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鍼灸医学の懐

黄帝内経の意訳と解説 最後に原文と読み下しを記しています。

辨少陰病脉證并治 281~325条

傷寒論 原文と読み下し

 志ある学徒の、簡便な道具にならんことを願って読み下文を記しています。

 また初学者のため、重複の労をいとわずルビをふっています。

 誤りを見つけられましたら、どうかコメント欄に投稿をお願いいたします。

 

 底本 趙開美刊 「仲景全書」所収 『傷寒論』十巻

                    日本漢方協会学術部 編 東洋学術出版社

 

   辨少陰病脉證并治 281~325条

                        第十一(合二十三法方一十九首)

                少陰病の脉證并びに治を辨ず・第十一(合わせて二十三法、方一十九首)

 

【二八一条】

少陰之為病、脉微細、但欲寐也。

少陰の病為(た)るや、脉微細、但(た)だ寐(いね)んと欲するなり。

 

【二八二条】

少陰病、欲吐不吐、心煩但欲寐、五六日自利而渴者、屬少陰也。虛故引水自救。若小便色白者、少陰病形悉具。小便白者、以下焦虛有寒、不能制水、故令色白也。

少陰病、吐せんと欲して吐せず、心煩し但だ寐(いね)んと欲し、五、六日自利して渴する者は、少陰に屬するなり。虛するが故に、水を引きて自ら救う。若し小便の色白き者は、少陰の病形悉(ことごと)く具わる。小便白き者は、下焦虛して寒有り、水を制すること能わざるを以ての故に色をして白からしむるなり。

 

【二八三条】

病人脉陰陽倶緊、反汗出者、亡陽也。此屬少陰、法當咽痛而復吐利。

病人脉陰陽倶(とも)に緊、反って汗出ずる者は、亡陽なり。此れ少陰に屬ず。法は當に咽痛(いんつう)して復た吐利すべし。

 

【二八四条】

少陰病、欬而下利、讝語者、被火氣劫故也。小便必難、以強責少陰汗也。

少陰病、欬(がい)して下利(げり)し、讝語する者は、火氣に劫(おびや)かさるるが故なり。小便必ず難し。強いて少陰を責め汗しむるを以てなり。

 

【二八五条】

少陰病、脉細沈數、病為在裏、不可發汗。

少陰病、脉細沈數なるは、病裏に在りと為す、汗を發すべからず。

 

【二八六条】

少陰病、脉微、不可發汗、亡陽故也。陽已虛、尺脉弱濇者、復不可下之。

少陰病、脉微、汗を發すべからず、亡陽するが故なり。陽已(すで)に虛し、尺脉弱濇(じゃくしょく)の者は、復た之を下すべからず。

 

【二八七条】

少陰病、脉緊、至七八日自下利、脉暴微、手足反温、脉緊反去者、為欲解也、雖煩下利、必自愈。

少陰病、脉緊、七、八日に至りて自下利し、脉暴(にわ)かに微(び)、手足反って温かく、脉緊反って去る者は、解せんと欲すと為(な)すなり。煩して下利すと雖も、必ず自ら愈ゆ。

 

【二八八条】

少陰病、下利、若利自止、惡寒而踡臥、手足温者、可治。

少陰病、下利(げり)し、若しくは利自(おのずか)ら止み、惡寒して踡臥(けんが)し、手足温の者は、治すべし。

 

【二八九条】

少陰病、惡寒而踡、時自煩、欲去衣被者、可治。

少陰病、惡寒して踡(かがま)り、時に自(おのずか)ら煩し、衣被(いひ)を去らんと欲する者は、治すべし。

 

【二九〇条】

少陰中風、脉陽微陰浮者、為欲愈。

少陰の中風、脉陽微陰浮の者は、愈えんと欲すと為(な)す。

 

【二九一条】

少陰病欲解時、從子至寅上。

少陰病解せんと欲する時は、子(ね)從(よ)り寅(とら)の上に至る。

 

