鍼灸医学の懐

主に黄帝内経の意訳と解説 最後に原文と読み下しを記しています。その他、随時古典資料を追加しています。

9.手厥陰 心包

   志ある学徒の、簡便な道具にならんことを願って読み下文を記しています。

 また初学者のため、重複の労をいとわずルビをふっています。

 誤りを見つけられましたら、どうかコメント欄に投稿をお願いいたします。

  底本 『霊枢』明刊無名氏本『新刊黄帝内経霊枢』日本内経医学会所蔵

 

正經

心主手厥陰心包絡之脉.起于胸中.出屬心包絡.下膈.歴絡三焦.

其支者.循胸.出脇.下腋三寸.上抵腋下.循臑内.行太陰少陰之閒.入肘中.下臂.行兩筋之閒.入掌中.循中指.出其端.

其支者.別掌中.循小指次指.出其端.

心主手厥陰心包絡の脉は、①胸中に起り、出でて心包絡に屬(ぞく)し、膈を下り、②三焦を③歴絡(れき)らく)す。

其の支なる者は、④胸を循(めぐ)り脇に出で、腋三寸を下り、上りて腋下に抵(あた)り、臑内(じゅない)を循(めぐ)り、太陰少陰の閒(かん)を行き、肘中に入り、臂(ひ)を下り兩筋の閒(かん)を行き、掌中に入り、中指を循(めぐ)り、其の端に出ず。

其の支なる者は、掌中に別れ、小指の次指を循(めぐ)り、其の端に出ず。

【解説】

① 胸中:足少陰の流れを受けて、おおよそ膻中穴付近。

② 三焦:五腑の袋=包である。焦は隹(とり)を火で焼く姿。三焦とは、陽気に特化した名称。

③ 歴絡:歴とは、経験・体験してきたこと。つまり心包の気血は、三焦から受けたのであるが、さらにまた三焦を再び絡うことを意味する。

④ 胸を循り脇に出で:天地穴は、そのまま上焦と下焦の状態が現れる意。このあたりで脾の大絡=大包と繋がる。

⑤ 掌中に別れ:労宮穴

 

正經病症

是動則病手心熱.臂肘攣急.腋腫.甚則胸脇支滿.心中憺憺大動.面赤.目黄.喜笑不休.

是主脉所生病者.煩心心痛、掌中熱.

是れ動ずれば則ち病む。手心熱し、臂(ひ)肘攣急(れんきゅう)し、腋腫れ、甚だしければ則ち胸脇①支満(しまん)し、心中②憺憺(たんたん)として③大いに動ず、面赤く、目黄し、喜笑して休(や)まず。

是れ脉を主として生ずる所の病の者は、煩心し、心痛し、掌中熱す。

【解説】

① 支満:一杯になってつかえる。一杯になって息苦しい。

② 憺憺:憂いのために、心が恐れて胸騒ぎがする。

③ 大いに動ず:激しく動悸がする。

 

經別

手心主之正.別下淵腋三寸.入胸中.別屬三焦.出循喉.出耳後.合少陽完骨之下.此爲五合也.

手心主の正、別れて①淵腋を下ること三寸にして、胸中に入り、別れて②三焦に屬(ぞく)し、出でて喉嚨(こうろう)を循(めぐ)り、耳後に出で、②少陽完骨の下に合す。此れ五合と為すなり。

【解説】

① 淵腋を下ること三寸:足少陰と脾の大絡=大包と繋がる。

② 三焦に屬(ぞく)し:心包・膻中=気 三焦・大包=水が連想される。

③少陽完骨:手少陽三焦経と合流。

 

經筋

手心主之筋.起于中指.與太陰之筋並行.結于肘内廉.上臂陰.結腋下.下散前後挾脇.

其支者.入腋.散胸中.結于臂(賁).

手心主の筋、中指に起り、太陰の筋と並び行き、肘の内廉に結び、臂(ひ)陰を上り、腋下に結び、下りて前後に散じて①脇を挾(ばさ)む。其の支なる者は、腋に入り、胸中に散じ臂(ひ)(賁(ふん))に結ぶ。

【解説】

①脇を挾(ばさ)む:少陽部位と深くかかわる。

 

經筋病症

其病當所過者.支轉筋.前及胸痛息賁.

其の病の過(す)ぐる所に當(あた)る者は、支(つか)え轉筋(てんきん)し、前及び胸痛みて①息賁(そくふん)す。

【解説】

① 息賁:肺積=右脇下の腫塊

 

絡脈

手少陰之別.名曰内關.去腕二寸.出于兩筋之間.循經以上繋于心包.絡心系.

手心主の別、名づけて内關(ないかん)と曰く。腕を去ること二寸、兩筋の間に出で、經を循(めぐ)り以って上り心包に繋(つな)がり、心系を絡(まと)う。

 

絡脈病症

實則心痛.虚則爲頭強.取之兩筋間也.

實すれば則ち心痛し、虚すれば則ち頭強を為す。之(これ)を兩筋の間に取るなり。

 

※(頭強…甲乙經では「煩心」)