鍼灸医学の懐

主に黄帝内経の意訳と解説 最後に原文と読み下しを記しています。その他、随時古典資料を追加しています。

11.足少陽 胆

   志ある学徒の、簡便な道具にならんことを願って読み下文を記しています。

 また初学者のため、重複の労をいとわずルビをふっています。

 誤りを見つけられましたら、どうかコメント欄に投稿をお願いいたします。

  底本 『霊枢』明刊無名氏本『新刊黄帝内経霊枢』日本内経医学会所蔵

 

正經

膽足少陽之脉.起于目鋭眥.上抵頭角.下耳後.循頚行手少陽之前.至肩上.却交出手少陽之後.入缺盆.

其支者.從耳後.入耳中.出走耳前.至目鋭眥後.

其支者.別鋭眥.下大迎.合于手少陽.抵于.下加頬車.下頚.合缺盆.以下胸中.貫膈.絡肝.屬膽.循脇裏.出氣街.繞毛際.横入髀厭中.

其直者.從缺盆.下腋.循胸.過季脇.下合髀厭中.以下循髀陽.出膝外廉.下外輔骨之前.直下抵絶骨之端.下出外踝之前.循足上.入小指次指之間.

其支者.別上.入大指之閒.循大指岐骨内.出其端.還貫爪甲.出三毛.

膽足少陽の脉は、目の鋭眥(えいし)に起り、上りて頭角に抵(あた)り、耳後を下り、頚を循(めぐ)り手少陽の前を行き、肩上に至り、却(しりぞ)いて①手少陽の後に交り出で、缺盆に入る。

其の支なる者は、耳後より、②耳中に入り、出でて耳前に走り、目の鋭眥(えいし)の後に至る。

其の支なる者は、鋭眥(えいし)に別れ、大迎に下り、手少陽と合す。䪼(せつ)に抵(あた)り、下りて③頬車に加わり、頚を下りて④缺盆に合し、以って胸中を下り、⑤膈を貫き肝を絡(まと)い膽に屬す。脇裏を循(めぐ)り、氣街に出で、毛際を繞(めぐ)り、横に⑥髀厭(ひえん)の中に入る。

其の直なる者は、缺盆より腋を下り、胸を循(めぐ)り⑦季脇を過ぎ、下りて髀厭(ひえん)の中に合し、以って下りて髀陽を循(めぐ)り、膝の外廉に出で、⑧外輔骨(がいほこつ)の前を下り、直(ただ)ちに下りて⑨絶骨の端に抵(あた)り、下りて外踝(がいか)の前に出で、足跗(そくふ)の上を循(めぐ)り、小指の次指の間に入る。

其の支なる者は、⑨跗上(ふじょう)に別れ、大指の閒に入り、大指岐骨(きこつ)の内を循(めぐ)りて其の端に出ず。還(めぐ)りて爪甲を貫ぬき、三毛に出ず。

【解説】

①手少陽の後に交り出で:肩井から大椎に流注して缺盆へと入っていく。

②耳中に入り:手少陽と共に、耳との関係が深いことを示している。上焦の少陽部位に病邪が侵襲すると、中耳炎、難聴など耳の疾患を生じる。小柴胡湯証264条<少陽中風、両耳無所聞、目赤、胸中満而煩者、…>

③頬車に加わり:足陽明と合流し、顎関節症と関係する。この場合、足の甲を取穴する。

④缺盆に合し:足陽明と同じく、ここから深部と浅部の二本が流注する。

⑥膈を貫き肝を絡(まと)い膽に屬す:期門で肝を絡い、日月で胆に属する。この期門と日月の募穴間の位置は、肋骨弓の上下であり距離も他の表裏募穴間に比べて近くに位置している。このことから肝胆は相照らし合いながら一体となって生理機能を行っている。

⑤季脇を過ぎ:この部位で腎募穴・京門穴、帯脉穴を通って仙骨部・八髎穴を流注して環跳穴へと流れていく。

⑥髀厭(ひえん):環跳穴

⑦外輔骨:腓骨頭、陽陵泉で足陽明経筋・足太陽経筋が合流する。

⑧絶骨の端:陽輔穴

⑨跗上(ふじょう)に別れ:臨泣穴から大衝穴・行間穴を循って指先に至り、向きを変えて足の親指の爪甲根部に至る。

 

正經病症

是動則病口苦.善大息.心脇痛不能轉側.甚則面微有塵.體無膏澤.足外反熱.是爲陽厥.

是主骨所生病者.頭痛頷痛.目鋭眥痛.缺盆中腫痛.腋下腫.馬刀侠.汗出振寒瘧.胸脇肋髀膝外.至脛絶骨外踝前.及諸節皆痛.小指次指不用

是れ動ずれば則ち病む。①口苦く、善(よ)く②大息(たいそく)し、③心脇痛みて轉側(てんそく)すること能(あた)わず、甚だしければ則ち③面微(かす)かに塵(ちり)有り、體(たい)に膏澤(こうたく)無く、足の外反って熱す。是れ陽厥(ようけつ)と為す。

是れ骨を主として生ずる所の病の者は、頭痛頷(がん)痛み、目の鋭眥(えいし)痛み、缺盆の中腫れ痛み、腋下腫れ、④馬刀侠癭(ばとうきょうえい)し、汗出で振寒し、⑤瘧(がい)し、胸・脇・肋・髀(ひ)・膝の外より、脛・絶骨・外踝(か)の前、及び諸節に至りて皆痛み、小指の次指用ず。

