鍼灸医学の懐

主に黄帝内経の意訳と解説 最後に原文と読み下しを記しています。その他、随時古典資料を追加しています。

7.足太陽 膀胱

   志ある学徒の、簡便な道具にならんことを願って読み下文を記しています。

 また初学者のため、重複の労をいとわずルビをふっています。

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  底本 『霊枢』明刊無名氏本『新刊黄帝内経霊枢』日本内経医学会所蔵

 

正經

膀胱足太陽之脉.起于目内眥.上額.交巓.

其支者.從巓至耳上角.其直者.從巓入絡腦.還出別下項.循肩内.挾脊抵腰中.入循膂.絡腎.屬膀胱.

其支者.從腰中.下挾脊.貫臀.入膕中.

其支者.從内.左右別.下貫胛.挾脊内.過髀樞.循髀外.從後廉.下合膕中.以下貫内.出外踝之後.循京骨.至小指外側.

膀胱足太陽の脉、目の内眥(ないし)に起こり、額を上り①巓(てん)に交わる。其の支なる者は、巓(てん)より②耳の上角に至る。

其の直なる者は、巓(てん)より入りて腦を絡(まと)い、還(かえ)り出で③別れて項を下り、④肩髆(けんぱく)の内を循(めぐ)り、脊を挾み⑤腰中に抵(あた)り、入りて⑥膂(りょ)を循(めぐ)り、腎を絡(まと)い⑦膀胱に屬(ぞく)す。

其の支なる者は、腰中より、下りて脊を挾み臀(でん)を貫き、⑧膕中(かくちゅう)に入る。

⑨其の支なる者は、髆内(はくない)より左右に別れ、下りて胛(こう)を貫き、脊を内に挾(ばさ)み、⑩髀樞(ひすう)を過ぎ、髀外を循(めぐ)り、後廉より下りて⑪膕中(かくちゅう)に合し、以って下りて⑫腨内(せんない)を貫き、外踝の後に出で、京骨を循(めぐ)り、小指の外側に至る。

【解説】

①巓(てん):百会で左右交差する

②耳の上角:手足の少陽と合す。

③別れて項を下り:天柱から大杼・風門・・・の一行と、附分・魄戸・・・の二行とに分かれる。

④肩髆(けんぱく)の内を循(めぐ)り:肩甲骨

⑤腰中に抵(あた)り:腎兪付近

⑥膂(りょ):脊柱起立筋

⑦膀胱に屬(ぞく)す:中極穴

⑧膕中(かくちゅう):膝窩、委中

⑨其の支なる者は:天柱から分かれた二行

⑩髀樞(ひすう):環跳

⑪膕中(かくちゅう):二行は委陽から委中に流注するのが自然

⑫腨内(せんない):腓腹筋

 

正經病症

是動則病衝頭痛.目似脱.項如拔.脊痛腰似折.髀不可以曲.膕如結.如裂.是爲踝厥.

是主筋所生病者.痔.瘧.狂癲疾.頭項痛.目黄.涙出.衄.項背腰尻膕脚皆痛.小指不用.

是れ動ずれば則ち病む。頭衝(つ)きて痛み、目脱するに似て、項抜けるが如く、脊痛み腰折るに似て、髀以って曲るべからず。膕(かく)結ぶが如く、踹(せん)裂くるが如し。是れ踝厥(かけつ)と為す。

①是れ筋を主として生ずる所の病の者は、痔、瘧(がい)、狂、癲疾(てんしつ)、①頭顖(ずそう)項痛み、目黄し、涙出で、鼽衄(きゅうじく)し、項、背、腰、尻(こう)、膕(かく)、踹(せん)、脚、皆痛み、小指用いず。

【解説】

①頭顖(ずそう):いわゆるひよめき。泉門。

②是れ筋を主として生ずる所の病:<素問・生気通天論三>「陽氣者.精則養神.柔則養筋.開闔不得.寒氣從之.乃生大僂.」

この場合の筋とは、身体背面を流注する足太陽を指し、足太陽の失調は、腠理の開合失調が主であることを指している。 

 

經別

足太陽之正.別入于膕中.其一道.下尻五寸.別入于肛.屬于膀胱.散之腎.循膂.當心入散.直者.從膂上出于項.復屬于太陽.此爲一經也.