【二九二条】

少陰病、吐、利、手足不逆冷、反發熱者、不死。脉不至(至一作足)者、灸少陰七壮。

少陰病、吐利し、手足逆冷(ぎゃくれい)せず、反って發熱する者は、死せず。脉至らざる者は、少陰に灸すること七壮。

 

【二九三条】

少陰病、八九日、一身手足盡熱者、以熱在膀胱、必便血也。

少陰病、八、九日、一身手足盡(ことごと)く熱する者は、熱膀胱に在るを以て、必ず便血するなり。

 

【二九四条】

少陰病、但厥、無汗、而強發之、必動其血。未知從何道出、或從口鼻、或從目出者、是名下厥上竭、為難治。

少陰病、但だ厥して、汗無し、而(しか)るに強いて之を發すれば、必ず其の血を動ず。未(いま)だ何(いず)れの道從(よ)り出づるかを知らず。或いは口鼻從(よ)りし、或いは目從(よ)り出づる者は、是れを下厥上竭(げけつじょうけつ)と名づく。治し難しと為す。

 

【二九五条】

少陰病、惡寒、身踡而利、手足逆冷者、不治。

少陰病、惡寒し、身踡(かがま)りて利し、手足逆冷する者は、治せず。

 

【二九六条】

少陰病、吐、利、躁煩四逆者、死。

少陰病、吐利し、躁煩、四逆する者は、死す。

 

【二九七条】

少陰病、下利止而頭眩、時時自冒者、死。

少陰病、下利止みて頭眩(づげん)し、時時自ら冒(ぼう)する者は、死す。

 

【二九八条】

少陰病、四逆、惡寒而身踡、脉不至、不煩而躁者、死(一作吐利而躁逆者死)。

少陰病、四逆し、惡寒して身踡(かがま)り、脉至らず、煩せずして躁する者は、死す(一作吐利而躁逆者死)。

 

【二九九条】

少陰病六七日、息高者、死。

少陰病六、七日、息高き者は、死す。

 

【三〇〇条】

少陰病、脉微細沈、但欲臥、汗出不煩、自欲吐、至五六日自利、復煩躁不得臥寐者、死。

少陰病、脉微細沈、但だ臥(ふ)せんと欲し、汗出でて煩せず、自ら吐せんと欲し、五、六日に至って自利し、復た煩躁して臥寐(がしん)することを得ざる者は、死す。

 

【三〇一条】

少陰病始得之、反發熱、脉沈者、麻黄細辛附子湯主之。方一。

少陰病始めて之を得て、反って發熱し、脉沈の者は、麻黄細辛附子湯(まおうさいしんぶしとう)之を主る。方一。

 

〔麻黄細辛附子湯方〕

麻黄(二兩去節) 細辛(二兩) 附子(一枚炮去皮破八片)

右三味、以水一斗、先煮麻黄、減二升、去上沫、内諸藥、煮取三升、去滓、温服一升、日三服。

麻黄(二兩、節を去る) 細辛(二兩) 附子(一枚、炮(ほう)じて皮を去り、八片に破る)

右三味、水一斗を以て、先ず麻黄を煮て、二升を減じ、上沫を去り、諸藥を内れ、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服し、日に三服す。

 

【三〇二条】

少陰病、得之二三日、麻黄附子甘草湯微發汗。以二三日無證、故微發汗也。方二。

少陰病、之を得ること二、三日、麻黄附子甘草湯(まおうぶしかんぞうとう)にて微(すこ)しく汗を發す。二、三日證無きを以ての故に微しく汗を發するなり。方二。

 

〔麻黄附子甘草湯方〕

麻黄(二兩去節) 甘草(二兩炙) 附子(一枚炮去皮破八片)

右三味、以水七升、先煮麻黄一兩沸、去上沫、内諸藥、煮取三升、去滓、温服一升、日三服。

麻黄(二兩、節を去る) 甘草(二兩、炙る) 附子(一枚、炮じて皮を去り、八片に破る)