【解説】

①口苦く:小柴胡湯証263条<少陽之爲病、口苦、咽乾、目眩也>

②大息(たいそく):大きなため息。気の鬱滞を開放する動作。

④心脇痛みて:胸脇苦満。

⑤面微(かす)かに塵(ちり)有り:ちりのようにかすかに黒っぽくなること。

⑥馬刀侠癭(ばとうきょうえい):馬刀とは、マテガイの別名。癭とはできもの、腫れもの。頸部にできるリンパ腺炎、甲状腺腫など。

⑦瘧(がい):マラリアのように間欠的に悪寒と発熱を繰り返す病。小柴胡湯証266条<本太陽病不解、轉入少陽者、脇下滿、乾嘔不能食、往来寒熱、…>

 

經別

足少陽之正.繞髀.入毛際.合于厥陰.別者.入季脇之間.循胸裏.屬膽.散之上肝.貫心.以上挾咽.出頤頷中.散于面.繋目系.合少陽于外眥也.

足少陽の正、髀(ひ)を繞(めぐ)り、毛際に入り、①厥陰に合す。別なる者は、季脇(ききょう)の間に入り、胸裏を循(めぐ)り、膽(たん)に屬(ぞく)し、散じて上りて肝に之(ゆ)き、②心を貫ぬき、以て上りて咽を挾(ばさ)み、頤頷(いがん)の中に出で、面に散じ、③目系に繋(つな)がり、少陽と外眥(がいし)に合するなり。

【解説】

①厥陰に合す:陰部付近で表裏が合する。

②心を貫ぬき:心神との関係を示している。

③目系に繋(つな)がり:内眥に流注している手太陽と足少陽で、左右の目の動きを行っている。メニエル氏病などの眩暈時には、眼球が左右に振れるのが観察される。

 

經筋

足少陽之筋.起于小指次指.上結外踝.上循脛外廉.結于膝外廉.

其支者.別起外輔骨.上走髀.前者結于伏兔之上.後者結于尻.

其直者.上乘[月少]季脇.上走腋前廉.繋于膺乳.結于缺盆.直者.上出腋.貫缺盆.出太陽之前.循耳後.上額角.交巓上.下走頷.上結于.支者.結于目眥.爲外維.

足少陽の筋、小指の次指に起り、上りて外踝(か)に結び、上りて脛の外廉を循(めぐ)り、膝の外廉に結ぶ。

其の支なる者は、別れて外輔骨(がいほこつ)に起り、上りて髀(ひ)に走り、前なる者は①伏兎の上に結び、後なる者は②尻(こう)に結ぶ。其の直なる者は、上りて③䏚(びょう)と季脇(ききょう)に乗(じょう)じ、上りて腋の前廉に走り、膺乳(ようにゅう)に繋(つな)がり、缺盆に結ぶ。直なる者は、上りて腋に出で、缺盆を貫ぬき、太陽の前に出で、耳後を循(めぐ)り、額角を上り、④巓上(てんじょう)に交わり、下りて頷(がん)に走り、上りて頄(きゅう)に結ぶ。支なる者は、目眥(もくし)に結びて外維(がいい)と為す。

【解説】

①伏兎の上に結び:足陽明に繋がる。

②尻(こう)に結ぶ:臀部で足太陽と繋がる。

③䏚(びょう):季肋の下、腸骨上部の骨の無い柔らかい部分。

④巓上:百会穴。

 

經筋病症

其病小指次指支轉筋.引膝外轉筋.膝不可屈伸.膕筋急.前引髀.後引尻.即上乘[月少]季脇痛.上引缺盆膺乳頚維筋急.從左之右.右目不開.上過右角.並脉而行.左絡于右.故傷左角.右足不用.命曰維筋相交.

其れ病めば小指の次指支(つか)え轉筋(てんきん)し、膝外に引きて轉筋(てんきん)し、膝屈伸すべからず、膕(かく)筋急し、前は髀(ひ)に引き、後は尻(こう)に引き、即ち上りて䏚(びょう)と季脇(ききょう)に乗(じょう)じて痛み、上は缺盆・膺乳(ようにゅう)に引きて頚維の筋急す。左より右に之(ゆ)けば、右目開かず、上りて右角を過(よ)ぎり、蹻脉(きょうみゃく)と並び行き、左は右を絡(まと)う。故に左角を傷(やぶ)れば右足用いず。命じて①維筋相交(いきんそうこう)と曰(いわ)く。

【解説】

①維筋相交(いきんそうこう):「気の偏在」としてみれば経筋に限らず、維筋相交(いきんそうこう)は存在する。足少陽経筋病症にわざわざ維筋相交と記しているのは、任脈・督脈で左右の経絡は接しており、また帯脉は上下左右の空間の軸=枢であるためである。(帯脉主冶穴=臨泣穴)

 

絡脈

足少陽之別.名曰光明.去踝五寸.別走厥陰.下絡足

足少陽の別、名づけて光明と曰く。踝(か)を去ること五寸、別れて厥陰に走り、下りて①足跗(そくふ)を絡(まと)う。

【解説】

①足跗(そくふ)を絡(まと)う:足の甲は、足陽明と足少陽が密接に関係している。

 

絡脈病症

實則厥.虚則痿躄.坐不能起.取之所別也.

實すれば則ち厥(けつ)し、虚すれば則ち痿躄(いへき)し、坐して起つこと能(あた)わず。之(これ)を別つ所に取るなり。