外熱、通脉四逆湯主之、以此表裏自差明矣、千金翼方云白通湯非也。)

 

【第一七七条】傷寒脉結代、心動悸、炙甘草湯主之。方三十九。

傷寒脉結代(けったい)、心動悸するは、炙甘草湯(しゃかんぞうとう)之を主る。方三十九。

 

〔炙甘草湯方〕

甘草(四兩炙) 生薑(三兩切) 人參(二兩) 生地黄(一斤) 桂枝(三兩去皮) 阿膠(二兩) 麥門冬(半升去心) 麻仁(半升) 大棗(三十枚擘)

右九味、以清酒七升、水八升、先煮八味、取三升、去滓、内膠消盡、温服一升、日三服。一名復脉湯。

甘草(四兩、炙る) 生薑(三兩、切る) 人參(二兩) 生地黄(しょうじおう)(一斤) 桂枝(三兩、皮を去る) 阿膠(あきょう)(二兩) 麥門冬(ばくもんどう)(半升、心を去る) 麻仁(まにん)(半升) 大棗(三十枚、擘く)

右九味、清酒七升、水八升を以て、先ず八味を煮て、三升を取り、滓を去り、膠烊(きょうよう)を内れて消し盡(つく)し、一升を温服し、日に三服す。一に、復脉湯(ふくみゃくとう)と名づく。

 

【第一七八条】脉按之来緩、時一止復来者、名曰結。又脉来動而中止、更来小數、中有還者反動、名曰結、陰也。脉来動而中止、不能自還、因而復動者、名曰代、陰也、得此脉者必難治。

脉之を按じるに来ること緩(かん)、時に一止(いっし)して復た来る者を、名づけて結と曰う。又、脉来ること動にして中止し、更に来ること小數(しょうさく)、中に還ること有る者の反って動ずるを、名づけて結(けつ)と曰う。陰なり。脉来ること動にして中止し、自(おのずか)ら還ること能わず、因(よ)りて復た動ずる者を、名づけて代(たい)と曰う、陰なり。此の脉を得る者は必ず治し難し。

 

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