右三味、水七升を以て、先ず麻黄を煮て、一、兩沸し、上沫を去り、諸藥を内れ、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服し、日に三服す。

 

【三〇三条】

少陰病、得之二三日以上、心中煩、不得臥、黄連阿膠湯主之。方三。

少陰病、之を得ること二、三日以上、心中煩して、臥(ふ)すことを得ざるは、黄連阿膠湯(おうれんあきょうとう)之を主る。方三。

 

〔黄連阿膠湯方〕

黄連(四兩) 黄芩(二兩) 芍藥(二兩) 雞子黄(二枚) 阿膠(三兩一云三挺)

右五味、以水六升、先煮三物、取二升、去滓。内膠烊盡、小冷。内雞子黄、攪令相得。温服七合、日三服。

黄連(四兩) 黄芩(二兩) 芍藥(二兩) 雞子黄(けいしおう)(二枚) 阿膠(三兩、一に三挺(さんてい)と云(い)う)

右五味、水六升を以て、先ず三物を煮て、二升を取り、滓を去る。膠を内れて烊盡(ようじん)し、小(すこ)しく冷やす。雞子黄(けいしおう)を内れ、攪(ま)ぜて相(あ)い得(え)せしむ。七合を温服し、日に三服す。

 

【三〇四条】

少陰病、得之一二日、口中和、其背惡寒者、當灸之、附子湯主之。方四。

少陰病、之を得て一、二日、口中和し、其の背惡寒する者は、當に之を灸すべし。附子湯之を主る。方四。

 

〔附子湯方〕

附子(二枚炮去皮破八片) 茯苓(三兩) 人參(二兩) 白朮(四兩) 芍藥(三兩)

右五味、以水八升、煮取三升、去滓、温服一升、日三服。

附子(二枚、炮じて皮を去り、八片に破る) 茯苓(三兩) 人參(二兩) 白朮(四兩) 芍藥(三兩)

右五味、水八升を以て、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す、日に三服す。

 

【三〇五条】

少陰病、身體痛、手足寒、骨節痛、脉沈者、附子湯主之。五(用前第四方)。

少陰病、身體(しんたい)痛み、手足寒(ひ)え、骨節(こっせつ)痛み、脉沈の者は、附子湯之を主る。五(前の第四方を用う)。

 

【三〇六条】

少陰病、下利便膿血者、桃花湯主之。方六。

少陰病、下利して膿血(のうけつ)を便する者は、桃花湯(とうかとう)之を主る。方六。

 

〔桃花湯方〕

赤石脂(一斤一半全用一半篩末) 乾薑(一兩) 粳米(一升)

右三味、以水七升、煮米令熟、去滓。温服七合、内赤石脂末方寸匕、日三服。若一服愈、餘勿服。

赤石脂(しゃくせきし)(一斤、一半は全用、一半は篩(ふる)って末とす) 乾薑(一兩) 粳米(一升)

右三味、水七升を以て、米を煮て熟せしめ、滓を去る。七合を温服し、赤石脂末方寸匕(ひ)を内れ、日に三服す。

若し一服にして愈ゆれば、餘は服すること勿(な)かれ。

 

【三〇七条】

少陰病、二三日至四五日、腹痛、小便不利、下利不止、便膿血者、桃花湯主之。七(用前第六方)。

少陰病、二、三日より四、五日に至り、腹痛し、小便利せず、下利止まず、膿血を便する者は、桃花湯之を主る。七(前の第六方を用う)。

 

【三〇八条】

少陰病、下利便膿血者、可刺。

少陰病、下利膿血を便する者は、刺すべし。

 

【三〇九条】

少陰病、吐利、手足逆冷、煩躁欲死者、呉茱萸湯主之。方八。

少陰病、吐利(とり)、手足逆冷(ぎゃくれい)、煩躁して死せんと欲する者は、呉茱萸湯(ごしゅゆとう)之を主る。方八。

 

