鍼灸医学の懐

主に黄帝内経の意訳と解説 最後に原文と読み下しを記しています。その他、随時古典資料を追加しています。

6.手太陽 小腸

   志ある学徒の、簡便な道具にならんことを願って読み下文を記しています。

 また初学者のため、重複の労をいとわずルビをふっています。

 誤りを見つけられましたら、どうかコメント欄に投稿をお願いいたします。

  底本 『霊枢』明刊無名氏本『新刊黄帝内経霊枢』日本内経医学会所蔵

 

正經

小腸手太陽之脉.起于小指之端.循手外側.上腕.出踝中.直上循臂骨下廉.出肘内側兩筋之閒.上循臑外後廉.出肩解.繞肩胛.交肩上.入缺盆.絡心.循咽下膈.抵胃.屬小腸.

其支者.從缺盆.循頚.上頬.至目鋭眥.却入耳中.

其支者.別頬.上抵鼻.至目内眥.斜絡于顴.

小腸手太陽の脉は、小指の端に起り、手の外側を循(めぐ)り、腕を上り、踝中(かちゅう)に出で、直(ただ)ちに上りて臂骨(ひこつ)の下廉を循(めぐ)り、肘の内側兩筋の閒(かん)に出で、上りて臑(じゅ)の外後廉を循(めぐ)り、①肩解に出で、肩胛(けんこう)を繞(めぐ)り、肩上に交り、缺盆に入り心を絡(まと)い、咽を循(めぐ)り膈を下り、②胃に抵(あた)りて小腸に屬(ぞく)す。

其の支なる者は、缺盆より頚を循(めぐ)り頬に上り、目の鋭眥(えいし)に至り、却(しりぞ)きて③耳中に入る。

其の支なる者は、頬に別れ④䪼(せつ)を上り鼻に抵(あた)り、⑤目の内眥(ないし)に至り、斜(なな)めに顴(けん)を絡(まと)う。

【解説】

① 肩解:肩峰~肩甲骨内上角~大椎穴付近。

② 胃に抵あたりて小腸に屬(ぞく)す:上脘・中脘穴と流注して下脘穴で小腸に属する。

③ 耳中:聴宮穴

④ 䪼を上り鼻に抵り:手足の陽明と合流。

⑤ 目の内眥:足太陽へと繋がる。

 

正經病症

是動則病痛頷腫.不可以顧.肩似拔.臑似折.是主液所生病者.耳聾.目黄.頬腫.頚頷肩臑肘臂外後廉痛.

是れ動ずれば則ち病む。嗌(のど)痛み頷(がん)腫れ、以て顧(かえり)みるべからず。肩抜けるに似(に)て臑(じゅ)折れるに似(に)る。①是れ液を主として生ずる所の病の者は、耳聾(じろう)し、目黄し、頬(ほほ)腫れ頚、頷(がん)、肩、臑(じゅ)、肘、臂(ひ)の外後廉痛む。

【解説】

① 液を主として生ずる所の病:津液の津は、比較的薄くさらりとしたもので移動し、液とは粘稠で関節や脳髄を満たして移動しにくい性質がある。この場合の液とは、精気(陰気)を指すのか、また小腸の泌別清濁機能・水湿運化機能の異常を指しているのか今後の臨床家の判断を待つところである。

 

經別

手太陽之正.指地.別于肩解.入腋.走心.繋小腸也.

手太陽の正、①地を指し、肩解に別れ、腋に入りて心に走り、②小腸に繋(つなが)るなり。

【解説】

① 地を指し:下行するという意味。

② 小腸に繋つながる:下脘穴であるのか、関元穴であるのか。今後の臨床に委ねる。

 

經筋

手太陽之筋.起于小指之上.結于腕.上循臂内廉.結于肘内鋭骨之後.彈之應小指之上.入結于腋下.

其支者.後走腋後廉.上繞肩胛.循頚.出走太陽之前.結于耳後完骨.

其支者.入耳中.直者.出耳上.下結于頷.上屬目外眥.

手太陽の筋、小指の上に起り、腕に結び、上りて臂(ひ)の内廉を循(めぐ)り、肘内鋭(えい)骨の後に結び、①之を弾ずれば小指の上に應(おう)じ、入りて腋下に結ぶ。

其の支なる者は、腋の後廉を後走し、上りて肩胛(けんこう)を繞(めぐ)り、頚を循(めぐ)り、出でて②太陽の前に走り、耳後の③完骨に結ぶ。其の支なる者は、耳中に入る。直なる者は、④耳上に出で、下りて頷(がん)に結び、上りて目の外眥(がいし)に屬(ぞく)す。

【解説】

① 之を弾ずれば小指の上に應おうじ:小海穴を弾じると、小指まで響く様。

② 太陽:足太陽

③ 完骨:足少陽と交会

④ 耳上に出で:角孫穴

 

經筋病症

其病小指支.肘内鋭骨後廉痛.循臂陰入腋下.腋下痛.腋後廉痛.繞肩胛.引頚而痛.應耳中鳴痛引頷.目瞑.良久乃得視.頚筋急則爲筋瘻頚腫.

其の病小指支(つか)え、肘内鋭骨(えいこつ)の後廉痛み、臂陰(ひいん)を循(めぐ)り腋下に入りて、腋下痛み、腋の後廉痛み、肩胛(けんこう)を繞(めぐ)り、頚に引きて痛み、耳中に應(おう)じて鳴り痛み頷(がん)に引き、①目瞑(もくめい)して良(やや)久しくすれば乃ち視ることを得、頚筋急すれば則ち②筋瘻(きんろう)し頚腫を為す。

【解説】

① 目瞑:視界がはっきりとしないこと。

② 筋瘻:瘰癧

 

絡脈

手太陽之別.名曰支正.上腕五寸.内注少陰.其別者.上走肘.絡肩

手太陽の別、名づけて支正と曰く。腕を上ること五寸、内(い)りて少陰に注ぐ。其の別なる者は、上りて肘に走り、肩髃を絡(まと)う。

 

絡脈病症

實則節弛肘廢.虚則生肬.小者如指痂疥.取之所別也.

實すれば則ち節弛(ゆる)み肘廢(すた)れる。虚すれば則ち①肬(ゆう)を生じ、小さき者は指の②痂疥(かかい)の如し。之(これ)を別れる所に取るなり。

【解説】

① 肬:イボ

② 痂疥:数が多く、カサブタができるイボ。