足太陽の正、別れて膕中(かくちゅう)に入り、其の一道は、尻(こう)を下ること五寸にして、別れて①肛に入り、膀胱に屬(ぞく)し、散じて腎に之(ゆ)き、膂(りょ)を循(めぐ)り、②心に當(あた)り入りて散ず。直なる者は、膂(りょ)より上りて項に出で、復(また)太陽に屬(ぞく)す。此一經と為すなり。

【解説】

①肛に入り:痔疾患と関係する。肛門は魄と称され、大腸の最終で陽気が非常に強いところである。

②心に當(あた)り入りて散ず:心-腎・膀胱の関係を説いている。腎・膀胱の異常と心との関係が深いことを示している。

 

經筋

足太陽之筋.起于足小指.上結于踝.邪上結于膝.其下循足外側.結于踵.上循跟.結于膕.其別者.結于外.上膕中内廉.與膕中并.上結于臀.上挾脊.上項.

其支者.別入結于舌本.其直者.結于枕骨.上頭下顏.結于鼻.

其支者.爲目上網.下結于

其支者.從腋後外廉.結于肩

其支者.入腋下.上出缺盆.上結于完骨.

其支者.出缺盆.邪上出于

足太陽の筋、足の小指に起り、上りて踝(か)に結び、邪(なな)めに上りて膝に結ぶ。其の下は足の外側を循(めぐ)り、踵(かかと)に結び、上りて跟(こん)を循(めぐ)り、膕(かく)に結ぶ。其の別なる者は、踹(せん)外に結び、膕(かく)中の内廉を上り、膕(かく)中と并せ、上りて臀(でん)に結び、上りて脊を挟み、項を上る。

其の支なる者は、別れて入り①舌本に結ぶ。其の直なる者は、②枕骨(ちんこつ)に結び、頭を上り顔に下り、鼻に結ぶ。

其の支なる者は、目の上網を為し、下りて頄(きゅう)に結ぶ。

③其の支なる者は、腋後外廉より、肩髃に結ぶ。

其の支なる者は、腋下に入り、上りて缺盆に出で、上りて完骨に結ぶ。

其の支なる者は、缺盆に出で、邪(なな)めに上りて④頄(きゅう)に出ず。

【解説】

①舌本に結ぶ:足太陰、足少陰、足太陽経筋、手少陰絡脉と合流する。

②枕骨(ちんこつ)に結び:後頭部からの流れが承泣穴付近で結ぶ。

③其の支なる者は、腋後外廉より肩髃に結ぶ。其の支なる者は、腋下・・・:肩背部から肩を前後に取り囲むように流注している。

④頄(きゅう):肩からの流注と後頭部からの流注が承泣穴付近で合流する。また完骨穴から承泣穴までも流注しているので、後頭部からの流注と、側頭部から顔面部と取り囲むように流注している。

 

經筋病症

其病小指支.跟腫痛.膕攣.脊反折.項筋急.肩不擧.腋支.缺盆中紐痛.不可左右搖.

其の病小指支(つか)え、跟(こん)腫れ痛み、膕攣(かくれん)し、①背反折し、項筋急し、肩擧(あが)らず、腋支(つか)え、缺盆の中紐痛(ちゅうつう)し、②左右に揺らすべからず。 

【解説】

①背反折:角弓反射のようにのけぞること。

②左右に揺らすべからず:全身、もしくは首が強ばって左右に揺らすことが出来ない様。

 

絡脈

足太陽之別.名曰飛陽.去踝七寸.別走少陰.

足太陽の別、名づけて飛陽と曰く。踝(か)を去ること七寸、別れて少陰に走る。

 

絡脈病症

實則窒頭背痛.虚則衄.取之所別也.

實すれば則ち①鼽窒(きゅうちつ)し、頭背痛む。①虚すれば則ち鼽衄(きゅうじく)す。之(これ)を別れる所に取るなり。

【解説】

①鼽窒(きゅうちつ):鼻閉。太陽が邪を受け、上焦で鬱滞すると鼻閉と共に頭背のこわばりや痛みが生じる。

①虚すれば則ち鼽衄(きゅうじく)す:飛陽穴を補わなければならない鼻血であれば、漏れ出るような出血の仕方をするのであろう。