〔呉茱萸湯方〕

呉茱萸(一升) 人參(二兩) 生薑(六兩切) 大棗(十二枚擘)

右四味、以水七升、煮取二升、去滓、温服七合、日三服。

呉茱萸(一升) 人參(二兩) 生薑(六兩、切る) 大棗(十二枚、擘く)

右四味、水七升を以て、煮て二升を取り、滓を去り、七合を温服し、日に三服す。

 

【三一〇条】

少陰病、下利、咽痛、胸滿、心煩、猪膚湯主之。方九。

少陰病、下利し、咽(のど)痛み、胸滿し、心煩するは、猪膚湯(ちょふとう)之を主る。方九。

 

〔猪膚湯方〕

猪膚(一斤)

右一味、以水一斗、煮取五升、去滓、加白蜜一升、白粉五合、熬香、和令相得、温分六服。

猪膚(ちょふ)(一斤)

右一味、水一斗を以て、煮て五升を取り、滓を去り、白蜜(はくみつ)一升、白粉(はくふん)五合を加え、

熬(い)りて香ならしめ、和して相(あ)い得せしめ、温め分かち六服す。

 

【三一一条】

少陰病二三日、咽痛者、可與甘草湯。不差、與桔梗湯。十。

少陰病二、三日、咽痛む者は、甘草湯を與うべし。差(い)えざれば、桔梗湯(ききょうとう)を與う。十。

 

〔甘草湯方〕

甘草(二兩)

右一味、以水三升、煮取一升半、去滓、温服七合、日二服。

甘草(二兩)

右一味、水三升を以て、煮て一升半を取り、滓を去り、七合を温服し、日に二服す。

 

〔桔梗湯方〕

桔梗(一兩) 甘草(二兩)

右二味、以水三升、煮取一升、去滓、温分再服。

桔梗(一兩) 甘草(二兩)

右二味、水三升を以て、煮て一升を取り、滓を去り、分かち温め再服す。

 

【三一二条】

少陰病、咽中傷、生瘡、不能語言、聲不出者、苦酒湯主之。方十一。

少陰病、咽中(いんちゅう)傷れて瘡(そう)を生じ、語言すること能わず、聲(こえ)出でざる者は、苦酒湯(くしゅとう)之を主る。方十一。

 

〔苦酒湯方〕

半夏(洗破如棗核十四枚) 雞子(一枚去黄内上苦酒着雞子殻中)

右二味、内半夏、著苦酒中、以雞子殻置刀環中、安火上、令三沸、去滓。少少含嚥之。不差、更作三劑。

半夏(洗い、破りて棗核(そうかく)の如くす、十四枚) 雞子(けいし)(一枚、黄を去り、上苦酒を内れ、雞子殻(けいしかく)の中に着(つ)ける)

右二味、半夏を内れ、苦酒(くしゅ)中に著(つ)け、雞子殻(けいしかく)を以て刀環(とうかん)の中に置き、火上に安じて、三沸せしめ、滓を去る。少少之を含嚥(がんえん)す。差(い)えざれば、更に三劑を作る。

 

【三一三条】

少陰病、咽中痛、半夏散及湯主之。方十二。

少陰病、咽中(いんちゅう)痛むは、半夏散(はんげさん)及び湯之を主る。方十二。

 

〔半夏散及湯方〕

半夏(洗) 桂枝(去皮) 甘草(炙)

右三味、等分、各別擣篩已、合治之、白飲和服方寸匕、日三服。若不能散服者、以水一升、煎七沸、内散兩方寸匕、更煮三沸、下火令小冷、少少嚥之。半夏有毒、不當散服。

半夏(洗う) 桂枝(皮を去る) 甘草(炙る)

右三味、等分し、各々別に擣(つ)き篩(ふるい)い已(おわ)り、合して之を治め、白飲(はくいん)もて和して方寸匕(ひ)を服し、日に三服す。若そ散服すること能わざる者は、水一升を以て、煎ずること七沸、散兩方寸匕を内れ、更に煮ること三沸、火より下(おろ)し小(すこ)しく冷やさしめ、少少之を嚥(の)む。半夏毒有り、散服するに當(あた)らず。

 

【三一四条】

少陰病、下利、白通湯主之。方十三。

少陰病、下利(げり)するは、白通湯(はくつうとう)之を主る。方十三。

 

〔白通湯方〕

葱白(四莖) 乾薑(一兩) 附子(一枚生去皮破八片)

右三味、以水三升、煮取一升、去滓、分温再服。

葱白(そうはく)(四莖) 乾薑(一兩) 附子(一枚、生、皮を去り、八片に破る)

右三味、水三升を以て、煮て一升を取り、滓を去り、分かち温め再服す。

 

【三一五条】

少陰病、下利、脉微者、與白通湯。利不止、厥逆無脉、乾嘔、煩者、白通加猪膽汁湯主之。服湯、脉暴出者死、微續者生。白通加猪膽湯。方十四(白通湯用上方)。

少陰病、下利し、脉微の者は、白通湯を與う。利止まず、厥逆して脉無く、乾嘔(かんおう)、煩する者は、白通加猪膽汁湯(はくつうかちょたんじゅうとう)之を主る。

湯を服して、脉暴(にわ)かに出づる者は、死す。微しく續(つづ)く者は、生く。白通加猪膽湯。方十四(白通湯は、上方を用う)。

 

〔白通加猪膽汁湯方〕

葱白(四莖) 乾薑(一兩) 附子(一枚生去皮破八片) 人尿(五合) 猪膽汁(一合)

右五味、以水三升、煮取一升、去滓、内膽汁、人尿、和令相得、分温再服。若無膽亦可用。

葱白(四莖) 乾薑(一兩) 附子(一枚、生、皮を去り、八片に破る) 人尿(じんにょう)(五合) 猪膽汁(ちょたんじゅう)(一合)

右五味、水三升を以て、煮て一升を取り、滓を去り、膽汁、人尿を内れ、和して相い得せしめ、分かち温め再服す。若し膽(たん)無くも亦(ま)た、用うべし。

 

【三一六条】

少陰病、二三日不已、至四五日、腹痛、小便不利、四肢沈重疼痛、自下利者、此為有水氣。其人或欬、或小便利、或下利、或嘔者、真武湯主之。方十五。

少陰病、二、三日して已(や)まず、四、五日に至り、腹痛、小便不利、四肢沈重(ちんじゅう)疼痛(とうつう)、自下利する者は、此れ水氣(すいき)有りと為(な)す。其の人或は欬(がい)し、或は小便利し、或は下利し、或は嘔する者は、真武湯之を主る。方十五。

 

〔真武湯方〕

茯苓(三兩) 芍藥(三兩) 白朮(二兩) 生薑(三兩切) 附子(一枚炮去皮破八片)

右五味、以水八升、煮取三升、去滓、温服七合、日三服。若欬者、加五味子半升、細辛一兩、乾薑一兩。若小便利者、去茯苓。若下利者、去芍藥、加乾薑二兩。若嘔者、去附子、加生薑、足前為半斤。

茯苓(三兩) 芍藥(三兩) 白朮(二兩) 生薑(三兩、切る) 附子(一枚、炮じて、皮を去り、八片に破る)

右五味、水八升を以て、煮て三升を取り、滓を去り、七合を温服し、日に三服す。若し欬(がい)する者は、五味子半升、細辛一兩、乾薑一兩を加う。

若し小便利する者は、茯苓を去る。若し下利する者は、芍藥を去り、乾薑二兩を加う。若し嘔する者は、附子を去り、生薑を加え、前に足して半斤と為す。

 

【三一七条】

少陰病、下利清穀、裏寒外熱、手足厥逆、脉微欲絶、身反不惡寒、其人面色赤。或腹痛、或乾嘔、或咽痛、或利止脉不出者、通脉四逆湯主之。方十六。

少陰病、下利(げり)清穀(せいこく)、裏寒外熱し、手足厥逆、脉微にして絶せんと欲し、身反って惡寒せず、其の人面色赤し。或は腹痛し、或は乾嘔し、或は咽痛し、或は利止みて脉出でざる者は、通脉四逆湯之を主る。方十六。

 

〔通脉四逆湯方〕

甘草(二兩炙) 附子(大者一枚生用去皮破八片) 乾薑(三兩強人可四兩)

右三味、以水三升、煮取一升二合、去滓、分温再服、其脉即出者愈。面色赤者、加葱九莖。腹中痛者、去葱、加芍藥二兩。嘔者、加生薑二兩。咽痛者、去芍藥、加桔梗一兩。利止脉不出者、去桔梗、加人參二兩。病皆與方相應者、乃服之。

甘草(二兩、炙る) 附子(大なる者一枚、生を用い皮を去り、八片に破る) 乾薑(三兩、強人は四兩とすべし)

右三味、水三升を以て、煮て一升二合を取り、滓を去り、分かち温め再服す。其の脉即ち出づる者は愈ゆ。

面色赤き者は、葱九莖を加う。腹中痛む者は、葱を去り、芍藥二兩を加う。嘔する者は、生薑二兩を加う。咽痛する者は、芍藥を去り、桔梗一兩を加う。

利止みて脉出でざる者は、桔梗を去り、人參二兩を加う。病皆方(ほう)と相應(そうおう)する者は、乃(すなわ)ち之を服す。

 

【三一八条】

少陰病、四逆、其人或欬、或悸、或小便不利、或腹中痛、或泄利下重者、四逆散主之。方十七。

少陰病、四逆し、其の人或は欬(がい)し、或は悸(き)し、或は小便不利し、或は腹中痛み、或は泄利(せつり)下重(げじゅう)する者は、四逆散之を主る。方十七。

 

〔四逆散方〕

甘草(炙) 枳實(破水漬炙乾) 柴胡 芍藥

右四味、各十分、擣篩、白飲和服方寸匕、日三服。欬者、加五味子、乾薑各五分、并主下利。悸者、加桂枝五分。小便不利者、加茯苓五分。腹中痛者、加附子一枚、炮令坼。泄利下重者、先以水五升、煮薤白三升、煮取三升、去滓、以散三方寸匕、内湯中、煮取一升半、分温再服。

甘草(炙る) 枳實(破りて水に漬(ひ)たし、炙り乾かす) 柴胡 芍藥

右四味、各々十分を擣(つ)き篩(ふる)い、白飲もて和し、方寸匕(ひ)を服し、日に三服す。欬する者は、五味子、乾薑各々五分を加え、并(なら)びに下利を主る。悸する者は、桂枝五分を加う。

小便不利の者は、茯苓五分を加う。腹中痛む者は、附子一枚を加え、炮じて坼(き)かしむ。泄利下重の者は、先ず水五升を以て、薤白(がいはく)三升を煮、煮て三升を取り、滓を去り、

散三方寸匕を以て、湯中に内れ、煮て一升半を取り、分かち温め再服す。

 

【三一九条】

少陰病、下利六七日、欬而嘔、渴、心煩、不得眠者、猪苓湯主之。方十八。

少陰病、下利すること六、七日、欬して嘔し、渴し、心煩して眠ることを得ざる者は、猪苓湯之を主る。方十八。

 

〔猪苓湯方〕

猪苓(去皮) 茯苓 阿膠 澤瀉 滑石(各一兩)

右五味、以水四升、先煮四物、取二升、去滓、内阿膠烊盡、温服七合、日三服。

猪苓(皮を去る) 茯苓 阿膠 澤瀉 滑石(各々一兩)

右五味、水四升を以て、先ず四物を煮て、二升を取り、滓を去り、阿膠を内れ烊盡(ようじん)し、七合を温服し、日に三服す。

 

【三二〇条】

少陰病、得之二三日、口燥咽乾者、急下之、宜大承氣湯。方十九。

少陰病、之を得て二、三日、口燥(かわ)き咽(のど)乾く者は、急に之を下す。大承氣湯に宜し。方十九。

 

〔大承氣湯方〕

枳實(五枚炙) 厚朴(半斤去皮炙) 大黄(四兩酒洗) 芒消(三合)

右四味、以水一斗、先煮二味、取五升、去滓、内大黄、更煮取二升、去滓、内芒消、更上火、令一兩沸、分温再服、一服得利、止後服。

枳實(五枚、炙る) 厚朴(半斤、皮を去り、炙る) 大黄(四兩、酒もて洗う) 芒消(三合)

右四味、水一斗を以て、先ず二味を煮て、五升を取り、滓を去り、大黄を内れ、更に煮て二升を取り、滓を去り、芒消を内れ、更に火に上(の)せ、一兩沸せしめ、分かち温め再服す。一服にて利を得れば、後服を止む。

 

【三二一条】

少陰病、自利清水、色純青、心下必痛、口乾燥者、可下之、宜大承氣湯。二十(用前第十九方一法用大柴胡)。

少陰病、清水(せいすい)を自利し、色純青(じゅんせい)、心下必ず痛み、口乾燥する者は、之を下すべし、大承氣湯に宜し。二十(前の第十九方を用う。一法に、大柴胡を用う)。

 

【三二二条】

少陰病、六七日、腹脹、不大便者、急下之、宜大承氣湯。二十一(用前第十九方)。

少陰病、六、七日、腹脹(は)りて、大便せざる者は、急に之を下す、大承氣湯に宜し。二十一(前の第十九方を用う)。

 

【三二三条】

少陰病、脉沈者、急温之、宜四逆湯。方二十二。

少陰病、脉沈の者は、急ぎ之を温む。四逆湯に宜し。方二十二。

 

〔四逆湯方〕

甘草(二兩炙) 乾薑(一兩半) 附子(一枚生用去皮破八片)

右三味、以水三升、煮取一升二合、去滓、分温再服。強人可大附子一枚、乾薑三兩。

甘草(二兩、炙る) 乾薑(一兩、半) 附子(一枚、生を用い、皮を去り、八片に破る)

右三味、水三升を以て、煮て一升二合を取り、滓を去り、分かち温め再服す。強人は、大附子一枚、乾薑三兩とすべし。

 

【三二四条】

少陰病、飲食入口則吐。心中温温欲吐、復不能吐。始得之、手足寒、脉弦遲者、此胸中實、不可下也、當吐之。若膈上有寒飲、乾嘔者、不可吐也、當温之、宜四逆湯。二十三(方依上法)。

少陰病、飲食口に入れば則ち吐す。心中温温(うんうん)として吐せんと欲すも、復た吐すこと能わず。始め之を得て、手足寒(ひ)え、脉弦遲の者は、此れ胸中實す。下すべからざるなり。當に之を吐すべし。

若し膈上に寒飲(かんいん)有りて、乾嘔(かんおう)する者は、吐すべからざるなり。當に之を温むべし。四逆湯に宜し。二十三(方は上法に依(よ)る)。

 

【三二五条】

少陰病、下利、脉微濇、嘔而汗出、必數更衣、反少者、當温其上、灸之(脉經云灸厥陰可五十壮)。

少陰病、下利し、脉微濇(しょく)、嘔して汗出で、必ず數(しば)しば更衣(こうい)するも、反って少なき者は、當に其の上を温め、之を灸すべし(脉經に云う、厥陰に灸すること五十壮とすべしと)。

 

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